58 / 59
帰還(二)
しおりを挟む
水野越前守ら幕閣と石翁、またお美代の方からの口添えを得て千川家を再び興すことが許されたのは、神無月の終わりのことだった。
千川家への襲撃は柳井対馬守が独断にて企んだ所業であり、千川家当主と嫡子の罪状は事実無根である、と世間には公表された。そして、嫡子広衛は近習と取り違えられて無事であり、大御所の格別の思し召しを受けた公方様より、千川家家督を相続すべきことが指示されたと伝えられた。
千川家当主として三番町に新たな上屋敷を拝領した広衛の元には、散り散りになっていた旧臣が次々戻ってきた。
境家老のお預も、広衛の母・お永への押し込めも即座に解かれた。お永は自由の身となった息子に見えると、長いこと塑像のように凍りついていたという。
「母上、ご心配をおかけ申し上げました……ただ今、戻りましてございます」
と広衛が母の手を取ると、みるみる目に正気を取り戻し、息子を掻き抱いて声が枯れるまでむせび泣いたそうだった。
大鳥屋の前に一台のお忍び駕篭が着けられたのは、師走も暮れの、凍えるように寒い雪の夜のことだった。
藤五郎の知らせを聞いて迎えに出た紀堂は、駕篭から現れた男の姿に静かに両目を瞠った。
「──大和守様……」
しんしんと降りしきる雪の中、堂々とした体躯をした壮年の男は恭しく腰を屈めると、
「突然の訪問、どうぞお許し下されませ」
と控えめに言った。
奥座敷に案内された大和守は、上座を固辞してあくまでも臣下の態度を崩さなかった。
紀堂が何者であるのか、この男も承知している。根負けした紀堂が向き合って坐ると、大和守は張り出した眉骨の奥の目を上げた。
金壷眼などと揶揄される目は、くっきりとした二重で瞳が大きく、ひたと見据えられると圧迫されるような力強さがある。大きめの鼻と唇といい、強烈な存在感を人に与える顔だった。それにもかかわらず、ひとつひとつの動作が生真面目さを表すように控えめで、物静かだった。
「広彬様……」
大和守が声を低くして言った。
「今夜御前に参上いたしましたのは、ぜひともご奏上せねばならぬ事態が出来いたしましたからなのです」
「……と、申されますと……」
紀堂も小声で問い返した。
若年寄が自ら足を運ぶ理由を、心のどこかで覚っていた。
男の瞳に浮かぶ、労りとも親しみとも取れる不思議な表情が、それを紀堂に教えている気がする。
水野越前守の懐刀と呼ばれる男は、わずかな間を置いてから微動もせずに言った。
「大御所様のご容態が、優れぬご様子にございます。年の瀬よりご病床にお就きでおられましたが、畏れながら、ご本復はもはや困難との、ご医師のお見立てでございまする」
行灯が仄明るい光を投げかける座敷に、しんと静寂が広がっていく。
さらさらと囁く吹雪の音が、障子の向こうの、雨戸の外にかすかに聞こえる。
雪に音が吸い取られたかのような静けさの中にいると、この男と己以外、世界が消え失せたかのように錯覚する。
「──お名乗り上げを、お望みになられますか」
紀堂は瞬きもせず大和守を見詰めた。
「これが、最後の機会となるやもしれませぬ。お望みとあらば、越前守様とそれがしが西丸へお供申し上げまする。お父上様と……ご対面をお望みでございましょうか」
「──いいえ」
紀堂が静かに応じると、大和守は問い返すように見返してきた。
「いいえ、望みませぬ。越前守様と大和守様のお心遣いには、まことに感謝の念に耐えませぬ。が……私の父は、今も昔も千川広忠様より他にはおられませぬのです。母がそう望み、父もそう望んでくださいました」
大御所へどのような気持ちを抱いているのか、自分でも判然とはしない。対面し、どんな感情が湧くのかも想像がつかない。だが、それでもやはり、千川広忠を父と慕う気持ちは止まないだろう。
広忠が我が子ではないと知りながら紀堂を慈しんでくれたように、紀堂もまた、広忠を父として慕うことを止めないだろう。それでいい。それが、いい。
己は大鳥屋店主として、広衛の兄として生きたいのだ。
他の何者にも、なりたいとは思わない。
「……左様にございますか」
ゆっくりと頷きながら、大和守はため息のように言った。
「よく……わかりましてございます」
さらさらと、雨のように絶え間のない音がやわらかく聞こえている。
それに耳を傾けてから、紀堂は口を開いた。
「……公方様が、大御所様に代わりご政道を正されることとなれば、千川が脅かされることはもはやございませぬでしょうか」
「二度とは」
大和守が低く応じた。
「西丸勢力が一掃されれば、大奥の専横ももはやこれまで通りとは参りませぬ。大御台様は、公方様と越前守様のご意向を無視することができぬお立場となられましょう」
それに、と続ける。
「高輪の老公は、近頃正気を失い、妄念の中に籠もっているらしいと聞き及んでおりまする。島津家ご当主は大御台様に諾として従わざるを得ないお立場であられたが、元より千川様を脅かすことなど望んではおられませぬ。何卒穏便に願いたいと再三お申し出になられてございます」
紀堂はゆっくりと頷いた。
島津家はすでに山潜りを多く失い、しばらくの間身動きが取れぬだろう。老公が正気を失い、大御台も保身に忙しいとなれば、千川家に危険が及ぶことはないはずだ。
薩摩が越前守に借りを作ったことは、大御所薨去後に越前守が権力を掌握することを容易にするだろう。これも越前守の深謀であったかと、空恐ろしい心地もする。
だが、家臣を失い、あるいは傷を負わせられた大和守は、それで収まるものであろうか。
「伊予守様は、まことに清廉な、お心の深きお方でおられました」
ぽつりと男が口を開いた。
「建議書を伊予守様よりお預かり致しました時、それがしは伊予守様をお助け申し上げたつもりでおりました。しかしながら、それが老公を激怒させ、襲撃を引き起こしたと知りました時の痛苦は......言葉には言い表わせませぬ」
鋭く胸を衝かれ、紀堂は男を凝視した。
だから、ここまで犠牲を払ったというのか。取り返しのつかぬ悔恨のために、ここまでしたと。
「広衛様だけは何としてもお守りしたいと、越前守様に無理を申し上げ、楽其楽園にお匿い致しましたのです。ご家門の再興は、それがしにとっても幸甚極まりないことに存じます」
控えめにそう語る若年寄をしばし見詰めると、紀堂は両手を握り締めながらゆっくりと囁いた。
「かたじけのうございます……」
男は長身を屈めて恐懼すると、雪の音を聞いているかのように、目を伏せたままじっと俯いていた。
***
翌年の睦月の七日、大御所は薨去した。
大鳥屋で静かな松の内を過ごしながら、紀堂はその知らせを越前守から遣わされた公用人の牧田から受け取った。
大御所や将軍の葬儀は大掛かりなものとなるため、葬儀の準備が整うまで、逝去の報は一般には伏せておかれることが多い。
「大御所様がご薨去が世間に公表されるのは、睦月の晦日となりましょう」
牧田が丁寧な口調で言った。
「左様にございますか。……わざわざのお運び、かたじけのうございます」
紀堂が懇篤に礼を述べると、男はきつく切れ上がった両目に湖面のような静けさを浮かべ、しばしこちらを見詰めていた。
「……石翁どのとお美代の方様は、もはや権勢を失いましょう。西丸の佞人どもも一掃される。林肥後守も、むろんのこと。……そうそう、高輪の老公は、近頃ますます譫妄はげしく夢と現の区別も怪しいそうにございます」
独り言のような呟きを、身動ぎもせずに聞いた。
「……御身は将軍家の御世に仇なす希代の大罪人であると妄言を繰り返しては、なぜ御目付を呼んで裁かぬのだと騒ぎ立てておられるとか。公方様やご閣老方の御前にて弁明させよと、床で懇願しておられますそうな。……かと思うと、側近を大御所様のご落胤様であると言い張って、共に天下を手中にせんと、奇怪なお考えを延々語っておられるそうにございます。かつては薩摩の名君と聞こえたお方が、なんとも……嘆かわしいことにございますな」
冷やかな笑みが、薄い唇にうっすらと滲む。
「──死を与えるよりも恐ろしき、すさまじい復讐を成し遂げられたものだと、我が主も口を極めて嘆美してございます」
そう囁いて、男は恭しく叩頭したのだった。
公用人を見送った紀堂は、人気のない庭に出た。
数日前にまた雪が降り積もり、純白の雪が屋根も庭木も厚く覆っていた。
雪化粧を施された老松や柳が映り込む、鏡のような池の面を見下ろした。
新年を寿ぐ日本橋の賑わいが、淡く耳をくすぐっている。
顔を上げれば、鳥追の三味が曇り空にからりと明るく響き渡り、遠くに目を転じれば、色とりどりの凧が競うように空を登っていくのが見える。
低く空を覆う雲の間から、薄い光が差した。透明な、熱のない光の筋は、雪の積もった店と母屋の屋根を白く輝かせる。
終わったのだと思った。
己を縛っていた目に見えぬ重いものが、解けて、消え去った。
背筋が伸びるように凛と冷たい、真冬の空気を深く吸い込み、紀堂はそっと瞼を閉じた。
大御所のためではない気がする。そうではなく、もっとささやかで儚い何かを思って、祈った。
千川家への襲撃は柳井対馬守が独断にて企んだ所業であり、千川家当主と嫡子の罪状は事実無根である、と世間には公表された。そして、嫡子広衛は近習と取り違えられて無事であり、大御所の格別の思し召しを受けた公方様より、千川家家督を相続すべきことが指示されたと伝えられた。
千川家当主として三番町に新たな上屋敷を拝領した広衛の元には、散り散りになっていた旧臣が次々戻ってきた。
境家老のお預も、広衛の母・お永への押し込めも即座に解かれた。お永は自由の身となった息子に見えると、長いこと塑像のように凍りついていたという。
「母上、ご心配をおかけ申し上げました……ただ今、戻りましてございます」
と広衛が母の手を取ると、みるみる目に正気を取り戻し、息子を掻き抱いて声が枯れるまでむせび泣いたそうだった。
大鳥屋の前に一台のお忍び駕篭が着けられたのは、師走も暮れの、凍えるように寒い雪の夜のことだった。
藤五郎の知らせを聞いて迎えに出た紀堂は、駕篭から現れた男の姿に静かに両目を瞠った。
「──大和守様……」
しんしんと降りしきる雪の中、堂々とした体躯をした壮年の男は恭しく腰を屈めると、
「突然の訪問、どうぞお許し下されませ」
と控えめに言った。
奥座敷に案内された大和守は、上座を固辞してあくまでも臣下の態度を崩さなかった。
紀堂が何者であるのか、この男も承知している。根負けした紀堂が向き合って坐ると、大和守は張り出した眉骨の奥の目を上げた。
金壷眼などと揶揄される目は、くっきりとした二重で瞳が大きく、ひたと見据えられると圧迫されるような力強さがある。大きめの鼻と唇といい、強烈な存在感を人に与える顔だった。それにもかかわらず、ひとつひとつの動作が生真面目さを表すように控えめで、物静かだった。
「広彬様……」
大和守が声を低くして言った。
「今夜御前に参上いたしましたのは、ぜひともご奏上せねばならぬ事態が出来いたしましたからなのです」
「……と、申されますと……」
紀堂も小声で問い返した。
若年寄が自ら足を運ぶ理由を、心のどこかで覚っていた。
男の瞳に浮かぶ、労りとも親しみとも取れる不思議な表情が、それを紀堂に教えている気がする。
水野越前守の懐刀と呼ばれる男は、わずかな間を置いてから微動もせずに言った。
「大御所様のご容態が、優れぬご様子にございます。年の瀬よりご病床にお就きでおられましたが、畏れながら、ご本復はもはや困難との、ご医師のお見立てでございまする」
行灯が仄明るい光を投げかける座敷に、しんと静寂が広がっていく。
さらさらと囁く吹雪の音が、障子の向こうの、雨戸の外にかすかに聞こえる。
雪に音が吸い取られたかのような静けさの中にいると、この男と己以外、世界が消え失せたかのように錯覚する。
「──お名乗り上げを、お望みになられますか」
紀堂は瞬きもせず大和守を見詰めた。
「これが、最後の機会となるやもしれませぬ。お望みとあらば、越前守様とそれがしが西丸へお供申し上げまする。お父上様と……ご対面をお望みでございましょうか」
「──いいえ」
紀堂が静かに応じると、大和守は問い返すように見返してきた。
「いいえ、望みませぬ。越前守様と大和守様のお心遣いには、まことに感謝の念に耐えませぬ。が……私の父は、今も昔も千川広忠様より他にはおられませぬのです。母がそう望み、父もそう望んでくださいました」
大御所へどのような気持ちを抱いているのか、自分でも判然とはしない。対面し、どんな感情が湧くのかも想像がつかない。だが、それでもやはり、千川広忠を父と慕う気持ちは止まないだろう。
広忠が我が子ではないと知りながら紀堂を慈しんでくれたように、紀堂もまた、広忠を父として慕うことを止めないだろう。それでいい。それが、いい。
己は大鳥屋店主として、広衛の兄として生きたいのだ。
他の何者にも、なりたいとは思わない。
「……左様にございますか」
ゆっくりと頷きながら、大和守はため息のように言った。
「よく……わかりましてございます」
さらさらと、雨のように絶え間のない音がやわらかく聞こえている。
それに耳を傾けてから、紀堂は口を開いた。
「……公方様が、大御所様に代わりご政道を正されることとなれば、千川が脅かされることはもはやございませぬでしょうか」
「二度とは」
大和守が低く応じた。
「西丸勢力が一掃されれば、大奥の専横ももはやこれまで通りとは参りませぬ。大御台様は、公方様と越前守様のご意向を無視することができぬお立場となられましょう」
それに、と続ける。
「高輪の老公は、近頃正気を失い、妄念の中に籠もっているらしいと聞き及んでおりまする。島津家ご当主は大御台様に諾として従わざるを得ないお立場であられたが、元より千川様を脅かすことなど望んではおられませぬ。何卒穏便に願いたいと再三お申し出になられてございます」
紀堂はゆっくりと頷いた。
島津家はすでに山潜りを多く失い、しばらくの間身動きが取れぬだろう。老公が正気を失い、大御台も保身に忙しいとなれば、千川家に危険が及ぶことはないはずだ。
薩摩が越前守に借りを作ったことは、大御所薨去後に越前守が権力を掌握することを容易にするだろう。これも越前守の深謀であったかと、空恐ろしい心地もする。
だが、家臣を失い、あるいは傷を負わせられた大和守は、それで収まるものであろうか。
「伊予守様は、まことに清廉な、お心の深きお方でおられました」
ぽつりと男が口を開いた。
「建議書を伊予守様よりお預かり致しました時、それがしは伊予守様をお助け申し上げたつもりでおりました。しかしながら、それが老公を激怒させ、襲撃を引き起こしたと知りました時の痛苦は......言葉には言い表わせませぬ」
鋭く胸を衝かれ、紀堂は男を凝視した。
だから、ここまで犠牲を払ったというのか。取り返しのつかぬ悔恨のために、ここまでしたと。
「広衛様だけは何としてもお守りしたいと、越前守様に無理を申し上げ、楽其楽園にお匿い致しましたのです。ご家門の再興は、それがしにとっても幸甚極まりないことに存じます」
控えめにそう語る若年寄をしばし見詰めると、紀堂は両手を握り締めながらゆっくりと囁いた。
「かたじけのうございます……」
男は長身を屈めて恐懼すると、雪の音を聞いているかのように、目を伏せたままじっと俯いていた。
***
翌年の睦月の七日、大御所は薨去した。
大鳥屋で静かな松の内を過ごしながら、紀堂はその知らせを越前守から遣わされた公用人の牧田から受け取った。
大御所や将軍の葬儀は大掛かりなものとなるため、葬儀の準備が整うまで、逝去の報は一般には伏せておかれることが多い。
「大御所様がご薨去が世間に公表されるのは、睦月の晦日となりましょう」
牧田が丁寧な口調で言った。
「左様にございますか。……わざわざのお運び、かたじけのうございます」
紀堂が懇篤に礼を述べると、男はきつく切れ上がった両目に湖面のような静けさを浮かべ、しばしこちらを見詰めていた。
「……石翁どのとお美代の方様は、もはや権勢を失いましょう。西丸の佞人どもも一掃される。林肥後守も、むろんのこと。……そうそう、高輪の老公は、近頃ますます譫妄はげしく夢と現の区別も怪しいそうにございます」
独り言のような呟きを、身動ぎもせずに聞いた。
「……御身は将軍家の御世に仇なす希代の大罪人であると妄言を繰り返しては、なぜ御目付を呼んで裁かぬのだと騒ぎ立てておられるとか。公方様やご閣老方の御前にて弁明させよと、床で懇願しておられますそうな。……かと思うと、側近を大御所様のご落胤様であると言い張って、共に天下を手中にせんと、奇怪なお考えを延々語っておられるそうにございます。かつては薩摩の名君と聞こえたお方が、なんとも……嘆かわしいことにございますな」
冷やかな笑みが、薄い唇にうっすらと滲む。
「──死を与えるよりも恐ろしき、すさまじい復讐を成し遂げられたものだと、我が主も口を極めて嘆美してございます」
そう囁いて、男は恭しく叩頭したのだった。
公用人を見送った紀堂は、人気のない庭に出た。
数日前にまた雪が降り積もり、純白の雪が屋根も庭木も厚く覆っていた。
雪化粧を施された老松や柳が映り込む、鏡のような池の面を見下ろした。
新年を寿ぐ日本橋の賑わいが、淡く耳をくすぐっている。
顔を上げれば、鳥追の三味が曇り空にからりと明るく響き渡り、遠くに目を転じれば、色とりどりの凧が競うように空を登っていくのが見える。
低く空を覆う雲の間から、薄い光が差した。透明な、熱のない光の筋は、雪の積もった店と母屋の屋根を白く輝かせる。
終わったのだと思った。
己を縛っていた目に見えぬ重いものが、解けて、消え去った。
背筋が伸びるように凛と冷たい、真冬の空気を深く吸い込み、紀堂はそっと瞼を閉じた。
大御所のためではない気がする。そうではなく、もっとささやかで儚い何かを思って、祈った。
1
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説


狐侍こんこんちき
月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。
父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。
そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、
門弟なんぞはひとりもいやしない。
寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。
かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。
のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。
おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。
もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。
けれどもある日のこと。
自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。
脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。
こんこんちきちき、こんちきちん。
家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。
巻き起こる騒動の数々。
これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
田楽屋のぶの店先日記〜殿ちびちゃん参るの巻〜
皐月なおみ
歴史・時代
わけあり夫婦のところに、わけあり子どもがやってきた!?
冨岡八幡宮の門前町で田楽屋を営む「のぶ」と亭主「安居晃之進」は、奇妙な駆け落ちをして一緒になったわけあり夫婦である。
あれから三年、子ができないこと以外は順調だ。
でもある日、晃之進が見知らぬ幼子「朔太郎」を、連れて帰ってきたからさあ、大変!
『これおかみ、わしに気安くさわるでない』
なんだか殿っぽい喋り方のこの子は何者?
もしかして、晃之進の…?
心穏やかではいられないながらも、一生懸命面倒をみるのぶに朔太郎も心を開くようになる。
『うふふ。わし、かかさまの抱っこだいすきじゃ』
そのうちにのぶは彼の尋常じゃない能力に気がついて…?
近所から『殿ちびちゃん』と呼ばれるようになった朔太郎とともに、田楽屋の店先で次々に起こる事件を解決する。
亭主との関係
子どもたちを振り回す理不尽な出来事に対する怒り
友人への複雑な思い
たくさんの出来事を乗り越えた先に、のぶが辿り着いた答えは…?
※田楽屋を営む主人公が、わけありで預かることになった朔太郎と、次々と起こる事件を解決する物語です!
※歴史・時代小説コンテストエントリー作品です。もしよろしければ応援よろしくお願いします。

ユキノホタル ~名もなき遊女と芸者のものがたり~
蒼あかり
歴史・時代
親に売られ遊女になったユキ。一家離散で芸者の道に踏み入った和歌。
二度と会えなくても忘れないと誓う和歌。
彼の幸せを最後に祈るユキ。
願う形は違えども、相手を想う気持ちに偽りはない。
嘘と欲と金が渦巻く花街で、彼女たちの思いだけが真実の形。
二人の少女がそれでも愛を手に入れ、花街で生きた証の物語。
※ ハッピーエンドではありません。
※ 詳しい下調べはおこなっておりません。作者のつたない記憶の中から絞り出しましたので、歴史の中の史実と違うこともあるかと思います。その辺をご理解のほど、よろしくお願いいたします。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる