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4月
第7話 感情の奴隷になるな
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「まず自分に支払え」という課題で「来月の給料日前日に現金2万円を持ってくる」ように指示された進。約束していた4月末日の給料日、その前日を迎えた。
「小僧、どうだ? 約束のカネは出来たか?」
「1割天引きしたら家計が持たないんじゃないかって思ってましたけど、上手くいくものですね」
「その様子だと、できたようだな」
「ええ。これが証拠です」
進はススムに封筒に入っていた1万円札を2枚見せた。それを見てススムは満足げにうなづいた。
「前にも言ったが『ラットレースのネズミ』という言葉がある。
「カネが無い事への恐怖からイヤイヤ働き、給料日になってカネがある事で欲望が増幅されそれのおもむくままにカネを使う」
こんな奴の事を「金持ち父さん」はそう呼んでいた。
金持ち父さんの言う通り、カネを扱う際に感情を出すのは害でしかない。機械のように感情を入れずに淡々と扱うべきだ。
カネさえあれば上手くいくわけでは無い。カネと「上手く付き合う」事こそが重要なのだ。
カネがあっても「上手く付き合わなければ」給料が月20万だろうが、月2000万だろうが、関係ない事だ。
それを分からん奴があまりにも多すぎるから「5000兆円欲しい!」などというバカげた言葉が生まれるのだろう。嘆かわしい事だ」
ススムはハァッ。とため息をつきつつ「愚か者が多すぎる」と言わんばかりの残念と呆れを混ぜ合わせたような口調でそう語った。
「小僧、お前は見事感情に打ち勝ってみせた。その2万円が何よりの証拠だ。よくやった。お前は金持ちになるための大いなる一歩を踏み出したんだ。
誰が何と言おうと、オレだけはお前の事を誇りに思うぞ」
「ありがとうございます。でも疑問に思うのですが、ではなぜその「ラットレースのネズミ」になる人が多いのでしょうか?」
「なぜかって? それはカネに関しては頭を使わずに感情に支配されていた方が「楽」で「安全」で「間違い」
……あえて「間違い」と言おう。それを起こさなくて済むからだ」
「間違い……?」
言っていることを上手くのみ込めない進に答えるよう、ススムは語りだした。
「「普通の人間」というのは「カネに支配されている者」だ。もっとどぎつい言い方が許されるなら「カネの奴隷」だ。
学校ではカネに関する授業はしていないから、普通の人間はカネに無知、すなわち「カネに支配される」者になる。
そんな奴と会話のツボを合わせたほうが孤立しなくて済むし仲間外れにされなくて済むからだ。「普通の人間」というのは孤独には耐えられん。
例えば飲み会で「いやー俺もマイホーム35年ローンの奴隷だよー」とかほざく奴に
「持ち家を買うのは負債で借金で借金を買ってるようなものですよ」と親切心で言っても場がしらけるだけで良い事なんてない」
ススムは一息ついて話を続ける。
「他にもカネというのは一種の「感情増幅装置」なんだ。カネを持てば欲望が産まれる。それはカネの量が多くなればなるほど増していく。
例え1億あろうが10億あろうがそれに見合った欲望が産まれる。それはいつの世も変わらない不変の法則だ。
しかもだ、カネを持てば持つほど「失う恐怖」も同時に産まれて頭を支配する。これもカネがあればあるほど大きくなる。
老人が死んだ際に不審な点が無いか警察が家を捜索したら1億の札束や預金通帳が出てきた。
なんていう話があるのはおそらくカネを使う事の恐怖におびえて使えないまま逝ったのだろうな。
無知な人間はカネが持つ魔力とでも言っていいか? それに対し何の策も立てられずにただ「なすがまま」の状態なんだ。
お前もカネが持つ欲望に突き動かされたことは1度や2度ではあるまい?」
「そ、そうですね。確かにそういったことはありますね」
ススムは進の一言に「うむ」と言いたげにうなづく
「だが残念なことに、どの国もその「カネの奴隷」が多数派を占めている。
日本だけじゃない、例えばアメリカだってそうだしどこの国も大抵そうだろう。そういう連中からすれば『手かせも足かせもはめてないやつはキモい』となる。
『蝶もハエの集団からは不気味でキモい』と思われているようにな。
そして奴隷共は「重りの重さや鎖の光具合」を自慢しあっているどころか、奴隷でいることに一種の安心感や誇りすら抱いているものさ。全くもって嘆かわしいことにな」
ススムは再びハァッ。とため息をつく。
「では感情に振り回されないためにはどうしたらいいんでしょうか?」
「答えはいくつもあるが簡単にできる事として1つ言えるのは、お前がカネを使う際に『今の自分は感情に流されてはいないか?』と自問自答することだ。
これだけでもだいぶマシになるぞ。ところで小僧。お前、借金はあるか?」
「しゃ、借金ですか?」
ススムは進に対し不意に問う。これが新たな課題のきっかけだった。
【次回予告】
ススムは進に不意に借金について語りだした。進の言う事を聞いて彼が出した新たな課題とは?
第8話 「リボ払いは地獄の悪魔が作ったもの」
「小僧、どうだ? 約束のカネは出来たか?」
「1割天引きしたら家計が持たないんじゃないかって思ってましたけど、上手くいくものですね」
「その様子だと、できたようだな」
「ええ。これが証拠です」
進はススムに封筒に入っていた1万円札を2枚見せた。それを見てススムは満足げにうなづいた。
「前にも言ったが『ラットレースのネズミ』という言葉がある。
「カネが無い事への恐怖からイヤイヤ働き、給料日になってカネがある事で欲望が増幅されそれのおもむくままにカネを使う」
こんな奴の事を「金持ち父さん」はそう呼んでいた。
金持ち父さんの言う通り、カネを扱う際に感情を出すのは害でしかない。機械のように感情を入れずに淡々と扱うべきだ。
カネさえあれば上手くいくわけでは無い。カネと「上手く付き合う」事こそが重要なのだ。
カネがあっても「上手く付き合わなければ」給料が月20万だろうが、月2000万だろうが、関係ない事だ。
それを分からん奴があまりにも多すぎるから「5000兆円欲しい!」などというバカげた言葉が生まれるのだろう。嘆かわしい事だ」
ススムはハァッ。とため息をつきつつ「愚か者が多すぎる」と言わんばかりの残念と呆れを混ぜ合わせたような口調でそう語った。
「小僧、お前は見事感情に打ち勝ってみせた。その2万円が何よりの証拠だ。よくやった。お前は金持ちになるための大いなる一歩を踏み出したんだ。
誰が何と言おうと、オレだけはお前の事を誇りに思うぞ」
「ありがとうございます。でも疑問に思うのですが、ではなぜその「ラットレースのネズミ」になる人が多いのでしょうか?」
「なぜかって? それはカネに関しては頭を使わずに感情に支配されていた方が「楽」で「安全」で「間違い」
……あえて「間違い」と言おう。それを起こさなくて済むからだ」
「間違い……?」
言っていることを上手くのみ込めない進に答えるよう、ススムは語りだした。
「「普通の人間」というのは「カネに支配されている者」だ。もっとどぎつい言い方が許されるなら「カネの奴隷」だ。
学校ではカネに関する授業はしていないから、普通の人間はカネに無知、すなわち「カネに支配される」者になる。
そんな奴と会話のツボを合わせたほうが孤立しなくて済むし仲間外れにされなくて済むからだ。「普通の人間」というのは孤独には耐えられん。
例えば飲み会で「いやー俺もマイホーム35年ローンの奴隷だよー」とかほざく奴に
「持ち家を買うのは負債で借金で借金を買ってるようなものですよ」と親切心で言っても場がしらけるだけで良い事なんてない」
ススムは一息ついて話を続ける。
「他にもカネというのは一種の「感情増幅装置」なんだ。カネを持てば欲望が産まれる。それはカネの量が多くなればなるほど増していく。
例え1億あろうが10億あろうがそれに見合った欲望が産まれる。それはいつの世も変わらない不変の法則だ。
しかもだ、カネを持てば持つほど「失う恐怖」も同時に産まれて頭を支配する。これもカネがあればあるほど大きくなる。
老人が死んだ際に不審な点が無いか警察が家を捜索したら1億の札束や預金通帳が出てきた。
なんていう話があるのはおそらくカネを使う事の恐怖におびえて使えないまま逝ったのだろうな。
無知な人間はカネが持つ魔力とでも言っていいか? それに対し何の策も立てられずにただ「なすがまま」の状態なんだ。
お前もカネが持つ欲望に突き動かされたことは1度や2度ではあるまい?」
「そ、そうですね。確かにそういったことはありますね」
ススムは進の一言に「うむ」と言いたげにうなづく
「だが残念なことに、どの国もその「カネの奴隷」が多数派を占めている。
日本だけじゃない、例えばアメリカだってそうだしどこの国も大抵そうだろう。そういう連中からすれば『手かせも足かせもはめてないやつはキモい』となる。
『蝶もハエの集団からは不気味でキモい』と思われているようにな。
そして奴隷共は「重りの重さや鎖の光具合」を自慢しあっているどころか、奴隷でいることに一種の安心感や誇りすら抱いているものさ。全くもって嘆かわしいことにな」
ススムは再びハァッ。とため息をつく。
「では感情に振り回されないためにはどうしたらいいんでしょうか?」
「答えはいくつもあるが簡単にできる事として1つ言えるのは、お前がカネを使う際に『今の自分は感情に流されてはいないか?』と自問自答することだ。
これだけでもだいぶマシになるぞ。ところで小僧。お前、借金はあるか?」
「しゃ、借金ですか?」
ススムは進に対し不意に問う。これが新たな課題のきっかけだった。
【次回予告】
ススムは進に不意に借金について語りだした。進の言う事を聞いて彼が出した新たな課題とは?
第8話 「リボ払いは地獄の悪魔が作ったもの」
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