ぱっちわーく家族 七菜家 ~クラス1の美少女が妹になりました~

あがつま ゆい

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第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話

第32話 終業式

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 7月20日……林太郎りんたろう凛香りんかの通う高校。ひめ霧亜きりあゆきの3人が通う中学校。そしてあきらの通う小学校で1学期の終業式が一斉に行われた。
 終業式と言えば通知表、いわゆる「つうしんぼ」が渡されるのが恒例行事だ。
 小中高の学校は全て昼で終わり、生徒たちは自宅へと帰される。

 学生全員分の靴箱が並ぶ中学校の登校口で、霧亜きりあは姉を見かけて声をかけた。

「やぁ姫姉さん。成績はどうだった?」
「ふっふっふ……姉さんの成績をとくとご覧なさい」

 姫は自慢げにつうしんぼを妹に見せる……「平均よりは上」である霧亜の成績をさらに上回る、上位グループに入れる好成績だった。

「凄いなぁ姉さんは。オタク活動ばかりしててろくに勉強してる時間も無いと思ってたのに」
「それは聞き捨てられないわねぇ。今時のオタクは文武両道じゃないと舐められるわよ。
 それと、1ヶ月前に発売された『キューピット・アロー』をやりたいって言ってたよね? オークションで中古の良さげの値段の物をマークしてるからお金を出し合って買おうね。
 料金はいつもと同じように半分と半分よ」
「うん分かった。いつもすまないねえ姉さん、購入手続きは一括で任せているのに」
「私だってお金が無限にあるわけじゃないから助かってるわよ」

 1ヶ月前に発売された女性向け恋愛ゲーム、いわゆる「乙女ゲー」に関する情報交換を行いながら夏の日差しが照り付ける中、自転車に乗って帰り道へとついた。



「……ただいま」

 中間テストの結果を見て塾通いを言い渡され、ある程度は良くなったもののいまだ「中の下」程度で成績がよろしくない明が七菜ななな家に帰って来た。
 今日は有休休暇をとって朝から家にいた母親の江梨香えりかがつうしんぼを見せろと圧をかける。

「明、つうしんぼはもらったんでしょ? 見せなさい」
「……」

 明は観念したのか渋々見せた。内容は体育以外の学業に問題あり。ただ例年と違って中間テスト以降の学業は伸び、期末テストはいつもよりも20点以上成績が上がっていた。
 塾通いを始めた成果があったのだろう。

「ある程度は改善したけどまだまだ学業に問題あり、ね。期末テストはある程度点数が伸びたそうだから、塾に通わせてる成果は出てるそうだけど」
「母ちゃん。オレだってアニキみたいにスポーツやってるんで……」
「林太郎君みたいにプロを目指してるわけじゃないんでしょ? そんなの言い訳にならないわ。塾の成果は出ているようだからこのまま勉強を続けなさい」
「……はーい」
「あと去年や一昨年おととしみたいに姉さんたちを巻き込んで夏休みの宿題を手伝う羽目にならないよう、自分の力だけで終わらせなさい。夏休みの宿題をやってるのは姉さんたちも同じなんだからね」
「……」
「返事は?」
「……はーい」

 お互いにとって終始不機嫌なままで会話が途切れた。



「……うん。体育以外に特に問題は無し、か。やるじゃない、雪」

 江梨香は次いで雪の成績を見ていた。学業に関しては特に問題なし、あるとすれば体育などの運動が苦手。というもので小学生だったころから同じような内容だった。

「特に国語が出来ているみたいね。中学校に上がっても学校の授業に問題なくついていけているようね。この調子で頑張りなさい」
「はい。分かりました」

 妹の明とは違って実にスムーズに話は終わった。

栄一郎えいいちろうさん、夏休みの間子供たちを任せっきりで申し訳ないけど、彼女たちの事をよろしくね。私はNPO法人の理事の仕事があるからどうしても家を空けなきゃいけないから……」
「そこは大丈夫だよ江梨香。数は増えたけど夏休みの子供の世話は昔からやってたことだし」

 夏休みの時期、七菜家は昔は家政婦を雇って日中の子供たちの世話を任せていたが、今年からは栄一郎が一手に引き受けることになった。
 いくらトレーダーという、日中は家にいる人間としても6人分の世話はどうなのかと思うのだが、本人が大丈夫だと言うのでそれを信じることにした。
 子供にとっては40日近い長い休み、親にとっては子供の世話に追われる40日が始まろうとしていた。
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