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第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話
第39話 プロテインは売り切れる
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「?? どうした? 霧姉?」
「あ、ああ。ちょっと今月出費が多くて非常時のために貯めてたお金を銀行から引き出さないといけないから、ちょっと時間をくれないか?
通帳引っ張り出してくるから家で待っててくれ。すまないね」
そう言って彼女は自転車で家まで戻っていった。
「霧亜姉さん……確か今月の頭にお小遣いもらったばっかりなのに、もうお金がないってどういう事?」
「ゲームの買いすぎなんじゃねえの? 『今月は乙女ゲーの新作ラッシュで萌えの過剰摂取で死ぬ!! 助けて!!』とかオレには意味わかんねえこと言ってたし」
「……」
「……とりあえずオレ達も家に帰ろうぜ」
残された2人も外で待ち続けるのは暑すぎて危険なため、いったん自宅に帰ることにした。
── 1時間後 ──
「お待たせ」
「おせーぞ霧姉。昼飯前にさっさと済ませちまおうぜ」
霧亜が銀行からお金を下ろして来て家まで戻って来た。さぁこれでプロテインを確保できるぞ。と思ったのだが……。
「……? あれ?」
明が真っ先に『違和感』を感じた。さっきまであったプロテインが、無い。
「おかしいな……何で無くなってるんだ?」
「明、どうしたの?」
「雪姉、さっきまであったプロテインが無いんだ」
「何かあったのか? 店の人を呼ぶか?」
「あ、ああ。霧姉、頼んだわ」
明の姉が店員を呼び、買おうとしていたものがどこに行ったのか尋ねてみると……。
「ええ!? 売り切れ!?」
「はい。ついさっき、それこそ5分ほど前に別のお客様が最後の1個をお買い上げなさいましたので、もう当店には在庫が無いんです。申し訳ありません」
「再入荷日はいつごろになりますか?」
雪は入荷日を聞くが……。
「今の所再入荷のめどは立っていません。いつ入るかは今のところは未定としか申し上げることが出来ません。重ね重ねになりますが、本当に申し訳ありません」
無情にも『再入荷日は未定』というのが出てくる。
なんてこった。
「どうする? 姫姉さんに頼んで注文してもらうか?」
「そうするしかないね」
「こんな事って本当にあるんだなぁ。霧姉がカネ持ってたらなぁ」
「明、それは絶対に言っちゃダメでしょ! 姉さんだって買い逃したかったわけじゃないんだから!」
「雪姉、そりゃ分かってるけどさぁ……」
ほんの数分の差で買いそびれる。という『悪い意味』で奇跡的な出来事に遭遇した3人は家へと帰るしかなかった。
「「「ただいまぁ……」」」
「? どうした3人とも? 元気がないなぁ、何があったんだ?」
出迎えたのは彼女らの義理の父親である栄一郎、ちょうどコーヒーブレイクをとっていたところだった。
3人は今までの事情を彼に説明する。林太郎の誕生日プレゼントにプロテインを買おうとしたら売り切れていた、という話だ。
「プロテイン、ねぇ」
「大丈夫ですよお父さん。私たち姫姉さんに頼んで注文してもらいますから」
「待って、確かスーパーにあったと思うぞ」
「「「スーパー!?」」」
出てきたのは意外な答え。プロテインなんてアスリートやスポーツマンが飲むもので、普通のスーパーなんかで売っても客が見つけて買ってくれるのか? 大きな疑問だった。
「スーパーでは健康補助食品としてプロテインが売ってるんだ。お年寄りの健康を維持するためのプロテインを飲む習慣があるそうだからそのために売ってるんだよ。
俺も少し目にする程度だから、欲しいプロテインがあるかは分からないけどな」
「ありがとうございますお父さん。雪、明、行こうか」
「はい!」
「ああ!」
3人は細い糸のような希望に賭けることにした。
昼が近いのか1回目のピークを迎えるスーパーの中はざわざわと喧噪にあふれており、夕方ほどではないにせよだいぶ人の数が多かった。
昼の弁当や総菜を買う客でレジには列ができていたが、それを無視して七菜家の3人娘は目的地へと向かう。
「本当に売ってるのかなぁ?」
「お父さんを信じましょうよ、明」
「確か健康補助食品売り場に置いてある、と言ってたな」
3人は期待と不安を半分ずつ、いや実際には不安の方が大きかったが、そんな思いをしながらスーパーの「健康補助食品コーナー」を探していた。
「確かにプロテインやシェイカーは売ってるな。肝心の物はあるかなぁ?」
たどり着いた「健康補助食品コーナー」では確かにプロテインや、粉状のプロテインを水や牛乳に溶かすための容器である「シェイカー」は売られていた。
後は欲しかったものがあるかどうかになるが……。
「えっと、あ! あった! 『ZADASアドバンスド ホエイプロテイン プレミアム バナナ風味』これだよこれ!」
結構な値が張るにも関わらず、それは置かれてあった。明が言うには「一瞬後光が差して見えた」そうだ。
「へー、これか! 1キロ5500円か。税込みとはいえ結構値が張るな」
「せっかくの誕生日なんだからこれくらい奮発してもバチは当たらないだろ? いやーあってよかったぜ」
やっと会えた。という安堵と感動で、特に明は後に「プロテイン1つでここまで心を揺り動かされるとは思っても無かった」と語っていたという。
「よし。じゃあついでに昼のお惣菜を買って帰ろうか。父さんにはボクから言っておくよ」
「ああ、ありがとうな霧姉。ここの弁当はボリュームあって腹が膨れるんだよなぁ」
その後、3人は仲良く昼食を買って、家まで帰ることにした。
「あ、ああ。ちょっと今月出費が多くて非常時のために貯めてたお金を銀行から引き出さないといけないから、ちょっと時間をくれないか?
通帳引っ張り出してくるから家で待っててくれ。すまないね」
そう言って彼女は自転車で家まで戻っていった。
「霧亜姉さん……確か今月の頭にお小遣いもらったばっかりなのに、もうお金がないってどういう事?」
「ゲームの買いすぎなんじゃねえの? 『今月は乙女ゲーの新作ラッシュで萌えの過剰摂取で死ぬ!! 助けて!!』とかオレには意味わかんねえこと言ってたし」
「……」
「……とりあえずオレ達も家に帰ろうぜ」
残された2人も外で待ち続けるのは暑すぎて危険なため、いったん自宅に帰ることにした。
── 1時間後 ──
「お待たせ」
「おせーぞ霧姉。昼飯前にさっさと済ませちまおうぜ」
霧亜が銀行からお金を下ろして来て家まで戻って来た。さぁこれでプロテインを確保できるぞ。と思ったのだが……。
「……? あれ?」
明が真っ先に『違和感』を感じた。さっきまであったプロテインが、無い。
「おかしいな……何で無くなってるんだ?」
「明、どうしたの?」
「雪姉、さっきまであったプロテインが無いんだ」
「何かあったのか? 店の人を呼ぶか?」
「あ、ああ。霧姉、頼んだわ」
明の姉が店員を呼び、買おうとしていたものがどこに行ったのか尋ねてみると……。
「ええ!? 売り切れ!?」
「はい。ついさっき、それこそ5分ほど前に別のお客様が最後の1個をお買い上げなさいましたので、もう当店には在庫が無いんです。申し訳ありません」
「再入荷日はいつごろになりますか?」
雪は入荷日を聞くが……。
「今の所再入荷のめどは立っていません。いつ入るかは今のところは未定としか申し上げることが出来ません。重ね重ねになりますが、本当に申し訳ありません」
無情にも『再入荷日は未定』というのが出てくる。
なんてこった。
「どうする? 姫姉さんに頼んで注文してもらうか?」
「そうするしかないね」
「こんな事って本当にあるんだなぁ。霧姉がカネ持ってたらなぁ」
「明、それは絶対に言っちゃダメでしょ! 姉さんだって買い逃したかったわけじゃないんだから!」
「雪姉、そりゃ分かってるけどさぁ……」
ほんの数分の差で買いそびれる。という『悪い意味』で奇跡的な出来事に遭遇した3人は家へと帰るしかなかった。
「「「ただいまぁ……」」」
「? どうした3人とも? 元気がないなぁ、何があったんだ?」
出迎えたのは彼女らの義理の父親である栄一郎、ちょうどコーヒーブレイクをとっていたところだった。
3人は今までの事情を彼に説明する。林太郎の誕生日プレゼントにプロテインを買おうとしたら売り切れていた、という話だ。
「プロテイン、ねぇ」
「大丈夫ですよお父さん。私たち姫姉さんに頼んで注文してもらいますから」
「待って、確かスーパーにあったと思うぞ」
「「「スーパー!?」」」
出てきたのは意外な答え。プロテインなんてアスリートやスポーツマンが飲むもので、普通のスーパーなんかで売っても客が見つけて買ってくれるのか? 大きな疑問だった。
「スーパーでは健康補助食品としてプロテインが売ってるんだ。お年寄りの健康を維持するためのプロテインを飲む習慣があるそうだからそのために売ってるんだよ。
俺も少し目にする程度だから、欲しいプロテインがあるかは分からないけどな」
「ありがとうございますお父さん。雪、明、行こうか」
「はい!」
「ああ!」
3人は細い糸のような希望に賭けることにした。
昼が近いのか1回目のピークを迎えるスーパーの中はざわざわと喧噪にあふれており、夕方ほどではないにせよだいぶ人の数が多かった。
昼の弁当や総菜を買う客でレジには列ができていたが、それを無視して七菜家の3人娘は目的地へと向かう。
「本当に売ってるのかなぁ?」
「お父さんを信じましょうよ、明」
「確か健康補助食品売り場に置いてある、と言ってたな」
3人は期待と不安を半分ずつ、いや実際には不安の方が大きかったが、そんな思いをしながらスーパーの「健康補助食品コーナー」を探していた。
「確かにプロテインやシェイカーは売ってるな。肝心の物はあるかなぁ?」
たどり着いた「健康補助食品コーナー」では確かにプロテインや、粉状のプロテインを水や牛乳に溶かすための容器である「シェイカー」は売られていた。
後は欲しかったものがあるかどうかになるが……。
「えっと、あ! あった! 『ZADASアドバンスド ホエイプロテイン プレミアム バナナ風味』これだよこれ!」
結構な値が張るにも関わらず、それは置かれてあった。明が言うには「一瞬後光が差して見えた」そうだ。
「へー、これか! 1キロ5500円か。税込みとはいえ結構値が張るな」
「せっかくの誕生日なんだからこれくらい奮発してもバチは当たらないだろ? いやーあってよかったぜ」
やっと会えた。という安堵と感動で、特に明は後に「プロテイン1つでここまで心を揺り動かされるとは思っても無かった」と語っていたという。
「よし。じゃあついでに昼のお惣菜を買って帰ろうか。父さんにはボクから言っておくよ」
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その後、3人は仲良く昼食を買って、家まで帰ることにした。
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