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第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話
第48話 大嫌いだけど大好き
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「……よし。大丈夫だ」
林太郎は普段あまり見ない鏡を真正面から真剣に見て、身だしなみの最終チェックを行う。大丈夫だ、と自信を持って言えるところまでチェックして部屋を出ようとした、その時。
コンコン。
彼の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「私よ。今入って大丈夫?」
次いで凛香が部屋の主に声をかける。ほどなくしてガチャリとドアが開き、林太郎は彼女を部屋に招いた。
林太郎と雪が別れた日の午後9時……高校生としてはまだ寝るには少し早い時間帯で昼間のけたたましいセミの鳴き声も止み、三日月が夜空を照らしていた。
「よ、よお凛香。何の用だ?」
「これから少し一方的に話すから黙って聞いてて」
この段階ではお互いがお互いの事を好きなのは分からなかったが、話を始める。
「林太郎……私、アンタの事は気に入らないの。
学校じゃすぐケンカして暴れるし、ガラの悪い不良とつるんでるし、授業中は寝てばっかりだし、テストも赤点採らなきゃオッケーっていう志の低さも気に入らないのよ」
彼女はふうっ、と息継ぎをして本心を語る。
「……でも好き。そんな事が全部どうでも良くなるくらいに、私、林太郎の事が……好きなの」
「!!!!!」
最高の笑顔をしつつ、彼女はそう言った。アンタの事が好き。その言葉にそれまでの歴史をくつがえしかねない大発見をした考古学者のように林太郎の目は大きく見開いていた。
「それって『Like』じゃなくて『Love』って事か?」
「良い話ね。うん、そういう事よ」
「……」
凛香が本気で、俺の事を? 林太郎は勇気を出して思いを言葉に変える。
「入学式が終わって学校で初めて会った時、お前の噂を聞いたよ。噂通りの美少女だったし、俺には高嶺の花……いや違うな『住んでいる世界が違う人』って奴で、俺には一生縁が無いって思ってたよ。
だから俺は無意識のうちに考えないようにしていたんだと思う。でもそれは間違いだって、ようやく気付けたよ。
俺も凛香の事が………………好きだ」
林太郎も彼女に対して、自らの思いを告げた。
「何だ。林太郎も私の事が好きで……待って、泣きそう」
凛香は目頭を押さえて泣かないようにこらえているが、もちろん悲しいわけじゃない。
「……良かった。本当に、本当に、良かった。これからは……その、よろしくね『お兄ちゃん』」
「!? お、お兄ちゃん!?」
「2人っきりの時はそう言うから。良いでしょ? 本当に兄妹なんだし」
「あ、ああ……」
ヤベェ、メチャクチャ可愛い! とんでもなく可愛い! 林太郎は魂を持って行かれそうになる。
「私の事は雪みたいに捨てないよね? 本気なんだから」
「分かってるよ、雪の時とは話が違うからな。雪の時は恋人ができるなんて慣れてなかったから失敗しちまったけど、今度は大丈夫だから。今度は、間違ったりしないからな」
「信じてるからね、その……『お兄ちゃん』」
2人は愛を誓い合った。その瞬間、ギイイ……というきしむ音と共にドアがかすかに動いた。2人は開けてみると……。
「……兄さん。姉さん。告白、上手く行ったようですね」
「!? 雪!? 俺たちの事見てたのか!?」
「!! え!? 雪!?」
のぞき見していた雪は実に不満げだった。2人の門出を祝うムードはこれっぽちも無い。
「凛香姉さん、姉さんがまさか『泥棒猫』だとは思ってませんでしたよ。兄さんに向かって「2人きりの時は『お兄ちゃん』と呼ぶからね」と来ましたか。
あざといとかいう次元をブッチギリで超えてますよ。やっぱりお墓参りの時から兄さんの事を狙ってたんですね。で、私が別れたのをきっかけに後釜に入ったというわけですか……随分計算高い事をしますね。
兄さんとのお付き合いはこれ以上はどうしても無理だったから文句は言いませんけど」
「あー……ゴメン雪。でも好きになっちゃったから、もう自分でもどうしようもなくてね」
「惚れた好いたは自由ですけど、兄さんの事を不幸にしたら許しませんからね。絶対に幸せにしてあげてください、それだけは約束してください」
雪はジト目のまま兄と姉を祝福する一言すら言わずに去っていった。
「雪のやつ、あの調子だとかなり凛香の事怨んでるみたいだな」
「うん……なんか私が林太郎を奪ったみたいに思われているみたい……そんなわけじゃないんだけどさ。とにかく、明日からよろしくね」
「あ、ああ。よろしく」
今度の幸せは逃すわけにはいかないな。林太郎はそう決心した。雪の時は乗り気じゃなかったが今度は本気だ。本気で取りに行かねば。
林太郎は普段あまり見ない鏡を真正面から真剣に見て、身だしなみの最終チェックを行う。大丈夫だ、と自信を持って言えるところまでチェックして部屋を出ようとした、その時。
コンコン。
彼の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「私よ。今入って大丈夫?」
次いで凛香が部屋の主に声をかける。ほどなくしてガチャリとドアが開き、林太郎は彼女を部屋に招いた。
林太郎と雪が別れた日の午後9時……高校生としてはまだ寝るには少し早い時間帯で昼間のけたたましいセミの鳴き声も止み、三日月が夜空を照らしていた。
「よ、よお凛香。何の用だ?」
「これから少し一方的に話すから黙って聞いてて」
この段階ではお互いがお互いの事を好きなのは分からなかったが、話を始める。
「林太郎……私、アンタの事は気に入らないの。
学校じゃすぐケンカして暴れるし、ガラの悪い不良とつるんでるし、授業中は寝てばっかりだし、テストも赤点採らなきゃオッケーっていう志の低さも気に入らないのよ」
彼女はふうっ、と息継ぎをして本心を語る。
「……でも好き。そんな事が全部どうでも良くなるくらいに、私、林太郎の事が……好きなの」
「!!!!!」
最高の笑顔をしつつ、彼女はそう言った。アンタの事が好き。その言葉にそれまでの歴史をくつがえしかねない大発見をした考古学者のように林太郎の目は大きく見開いていた。
「それって『Like』じゃなくて『Love』って事か?」
「良い話ね。うん、そういう事よ」
「……」
凛香が本気で、俺の事を? 林太郎は勇気を出して思いを言葉に変える。
「入学式が終わって学校で初めて会った時、お前の噂を聞いたよ。噂通りの美少女だったし、俺には高嶺の花……いや違うな『住んでいる世界が違う人』って奴で、俺には一生縁が無いって思ってたよ。
だから俺は無意識のうちに考えないようにしていたんだと思う。でもそれは間違いだって、ようやく気付けたよ。
俺も凛香の事が………………好きだ」
林太郎も彼女に対して、自らの思いを告げた。
「何だ。林太郎も私の事が好きで……待って、泣きそう」
凛香は目頭を押さえて泣かないようにこらえているが、もちろん悲しいわけじゃない。
「……良かった。本当に、本当に、良かった。これからは……その、よろしくね『お兄ちゃん』」
「!? お、お兄ちゃん!?」
「2人っきりの時はそう言うから。良いでしょ? 本当に兄妹なんだし」
「あ、ああ……」
ヤベェ、メチャクチャ可愛い! とんでもなく可愛い! 林太郎は魂を持って行かれそうになる。
「私の事は雪みたいに捨てないよね? 本気なんだから」
「分かってるよ、雪の時とは話が違うからな。雪の時は恋人ができるなんて慣れてなかったから失敗しちまったけど、今度は大丈夫だから。今度は、間違ったりしないからな」
「信じてるからね、その……『お兄ちゃん』」
2人は愛を誓い合った。その瞬間、ギイイ……というきしむ音と共にドアがかすかに動いた。2人は開けてみると……。
「……兄さん。姉さん。告白、上手く行ったようですね」
「!? 雪!? 俺たちの事見てたのか!?」
「!! え!? 雪!?」
のぞき見していた雪は実に不満げだった。2人の門出を祝うムードはこれっぽちも無い。
「凛香姉さん、姉さんがまさか『泥棒猫』だとは思ってませんでしたよ。兄さんに向かって「2人きりの時は『お兄ちゃん』と呼ぶからね」と来ましたか。
あざといとかいう次元をブッチギリで超えてますよ。やっぱりお墓参りの時から兄さんの事を狙ってたんですね。で、私が別れたのをきっかけに後釜に入ったというわけですか……随分計算高い事をしますね。
兄さんとのお付き合いはこれ以上はどうしても無理だったから文句は言いませんけど」
「あー……ゴメン雪。でも好きになっちゃったから、もう自分でもどうしようもなくてね」
「惚れた好いたは自由ですけど、兄さんの事を不幸にしたら許しませんからね。絶対に幸せにしてあげてください、それだけは約束してください」
雪はジト目のまま兄と姉を祝福する一言すら言わずに去っていった。
「雪のやつ、あの調子だとかなり凛香の事怨んでるみたいだな」
「うん……なんか私が林太郎を奪ったみたいに思われているみたい……そんなわけじゃないんだけどさ。とにかく、明日からよろしくね」
「あ、ああ。よろしく」
今度の幸せは逃すわけにはいかないな。林太郎はそう決心した。雪の時は乗り気じゃなかったが今度は本気だ。本気で取りに行かねば。
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