ぱっちわーく家族 七菜家 ~クラス1の美少女が妹になりました~

あがつま ゆい

文字の大きさ
上 下
12 / 86
第1部 クラスメートから兄妹を経由して、そして恋人となるお話

第12話 クラスメートの男子は1度は彼女に恋をする

しおりを挟む
「……また、か」

 凛香りんかが下校しようと靴箱を開けると中には手紙が1通入っていた。
 開けてみると、ていねいに書いてはいるが「素は汚い」のが分かる字で「今日の放課後体育館裏に来てください」とだけ書いてあった。

(どうせ告白するつもりなんでしょコイツ。これで高校生になって3回目だわ)

 指定された体育館裏まで行くと、予想通りソワソワとして挙動不審な男子生徒が告白相手を今か今かと待っていた。
 体育館裏という指定場所から挙動が怪しい所まで、散々見て飽きた映画のお約束のようなテンプレぶり。これっぽちも心に響かない。

「お待たせ」

 営業スマイルも無しに彼女は名前もあまり正確に覚えていないクラスメートの男子生徒に声をかける。
 相手は顔が真っ赤になってガッチガチに緊張しているのか、挙動が実に不審で見ていて本当に頼りない。

「り、りり、凛香ちゃん! ぼ、ボボボ、ボクは……ボクは……!」
「ハイハイ、私の事が好きなんでしょ? 言っとくけど私、アンタには一切興味ないからこの話は無かったことにしてね」

 舌を噛み千切りそうなほど緊張していた彼は手を差し伸べる前に「散華さんげ」した。しかも「最速」でだ。



 翌朝……。



「凛香さん、また男子をフったんですって? これで何人目になるんですか?」
「相変わらずモテますねぇ。さすが凛香さん、うらやましいなぁ」

 どこから情報が漏れたのやら。早速取り巻き達がヨイショしだす。

「別に私は何もしてないわよ? ただ向こうから言い寄ってきているだけで、付き合おうと思える人じゃなかったって話。それのどこがおかしいのよ?」

 それに対して、凛香は不満げだ。ただ身に振る火の粉を払っているだけ、とでも言いたげだ。
 凛香は端的に見ても「美少女」と言えるくらいに顔立ちは整っており、色素の薄い髪に灰色の瞳という、日本人としては中々見ない色がそれを引き立たせている。
 アイドルやモデルとしてメジャーデビューしていてもおかしくない位、と言っても決して言い過ぎではないその愛らしさに『凛香のクラスメートの男子は1度は彼女に恋をする』
 という噂話も流れる程であった。

 告白される、だなんて普通の女子生徒だったら「あるかどうかも分からない」ものだが、
 凛香にとっては何度も、何度も、そう「何度も」見て先の展開が全て分かっている退屈な映画を見るかのようであった。
 さかのぼれば中学2年生の頃からこうだ。少なく見てもそこから20回以上は告白されたが、この人だ。と思える人はいなかった。



「凛香さんってば、好みのタイプとかありますか? 今まで告白されて『これだっ!』って思う人は1人くらいいるんじゃないんですか?」
「好みのタイプ? うーん……思いつかないなぁ。少なくても告白してきた奴らに惹かれる要素はこれっぽちも無かったなぁ」
「えー? 凛香さんてば高いの狙っていく気なのね。でも分かるわーそれ。凛香さんなら学校の枠に収まる身分じゃないしね」
「もー、またすぐそうやって余計な事をくっつけようとして……勝手に噂流されるこっちの身にでもなってよね?」

 噂好きで「話を盛る」のが大好きな取り巻きがまた噂を広めようとするのを彼女は口止めする。凛香に関する噂の半分くらいは噂好きの取り巻きによる「盛った」話だと言われている。



キーンコーンカーンコーン



「おはよう。じゃあ朝礼を始めるぞ」

 チャイムが鳴ると同時に先生が入ってくる。今日も1日が始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

処理中です...