15 / 59
6月
第15話 自ら環境を変えろ
しおりを挟む
ジリリリリ! ジリリリリ!
目覚まし時計が進の部屋で鳴り響く。
「うー……眠い」
慣れない朝に重たい目を開け進は起きる。その後、スマホを取り出しススムへと電話する。
「おはようございます、ススムさん」
「おはよう、小僧。まずは初日、起きれたようだな。その調子だ。あと昨日言い忘れたが給料からの3割天引きも続けろよ。
まずは借金を完済することに全力を注げ。いいな?」
「は、はい。わかりました」
とりあえず昼間の弁当を作っておこう。眠たい目をこすりながら進は台所へと向かった。
それから一週間後……
「おはようございます、ススムさん。うー……眠」
「おはよう、小僧。今日で一週間経つが出来ているようだな、なかなかやるではないか。
良いだろう、お前は真面目に課題に取り組んでいるようだからそろそろこの課題を課したワケを話してもいいだろう、今日のデイサービスで来た際に教えてやろう」
その日の午後3時、進はススムと話ができる機会が出来た。彼はさっそく話題を切り出す。
「ススムさん。課題の理由を教えてください」
「フム、いいだろう。お前は課題をこなしているからな。いいか小僧、『環境が変われば活躍できるはず』と考えるものは多いが、それは真実だ。
実際に環境が変わっただけで水を得た魚のようにイキイキと生きれるようになった知り合いをオレは何人も知っている。
それに昔の話ではディズニーの創始者であるウォルト・ディズニーは
新聞社に勤めていた際に「お前の絵には創造性が無い」と言われてクビになったこともあるそうだ。
だが彼はアニメという新たな環境を手に入れた後、今どうなったかは……言うまでもないだろ?」
ススムの話は続いた。それは今回の課題の核心に触れる事だった。
「だがよく聞け、環境は『自らの手で』変えるものだ。決して『口を開けて待っていれば自動的に、あるいは他の誰かが変えてくれる』ものではない。
そんな夢想にふけっているようでは一生、いや『十生』あっても変わらん。
何かする時間が1時間欲しかったらお前は「俺だけ1日が25時間にならないかなぁ」と思ってただ待つだけか? 違うだろ?
「1時間早起きする」というオレの課題はそういう意味だ。自ら環境を変えるための練習だ。分かったか?」
「……そういう事だったんですね」
進はススムの言葉を素直に受け取った。
「小僧、お前は素直だな。30にもなると自分の人生観が出来て、それが何かを新しく学ぶ際に邪魔になることが多々あるがお前にはそれが無い。
オレの教えを素直に聞いて吸収してくれるから教えがいがある。お前には人から教えを請う才能がある。それだけは他人に誇ってもいい立派な才能だぞ」
「そ、そうなんですか? 今一つ実感わかないんですけど……ところで早起きには別の意味もありますよね? ただ習慣を変えるのなら他の事でもいいですし……」
「ほぉ。ずいぶんとまぁ鋭い事を突くようになったじゃないか小僧。良い感じだぞ」
ススムは意外な顔をしつつ喜んでいた。
「小僧、お前は今の段階でも貯金して本を買う財産と、本を読む時間を作れたわけだ。
あとはとにかく本を読め。前にも言ったが本を読めば読まないやつなんか一方的に蹴散らせる」
「そ、そうですか。でも本を読めって言われてもどんな本を読めば良いのか分からないんです」
「やれやれ、そんなことまで聞かねば出来ないのか……まぁいい。小僧に本を読む習慣が無ければ仕方あるまい。
とりあえず「バビロンの大富豪」「金持ち父さん貧乏父さん」「チーズはどこへ消えた?」「ユダヤ人大富豪の教え」この4冊は押さえとけ。
中にはマンガ化もされてる物もあるそうだからそれでもいい。もちろんオリジナルの書籍を読むのが一番だがな。
どれも本の中では群を抜いて読みやすいから本を読み慣れてない素人でも問題ないぞ」
老人は若者にそう説いた。
「ちょうどいい。小僧、また課題を出すぞ。月末に現金を見せるのと同時にそれまでにさっき言った本の中から1冊を読め。買うのはアマゾンでも書店でもいい。
内容を聞くから答えられる程度には内容を覚えていてくれ。大まかかつざっとで構わんぞ」
「は、はい。わかりました。やってみます」
進に新たな課題が出された。
【次回予告】
進が課題に挑む中、ススムは「効率」に関して苦言を示す。
第16話 「効率を重視しすぎるな」
目覚まし時計が進の部屋で鳴り響く。
「うー……眠い」
慣れない朝に重たい目を開け進は起きる。その後、スマホを取り出しススムへと電話する。
「おはようございます、ススムさん」
「おはよう、小僧。まずは初日、起きれたようだな。その調子だ。あと昨日言い忘れたが給料からの3割天引きも続けろよ。
まずは借金を完済することに全力を注げ。いいな?」
「は、はい。わかりました」
とりあえず昼間の弁当を作っておこう。眠たい目をこすりながら進は台所へと向かった。
それから一週間後……
「おはようございます、ススムさん。うー……眠」
「おはよう、小僧。今日で一週間経つが出来ているようだな、なかなかやるではないか。
良いだろう、お前は真面目に課題に取り組んでいるようだからそろそろこの課題を課したワケを話してもいいだろう、今日のデイサービスで来た際に教えてやろう」
その日の午後3時、進はススムと話ができる機会が出来た。彼はさっそく話題を切り出す。
「ススムさん。課題の理由を教えてください」
「フム、いいだろう。お前は課題をこなしているからな。いいか小僧、『環境が変われば活躍できるはず』と考えるものは多いが、それは真実だ。
実際に環境が変わっただけで水を得た魚のようにイキイキと生きれるようになった知り合いをオレは何人も知っている。
それに昔の話ではディズニーの創始者であるウォルト・ディズニーは
新聞社に勤めていた際に「お前の絵には創造性が無い」と言われてクビになったこともあるそうだ。
だが彼はアニメという新たな環境を手に入れた後、今どうなったかは……言うまでもないだろ?」
ススムの話は続いた。それは今回の課題の核心に触れる事だった。
「だがよく聞け、環境は『自らの手で』変えるものだ。決して『口を開けて待っていれば自動的に、あるいは他の誰かが変えてくれる』ものではない。
そんな夢想にふけっているようでは一生、いや『十生』あっても変わらん。
何かする時間が1時間欲しかったらお前は「俺だけ1日が25時間にならないかなぁ」と思ってただ待つだけか? 違うだろ?
「1時間早起きする」というオレの課題はそういう意味だ。自ら環境を変えるための練習だ。分かったか?」
「……そういう事だったんですね」
進はススムの言葉を素直に受け取った。
「小僧、お前は素直だな。30にもなると自分の人生観が出来て、それが何かを新しく学ぶ際に邪魔になることが多々あるがお前にはそれが無い。
オレの教えを素直に聞いて吸収してくれるから教えがいがある。お前には人から教えを請う才能がある。それだけは他人に誇ってもいい立派な才能だぞ」
「そ、そうなんですか? 今一つ実感わかないんですけど……ところで早起きには別の意味もありますよね? ただ習慣を変えるのなら他の事でもいいですし……」
「ほぉ。ずいぶんとまぁ鋭い事を突くようになったじゃないか小僧。良い感じだぞ」
ススムは意外な顔をしつつ喜んでいた。
「小僧、お前は今の段階でも貯金して本を買う財産と、本を読む時間を作れたわけだ。
あとはとにかく本を読め。前にも言ったが本を読めば読まないやつなんか一方的に蹴散らせる」
「そ、そうですか。でも本を読めって言われてもどんな本を読めば良いのか分からないんです」
「やれやれ、そんなことまで聞かねば出来ないのか……まぁいい。小僧に本を読む習慣が無ければ仕方あるまい。
とりあえず「バビロンの大富豪」「金持ち父さん貧乏父さん」「チーズはどこへ消えた?」「ユダヤ人大富豪の教え」この4冊は押さえとけ。
中にはマンガ化もされてる物もあるそうだからそれでもいい。もちろんオリジナルの書籍を読むのが一番だがな。
どれも本の中では群を抜いて読みやすいから本を読み慣れてない素人でも問題ないぞ」
老人は若者にそう説いた。
「ちょうどいい。小僧、また課題を出すぞ。月末に現金を見せるのと同時にそれまでにさっき言った本の中から1冊を読め。買うのはアマゾンでも書店でもいい。
内容を聞くから答えられる程度には内容を覚えていてくれ。大まかかつざっとで構わんぞ」
「は、はい。わかりました。やってみます」
進に新たな課題が出された。
【次回予告】
進が課題に挑む中、ススムは「効率」に関して苦言を示す。
第16話 「効率を重視しすぎるな」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる