ぱっちわーく家族 七菜家 ~クラス1の美少女が妹になりました~

あがつま ゆい

文字の大きさ
上 下
75 / 86
第2部 恋人になってからのお話

第75話 クリスマスイルミネーション

しおりを挟む
 11月1日。ついさっきまでハロウィンハロウィンと騒いでたのに、11月が始まったとなるやクリスマスイルミネーションの点灯式が行われる日がやって来た。
 まだ11月が始まったばかりなのにもうクリスマスか。と随分と気の早い話に感じられるがまぁ思い出作りにはなるので良しとしよう、と思ったのか地元のカップルたちが数多く参加していた。
 そこには林太郎りんたろう凛香りんか霧亜きりあすばる、そして霧亜にムリヤリ引きずられる形で連れて来られたあきらとマサルの姿もあった。

 七菜ななな家から最寄りの駅北口にある駅前広場、そこで式が行われていた。時刻は午後7時で辺りはすっかり暗くなっており、駅前広場でなければ暗くて周りが良く見えなかっただろう。

「はい、では時間になりましたので点灯式を始めさせたいと思いまーす。パチパチパチパチー」

 都会の点灯式イベントと違ってサンタの格好をしたどこかあか抜けない市の女性職員らしき司会進行役や、会場の全体的な雰囲気にイモ臭さが漂うが式は進行していく。
 そして、式の参加者が待ち望んだその瞬間が訪れる。



「それではいよいよ、イルミネーションの点灯になります。一緒にカウントしてくださいね。3.2.1……!!」

 司会進行役のカウントダウンを行い、0のタイミングにぴったり合わせてイルミネーションが輝きだした。

「「「おおーっ!!」」」

 近年の原油高による電気代の高騰こうとうで例年よりもだいぶ控えめらしいが、それでも十分夜景に映える物だ。点灯式参加者はこぞってスマホを手に写真を撮りだす。

「あー……何でこんなのに参加しなきゃいけねえんだか」
「明、良いだろたまには。こういうの嫌なの?」
「たまになら見てもいいけど」

 明はあまり来たくなかったせいなのか、マサルとの会話も弾まない。一緒に写真を撮ろうと誘われるも渋々で、あまりいい顔で映ってない。

「スカートはいてる姿は女なのにまだまだ男だよな明は」
「マサル、これでもオレは女って事は分かってるつもりだぜ? 昔と比べれば、だけどよ」

 マサルは2ヵ月近く前からスカートをはくようになった明に思春期を感じていて、友情がいつの間にか愛情へと変わっていたのだ。
 ただ相手は身体の変化こそあったが恋愛感情を抱くには程遠いらしい。明の姉たちが「難聴系主人公かお前は」と怒りをぶつけたくなるのもうなづける。



 同じ会場にいた霧亜はマナー足をしながらキッズケータイですばると一緒に自撮りの真っ最中だった。その表情は両者とも柔らかい。

「いやぁ、それにしても告白した際に「映える場所にも連れてってやるから」って言ってから早速ここへ連れてってくれるとは。ボクの目に狂いはなかったね」
「あ、ああ。約束したからな。それと霧亜、お前撮る時にマナー足してるけど辛くないか?」
「ボクはこんな背丈だから普通に立ってると画面からはみ出ちゃうんだよねぇ。プロのカメラマンが撮るならその辺も大丈夫なんだけど自撮りじゃこうでもしないと入らないんだよ。
 学校でもいつもやってる事だから慣れたものさ」

 霧亜の背丈は現時点で既に180を超えていて、このまま成長が続いたら190も見えてくると言われる程背が高い。
 誰かと一緒に写真を撮るのも一苦労で、特に他の人の写真にまともに映るにはマナー足は必須だ。

「マナー足で鍛えられてるからこんな背丈でも足腰は丈夫になったかな。じゃあ次はあそこで撮ろうか」

 2人は恋人らしく、今日を思いっきり楽しむために仲むつまじく写真を撮っていた。



 林太郎と凛香もスマホで自撮りを楽しんでいた。妹たちに送る写真、転校先のクラスメートに送る写真、それらを複数枚撮っているが面白かった。

「満足か?」
「うん大満足。お兄ちゃんと一緒に撮るのって凄く楽しいなぁ。中学の修学旅行でもここまで楽しいことは無かったなぁ。あー、満たされてるって感じするー」

 カップルが多い会場でもひときわのろけておりお熱い2人だった。

「お、あの背は……霧亜だな」

 林太郎と凛香の2人は人ごみの中でも目立つ背の霧亜を見つけ出し、声をかけることにした。

「よう、霧亜。それにすばる
「やぁ、兄くん。それに凛香姉さん。やっぱりここに来てたんだね」
「まぁね。こういうイベントがあったら当然行くでしょ。ところですばる君ってば、霧亜なんかと付き合ってて苦労しない? 背丈もそうだけど、性格も大分変ってるからねぇ」
「ちょっと姉さん。いきなり変人扱いするのは辞めてくれないか? ボクは真っ当な14歳の美少女なんだよ?」
「真っ当な14歳の美少女、ねぇ。マフィア物の乙女ゲーにハマってる中学生の言うセリフかしら?」
「う……」

 姉に痛い所を突かれたのか、彼女は言葉が詰まる。
 そりゃそうだ。日本では「1人1台」と言うべきまで浸透したスマホに比べれば、ゲーム機を持っているというだけでも少数派。
 ましてや女性向け恋愛ゲームである乙女ゲーを日夜遊んでいる層はさらに数が少なくなる。乙女ゲーを遊んでいるというだけでもかなりの異端だ。

「ね、姉さん。あんまり追い込むのは辞めてくれないか?」
「ああ、そうね。ちょっと意地悪しちゃったかな」
「あ、そうだ。せっかくだから明達も呼ぼうぜ。6人揃って撮ろうよ」
「へぇ、良いアイディアだね兄くん。じゃさっそく……」

 霧亜はキッズケータイで明に電話をかけて駅北口に来るよう言う。



「うんわかった、じゃあね。……すぐ来るって」
「明の奴だからもう既に家に帰った、とかじゃねえだろうな?」
「大丈夫。まだ会場にマサル君と一緒だってさ。自撮りしてるそうだよ」
「へぇ。明のやつも女っ気出てきたな。家に来た頃は弟同然だったのに……おっと、来た来た」

 すぐ来る。と言ったが本当にすぐに明とマサルがやって来た。

「お待たせしました。お兄さんにお姉さん達」
「マサル君、そうやってかしこまらなくてもいいのよ。じゃ、撮りましょうか」

 無事に6人揃って撮影会が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...