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第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話
第49話 クラスメートから兄妹を経由して、恋人となった
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「おはよう。お兄ちゃん」
凛香と林太郎が恋人になった翌日、彼女に起こされた林太郎は枕のそばにあったスマホを見ると「AM6:30」と、いつもより30分も早い目覚めだ。
「へっへー。お兄ちゃんの事起こしてみたかったんだー」
「ったく……せめて7時になっても起きて来ないときにしろよなぁ」
「朝ごはん出来てるから一緒に食べようよ。良いでしょ? お兄ちゃん」
今まで食ってかかってきて、呼び捨てで読んでいた凛香が今では2人きりの時だけは「お兄ちゃん」と呼ぶのは随分と変わったものだ。
みんなまだ寝ているのかリビングに入ると誰もおらず、代わりにテーブルには既に目玉焼きとハムが盛られた皿と米が盛られた茶碗が2人分おかれてあった。
「凛香が作ったのか?」
「うん。目玉焼きは結構うまくできてると思う。うまく半熟になってればいいんだけど」
目玉焼きには自信あり。という彼女だったが、はたして……。
「「いただきます」」
林太郎は「いただきます」をして早速玉子の黄身を割ってみると、黄色い液体がトロっと出て来る。見事な半熟だ。
「お、すげぇ。ちゃんと半熟になってる」
「良かった。目玉焼きはたまに作ってるんだけど半熟はまだ安定しなくて、たまに固焼きになっちゃうときもあるのよね。今日は当たりを引いたみたいね。
お兄ちゃんは目玉焼きは半熟としっかり固めたのとどっちが良いんだっけ?」
「んー、特にこだわりはないなぁ。出されればどっちでも食うよ。まぁどっちかをどうしても選べ、って言われたら半熟かな」
「そっかー、じゃあ半熟で良かったんだ」
凛香はニコリを笑った。まだ「兄妹」だった頃はトゲのある言葉を投げつけるのがメインだったのに「恋人」となった今ではデレデレと笑顔を見せる姿になっている。随分と変わったものだ。
目玉焼きやハムにソースをかけて食べ始める。目玉焼きは半熟、ハムはしっかりと火が通っており申し分ない出来。だがいつも以上に美味く感じていた。
「しっかしなんか米がやたらと美味いんだよなぁ」
「好きな人と一緒に食べる食事は美味しくなるって聞いたことがあるから、それなんじゃない? 愛は最高の調味料って言うし」
「へぇ。初耳だなそれは」
「あー、幸せ。一緒にご飯食べてるだけなのにすっごい幸せ。なんかすごく満たされている感じがする」
凛香はうっとりとした表情でつぶやくようにそう言う。確か本当に好きな人とだったら「ただそばにいるだけでも楽しい」と聞いたことがあるが、今の彼女はそういう状態なのだろう。
食事を終えてキッチンの流しで皿などを洗いながらも、おしゃべりは続く。
「ハァーア、何だか毎日が天国みたい。今朝起きた時も『また天国みたいに素晴らしい1日が始まるのか』って思えてイキイキしてくるの」
「俺がいるだけで毎日が天国だなんて、大げさだなぁ」
「お兄ちゃん。私、本気だからね。本当に毎日が楽しくて仕方ないのよ。ところで夏休みの宿題は終わった? そろそろ終わらないと危ないわよ」
「子ども扱いするなよなぁ。小学生の頃から宿題は全部終わらせてきたよ。今年の分も終わったよ」
「へぇ~。不良なのにそこはしっかりしてるんだね」
「意外か? 不良だからこそ勉強は最低ラインを超えないと退学されかねないからな。最終学歴が中卒だとさすがにまずいだろ? 俺もそうだけどせめて高校は出てくれって親から言われてるやつも多いだろうし」
皿やフライパンを洗い、元の位置まで戻したり水切りラックに置いたりしてやるべきことは終わった。さて今日は何をしよう? 凛香にとっては林太郎のそばにいるだけでも最高の1日になるというが。
「今日もボクシングジムでトレーニングするんだよね? 私も観戦するからいいとこ見せてよね」
「あ、ああ。今日は午後1時から始まるから」
「うん分かった。頑張ってね、お兄ちゃん」
彼女は兄兼恋人に対し笑顔を振りまいていた。
その日の晩、彼女は夢を見ていた。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
夢の中で凛香の本当のお父さんが憤怒していた。だがこの時の凛香は、父親に対し全く恐怖心を持ってなかった。
彼が実の娘を殴ろうと拳を振るうと、彼女はそれをあっさりとかわした。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ! 凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
次いで蹴りを繰り出してくるがこれもあっけなく避けた。今夜の彼女は彼を同じセリフを繰り返すだけの壊れかけのロボットにしか見えなかった。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ! 凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
ああうるさい! 彼女はそう思って父親の股間を思いっきり蹴り上げた。と同時に彼の身体はガラガラと崩れ、チリとなって消えた。
(あ、あれ? もしかして……勝っちゃった?)
あれだけ怖かったものが、実はあまり大したものでは無かった。実にあっけなく崩れたお父さんに拍子抜けすらしていたほどだ。
ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!
「ハッ!」
勝利の余韻に浸っていたところ急にけたたましい音が響き、意識が現実に引きずり出された。
気づいたら凛香はベッドの上で寝ていた。枕もとでうるさく鳴り響くスマホのアラームを消して起き上がる。窓からは朝日が差し込み気持ちいい目覚めの朝だ。
(また今日も天国の1日が始まるのか)
ただでさえ目覚めの良い朝なのにまた幸せな日々が待っているのか。そう思うと周りのみんなに何か申し訳ない気持ちさえわいてくる。
とりあえず着替えて朝ごはんにしよう。そう思って彼女は着替えを始めた。
凛香と林太郎が恋人になった翌日、彼女に起こされた林太郎は枕のそばにあったスマホを見ると「AM6:30」と、いつもより30分も早い目覚めだ。
「へっへー。お兄ちゃんの事起こしてみたかったんだー」
「ったく……せめて7時になっても起きて来ないときにしろよなぁ」
「朝ごはん出来てるから一緒に食べようよ。良いでしょ? お兄ちゃん」
今まで食ってかかってきて、呼び捨てで読んでいた凛香が今では2人きりの時だけは「お兄ちゃん」と呼ぶのは随分と変わったものだ。
みんなまだ寝ているのかリビングに入ると誰もおらず、代わりにテーブルには既に目玉焼きとハムが盛られた皿と米が盛られた茶碗が2人分おかれてあった。
「凛香が作ったのか?」
「うん。目玉焼きは結構うまくできてると思う。うまく半熟になってればいいんだけど」
目玉焼きには自信あり。という彼女だったが、はたして……。
「「いただきます」」
林太郎は「いただきます」をして早速玉子の黄身を割ってみると、黄色い液体がトロっと出て来る。見事な半熟だ。
「お、すげぇ。ちゃんと半熟になってる」
「良かった。目玉焼きはたまに作ってるんだけど半熟はまだ安定しなくて、たまに固焼きになっちゃうときもあるのよね。今日は当たりを引いたみたいね。
お兄ちゃんは目玉焼きは半熟としっかり固めたのとどっちが良いんだっけ?」
「んー、特にこだわりはないなぁ。出されればどっちでも食うよ。まぁどっちかをどうしても選べ、って言われたら半熟かな」
「そっかー、じゃあ半熟で良かったんだ」
凛香はニコリを笑った。まだ「兄妹」だった頃はトゲのある言葉を投げつけるのがメインだったのに「恋人」となった今ではデレデレと笑顔を見せる姿になっている。随分と変わったものだ。
目玉焼きやハムにソースをかけて食べ始める。目玉焼きは半熟、ハムはしっかりと火が通っており申し分ない出来。だがいつも以上に美味く感じていた。
「しっかしなんか米がやたらと美味いんだよなぁ」
「好きな人と一緒に食べる食事は美味しくなるって聞いたことがあるから、それなんじゃない? 愛は最高の調味料って言うし」
「へぇ。初耳だなそれは」
「あー、幸せ。一緒にご飯食べてるだけなのにすっごい幸せ。なんかすごく満たされている感じがする」
凛香はうっとりとした表情でつぶやくようにそう言う。確か本当に好きな人とだったら「ただそばにいるだけでも楽しい」と聞いたことがあるが、今の彼女はそういう状態なのだろう。
食事を終えてキッチンの流しで皿などを洗いながらも、おしゃべりは続く。
「ハァーア、何だか毎日が天国みたい。今朝起きた時も『また天国みたいに素晴らしい1日が始まるのか』って思えてイキイキしてくるの」
「俺がいるだけで毎日が天国だなんて、大げさだなぁ」
「お兄ちゃん。私、本気だからね。本当に毎日が楽しくて仕方ないのよ。ところで夏休みの宿題は終わった? そろそろ終わらないと危ないわよ」
「子ども扱いするなよなぁ。小学生の頃から宿題は全部終わらせてきたよ。今年の分も終わったよ」
「へぇ~。不良なのにそこはしっかりしてるんだね」
「意外か? 不良だからこそ勉強は最低ラインを超えないと退学されかねないからな。最終学歴が中卒だとさすがにまずいだろ? 俺もそうだけどせめて高校は出てくれって親から言われてるやつも多いだろうし」
皿やフライパンを洗い、元の位置まで戻したり水切りラックに置いたりしてやるべきことは終わった。さて今日は何をしよう? 凛香にとっては林太郎のそばにいるだけでも最高の1日になるというが。
「今日もボクシングジムでトレーニングするんだよね? 私も観戦するからいいとこ見せてよね」
「あ、ああ。今日は午後1時から始まるから」
「うん分かった。頑張ってね、お兄ちゃん」
彼女は兄兼恋人に対し笑顔を振りまいていた。
その日の晩、彼女は夢を見ていた。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
夢の中で凛香の本当のお父さんが憤怒していた。だがこの時の凛香は、父親に対し全く恐怖心を持ってなかった。
彼が実の娘を殴ろうと拳を振るうと、彼女はそれをあっさりとかわした。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ! 凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
次いで蹴りを繰り出してくるがこれもあっけなく避けた。今夜の彼女は彼を同じセリフを繰り返すだけの壊れかけのロボットにしか見えなかった。
「凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ! 凛香! あんな奴と付き合うなんて許さんぞ!」
ああうるさい! 彼女はそう思って父親の股間を思いっきり蹴り上げた。と同時に彼の身体はガラガラと崩れ、チリとなって消えた。
(あ、あれ? もしかして……勝っちゃった?)
あれだけ怖かったものが、実はあまり大したものでは無かった。実にあっけなく崩れたお父さんに拍子抜けすらしていたほどだ。
ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!
「ハッ!」
勝利の余韻に浸っていたところ急にけたたましい音が響き、意識が現実に引きずり出された。
気づいたら凛香はベッドの上で寝ていた。枕もとでうるさく鳴り響くスマホのアラームを消して起き上がる。窓からは朝日が差し込み気持ちいい目覚めの朝だ。
(また今日も天国の1日が始まるのか)
ただでさえ目覚めの良い朝なのにまた幸せな日々が待っているのか。そう思うと周りのみんなに何か申し訳ない気持ちさえわいてくる。
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