46 / 69
第46話『出美留高校』
しおりを挟む「ところでやつらって誰?」
あの追いかけてきていた連中のことを俺は知らない。
一体、どこのどいつだ?
ぶっちゃけカタギなんすか?
「そりゃあ、アレだよ! 段田理恩の率いる出美留高校さ!」
段田理恩……。
出美留高校……。
全然知らねえ。でも普通の高校生みたいで安心した。
「出美留は段田理恩が頭角を現してトップになってから一気に名前を上げてきた隣町の学校だ」
「段田理恩は今一番勢いに乗ってるヤローでよ、去年の冬頃、出美留のトップに立ったかと思ったら近隣の高校三つをあっという間に支配下に置いちまった」
…………。
ぶっちゃけ、他校を支配するという概念がイマイチピンとこないのだが……。
まあ、そこら辺はあまり深く考えないほうがいいのかもしれない。
ふんわりした感覚でスルーしていこう。
「さっきの連中もその出美留高校ってところのやつらなのか?」
「いや、オレらを追いかけていたのは恐らく配下になった三校……越多米高校、富羅知商業、烈亜久工業のやつらだな。あいつらは段田理恩の指示で動いてたんだ」
ほう……。
相手は出美留高校とかいうところだけでなく、その配下になった高校もということか。
全部で四対一の勢力差。
これまでは四天王の名前だけでそいつらを抑え込めていたのね。
それって何気にすごいな……?
「だが、このまんまじゃ馬飼学園も出美留高校の傘下に入れられちまう!」
「そうなったら地獄だぜっ!」
「今までの自由はなくなるんだ!」
そんなディストピアみたいな……。
大仰な言い回しが好きなやつらだ。
「何を暢気に構えてやがる! 狙われているのは馬飼学園全体なんだぞ!」
モヒカンが叫んだ。
「全体って、不良の界隈だけだろ? 大げさじゃね?」
俺が冷静にツッコミを入れると、
「バッカヤロー! もし出美留の傘下に入れられたら、一般の生徒だって『御守り』を数千円で買わされるんだからな!」
「しかも定期的に新しいのを買わないと期限切れってことで狩りの対象になっちまう!」
「そうやって学校全体で永久にカモられることになるんだ!」
そんな殺伐としたことになるの!?
都会の高校ってやべえな!
よく考えたら、鳥谷先輩や風魔先輩に不名誉な評判がついてしまっているし、これはなあなあにしてはいけない案件かもしれない。
放って置くと一般の生徒にも被害が出る可能性があるっていうのもね。
でも、喧嘩をしたらマズいんだよなぁ……。
俺が頭を悩ませていると、
「出美留の段田理恩は今でこそ三校を束ねるボスに収まっちゃいるが、一年生の途中までは冴えない陰キャ野郎だったらしい」
「噂じゃ、いじめられてカツアゲまでされていたんだと」
「けど、ある日、まるで別人が乗り移ったかのように強くなって当時の番格を叩きのめすと、そっから一気にのし上がって権力を拡大していきやがったんだ」
巨漢デブ、モヒカン、リーゼントの花園三人衆が敵のボスについて情報を話してきた。
ふうん? 別人が乗り移ったかのようにねぇ……。
いじめられていたようなやつが、いきなり不良のビッグボスに君臨するほど強くなる。
そんなことありえるか?
いや、ありえるか……。
俺も記憶を思い出す前と後じゃ全然パワー違うもんな。
結城優紗だって、チートを手に入れたことでその辺のやつらに負けない腕っ節を得た。
ひょっとしたらその段田とかいうやつも異世界帰りだったり転生者だったりするのかも。
うーん。
けど、なんでもかんでもそっち方面で考えていくのはよくないかなぁ。
念のため、そういう可能性もあるってくらいに留めておこう。
しかし、そんな権力争いが繰り広げられているって都会の高校は世紀末か……?
来年は妹もこっちの高校を受験するらしいから気をつけるように言っておかないと。
「新庄もいることだし、鳥谷や風魔にも話を通して協力を仰いだほうがいいんじゃねえか?」
「こうなった以上、オレらだけじゃどうしようもねえもんな……」
「月光のところのやつらにも声をかけてみるか?」
「そうだな、神門と不動は学校に来てたはずだし。あいつら、こういうことに付き合い悪いけど今度ばかりは参加してもらわねえと……」
花園三人衆が無断で話を進めている。
俺もいるってなんだよ。
こいつら俺が協力する体で相談してないか?
「あっ! いましたよ! あそこっす!」
三人衆に待ったをかけようと思って口を開きかけると、背後から不良の一団が……。
うわ、またかよ……。
しかも今度は先程よりも多い、二十人くらいの集団だった。
0
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中
宵闇王と精霊の竜刀
火の無い灰
ファンタジー
至って普通の男子高校生、古都零(ふると れい)。ある日いきなり事故に遭って死にました。また目覚めると、見知らぬ世界でホムンクルスとして転生してた。
異常なチート能力をフルに活用して、ホムンクルスとしての自分を狙ってくる邪な輩共を爽快な程に吹っ飛ばす!
これは、巻き込まれ体質な最強ホムンクルスが、戦ってるうちにいつの間にか世界の命運を賭けた戦闘へと進んでいく。そして彼自身も変化していく。
そんな、お話です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生特典:錬金術師スキルを習得しました!
雪月 夜狐
ファンタジー
ブラック企業で働く平凡なサラリーマン・佐藤優馬は、ある日突然異世界に転生する。
目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中。彼に与えられたのは、「錬金術師」としてのスキルと、手持ちのレシピブック。
素材を組み合わせてアイテムを作る能力を持った優馬は、錬金術を駆使して日々の生活を切り開いていく。
そんな彼のもとに集まったのは、精霊の力を持つエルフの少女・リリア、白くフワフワの毛並みを持つ精霊獣・コハク。彼らは王都を拠点にしながら、異世界に潜む脅威と向き合い、冒険と日常を繰り返す。
精霊の力を狙う謎の勢力、そして自然に異変をもたらす黒い霧の存在――。異世界の危機に立ち向かう中で、仲間との絆と友情を深めていく優馬たちは、過酷な試練を乗り越え、少しずつ成長していく。
彼らの日々は、精霊と対話し、魔物と戦う激しい冒険ばかりではない。旅の合間には、仲間と共に料理を楽しんだり、王都の市場を散策して珍しい食材を見つけたりと、ほのぼのとした時間も大切にしている。美味しいご飯を囲むひととき、精霊たちと心を通わせる瞬間――その一つ一つが、彼らの力の源になる。
錬金術と精霊魔法が織りなす異世界冒険ファンタジー。戦いと日常が交錯する物語の中で、優馬たちはどんな未来を掴むのか。
他作品の詳細はこちら:
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる