50 / 86
第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話
第50話 2学期の始まり
しおりを挟む
9月1日……林太郎と凛香の通う高校。姫、霧亜、雪の3人が通う中学校。そして明の通う小学校で2学期の始業式が一斉に行われた。
校長の「やたらと長くて『とてつもなく』つまらない」スピーチを一方的に聞かされてウンザリしながらも、久しぶりの学友との再会を喜んでいた。
各自「夏休みの宿題」を提出することになったが……。
「ふーむ。あいつらは全員宿題を提出したようだな」
高校では林太郎と凛香が所属する1年1組の担任は、問題児共の林太郎一味が珍しく全員揃ってマジメに宿題を提出していたのが気になった。
おそらくは提出しないようでは留年の可能性がある、と脅したのが効いたのだろう。奴らとてさすがに留年はしたくないだろうから。そう思う事にした。
その日は授業は無しで、生徒たちは午前中で帰される。林太郎と凛香は自転車に乗って一緒に帰ることにした。
「そう言えば明の奴は宿題きちんと終わったのかな? 去年までは凛香たちに泣きついて手伝ってもらってた、ってのは聞いてるけど」
「今年は何とかなったらしいよ。今年から塾に通うようになったからそれで学力がついて解けない問題は無かったそうよ。
昔はいくら考えても解けない問題が算数では特にあったそうだけど今年はそういうのは聞いてないなぁ」
「へぇ、塾って効果あるんだな。塾って言ったら難関大学や高校に入るためにするものだと思ってたのになー」
「赤点ギリギリの成績には関係ないって? そんなこと無いわよ。塾には学校の授業についていけない生徒を手助けするのが目的のところもあるんだって。林太郎も通ったら?」
「俺にはボクシングがあるから浮気は出来ないな」
「ふーん、それホント? 勉強しない言い訳になってないかな?」
他愛もない会話が続く。
「ところでお兄ちゃん、明の事結構気にしてるよね? 仲良いんだ」
「まぁな。妹って言うけど弟みたいな奴だから会話がしやすいんだよなぁ。今でも時々キャッチボールに付き合ってるよ」
「そう、よかった。明って結構変わってる部分があるから受け入れてくれるか不安だったんだ。化粧やオシャレに興味が無くて、日曜日は戦隊ヒーローや仮面ライダーを見ている子だから。
学校のある日は中々起きて来ないのに、日曜日だけはやたらと目覚めが良いんだよね」
「凛香は12歳の頃から化粧に興味があったのか?」
「うん。今のお母さんの化粧道具をいじってた」
「へぇ。早熟だなぁ」
女の子なら1度はやるらしい、母親の化粧道具を勝手に使うイタズラの話をして話を盛り上げていた。
「ところで『お兄ちゃん』呼びは学校でもやるのか? バレたら取り巻きの連中に余計な事言われてイジられるぜ?」
「別に周りだなんてどうでもいいじゃない」
「うーん、恋愛やると盲目になるってホントだったんだな……少しは周りを気にした方が良いぜ?」
「もう、お兄ちゃんったら私と周りの人とどっちが大事なの?」
「そりゃお前だけどさ……なんていうか、俺ってそういうキャラじゃないからさぁ」
「キャラ付けとかどうでもいいじゃない。お兄ちゃんは私と一緒にいたいんでしょ? 私もお兄ちゃんと一緒にいたいからそれでいいでしょ?」
「うーん……」
告白を受け入れて以来凛香は林太郎に対してデレデレに懐くようになった。
今までの凛香のイメージからしたら絶対あり得ない位、それこそマンガやアニメで言う「キャラ崩壊」みたいなことになっていた。
誰かにこんなにも懐くのは凛香のキャラじゃない。もっと優等生っぽくてこんなにも誰かにべったりとするのは今まで積み上げてきたイメージとは明らかに違うのだが……。
「「ただいま」」
林太郎と凛香は一緒に自宅に帰って来た。それも腕を組みながらというおまけ付きで。
「お帰りなさい」
出迎えたのはよりによって雪。同じ男を取り合った凛香にとっては苦手な相手だ。
「や、やぁ雪……その、今帰ったよ」
「凛香姉さん。別に私は怒ったり不機嫌にはなってませんよ? 私は兄さんの悪い部分に真剣に向き合う勇気が無かったし、それに兄さんが幸せならそれでいいですよ?
ただ、兄さんを泣かす真似だけは止めてくださいよ。それさえ守っていただければ特に何しようが構いませんよ」
そう言って自分の部屋へと引っ込んでいったが、その口調からは恨みや妬みなどのネガティブな感情は無いように聞こえる。深層ではどう思っているかは分からないが。
「凛香、雪と上手く行ってないのか? まぁ後釜だからある程度はしゃあないとは思うけど」
「まぁ時間が経てばまた元に戻ると思うよ。一応は何年も姉妹やってるからその辺は大丈夫だと思う」
「そ、そうか。ところで組んでる腕、ほどきたいんだけどいいか?」
「やーだー! お兄ちゃんと離れたくなーいー!」
「お前絶対そういうキャラじゃないぞ。ガチでキャラがぶっ壊れてるぞ?」
「なーに言ってるのよ。私はこういうキャラでしょー?」
「……」
普段の凛香を知っているクラスメートが今の彼女を見たら、多分アゴが外れる位にあんぐりと口を開けるだろう。それ位キャラが壊れていた。
本人はキャラ崩壊にこれっぽちも気づいていないらしいが、今まで何重にもフタをしていた何かが出てきたのだろうか。
校長の「やたらと長くて『とてつもなく』つまらない」スピーチを一方的に聞かされてウンザリしながらも、久しぶりの学友との再会を喜んでいた。
各自「夏休みの宿題」を提出することになったが……。
「ふーむ。あいつらは全員宿題を提出したようだな」
高校では林太郎と凛香が所属する1年1組の担任は、問題児共の林太郎一味が珍しく全員揃ってマジメに宿題を提出していたのが気になった。
おそらくは提出しないようでは留年の可能性がある、と脅したのが効いたのだろう。奴らとてさすがに留年はしたくないだろうから。そう思う事にした。
その日は授業は無しで、生徒たちは午前中で帰される。林太郎と凛香は自転車に乗って一緒に帰ることにした。
「そう言えば明の奴は宿題きちんと終わったのかな? 去年までは凛香たちに泣きついて手伝ってもらってた、ってのは聞いてるけど」
「今年は何とかなったらしいよ。今年から塾に通うようになったからそれで学力がついて解けない問題は無かったそうよ。
昔はいくら考えても解けない問題が算数では特にあったそうだけど今年はそういうのは聞いてないなぁ」
「へぇ、塾って効果あるんだな。塾って言ったら難関大学や高校に入るためにするものだと思ってたのになー」
「赤点ギリギリの成績には関係ないって? そんなこと無いわよ。塾には学校の授業についていけない生徒を手助けするのが目的のところもあるんだって。林太郎も通ったら?」
「俺にはボクシングがあるから浮気は出来ないな」
「ふーん、それホント? 勉強しない言い訳になってないかな?」
他愛もない会話が続く。
「ところでお兄ちゃん、明の事結構気にしてるよね? 仲良いんだ」
「まぁな。妹って言うけど弟みたいな奴だから会話がしやすいんだよなぁ。今でも時々キャッチボールに付き合ってるよ」
「そう、よかった。明って結構変わってる部分があるから受け入れてくれるか不安だったんだ。化粧やオシャレに興味が無くて、日曜日は戦隊ヒーローや仮面ライダーを見ている子だから。
学校のある日は中々起きて来ないのに、日曜日だけはやたらと目覚めが良いんだよね」
「凛香は12歳の頃から化粧に興味があったのか?」
「うん。今のお母さんの化粧道具をいじってた」
「へぇ。早熟だなぁ」
女の子なら1度はやるらしい、母親の化粧道具を勝手に使うイタズラの話をして話を盛り上げていた。
「ところで『お兄ちゃん』呼びは学校でもやるのか? バレたら取り巻きの連中に余計な事言われてイジられるぜ?」
「別に周りだなんてどうでもいいじゃない」
「うーん、恋愛やると盲目になるってホントだったんだな……少しは周りを気にした方が良いぜ?」
「もう、お兄ちゃんったら私と周りの人とどっちが大事なの?」
「そりゃお前だけどさ……なんていうか、俺ってそういうキャラじゃないからさぁ」
「キャラ付けとかどうでもいいじゃない。お兄ちゃんは私と一緒にいたいんでしょ? 私もお兄ちゃんと一緒にいたいからそれでいいでしょ?」
「うーん……」
告白を受け入れて以来凛香は林太郎に対してデレデレに懐くようになった。
今までの凛香のイメージからしたら絶対あり得ない位、それこそマンガやアニメで言う「キャラ崩壊」みたいなことになっていた。
誰かにこんなにも懐くのは凛香のキャラじゃない。もっと優等生っぽくてこんなにも誰かにべったりとするのは今まで積み上げてきたイメージとは明らかに違うのだが……。
「「ただいま」」
林太郎と凛香は一緒に自宅に帰って来た。それも腕を組みながらというおまけ付きで。
「お帰りなさい」
出迎えたのはよりによって雪。同じ男を取り合った凛香にとっては苦手な相手だ。
「や、やぁ雪……その、今帰ったよ」
「凛香姉さん。別に私は怒ったり不機嫌にはなってませんよ? 私は兄さんの悪い部分に真剣に向き合う勇気が無かったし、それに兄さんが幸せならそれでいいですよ?
ただ、兄さんを泣かす真似だけは止めてくださいよ。それさえ守っていただければ特に何しようが構いませんよ」
そう言って自分の部屋へと引っ込んでいったが、その口調からは恨みや妬みなどのネガティブな感情は無いように聞こえる。深層ではどう思っているかは分からないが。
「凛香、雪と上手く行ってないのか? まぁ後釜だからある程度はしゃあないとは思うけど」
「まぁ時間が経てばまた元に戻ると思うよ。一応は何年も姉妹やってるからその辺は大丈夫だと思う」
「そ、そうか。ところで組んでる腕、ほどきたいんだけどいいか?」
「やーだー! お兄ちゃんと離れたくなーいー!」
「お前絶対そういうキャラじゃないぞ。ガチでキャラがぶっ壊れてるぞ?」
「なーに言ってるのよ。私はこういうキャラでしょー?」
「……」
普段の凛香を知っているクラスメートが今の彼女を見たら、多分アゴが外れる位にあんぐりと口を開けるだろう。それ位キャラが壊れていた。
本人はキャラ崩壊にこれっぽちも気づいていないらしいが、今まで何重にもフタをしていた何かが出てきたのだろうか。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
一人用声劇台本
ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。
男性向け女性用シチュエーションです。
私自身声の仕事をしており、
自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。
ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる