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第17話『勇者』
俺は結城優紗に連れられて校舎裏にいた。
「で、俺が魔王って何の話? そういう設定で遊びたいなら他を当たってくれる?」
まずは初手。
すっとぼける作戦で行ってみる。
これで引いてくれないだろうか?
「惚けるんじゃないわよ!」
「…………」
甲高い声で怒鳴られた。
ダメだった。
ここまで自信満々ということは何か確信できる要素を彼女は持っているのか?
俺の容姿は昔と全然違うはずだけど。
「その魔力の波形は間違いなく魔王サイズオンのものだわ! 上手く姿を変えて人間に擬態していたみたいだったけど、残念だったわね! あたしは魔力の探知や識別にものすごく長けてるのよ!」
魔力の波形……? ああっ、その断定方法があったか!
こんなことなら腕力だけでなく魔力を抑えるアイテムもつけておくべきだった。
これじゃシラを切るのは難しそうだ。
「お前は何者だ? 魔力の概念や俺の正体を知ってるってことはあっちの世界の関係者か?」
「え……? あんた、勇者だったあたしにトドメを刺すために異世界から追いかけてきたんじゃないの? あたしに近づくために高校に潜入してたんじゃないの?」
俺が訊くと、結城優紗はポカンとした顔になる。
やっぱり勇者だったか。
勇者とはニアミスしてもどうせ気づかれず終わると思ってたんだがな……。
それにしても、彼女は噴飯ものの勘違いをしているようだ。
「どうして俺がわざわざお前を追いかけなきゃいけないんだ? 俺は転生して人間に生まれ変わって、中学を卒業したから高校に入学しただけだぞ。お前がいるとか知らんわい。もっと言えば忘れてたってーの」
ちなみに最後の部分は少し嘘だ。
忘れてたと過去形っぽく言ったが、ぶっちゃけまだ思い出せていなかった。
現在進行形で忘れているのである。
魔力の扱いが上手い勇者で赤茶髪な女の勇者で……。
ダメだな、やっぱり思い出せない。
まったく、俺にとっては追い払った勇者のうちの一人に過ぎないというのに。
自分を追いかけてきたと考えるなんて思い上がりも甚だしい。
相手が自分のことを気に懸けてると思い込む。
それはちょっと自意識過剰なんじゃない?
「え、え……? そうなの? じゃあ、あたしの覚悟は一体……」
どうやら彼女は彼女でいろいろな決意をしたうえで俺と対峙しにきていたらしい。
無駄な気苦労、お疲れ様である。
「あたしを狙っていたんじゃないなら、あんたの目的は何なの? まさか擬態じゃなくて本当に人間になってるとは思わなかったけど……あんた、高校に通ってどうするつもり?」
「どうするって……別に?」
「別にってなによ!」
「いや、だって特に事情がなければ大半の中学生は惰性で進学するだろ?」
将来のこととかはそこまで考えず、とりあえず進学する中学生のほうが多いはずだ。
高校進学時にその先の進路まで考えてる人のほうが少なくない?
俺は正直な返事をしたつもりだったのだが。
「そうじゃなくて! 魔王の癖に人間社会の枠組みに従って進学して、大人しく授業を受けにきてる理由を聞いてるの!」
結城優紗は納得しなかったらしい。
「都会で楽しく高校生活を送れたらいいなぁって理由で来てるけど……。あと、魔王だったのは前世の話な。魔王だったのを思い出したのだって入学式の前日だし」
そこ重要だから。
「魔王が楽しく高校生活を送りたいなんて信じられるわけないでしょ!」
やれやれ、魔王だったのは前世の話というところを華麗にスルーですか。
自分の追求したい部分にだけフォーカスを絞って他を無視するスタイルはよくないよ?
「あのなぁ、これまで俺は人間として15年間生きてきたんだぞ。魔王だったことを思い出したからって今までの人生で積み重ねてきた価値観や人間性が消えるわけじゃないんだから、俺が都会で楽しく青春を送りたいと思ったっておかしくないだろ」
前世が何だろうと、現在の俺が日本人の少年であることは変わらないのだ。
高校に通って、授業を受けて、青春を謳歌しようとして何が変だというのか。
魔王が学校生活を楽しもうとするわけない! という偏見で決めつけるのはやめて頂きたい。
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