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第10話 息子のカネでパチ屋行って確変だ Year!

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 虹色や金色、それに赤色でビカビカと光る、常人が見たら極彩色やフラッシュだらけで気持ち悪くなったり目がおかしくなりそうな画面を見て、丸山ゲームス元社長はヘラヘラと笑っていた。



 会社が潰れて行き場を失った彼は、その悪名が広く知れ渡ってしまったゲーム業界ではどこも採用してくれず、書類審査の時点で全てはじかれた。
 転職しようと転職サイトに登録して、ゲーム会社社長経験有りとアピールするが年が年なのもあって、あるいは
「元ゲーム会社社長の丸山さん」という所から「丸山ゲームスの社長」とみなされたのか「なしのつぶて」で求人は0件。
 


 寂しさを紛らわせるために前なら見向きもしなかったパチンコ店に寄ったのが運の尽き。
 ビギナーズラックで大爆発して以降、世間の誰もが石を投げる自分を唯一祝福してくれるパチンコにのめりこんでしまった。
 会社社長からパチンカスへ「ジョブチェンジ」である。



 彼の息子はWEB上の名前を変えて絵の依頼を受ける事にしているが、
 いくらアカウントを作り直してもサンプル絵のタッチからアカウント取得後24時間以内に本人特定されて拡散され、
 アカウントを消して逃亡せざるを得ない、の繰り返しで依頼は0件。結局コンビニのバイトで何とか家計を支えている形だ。



「オヤジ! いい加減にしてくれよ! また『使っちまったらヤバい金を使ってからが面白い』とか言うんか!?」

「うるせぇ! 親の言う事には素直に従うのが子供ってもんだろうが! そんな事言う息子に育てた覚えはねえぞ! カネよこせっつってんだろうが!」

 その数少ないバイトの収入もパチンカスと化した父親にむしられる。
 最初は「会社を潰そう」と提案した負い目もあって渋々従っていたが、あっという間に要求はエスカレート。万単位のカネをむしり取るようになってしまった。

「どうせまたパチンコにぶち込むだけじゃないか! 砂漠に水を撒くみたいなもんだ! もう出せんぞ!」

「へー。そんな事言うんだ」

 元社長はポケットからカードを取り出した……消費者金融のクレジットカードだ。



「そんな事言うならここからカードで引き落とそうかなー?」

「借金はダメだろうが! 借金は利子付けて返さないといけないんだぞ!? 結局それもオレが払うんじゃねえか! だったら持ってけ!」

 そう言って彼は財布から2万円を取り出して父親に渡す。

「カネがあるんだったらケチらずに景気よく出せばいいのになぁ……んじゃ行ってくるわ」

「だからギャンブルは勝てるようには出来ていないって何度言ったら分かるんだよ!?」

 息子の説得もどこ吹く風。カネが入ったからまたパチンコができると鼻歌交じりにパチンコホールへと向かって行った。



「……」

 キャッシュカード枠を現金化し、それをつぎ込んでも当たらない。息子からもらった2万円は30分も持たずに消えた。

 パチンコをしている最中もマナーモードにしっぱなしのスマホからの着信が止まらない。番号を見るにおそらく借金取りからの催促という名の脅しだろう。そうこうしているうちにカネが尽きた。
 どうしよう。もうこうなったら……



「あのー、お客様。随分と長い間トイレに入って……!? うわぁあ!」

 ホールの店員が「ずっと閉まっている男子トイレ」を開けると、丸山が素手で大便を握ってトイレの壁に「出ん」と書いてベルトを首に引っかけて吊っていた。
 パトカーや救急車がやって来てサイレンの音を聞くが、すぐにホール内のパチンコの音楽や音にかき消され、気にする者はいなかった。
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