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6月

第15話 自ら環境を変えろ

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 ジリリリリ! ジリリリリ!

 目覚まし時計が進の部屋で鳴り響く。

「うー……眠い」

 慣れない朝に重たい目を開け進は起きる。その後、スマホを取り出しススムへと電話する。

「おはようございます、ススムさん」

「おはよう、小僧。まずは初日、起きれたようだな。その調子だ。あと昨日言い忘れたが給料からの3割天引きも続けろよ。

 まずは借金を完済することに全力を注げ。いいな?」

「は、はい。わかりました」

 とりあえず昼間の弁当を作っておこう。眠たい目をこすりながら進は台所へと向かった。



 それから一週間後……



「おはようございます、ススムさん。うー……眠」

「おはよう、小僧。今日で一週間経つが出来ているようだな、なかなかやるではないか。

 良いだろう、お前は真面目に課題に取り組んでいるようだからそろそろこの課題を課したワケを話してもいいだろう、今日のデイサービスで来た際に教えてやろう」

 その日の午後3時、進はススムと話ができる機会が出来た。彼はさっそく話題を切り出す。



「ススムさん。課題の理由を教えてください」

「フム、いいだろう。お前は課題をこなしているからな。いいか小僧、『環境が変われば活躍できるはず』と考えるものは多いが、それは真実だ。

 実際に環境が変わっただけで水を得た魚のようにイキイキと生きれるようになった知り合いをオレは何人も知っている。

 それに昔の話ではディズニーの創始者であるウォルト・ディズニーは

 新聞社に勤めていた際に「お前の絵には創造性が無い」と言われてクビになったこともあるそうだ。

 だが彼はアニメという新たな環境を手に入れた後、今どうなったかは……言うまでもないだろ?」

 ススムの話は続いた。それは今回の課題の核心に触れる事だった。



「だがよく聞け、環境は『自らの手で』変えるものだ。決して『口を開けて待っていれば自動的に、あるいは他の誰かが変えてくれる』ものではない。

 そんな夢想むそうにふけっているようでは一生、いや『十生』あっても変わらん。

 何かする時間が1時間欲しかったらお前は「俺だけ1日が25時間にならないかなぁ」と思ってただ待つだけか? 違うだろ?

「1時間早起きする」というオレの課題はそういう意味だ。自ら環境を変えるための練習だ。分かったか?」

「……そういう事だったんですね」

 進はススムの言葉を素直に受け取った。



「小僧、お前は素直だな。30にもなると自分の人生観が出来て、それが何かを新しく学ぶ際に邪魔になることが多々あるがお前にはそれが無い。

 オレの教えを素直に聞いて吸収してくれるから教えがいがある。お前には人から教えをう才能がある。それだけは他人に誇ってもいい立派な才能だぞ」

「そ、そうなんですか? 今一つ実感わかないんですけど……ところで早起きには別の意味もありますよね? ただ習慣を変えるのなら他の事でもいいですし……」

「ほぉ。ずいぶんとまぁ鋭い事を突くようになったじゃないか小僧。良い感じだぞ」

 ススムは意外な顔をしつつ喜んでいた。



「小僧、お前は今の段階でも貯金して本を買う財産と、本を読む時間を作れたわけだ。

 あとはとにかく本を読め。前にも言ったが本を読めば読まないやつなんか一方的に蹴散らせる」

「そ、そうですか。でも本を読めって言われてもどんな本を読めば良いのか分からないんです」

「やれやれ、そんなことまで聞かねば出来ないのか……まぁいい。小僧に本を読む習慣が無ければ仕方あるまい。

 とりあえず「バビロンの大富豪」「金持ち父さん貧乏父さん」「チーズはどこへ消えた?」「ユダヤ人大富豪の教え」この4冊は押さえとけ。

 中にはマンガ化もされてる物もあるそうだからそれでもいい。もちろんオリジナルの書籍を読むのが一番だがな。

 どれも本の中では群を抜いて読みやすいから本を読み慣れてない素人でも問題ないぞ」

 老人は若者にそう説いた。



「ちょうどいい。小僧、また課題を出すぞ。月末に現金を見せるのと同時にそれまでにさっき言った本の中から1冊を読め。買うのはアマゾンでも書店でもいい。

 内容を聞くから答えられる程度には内容を覚えていてくれ。大まかかつざっとで構わんぞ」

「は、はい。わかりました。やってみます」

 進に新たな課題が出された。



【次回予告】

進が課題に挑む中、ススムは「効率」に関して苦言を示す。

第16話 「効率を重視しすぎるな」
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