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名乗り
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もう長月も半ばに近いというのに、並びの表店の軒下にはまだ風鈴が吊るしてあるらしく、ちりちりと鳴る音が閉め切った障子の外にかすかに聞こえる。
その響きにもの寂しい秋の気配を感じながら、紀堂は目の前の男たちの凍りついた顔を見詰めていた。
「──な、なに……?」
小島ら四人が、呆けたように呟いた。
浅草福井町の表店である。元は貸しに出していた店を大鳥屋の奉公人の住まいということにして、千川家旧臣の四名がここに暮らしていた。小さいが、風流な庭もついた二階家だった。
紀堂と藤五郎、正馬に相対して茶の間に座した四人の前には、紀堂が千川広忠より贈られた両刀があった。
「いったい……どういう意味か。野月どの」
惑乱のあまり、今にも泣き出しそうな顔で小島が声を上げた。
「殿の……お、お子様。この、大鳥屋が……?」
「いかにも、さようにございます」
正馬がゆっくりと頷いた。四人の顔が引きつり、息が浅くなる。
三年前に千川広忠が京へ出向いた際、箱根山中で警護に加わった野月正馬が、広忠と高田紫野の庶子を預かっていたという。その子が、目の前の大鳥屋五代目であるという。愚弄する気かと激怒すればいいのか、それとも実子の生存を喜べばいいのかわからぬように、男たちの顔が苦しげに歪む。
「お殿様より父・正国へ宛てられたお手紙が残ってございます。境家老様によるものも、同じく」
そう言いながら、二通の文書を四人の前に滑らせる。
「どうぞ、ご印章とご花押をお検め下さいませ」
小島がわなわなとふるえる手を伸ばし、二通の文を開いていくのを見て、三人が這うようににじり寄る。
大鳥屋に到着した翌朝、正馬は急ぎ鎌倉へ戻り、この二通を携えて戻ったのだった。
「小島どの……」
近習の加納忠厚、そして給人の織部武二郎と水沢慎一郎が、食い入るような視線を小島へ向ける。
書面に目を落としたまま、小島が強張った顎をぎこちなく頷かせた。
「間違いない」
身分のある武家では右筆が文書を作成し、主人は最後に印章や花押印を捺すか、花押を据えるのみである。家政に深くかかわる用人は、主の印章と花押を目にする機会が多い。長年用人として仕えてきた小島であれば、尚更だ。
「ご公儀か、あるいはご宗家が保管しているご印章と照合すれば明らかであろうが、私が見間違えるわけがない。……これは右筆の筆跡ではないな。殿御自らのお手によるものだ……」
声にならぬ声が充満するかのような沈黙が、明るい茶の間に降り積もる。
ちり、ちり、とどこかの軒先の風鈴が鳴っている。
「……なんということか……」
小島が畳に手をついて、打ちひしがれたように喘いだ。瞬きもせずに紀堂を見詰め、それから文書と両刀に目を落とす。
紀堂に戻した両眼に、透明な膜が張る。と思う間に、どっと涙が吹き出した。
「……そこもとが、殿の忘れ形見でおられると……まさか……まさか」
顔を拭うこともせず、肩を波打たせて声をかすれさせる。
「なんと……なんと申せばよいか、わからぬ……」
叫ぶようにむせび泣く小島の隣で、
「広彬様」
と織部がみるみる両目を赤くした。
「お血筋はもはや絶えたものと、そう思ってございました……」
そう呻くなり、さっと上座から脇に体を移して平伏した。
「広彬様がおられれば、お家の再興が叶いまする。なんと……なんという慶賀でございましょうか」
「いかにも……いかにも、その通り」
加納と水沢が、頬を濡らしながら顔を歪める。
「生き恥をさらすこの身に、ようやっと使い道が見つかったというもの。ご家門の再興のため、それがし命を惜しみませぬ」
皆が次々上座を退いて、紀堂に向かって泣きながら拝跪した。
「お待ちください」
紀堂は片手を上げ、熱気を帯びてくる声を制すると、
「私が皆様に出自を明かしましたのには、わけがあるのです」と平静に言った。
紅潮した頬を濡らしながら、皆が訝しむように口を閉じた。
「私は大鳥屋店主であり、向後千川家を継ごうとは夢にも考えてはおりません。千川家嫡男は広衛様お一人であって、ご家督を継ぐのは広衛様をおいて他にはおられない」
「いや、しかし……」
小島が悲壮な表情で身を乗り出そうとする。
「今こうして出自を明かしましたのは」じっと小島の目を見詰め、ゆっくりと言った。
「皆様のお力をお借りせねばならぬからなのです。広衛様の御為に、場合によってはお命を預けていただきたいからなのです」
「……意味が、よく……」
織部がぎこちなく言う。
「それは、いかなる意味でございますか。若殿の……?」
「小島様、織部様、水沢様、加納様」
紀堂は鋭く表情を引き締めた。
「どうかお心を静めてお聞きください。……広衛様は、ご存命でおられます」
死んだような沈黙が、部屋に広がる。
誰も、動かない。息をするのも忘れ、塑像となったかのごとく瞬きすらしない。
紀堂は一同を見回し、ことの経緯を語り始めた。
放心と激情が、交互に侍たちを襲ったように見えた。
広衛が楽其楽園に匿われていると知った途端、淀んでいた彼らの瞳に、鮮烈なまでの生気が宿った。
皆、泣き叫ぶこともなかった。ただ滂沱と濡れた顔を覆い、背を波打たせて蹲っていた。
「尾形め。早まりおって」
やがて、小島が囁いた。
「死に急ぎおって。馬鹿め……」
馬鹿め、馬鹿め、と赤い目からぼたぼたと涙を落として繰り返す姿に、目頭が熱くなった。
「小島様、皆様……」
「広彬様、小島とお呼び下さいませ」
すすり上げながら、小島が恐懼して頭を下げる。
紀堂は眉を下げて逡巡すると、
「……小島どの」
と言い直した。
「越前守様や大和守様は、薩摩の力を削ぐ機会をうかがっておられます。それまで、広衛を何としても守りきらねばなりませぬ。隠密衆や警護が固く守っているとはいえ、薩摩の力は強い。広衛を亡き者にしようと、また老公らの手が伸びるやもしれません。その際は……」
「はい。身命を賭して、お守り致しまする」
「今度こそ……今度こそは」
侍たちが涙に濡れた顔を拭い、燃えるような気迫を両目に滾らせる。
広忠を目の前で失った痛苦が、悔恨の楔となって胸に深々と刺さっている。紀堂と同じく、正馬と同じく、仇に対するのと等しい怨念が自らを焼いている。
小島が拭ったように光る目で、一膝身を乗り出した。
「畏れながら、広彬様。いざという時のために、我らは楽其楽園の近くへ移るべきではないかと存じます。浅草からでは、いささか時を要しまする」
「私も、それを考えておりました」小島の言葉に紀堂は頷いた。
ここから楽其楽園へ行くには、最速でも半時はかかる。浅草御門橋の袂から船河原橋手前までは船でも行くことができるが、船河原橋の真下には堰があって、そこから関口大洗堰までの江戸川と呼ばれる中流域は、取水域であり御留川と呼ばれる禁漁区でもあることから船の運行は禁じられている。船河原橋袂の市兵衛河岸で舟を降りたら、後は江戸川沿いを神田川上水に至るまで走りつづける他にないのだ。
「牛込に、急ぎ皆様方のお住まいを用意しようと思料しております。数日のうちには準備できますでしょう」
藤五郎が心得た様子で続く。
「かたじけのうございます。若殿は、我らの命に替えましても、必ずお守り申し上げます」
小島の声に、往時の張りが漲っていた。三人の侍の顔が、生気を取り戻したように輝いていた。
文月の夜から彼らの魂に巣食っていた憎悪と絶望が、燃えるような執念と切望へと変貌していくのが見て取れる。
主家に強い忠誠を誓う彼らにとって、広衛と広彬の生存がどれほど大きな意味を持つのかを、覚らずにはいられない。
紀堂を希望そのもののように見詰める四人の目が、途方もなく重く感じられる。
出自を明かしたからには、千川家の家督とは無関係という話は通らない。紀堂はそう思っていても、千川家旧臣である彼らはそうは思うまいと覚悟はしていた。だが、己が何者であるのかを伏せたまま、広衛の生存を伝えることは困難だった。なぜ一介の商人にすぎぬ紀堂に堀家の公用人が明かしたのか、なぜ境家老への目通りが許されたのかと問われれば、答えようがない。
彼らにこれ以上真実を隠すべきではない、と心を決めた。
彼らは広衛と広彬に希望をつないでいる。もはや、逃げるわけにはいかない。
広衛を守り抜いて、家門を再興する他に道はないのだ。
喜びと興奮にふるえる侍たちの姿に、紀堂は膝の上の両手を握り締めていた。
***
その四日後、千川家旧臣たちは浅草の表店を出て、牛込馬場下横丁の仕舞た屋へ移った。もとは小間物屋であったそうで、藤五郎から相談を受けた黒須屋文吾がどこからか都合し、それを大鳥屋が居抜きで買い取ったのだった。
商売もせずに、何者とも知れぬ男四人が転がり込んではいかにも怪しいから、文吾親分が香具師数人を寄越し、商売の準備をしているかのように装ってくれていた。
神田上水の南側に位置する牛込早稲田一帯は、風光明媚な景勝地であることから諸藩の下屋敷や抱屋敷が多い他、寺社が無数に点在する。店のある表通りをまっすぐ西へ向かうと、高田富士がある高田稲荷を擁する宝泉寺別当と、虫封じや商売繁盛のご利益で知られる穴八幡宮の間に門前町が東西に伸び、その先の下戸塚村には高田馬場が広がっている。秋も盛りとなった今頃は、高田富士を訪れたり、紅葉狩りを楽しみにやってくる市中の行楽客が多く目についた。
藤五郎は小島らの様子伺いに店に顔を出していたし、正馬もしばしば出かけては、小島らと共に村一つ向こうにある楽其楽園の様子に目を光らせていた。だが正馬は、紀堂には牛込を訪れることを禁じた。
浅草とは異なり馬場下は楽其楽園に近すぎる、薩摩の隠密らが近辺を見張っているであろうから、安易に姿を見せてはならぬという。
そして、
「私がおらぬ時には他出してはならぬぞ。決して油断するな」
とことあるごとに紀堂に言い含めた。
師匠の言いつけはもっともであったが、楽其楽園へ広衛に会いにいくことも叶わず、小島たちからも遠ざかったのがもどかしかった。
だが、前回のように楽其楽園を訪問して、再び隠密に襲われるようなことがあってはならないのだ。じりじりとしながら、正馬と藤五郎の帰りを待つ他になかった。
堀家上屋敷からは杉本や柳田から時折便りがあり、老中たちの動向を知らせてきたが、事態は膠着したまま老公を抑え込む術は見出せずにいた。
時ばかりが過ぎていく。
「老公に残された時は多くはない。そう遠からぬうちに必ず動く」
紀堂の焦りを見抜いたように、正馬がことあるごとに言った。
広衛はどうしているだろうか。兄はいつまた会いにきてくれるのか、と心待ちにしているのではなかろうか。そう思っては胸苦しい気持ちに苛まれる紀堂を、有里がさり気なく訪っては他愛のない話をして気を紛らわせてくれた。
紀堂が大鳥屋に閉じこもっていることは、有里にとっては安堵することであるらしく、目に見えて緊張が解れているのが伝わってきた。外に出て拐われかけたり、襲撃されることを思えば、店に留まっていてほしいと思うのは無理からぬことだ。紀堂は自身の焦燥を努めて押し殺し、有里と寄り添うようにして時を過ごした。
***
長月も終わりに近づいたその日、昼から牛込へ出かけていた正馬は、小島を連れて夕刻までには戻ることになっていた。
牛込へ出向けぬ紀堂の気持ちに配慮してくれたらしいとわかっていたが、かれこれ十日ほども彼らの顔を見ていない。何ごとも起きてはいないにせよ、直接消息を尋ねることができる、と気が逸っていた。
大鳥屋が後援をしている絵師が訪ねてきたので、居間でもてなしていた紀堂は、夕七ツの時鐘を聞いてふと顔を上げた。開いた障子の外へ目を向ける。
日が短くなっていた。
薄い筋雲がたなびく清明な空が、西の方から赤味を増しているのを、漠とした胸騒ぎを覚えながら見上げた。
「野月様は、まだお帰りじゃないか?」
客を見送って表店へ行きながら、帳場の手代筆頭に訊ねる。
「いえ、お見かけしておりませんが……裏からお戻りではいらっしゃいませんか?」
文机で帳簿を繰っていた信介が、首を傾げた。
いや、と呟いてから、紀堂は店内を見回して眉をひそめた。
「藤五郎が見えないが」
「大番頭でしたら、先ほどお客様がお見えになられて、ご一緒に出ていかれましたが」
「どちらのお客様だい?」
問うた途端、信介が苦笑いして声をひそめた。
「ねずみの弥之吉でございます。土間に飛び込んできたもので、大番頭が大慌てなさって……」
紀堂は知らずに両目を瞠り、大きく息を飲んでいた。
弥之吉は大鳥屋に報奨の金を取りに幾度か訪れていたが、表店に入ってくることは決してなかった。あんな敷居の高いお店に香具師なんぞが入れませんや、と言って、いつも裏の木戸から入ってくるのだ。
「信介」
小声で促し、目で帳場の後ろの座敷を指す。主人の顔色を見て、察しのいい手代筆頭が表情を引き締めた。
帳場で他の手代や番頭との商談に熱中している顧客の邪魔にならぬよう、静かに、しかし速やかに奥へ入るなり、
「それはいつ頃のことだ」
と間髪入れずに囁いた。
「まだ四半時とは経っておりません。戻っていらっしゃらないので表を見ましたのですが、お姿がなく」
答えるうちに、信介の人のいい顔が曇っていく。
「──どうかなさいましたのですか、旦那様」
「様子がおかしい。野月様も戻っておられないし、藤五郎が私に一言もなく店を離れるのも妙だ」
「調べて参りましょうか」
紀堂は一瞬黙った。見聞方を担う有能な手代筆頭だから、二人の居場所を調べることはできるだろうが……。
「……いや、私が行ってくる」
つかみ所のない焦燥が、胸のうちで燻っていた。一時も無駄にすることが惜しい。
どんどんと鼓動が荒々しさを増す。何かが起こっている、と直感が告げていた。
「牛込へ行く。駕篭を頼む」
「承知致しました。すぐに」
即座に表へ出て行く手代と一旦別れ、母屋へ取って返した紀堂は、袴をつけて羽織を纏い、懐に短刀を押し込んだ。それから自室の刀掛けに向かい、躊躇なく打刀を取り上げた。腰に差すわけにはいかないから、刀袋にそれを仕舞い表へ取って返す。
店内に入らず、台所から脇手の路地へ出て表通りへたどり着くと、すでに信介が駕篭を仕立てて待っていた。
「旦那様……」
「事情が判ったら牛込から人を送る」
「へぇ、承知致しました。お気をつけて」
駕篭に乗り込んだ紀堂に、手代が強張った声で応じる。
「後を頼む」
言った途端、駕篭舁きたちが足早に動き出した。
速やかに信介と大鳥屋が視界から消える。
「すみませんが、できるだけ急ぎで頼みます。一刻を争うもんでね」
声を張ると、へい、という威勢のいい駕篭舁きの声が帰ってくる。
手足を突っ張り、駕篭の揺れに耐えながら前を睨む。次第に暮色を募らせる町の賑わいも耳に入らなかった。紀堂の心は、不安に急き立てられるようにして、すでに走っていた。
その響きにもの寂しい秋の気配を感じながら、紀堂は目の前の男たちの凍りついた顔を見詰めていた。
「──な、なに……?」
小島ら四人が、呆けたように呟いた。
浅草福井町の表店である。元は貸しに出していた店を大鳥屋の奉公人の住まいということにして、千川家旧臣の四名がここに暮らしていた。小さいが、風流な庭もついた二階家だった。
紀堂と藤五郎、正馬に相対して茶の間に座した四人の前には、紀堂が千川広忠より贈られた両刀があった。
「いったい……どういう意味か。野月どの」
惑乱のあまり、今にも泣き出しそうな顔で小島が声を上げた。
「殿の……お、お子様。この、大鳥屋が……?」
「いかにも、さようにございます」
正馬がゆっくりと頷いた。四人の顔が引きつり、息が浅くなる。
三年前に千川広忠が京へ出向いた際、箱根山中で警護に加わった野月正馬が、広忠と高田紫野の庶子を預かっていたという。その子が、目の前の大鳥屋五代目であるという。愚弄する気かと激怒すればいいのか、それとも実子の生存を喜べばいいのかわからぬように、男たちの顔が苦しげに歪む。
「お殿様より父・正国へ宛てられたお手紙が残ってございます。境家老様によるものも、同じく」
そう言いながら、二通の文書を四人の前に滑らせる。
「どうぞ、ご印章とご花押をお検め下さいませ」
小島がわなわなとふるえる手を伸ばし、二通の文を開いていくのを見て、三人が這うようににじり寄る。
大鳥屋に到着した翌朝、正馬は急ぎ鎌倉へ戻り、この二通を携えて戻ったのだった。
「小島どの……」
近習の加納忠厚、そして給人の織部武二郎と水沢慎一郎が、食い入るような視線を小島へ向ける。
書面に目を落としたまま、小島が強張った顎をぎこちなく頷かせた。
「間違いない」
身分のある武家では右筆が文書を作成し、主人は最後に印章や花押印を捺すか、花押を据えるのみである。家政に深くかかわる用人は、主の印章と花押を目にする機会が多い。長年用人として仕えてきた小島であれば、尚更だ。
「ご公儀か、あるいはご宗家が保管しているご印章と照合すれば明らかであろうが、私が見間違えるわけがない。……これは右筆の筆跡ではないな。殿御自らのお手によるものだ……」
声にならぬ声が充満するかのような沈黙が、明るい茶の間に降り積もる。
ちり、ちり、とどこかの軒先の風鈴が鳴っている。
「……なんということか……」
小島が畳に手をついて、打ちひしがれたように喘いだ。瞬きもせずに紀堂を見詰め、それから文書と両刀に目を落とす。
紀堂に戻した両眼に、透明な膜が張る。と思う間に、どっと涙が吹き出した。
「……そこもとが、殿の忘れ形見でおられると……まさか……まさか」
顔を拭うこともせず、肩を波打たせて声をかすれさせる。
「なんと……なんと申せばよいか、わからぬ……」
叫ぶようにむせび泣く小島の隣で、
「広彬様」
と織部がみるみる両目を赤くした。
「お血筋はもはや絶えたものと、そう思ってございました……」
そう呻くなり、さっと上座から脇に体を移して平伏した。
「広彬様がおられれば、お家の再興が叶いまする。なんと……なんという慶賀でございましょうか」
「いかにも……いかにも、その通り」
加納と水沢が、頬を濡らしながら顔を歪める。
「生き恥をさらすこの身に、ようやっと使い道が見つかったというもの。ご家門の再興のため、それがし命を惜しみませぬ」
皆が次々上座を退いて、紀堂に向かって泣きながら拝跪した。
「お待ちください」
紀堂は片手を上げ、熱気を帯びてくる声を制すると、
「私が皆様に出自を明かしましたのには、わけがあるのです」と平静に言った。
紅潮した頬を濡らしながら、皆が訝しむように口を閉じた。
「私は大鳥屋店主であり、向後千川家を継ごうとは夢にも考えてはおりません。千川家嫡男は広衛様お一人であって、ご家督を継ぐのは広衛様をおいて他にはおられない」
「いや、しかし……」
小島が悲壮な表情で身を乗り出そうとする。
「今こうして出自を明かしましたのは」じっと小島の目を見詰め、ゆっくりと言った。
「皆様のお力をお借りせねばならぬからなのです。広衛様の御為に、場合によってはお命を預けていただきたいからなのです」
「……意味が、よく……」
織部がぎこちなく言う。
「それは、いかなる意味でございますか。若殿の……?」
「小島様、織部様、水沢様、加納様」
紀堂は鋭く表情を引き締めた。
「どうかお心を静めてお聞きください。……広衛様は、ご存命でおられます」
死んだような沈黙が、部屋に広がる。
誰も、動かない。息をするのも忘れ、塑像となったかのごとく瞬きすらしない。
紀堂は一同を見回し、ことの経緯を語り始めた。
放心と激情が、交互に侍たちを襲ったように見えた。
広衛が楽其楽園に匿われていると知った途端、淀んでいた彼らの瞳に、鮮烈なまでの生気が宿った。
皆、泣き叫ぶこともなかった。ただ滂沱と濡れた顔を覆い、背を波打たせて蹲っていた。
「尾形め。早まりおって」
やがて、小島が囁いた。
「死に急ぎおって。馬鹿め……」
馬鹿め、馬鹿め、と赤い目からぼたぼたと涙を落として繰り返す姿に、目頭が熱くなった。
「小島様、皆様……」
「広彬様、小島とお呼び下さいませ」
すすり上げながら、小島が恐懼して頭を下げる。
紀堂は眉を下げて逡巡すると、
「……小島どの」
と言い直した。
「越前守様や大和守様は、薩摩の力を削ぐ機会をうかがっておられます。それまで、広衛を何としても守りきらねばなりませぬ。隠密衆や警護が固く守っているとはいえ、薩摩の力は強い。広衛を亡き者にしようと、また老公らの手が伸びるやもしれません。その際は……」
「はい。身命を賭して、お守り致しまする」
「今度こそ……今度こそは」
侍たちが涙に濡れた顔を拭い、燃えるような気迫を両目に滾らせる。
広忠を目の前で失った痛苦が、悔恨の楔となって胸に深々と刺さっている。紀堂と同じく、正馬と同じく、仇に対するのと等しい怨念が自らを焼いている。
小島が拭ったように光る目で、一膝身を乗り出した。
「畏れながら、広彬様。いざという時のために、我らは楽其楽園の近くへ移るべきではないかと存じます。浅草からでは、いささか時を要しまする」
「私も、それを考えておりました」小島の言葉に紀堂は頷いた。
ここから楽其楽園へ行くには、最速でも半時はかかる。浅草御門橋の袂から船河原橋手前までは船でも行くことができるが、船河原橋の真下には堰があって、そこから関口大洗堰までの江戸川と呼ばれる中流域は、取水域であり御留川と呼ばれる禁漁区でもあることから船の運行は禁じられている。船河原橋袂の市兵衛河岸で舟を降りたら、後は江戸川沿いを神田川上水に至るまで走りつづける他にないのだ。
「牛込に、急ぎ皆様方のお住まいを用意しようと思料しております。数日のうちには準備できますでしょう」
藤五郎が心得た様子で続く。
「かたじけのうございます。若殿は、我らの命に替えましても、必ずお守り申し上げます」
小島の声に、往時の張りが漲っていた。三人の侍の顔が、生気を取り戻したように輝いていた。
文月の夜から彼らの魂に巣食っていた憎悪と絶望が、燃えるような執念と切望へと変貌していくのが見て取れる。
主家に強い忠誠を誓う彼らにとって、広衛と広彬の生存がどれほど大きな意味を持つのかを、覚らずにはいられない。
紀堂を希望そのもののように見詰める四人の目が、途方もなく重く感じられる。
出自を明かしたからには、千川家の家督とは無関係という話は通らない。紀堂はそう思っていても、千川家旧臣である彼らはそうは思うまいと覚悟はしていた。だが、己が何者であるのかを伏せたまま、広衛の生存を伝えることは困難だった。なぜ一介の商人にすぎぬ紀堂に堀家の公用人が明かしたのか、なぜ境家老への目通りが許されたのかと問われれば、答えようがない。
彼らにこれ以上真実を隠すべきではない、と心を決めた。
彼らは広衛と広彬に希望をつないでいる。もはや、逃げるわけにはいかない。
広衛を守り抜いて、家門を再興する他に道はないのだ。
喜びと興奮にふるえる侍たちの姿に、紀堂は膝の上の両手を握り締めていた。
***
その四日後、千川家旧臣たちは浅草の表店を出て、牛込馬場下横丁の仕舞た屋へ移った。もとは小間物屋であったそうで、藤五郎から相談を受けた黒須屋文吾がどこからか都合し、それを大鳥屋が居抜きで買い取ったのだった。
商売もせずに、何者とも知れぬ男四人が転がり込んではいかにも怪しいから、文吾親分が香具師数人を寄越し、商売の準備をしているかのように装ってくれていた。
神田上水の南側に位置する牛込早稲田一帯は、風光明媚な景勝地であることから諸藩の下屋敷や抱屋敷が多い他、寺社が無数に点在する。店のある表通りをまっすぐ西へ向かうと、高田富士がある高田稲荷を擁する宝泉寺別当と、虫封じや商売繁盛のご利益で知られる穴八幡宮の間に門前町が東西に伸び、その先の下戸塚村には高田馬場が広がっている。秋も盛りとなった今頃は、高田富士を訪れたり、紅葉狩りを楽しみにやってくる市中の行楽客が多く目についた。
藤五郎は小島らの様子伺いに店に顔を出していたし、正馬もしばしば出かけては、小島らと共に村一つ向こうにある楽其楽園の様子に目を光らせていた。だが正馬は、紀堂には牛込を訪れることを禁じた。
浅草とは異なり馬場下は楽其楽園に近すぎる、薩摩の隠密らが近辺を見張っているであろうから、安易に姿を見せてはならぬという。
そして、
「私がおらぬ時には他出してはならぬぞ。決して油断するな」
とことあるごとに紀堂に言い含めた。
師匠の言いつけはもっともであったが、楽其楽園へ広衛に会いにいくことも叶わず、小島たちからも遠ざかったのがもどかしかった。
だが、前回のように楽其楽園を訪問して、再び隠密に襲われるようなことがあってはならないのだ。じりじりとしながら、正馬と藤五郎の帰りを待つ他になかった。
堀家上屋敷からは杉本や柳田から時折便りがあり、老中たちの動向を知らせてきたが、事態は膠着したまま老公を抑え込む術は見出せずにいた。
時ばかりが過ぎていく。
「老公に残された時は多くはない。そう遠からぬうちに必ず動く」
紀堂の焦りを見抜いたように、正馬がことあるごとに言った。
広衛はどうしているだろうか。兄はいつまた会いにきてくれるのか、と心待ちにしているのではなかろうか。そう思っては胸苦しい気持ちに苛まれる紀堂を、有里がさり気なく訪っては他愛のない話をして気を紛らわせてくれた。
紀堂が大鳥屋に閉じこもっていることは、有里にとっては安堵することであるらしく、目に見えて緊張が解れているのが伝わってきた。外に出て拐われかけたり、襲撃されることを思えば、店に留まっていてほしいと思うのは無理からぬことだ。紀堂は自身の焦燥を努めて押し殺し、有里と寄り添うようにして時を過ごした。
***
長月も終わりに近づいたその日、昼から牛込へ出かけていた正馬は、小島を連れて夕刻までには戻ることになっていた。
牛込へ出向けぬ紀堂の気持ちに配慮してくれたらしいとわかっていたが、かれこれ十日ほども彼らの顔を見ていない。何ごとも起きてはいないにせよ、直接消息を尋ねることができる、と気が逸っていた。
大鳥屋が後援をしている絵師が訪ねてきたので、居間でもてなしていた紀堂は、夕七ツの時鐘を聞いてふと顔を上げた。開いた障子の外へ目を向ける。
日が短くなっていた。
薄い筋雲がたなびく清明な空が、西の方から赤味を増しているのを、漠とした胸騒ぎを覚えながら見上げた。
「野月様は、まだお帰りじゃないか?」
客を見送って表店へ行きながら、帳場の手代筆頭に訊ねる。
「いえ、お見かけしておりませんが……裏からお戻りではいらっしゃいませんか?」
文机で帳簿を繰っていた信介が、首を傾げた。
いや、と呟いてから、紀堂は店内を見回して眉をひそめた。
「藤五郎が見えないが」
「大番頭でしたら、先ほどお客様がお見えになられて、ご一緒に出ていかれましたが」
「どちらのお客様だい?」
問うた途端、信介が苦笑いして声をひそめた。
「ねずみの弥之吉でございます。土間に飛び込んできたもので、大番頭が大慌てなさって……」
紀堂は知らずに両目を瞠り、大きく息を飲んでいた。
弥之吉は大鳥屋に報奨の金を取りに幾度か訪れていたが、表店に入ってくることは決してなかった。あんな敷居の高いお店に香具師なんぞが入れませんや、と言って、いつも裏の木戸から入ってくるのだ。
「信介」
小声で促し、目で帳場の後ろの座敷を指す。主人の顔色を見て、察しのいい手代筆頭が表情を引き締めた。
帳場で他の手代や番頭との商談に熱中している顧客の邪魔にならぬよう、静かに、しかし速やかに奥へ入るなり、
「それはいつ頃のことだ」
と間髪入れずに囁いた。
「まだ四半時とは経っておりません。戻っていらっしゃらないので表を見ましたのですが、お姿がなく」
答えるうちに、信介の人のいい顔が曇っていく。
「──どうかなさいましたのですか、旦那様」
「様子がおかしい。野月様も戻っておられないし、藤五郎が私に一言もなく店を離れるのも妙だ」
「調べて参りましょうか」
紀堂は一瞬黙った。見聞方を担う有能な手代筆頭だから、二人の居場所を調べることはできるだろうが……。
「……いや、私が行ってくる」
つかみ所のない焦燥が、胸のうちで燻っていた。一時も無駄にすることが惜しい。
どんどんと鼓動が荒々しさを増す。何かが起こっている、と直感が告げていた。
「牛込へ行く。駕篭を頼む」
「承知致しました。すぐに」
即座に表へ出て行く手代と一旦別れ、母屋へ取って返した紀堂は、袴をつけて羽織を纏い、懐に短刀を押し込んだ。それから自室の刀掛けに向かい、躊躇なく打刀を取り上げた。腰に差すわけにはいかないから、刀袋にそれを仕舞い表へ取って返す。
店内に入らず、台所から脇手の路地へ出て表通りへたどり着くと、すでに信介が駕篭を仕立てて待っていた。
「旦那様……」
「事情が判ったら牛込から人を送る」
「へぇ、承知致しました。お気をつけて」
駕篭に乗り込んだ紀堂に、手代が強張った声で応じる。
「後を頼む」
言った途端、駕篭舁きたちが足早に動き出した。
速やかに信介と大鳥屋が視界から消える。
「すみませんが、できるだけ急ぎで頼みます。一刻を争うもんでね」
声を張ると、へい、という威勢のいい駕篭舁きの声が帰ってくる。
手足を突っ張り、駕篭の揺れに耐えながら前を睨む。次第に暮色を募らせる町の賑わいも耳に入らなかった。紀堂の心は、不安に急き立てられるようにして、すでに走っていた。
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