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第2部 恋人になってからのお話
第75話 クリスマスイルミネーション
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11月1日。ついさっきまでハロウィンハロウィンと騒いでたのに、11月が始まったとなるやクリスマスイルミネーションの点灯式が行われる日がやって来た。
まだ11月が始まったばかりなのにもうクリスマスか。と随分と気の早い話に感じられるがまぁ思い出作りにはなるので良しとしよう、と思ったのか地元のカップルたちが数多く参加していた。
そこには林太郎と凛香、霧亜と昴、そして霧亜にムリヤリ引きずられる形で連れて来られた明とマサルの姿もあった。
七菜家から最寄りの駅北口にある駅前広場、そこで式が行われていた。時刻は午後7時で辺りはすっかり暗くなっており、駅前広場でなければ暗くて周りが良く見えなかっただろう。
「はい、では時間になりましたので点灯式を始めさせたいと思いまーす。パチパチパチパチー」
都会の点灯式イベントと違ってサンタの格好をしたどこかあか抜けない市の女性職員らしき司会進行役や、会場の全体的な雰囲気にイモ臭さが漂うが式は進行していく。
そして、式の参加者が待ち望んだその瞬間が訪れる。
「それではいよいよ、イルミネーションの点灯になります。一緒にカウントしてくださいね。3.2.1……!!」
司会進行役のカウントダウンを行い、0のタイミングにぴったり合わせてイルミネーションが輝きだした。
「「「おおーっ!!」」」
近年の原油高による電気代の高騰で例年よりもだいぶ控えめらしいが、それでも十分夜景に映える物だ。点灯式参加者はこぞってスマホを手に写真を撮りだす。
「あー……何でこんなのに参加しなきゃいけねえんだか」
「明、良いだろたまには。こういうの嫌なの?」
「たまになら見てもいいけど」
明はあまり来たくなかったせいなのか、マサルとの会話も弾まない。一緒に写真を撮ろうと誘われるも渋々で、あまりいい顔で映ってない。
「スカートはいてる姿は女なのにまだまだ男だよな明は」
「マサル、これでもオレは女って事は分かってるつもりだぜ? 昔と比べれば、だけどよ」
マサルは2ヵ月近く前からスカートをはくようになった明に思春期を感じていて、友情がいつの間にか愛情へと変わっていたのだ。
ただ相手は身体の変化こそあったが恋愛感情を抱くには程遠いらしい。明の姉たちが「難聴系主人公かお前は」と怒りをぶつけたくなるのもうなづける。
同じ会場にいた霧亜はマナー足をしながらキッズケータイで昴と一緒に自撮りの真っ最中だった。その表情は両者とも柔らかい。
「いやぁ、それにしても告白した際に「映える場所にも連れてってやるから」って言ってから早速ここへ連れてってくれるとは。ボクの目に狂いはなかったね」
「あ、ああ。約束したからな。それと霧亜、お前撮る時にマナー足してるけど辛くないか?」
「ボクはこんな背丈だから普通に立ってると画面からはみ出ちゃうんだよねぇ。プロのカメラマンが撮るならその辺も大丈夫なんだけど自撮りじゃこうでもしないと入らないんだよ。
学校でもいつもやってる事だから慣れたものさ」
霧亜の背丈は現時点で既に180を超えていて、このまま成長が続いたら190も見えてくると言われる程背が高い。
誰かと一緒に写真を撮るのも一苦労で、特に他の人の写真にまともに映るにはマナー足は必須だ。
「マナー足で鍛えられてるからこんな背丈でも足腰は丈夫になったかな。じゃあ次はあそこで撮ろうか」
2人は恋人らしく、今日を思いっきり楽しむために仲睦まじく写真を撮っていた。
林太郎と凛香もスマホで自撮りを楽しんでいた。妹たちに送る写真、転校先のクラスメートに送る写真、それらを複数枚撮っているが面白かった。
「満足か?」
「うん大満足。お兄ちゃんと一緒に撮るのって凄く楽しいなぁ。中学の修学旅行でもここまで楽しいことは無かったなぁ。あー、満たされてるって感じするー」
カップルが多い会場でもひときわのろけておりお熱い2人だった。
「お、あの背は……霧亜だな」
林太郎と凛香の2人は人ごみの中でも目立つ背の霧亜を見つけ出し、声をかけることにした。
「よう、霧亜。それに昴」
「やぁ、兄くん。それに凛香姉さん。やっぱりここに来てたんだね」
「まぁね。こういうイベントがあったら当然行くでしょ。ところで昴君ってば、霧亜なんかと付き合ってて苦労しない? 背丈もそうだけど、性格も大分変ってるからねぇ」
「ちょっと姉さん。いきなり変人扱いするのは辞めてくれないか? ボクは真っ当な14歳の美少女なんだよ?」
「真っ当な14歳の美少女、ねぇ。マフィア物の乙女ゲーにハマってる中学生の言うセリフかしら?」
「う……」
姉に痛い所を突かれたのか、彼女は言葉が詰まる。
そりゃそうだ。日本では「1人1台」と言うべきまで浸透したスマホに比べれば、ゲーム機を持っているというだけでも少数派。
ましてや女性向け恋愛ゲームである乙女ゲーを日夜遊んでいる層はさらに数が少なくなる。乙女ゲーを遊んでいるというだけでもかなりの異端だ。
「ね、姉さん。あんまり追い込むのは辞めてくれないか?」
「ああ、そうね。ちょっと意地悪しちゃったかな」
「あ、そうだ。せっかくだから明達も呼ぼうぜ。6人揃って撮ろうよ」
「へぇ、良いアイディアだね兄くん。じゃさっそく……」
霧亜はキッズケータイで明に電話をかけて駅北口に来るよう言う。
「うんわかった、じゃあね。……すぐ来るって」
「明の奴だからもう既に家に帰った、とかじゃねえだろうな?」
「大丈夫。まだ会場にマサル君と一緒だってさ。自撮りしてるそうだよ」
「へぇ。明のやつも女っ気出てきたな。家に来た頃は弟同然だったのに……おっと、来た来た」
すぐ来る。と言ったが本当にすぐに明とマサルがやって来た。
「お待たせしました。お兄さんにお姉さん達」
「マサル君、そうやってかしこまらなくてもいいのよ。じゃ、撮りましょうか」
無事に6人揃って撮影会が始まった。
まだ11月が始まったばかりなのにもうクリスマスか。と随分と気の早い話に感じられるがまぁ思い出作りにはなるので良しとしよう、と思ったのか地元のカップルたちが数多く参加していた。
そこには林太郎と凛香、霧亜と昴、そして霧亜にムリヤリ引きずられる形で連れて来られた明とマサルの姿もあった。
七菜家から最寄りの駅北口にある駅前広場、そこで式が行われていた。時刻は午後7時で辺りはすっかり暗くなっており、駅前広場でなければ暗くて周りが良く見えなかっただろう。
「はい、では時間になりましたので点灯式を始めさせたいと思いまーす。パチパチパチパチー」
都会の点灯式イベントと違ってサンタの格好をしたどこかあか抜けない市の女性職員らしき司会進行役や、会場の全体的な雰囲気にイモ臭さが漂うが式は進行していく。
そして、式の参加者が待ち望んだその瞬間が訪れる。
「それではいよいよ、イルミネーションの点灯になります。一緒にカウントしてくださいね。3.2.1……!!」
司会進行役のカウントダウンを行い、0のタイミングにぴったり合わせてイルミネーションが輝きだした。
「「「おおーっ!!」」」
近年の原油高による電気代の高騰で例年よりもだいぶ控えめらしいが、それでも十分夜景に映える物だ。点灯式参加者はこぞってスマホを手に写真を撮りだす。
「あー……何でこんなのに参加しなきゃいけねえんだか」
「明、良いだろたまには。こういうの嫌なの?」
「たまになら見てもいいけど」
明はあまり来たくなかったせいなのか、マサルとの会話も弾まない。一緒に写真を撮ろうと誘われるも渋々で、あまりいい顔で映ってない。
「スカートはいてる姿は女なのにまだまだ男だよな明は」
「マサル、これでもオレは女って事は分かってるつもりだぜ? 昔と比べれば、だけどよ」
マサルは2ヵ月近く前からスカートをはくようになった明に思春期を感じていて、友情がいつの間にか愛情へと変わっていたのだ。
ただ相手は身体の変化こそあったが恋愛感情を抱くには程遠いらしい。明の姉たちが「難聴系主人公かお前は」と怒りをぶつけたくなるのもうなづける。
同じ会場にいた霧亜はマナー足をしながらキッズケータイで昴と一緒に自撮りの真っ最中だった。その表情は両者とも柔らかい。
「いやぁ、それにしても告白した際に「映える場所にも連れてってやるから」って言ってから早速ここへ連れてってくれるとは。ボクの目に狂いはなかったね」
「あ、ああ。約束したからな。それと霧亜、お前撮る時にマナー足してるけど辛くないか?」
「ボクはこんな背丈だから普通に立ってると画面からはみ出ちゃうんだよねぇ。プロのカメラマンが撮るならその辺も大丈夫なんだけど自撮りじゃこうでもしないと入らないんだよ。
学校でもいつもやってる事だから慣れたものさ」
霧亜の背丈は現時点で既に180を超えていて、このまま成長が続いたら190も見えてくると言われる程背が高い。
誰かと一緒に写真を撮るのも一苦労で、特に他の人の写真にまともに映るにはマナー足は必須だ。
「マナー足で鍛えられてるからこんな背丈でも足腰は丈夫になったかな。じゃあ次はあそこで撮ろうか」
2人は恋人らしく、今日を思いっきり楽しむために仲睦まじく写真を撮っていた。
林太郎と凛香もスマホで自撮りを楽しんでいた。妹たちに送る写真、転校先のクラスメートに送る写真、それらを複数枚撮っているが面白かった。
「満足か?」
「うん大満足。お兄ちゃんと一緒に撮るのって凄く楽しいなぁ。中学の修学旅行でもここまで楽しいことは無かったなぁ。あー、満たされてるって感じするー」
カップルが多い会場でもひときわのろけておりお熱い2人だった。
「お、あの背は……霧亜だな」
林太郎と凛香の2人は人ごみの中でも目立つ背の霧亜を見つけ出し、声をかけることにした。
「よう、霧亜。それに昴」
「やぁ、兄くん。それに凛香姉さん。やっぱりここに来てたんだね」
「まぁね。こういうイベントがあったら当然行くでしょ。ところで昴君ってば、霧亜なんかと付き合ってて苦労しない? 背丈もそうだけど、性格も大分変ってるからねぇ」
「ちょっと姉さん。いきなり変人扱いするのは辞めてくれないか? ボクは真っ当な14歳の美少女なんだよ?」
「真っ当な14歳の美少女、ねぇ。マフィア物の乙女ゲーにハマってる中学生の言うセリフかしら?」
「う……」
姉に痛い所を突かれたのか、彼女は言葉が詰まる。
そりゃそうだ。日本では「1人1台」と言うべきまで浸透したスマホに比べれば、ゲーム機を持っているというだけでも少数派。
ましてや女性向け恋愛ゲームである乙女ゲーを日夜遊んでいる層はさらに数が少なくなる。乙女ゲーを遊んでいるというだけでもかなりの異端だ。
「ね、姉さん。あんまり追い込むのは辞めてくれないか?」
「ああ、そうね。ちょっと意地悪しちゃったかな」
「あ、そうだ。せっかくだから明達も呼ぼうぜ。6人揃って撮ろうよ」
「へぇ、良いアイディアだね兄くん。じゃさっそく……」
霧亜はキッズケータイで明に電話をかけて駅北口に来るよう言う。
「うんわかった、じゃあね。……すぐ来るって」
「明の奴だからもう既に家に帰った、とかじゃねえだろうな?」
「大丈夫。まだ会場にマサル君と一緒だってさ。自撮りしてるそうだよ」
「へぇ。明のやつも女っ気出てきたな。家に来た頃は弟同然だったのに……おっと、来た来た」
すぐ来る。と言ったが本当にすぐに明とマサルがやって来た。
「お待たせしました。お兄さんにお姉さん達」
「マサル君、そうやってかしこまらなくてもいいのよ。じゃ、撮りましょうか」
無事に6人揃って撮影会が始まった。
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