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ハズレスキル「会話」は実はダンジョンと会話して仲良くなれる最強スキルでした
第6話 神界へと続く迷宮
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ボイドが帝都ギールに来て1ヶ月。彼は帝都近くにある7つの迷宮の内、世界最難関の「神界へと続く迷宮」以外の6つの迷宮を巡って経験値と財宝を貯め込んでいた。
そして迷宮達のアドバイスを基についに「神界へと続く迷宮」へと初めて足を踏み入れることにし、意を決してと入っていく。
「ほほぉ。噂には聞いているぞ、ボイドとか言ったな? ギウ=ミューシャ以来だな「会話」スキルを持つ奴は」
入るなり女としてはだいぶ低い声がボイドの頭に響く。直後、突然目の前に魔物が現れた。
デーモンをさらに筋肉質な体型にした格好で、ヤギのような角も鈍い赤色。何より全身が鮮血のように紅いデーモン……レッドデーモンだ。
「こいつを倒せないようではわらわの中に入る資格は無い! せいぜいもがくがいい!」
並みの冒険者なら束になっても敵わない相手をボイドはたった1人で立ち向かう。
彼がフェンリルリングをつけた左手をレッドデーモンに向けて伸ばすと手から魔力の塊が飛び出す。それは敵の身体に当たると激しい灼熱の炎となって炸裂し、悪魔の身体を焦がす。
フェンリルリングを身につければ炎の魔力による遠距離攻撃が可能なのだが、腕輪なのでライトニングボウやシューティングスターのように持つ必要が無く、手をふさがない。
その点で上級冒険者が好んで求めるため性能以上の高値が付くのも納得できる話だ。
レッドデーモンも迷宮の侵入者を相手に自らの魔力を塊にして放つ。それは壁や床に当たるとフェンリルリングによるモノのように灼熱の炎をぶちまける。
ボイドは巧みな動きでそれらを回避し、全て避けきって見せた。悪魔は床を力強く蹴り、標的に肉薄する。
無論冒険者側も黙っているわけではない。彼はこの1ヶ月で新たに手に入れたサムライ・ソード、いわゆる「刀」を抜いた。
妖刀村正。ある程度は出回っているとはいえこの辺りでは持ってる冒険者は全体の3割程度、という業物の刀だ。
ボイドの村正とレッドデーモンの爪とが出会うとまるで硬質の金属と金属とが激しくぶつかり合い、火花を散らすような激しい衝突音が迷宮内に響く。
刀と爪が交差した瞬間、ボイドは刀を返して相手の腕を斬る。その切れ味は魔力でコーティングされたレッドデーモンの腕を切り裂き、切り傷から血が噴き出る。
痛みに耐えて悪魔は再度攻撃を試みるがそれを読んだボイドはフェンリルリングから再び炎の魔力を3発、魔物の顔面目掛けて放つ。
人間はもちろん、魔物でも目の前の視界に急に何かが入ってくると反射的に目をつぶるかそらすものだ。ボイドの予想通りレッドデーモンは一瞬目をつぶる。
その隙を逃すわけがない。冒険者は敵の胸に持っていた刀を突き立てた。引き抜くと鮮血がブシュウッ! と吹き出て倒れ、敵の姿が消えた。
「見事だなボイド。レッドデーモンを1人で倒せるとはな。てっきり逃げ出すのかとばかり思っていたんだが」
「神界へと続く迷宮」がボイドの動きを見て褒めた。レッドデーモン相手に逃げ出すところか返り討ちにするとは思っていなかったのだ。
「見くびってもらったら困る。それにしても、ギウ=ミューシャは何でこの能力を秘密にしてたのかわかるかな?」
「うっかり能力をばらしたら家族や自分自身を人質に取られて国のために死ぬまで財宝を採掘させられることになるだろ?
だからあやつは「会話」スキルに関しては家族にすら教えずに1人きりで抱えて死んだんだ」
なるほど……帝国は世界最強の軍事大国だからもしかしたら本当にやりかねない、この能力はばらさないほうが身のためだろうと思った。
「まぁいい。レッドデーモンを倒せたから素質は有りとしよう。ところでお前、昔冒険者のパーティに切り捨てられたとか聞いているが恨んでいたりするか?」
「最初はね。昔は「会話」スキルの本当の力に気づいていなかったし、今では俺はほかの1流冒険者にも肩を並べるくらい強くなれた。
それに、それなりの財を築けたからでは復讐する気にもなれないよ。んなことやったところで虚しいだけだし、過去は変わらないさ」
「なるほどねぇ、お前はできた人間だな。中に入るがいい(もっとも、わらわとしてはボイドを見捨てて逃げ出した奴は気に入らないがな)」
「神界へと続く迷宮」は自らの中にボイドを招いた。彼は中に入るといきなり分かれ道が待っていた。
(……とりあえず右に行くか)
ボイドは特に考えもせずに右へと曲がっていった。
一方「左」を選んだ冒険者は……。
「ウ、ウソだろ……こんなところにドラゴンがいるなんて聞いてねえぞ!!」
ボイドを切り捨てて逃げ出した自称勇者一行もまた「神界へと続く迷宮」で浅い階から財宝を持ち帰って財を成そうと企んでいたのだが、
その浅はかな狙いはB1Fでのドラゴンの出現に吹っ飛ばされた。
「どうすんのよ!? こんな奴とてもじゃないけど手に負えない!」
「とりあえず逃げ……うわぁ!?」
自称勇者が逃げ出そうとすると、後ろからもドラゴンが現れた。3人は挟まれて身動きが取れない。
「ひいい! 嫌だ! 助け……」
それが彼らの最期の言葉だった。冒険者3人はそろってドラゴンの灼熱のブレスでチリひとつ残らずに焼却処分されたという。
【次回予告】
ボイドはついに、史上2人目の偉業を打ち立てる。「2番目のギウ」が生まれた瞬間だ。
最終話 「2番目のギウ」
そして迷宮達のアドバイスを基についに「神界へと続く迷宮」へと初めて足を踏み入れることにし、意を決してと入っていく。
「ほほぉ。噂には聞いているぞ、ボイドとか言ったな? ギウ=ミューシャ以来だな「会話」スキルを持つ奴は」
入るなり女としてはだいぶ低い声がボイドの頭に響く。直後、突然目の前に魔物が現れた。
デーモンをさらに筋肉質な体型にした格好で、ヤギのような角も鈍い赤色。何より全身が鮮血のように紅いデーモン……レッドデーモンだ。
「こいつを倒せないようではわらわの中に入る資格は無い! せいぜいもがくがいい!」
並みの冒険者なら束になっても敵わない相手をボイドはたった1人で立ち向かう。
彼がフェンリルリングをつけた左手をレッドデーモンに向けて伸ばすと手から魔力の塊が飛び出す。それは敵の身体に当たると激しい灼熱の炎となって炸裂し、悪魔の身体を焦がす。
フェンリルリングを身につければ炎の魔力による遠距離攻撃が可能なのだが、腕輪なのでライトニングボウやシューティングスターのように持つ必要が無く、手をふさがない。
その点で上級冒険者が好んで求めるため性能以上の高値が付くのも納得できる話だ。
レッドデーモンも迷宮の侵入者を相手に自らの魔力を塊にして放つ。それは壁や床に当たるとフェンリルリングによるモノのように灼熱の炎をぶちまける。
ボイドは巧みな動きでそれらを回避し、全て避けきって見せた。悪魔は床を力強く蹴り、標的に肉薄する。
無論冒険者側も黙っているわけではない。彼はこの1ヶ月で新たに手に入れたサムライ・ソード、いわゆる「刀」を抜いた。
妖刀村正。ある程度は出回っているとはいえこの辺りでは持ってる冒険者は全体の3割程度、という業物の刀だ。
ボイドの村正とレッドデーモンの爪とが出会うとまるで硬質の金属と金属とが激しくぶつかり合い、火花を散らすような激しい衝突音が迷宮内に響く。
刀と爪が交差した瞬間、ボイドは刀を返して相手の腕を斬る。その切れ味は魔力でコーティングされたレッドデーモンの腕を切り裂き、切り傷から血が噴き出る。
痛みに耐えて悪魔は再度攻撃を試みるがそれを読んだボイドはフェンリルリングから再び炎の魔力を3発、魔物の顔面目掛けて放つ。
人間はもちろん、魔物でも目の前の視界に急に何かが入ってくると反射的に目をつぶるかそらすものだ。ボイドの予想通りレッドデーモンは一瞬目をつぶる。
その隙を逃すわけがない。冒険者は敵の胸に持っていた刀を突き立てた。引き抜くと鮮血がブシュウッ! と吹き出て倒れ、敵の姿が消えた。
「見事だなボイド。レッドデーモンを1人で倒せるとはな。てっきり逃げ出すのかとばかり思っていたんだが」
「神界へと続く迷宮」がボイドの動きを見て褒めた。レッドデーモン相手に逃げ出すところか返り討ちにするとは思っていなかったのだ。
「見くびってもらったら困る。それにしても、ギウ=ミューシャは何でこの能力を秘密にしてたのかわかるかな?」
「うっかり能力をばらしたら家族や自分自身を人質に取られて国のために死ぬまで財宝を採掘させられることになるだろ?
だからあやつは「会話」スキルに関しては家族にすら教えずに1人きりで抱えて死んだんだ」
なるほど……帝国は世界最強の軍事大国だからもしかしたら本当にやりかねない、この能力はばらさないほうが身のためだろうと思った。
「まぁいい。レッドデーモンを倒せたから素質は有りとしよう。ところでお前、昔冒険者のパーティに切り捨てられたとか聞いているが恨んでいたりするか?」
「最初はね。昔は「会話」スキルの本当の力に気づいていなかったし、今では俺はほかの1流冒険者にも肩を並べるくらい強くなれた。
それに、それなりの財を築けたからでは復讐する気にもなれないよ。んなことやったところで虚しいだけだし、過去は変わらないさ」
「なるほどねぇ、お前はできた人間だな。中に入るがいい(もっとも、わらわとしてはボイドを見捨てて逃げ出した奴は気に入らないがな)」
「神界へと続く迷宮」は自らの中にボイドを招いた。彼は中に入るといきなり分かれ道が待っていた。
(……とりあえず右に行くか)
ボイドは特に考えもせずに右へと曲がっていった。
一方「左」を選んだ冒険者は……。
「ウ、ウソだろ……こんなところにドラゴンがいるなんて聞いてねえぞ!!」
ボイドを切り捨てて逃げ出した自称勇者一行もまた「神界へと続く迷宮」で浅い階から財宝を持ち帰って財を成そうと企んでいたのだが、
その浅はかな狙いはB1Fでのドラゴンの出現に吹っ飛ばされた。
「どうすんのよ!? こんな奴とてもじゃないけど手に負えない!」
「とりあえず逃げ……うわぁ!?」
自称勇者が逃げ出そうとすると、後ろからもドラゴンが現れた。3人は挟まれて身動きが取れない。
「ひいい! 嫌だ! 助け……」
それが彼らの最期の言葉だった。冒険者3人はそろってドラゴンの灼熱のブレスでチリひとつ残らずに焼却処分されたという。
【次回予告】
ボイドはついに、史上2人目の偉業を打ち立てる。「2番目のギウ」が生まれた瞬間だ。
最終話 「2番目のギウ」
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