異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳

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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜

5-19 ムキじぃーちゃんの意外な弱点?!

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 この日は久しぶりに私とムキじぃーちゃんとドラしゃんの三人で食事の準備をする事にした。

ドラしゃんとはお菓子作りや朝ご飯の支度やらで一緒に作ることはあるが、ムキじぃーちゃんと料理をするのは久しぶりになる。

ムキじぃーちゃんと料理をしたのは、私達がまだ小さい頃に月一回していたバーベキューや街造りの旅で一緒に料理をしたのが...最後になるのかなぁ?それぐらい一緒に料理をしていない。

そう考えると本当に久しぶりとなるので、変にやる気に満ちてしまった。

が。
が、だ!!
が、なのよぉ~!!!!

数分もしないうちに私のやる気は一気に急降下することに....。

その原因はと言うと...ムキじぃーちゃんの料理の仕方にあった。

ムキじぃーちゃんの料理はよく言えば豪快、悪く言えば...ザッとしている。
料理とはなんぞやと言いたくなるぐらい...。

何せ素材が丸わかりの料理だからだ。
もはやそれは料理とはいわないのでは?

基本皮は剥かないし、野菜を切っても二等分までしか切らない。
切り刻むとか、煮溶かすとかを知らないのかと思うぐらいザッとしている。

だいぶ昔に私とお兄ちゃんがムキじぃーちゃんが作った料理で腹を壊して寝込んだ事があったのを思い出した。

その時は皆からこんこんと説教されて、さすがのムキじぃーちゃんも反省したのか野菜の皮むきはする様になってはいたが...。

そう...皮むきはね...。

ムキじぃーちゃんも料理を全く知らない訳ではないのよ。

ただ...知っていても面倒くさがってまったくしない...って言う方が正解なのであろう。

本人いわく素材を生かした栄養満点の男料理!!!と言うが...。
けっして不味くはないので深く追求はしない。

しかしだ。
同じ男でもドラしゃんが作る料理といったら...。

一流のホテルや料亭で出てきそうなほどの華やかかつ豪勢な料理を作り出すのだ。

本当に同じ男か?と思うぐらい...二人の料理には差がありすぎるのよ。

この日の夕飯はドラしゃんが観察して、私とお兄ちゃんとムキじぃーちゃんで料理をこなす段取りでキッチンに入った。

「リン。ニンジンってこんなものか?
芋も...こんなものでいいか!」

「ちょっ!ムキじぃーちゃん!!その芋!芽はとってよ!!毒があるんだがら!!」

「あっ?こんくらい大丈夫だろう?毒耐性あっただろう?」

「いやいやそんな問題じゃーないですよ!」

「ちょっ!ムキじぃーちゃん!お肉はもっと小さく切ってよ!
ってか、肉丸ごといれないで!!」

「ちょっ!油!油は?!!」

そんなこんなのやり取りを繰り広げた結果...。

『今すぐここから立ち退いてください!!毒物なんて物は作らせません!!』

ドラしゃんの...我慢の限界が越え、口で言うより先にムキじぃーちゃんを台所から追いやり代わりに作業をしだしたのだった。

『お前はキッチンには立つな。せっかくやりかえたシンクがボロボロになってきてるではないか?!
それにお前のコレは料理とは言わん!
またお嬢様とアキラ様が倒れます!』

そんな事を言われているにも関わらず、ムキじぃーちゃんは笑顔だ。

「そんなこと言うなよ。ちゃんと皮は剥いてるだろう?」

『それは当たり前です!食物をなんだと思っているのですか?!
お前は料理教室に通うべきだ?!』

ドラしゃんの言葉に少し不貞腐れ顔のムキじぃーん。

しかしドラしゃんの言う事は正しい。

今日の夕ご飯のメニューは鶏肉とお野菜たっぷりのクリームシチューと焼き立てパン。

野菜と木のみのサラダに魚のマリネなどなどたくさん作るのに...。

実際にムキじぃーちゃんが作った物は、ニンジンと芋の皮をむいて半分に切った物と鶏肉が丸々入ったゴツゴツした煮物??みたいな物だ。

「まぁ~腹に入りゃー一緒だろう。」

豪快に笑いながらドラしゃんの料理姿を見るムキじぃーちゃん。

『それを言ってしまったら元もこうもないですね。
皆はお前みたいに鋼鉄の胃袋をしてるわけではないんだぞ!』

ムキじぃーちゃんに文句を言いながらもドラしゃんの作業は手速い、

みるみるうちに食べれる美味しそうな料理に変わっていっていた。

私達はドラしゃんが作っていった料理を皿に盛り付けてテーブルに並べていく。
料理は壊滅的なムキじぃーちゃんなのだが、盛り付けは素晴らしかった。

見た目が華やかかつ美味しそうに盛り付けしていく。

「ワシが盛り付けしていくらリンとアキラはテーブルに並べていってくれ。」

「わかった。」

「もちろんよ!」

お兄ちゃんがテーブルを拭いて、私がランチョンマット等を並べていき、ムキじぃーちゃんが盛り付けしていったお皿を並べていく。

「重たいのは僕がするからリンは軽いのを頼むよ。」

「わかったわ。」

こうして次々と料理がテーブルに並らんでいく。

全ての料理がテーブルに並べ終える頃には父さん達も帰ってきた。

今日の夕飯は家族皆で食べて、デザートにドラしゃん特製のプリンを食べてから明日の話し合いをする事になった。

と言ってもほぼほぼ他のメンバーに話す前に、家族のみに先に今日の出来事を報告すると言う事だろうけどね...。

まぁーそれでも仕方がない。

とりあえず目の前に広がる美味しそうな料理を平らげることが先だ。

ちゃんとおかわりまで用意してくれているあたりドラしゃんは素晴らしいのだ。

『お嬢様。ゆっくり食べてくださいね。おかわりはたくさんありますから。』

「あっ!これ、ムキじぃーちゃんお手製?芋の皮が少し残ってるわ。」

「このサラダもムキじぃーちゃんだね。葉物野菜がそのままの姿では入ってるよ。せめて一口サイズが良かったかなぁー。」

「ならアキラお前の口の方を大きくしろ!そしたら入るだろう??」

なんて笑いありの食卓だ。

いつでも私達家族の食卓には笑いがある。

いいね。
しかし、この雰囲気もご飯を食べ終えるまでなんだろうけどね...。

そう思いながら、いつもよりゆっくりと私は箸を進めた。
少しでも時間稼ぎをしないと...ね?

そんな私の気持ちが分かったのだろう。
皆はいつの間にか苦笑いを浮かべていた。

「大丈夫よ、リン。しっかり食べない。」

「そうだぞ?しっかり食べないと、夜中にお腹が空くぞ?」

両親はそう言いながら取り皿に山盛りに料理を盛って私の前に置いてくれた。
ありがたい事なんだけど...。

私は苦笑いを浮かべながらも、取り分けてくれた料理をペロリと平らげた。


 翌朝、予定通りギルドの大会議室へと向かった。
昨日やらかした件についての話し合いだ。

そんな日に限って私はお寝坊をしてしまった。

慌てて準備して、お兄ちゃんにドラしゃん。
ムキじぃーちゃんや両親と一緒にギルドへ向かって大会議室の扉を開いたらそこにはそうそうたるメンバーが...。

「あへ?王様達も来たの?」

開口一番にまの抜けた私の言葉に皆は苦笑いやら溜息をついていた。

「当たり前だろうが!"あんな話"を聞いたらすっ飛んでくるわい!」

王様は私に対してそう言って中に入るよう促して来た。

私達は空いている席...というか定位置に向かう。

私達が席につくのを確認してルミばぁーちゃんが司会進行を始める。

「では、もう何回目かわからない緊急会議を始めますかね。
じゃーリン。率直に聞くよ。昨日の件なんだけど、どう言う事だい?」

皆の視線が私に集まる。

どう説明しようかと一晩悩んだが、昨日の夕食後に家族に話した内容をそのまま話すことにした。

それしかないかなぁーと思ったので、ここは正直に話す事にした。

「えっとですね...。依頼をこなしにティティ湖に行きました。
そしたら、SS級の魔物である"ブリザードヒョウ"と"フレアタイガー"が突然気配なく現れたんです。
お兄ちゃん達は警戒を強めていたのにも関わらず、ただ一人私だけがテンションを上げて目を輝かせて私は舞い上がりました。
 目の前に突然現れた魔物すら若干引き気味だったんだけど、私はそれよりふわふわのもふもふの毛皮に釘つでして...。
 お兄ちゃんに私、あの子達が欲しい?!っていったんです。」

ここまで話して皆を見ると皆は顎が外れんばかりに口を開けていた。
まぁーそうなりますよねぇー...と思いながら話を進める私。

「わかりますよ。僕達もそんな反応しましたよ。」

とお兄ちゃんが首をうんうんと縦に振りながら呟く。

「で、【大聖霊】達にも色々言われまして...でも、どうしてももふもふしたくて、仕方がないので私は一人ゆっくりと二体の魔物に近づいていったんです。」

そう言ったらラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは白目を向いて気絶してしまった。
他の人達も気絶しそうなのをグッと堪えている感じだった。

なおも私は話を続けた。

「で、お兄ちゃん達は慌てて私の後を追おうとしたんですけど、魔物の威嚇攻撃にあって動けなかったんです。
でも、なぜな私には攻撃しないので、気にせず近寄りました。」

明るく言い放つと今度は王様達が倒れた。

ありゃ~。と心の中で呟きながら私は話を続けた。

「私が近くと襲ってくるどころか、もふもふの尻尾が少し揺れていることに気付いたんですよ!
で、なんとか魔物と目と鼻の先まで近寄る事が出来たんです。」

ここまで言うと、事前に話を聞いていた家族以外は皆が意識を手放していたのだ。

「ありゃ???」

「そうなるな。」

「そうなるね。」

「そうなるわなぁー。」

『そうなりますね。お嬢様。一旦お話は中断しましょう。』

ドラしゃんにそう言われて、私は話を中断して皆の介抱をする事に。

しばらくして皆の意識が戻ったので、話を再開する。

「で、続きなんですが、ねぇ~私と友達になりましょう?て私が言うと二匹が吠えたと同時に私と二匹の足元が光ったの。
で、私と二匹の魔獣との契約は着実に行われました。
光が消える頃には私の右手の甲に見たこともない紋様が浮かび上がったの。
そして...二匹の大型の魔獣が子猫のように私にじゃれついてきたの!!
それは、最高で!!!」

私が少し興奮気味に話と皆は再び驚いた表情に。

お兄ちゃんとドラしゃんに宥められて落ち着きを取り戻した私。

そして、話の続きをする。

「で、しばらくもふもふを堪能したら、
あの子達から話を聞く事ができて。
確か、...。」

そうして、あのティティ湖で二匹と会話した事を思い出しながら伝える。

"《そんなの知れたこと。匂いをたどってきたまでだ。》

《そう。なんとも言えない甘い香りを辿ってきたのよ。》

聞いたことのない声のため私も含め皆で当たりをキョロキョロした。

しかし、それと言って人や喋れそうな精霊はいなかった。

私達が首を傾げていると...。

《何を辺りをみているのだ?》

《不思議な人達。》

そう言って鳴き声までしたのでもうこれは?!と思いゴロゴロ言っている魔獣二匹を見つめた。

すると...。

《何を不思議そうな顔をしているのだ?》

《私達は高ランクの上に長寿のため念話ぐらいできますよ?》

なんと二匹の魔獣が念話を飛ばしていたのだった。

これには【大聖霊】や【聖獣】達も驚きだった。

でも何より気になるのは...。

「ねぇ?匂いって...何?」

お兄ちゃんがそう質問した。

「そう!それよそれ!匂いってなによ?!
私毎日お風呂にも入って着替えもしているから汗臭くはないはずよ!!」

そう鼻息荒く私が主張すると二匹の魔獣は目をパチクリさせたかと思ったら笑い出したのだった。

「ちょっと?!何よ?!」

私が抗議すると二匹は私にじゃれつきながら話をしてくれた。

《我らが感じた匂いと言うのは、フェロモンみたいなものだ。
多分だが、特定の魔物にしか感じない美味な香りを感じるのだ。》

《そうなのよ。飢えをも凌駕する甘美な匂い。襲う本能より幼き頃の甘えの本能と庇護欲をそそると言うか...そんな匂いよ。魂に直接響く香りだわ。》

とりあえず依頼がまだこなせてない事を思い出したから私達以外の人達で依頼をこなしていた。

私は皆が素材集め奮闘中、もふもふを堪能しながら二匹から色々話を聞いた。

《主の匂いは世界中に充満している。匂いを感じて好意的なものもいれば。》

《貴女の血肉を自分に取り込もうと狙ってくる魔物もいますわ。》

「げえっ?!そうなの?」

《ああ。くる道中不届な連中は裁いてきたぞ。》

《私もおやつにしてきたわ。》

「へっ、へぇー。あ、ありがとう。」

私の返答に気を良くしたのか、二匹はますますのどをゴロゴロ音を立てるのだった。

本当に大型の猫だ?!

そう思いながら皆が帰ってくるのを待った。"

ここまでを伝えると会議室内で私の話を聞いていた家族以外の皆が頭を抱えだす。

「それは本当の...事なんだよなぁー??」

王様が皆を代表して質問してきた。

すると...。

《そのような事嘘ついてどうなりますか?》

《あんがい人間は低レベルの知能しかないのか?》

大会議室のテーブルの上に子猫??が二匹現れてそんな事を話し出したのだ。

ますます驚く皆。
誰かに何かを言われる前に私は話をした。

「あのね!この二匹は昨日皆に見せた、SS級の魔物である"ブリザードヒョウ"と"フレアタイガー"なの。
なんかね、朝起きたら小さくなっててね。【大聖霊】達に聞いたら、私と契約した事によって魔獣から【聖獣】に生まれ変わったらしいの。
能力値はそのままで、体を今作り替えている段階なんだって。
だから子猫みたいな姿なの。」

そう伝えると大会議室に皆の叫び声が...雄叫びとなってこだましたのだった。

それには私も叫びたくなった。
ってか、私も朝起きて叫んだよ。

何せ中々起きない私を起こしに来たのはこの二匹だったのだ。

小さな肉球にペシペシされて目が覚めるなんて...ふふふっ。

じゃなくて!!
大きさが小さくなっただけでなく、気持ち体が光輝いていたからなお驚いた。

二匹も朝目が覚めたらこうなってたと言うのだ。

急いで【大聖霊】に呼びかけて確認すると、【聖獣】化していると言うのだ。
それに関しては【大聖霊】達も驚いていたんだけどね。

だから皆が驚くのは間違いはない。

私達は皆が落ち着くまでしばらく待つ事にした。

大会議室で雄叫びが乱舞する日が来るとは...。

皆は叫びながら口々に何かを言っているが、聞き取る事は不可能だ。
私と家族と二匹は各々耳を塞いで落ち着くのを待った。

どれぐらいだっただろうか。
皆は息を切らして各々椅子に座り直し出した。

塞いでいた耳を解放して様子を伺うと、どうやら皆は叫び疲れたようだ。

すかさず皆に飲み物を用意するドラしゃん。

一息ついたところで話し合いが再開となる。

「失礼した。あまりにも処理しきれない内容ばかりだったのでね...。
長生きしていると色々あると聞くが...。本当に色々ありすぎるよ。」

「俺も自分が王として職務を全うしている間にこんな事を目にしたり、耳にするとは...思わなかったぞ。」

「俺もだ。産まれて初めてずくしでどうしたらいいのか...。
これなら、まだ書類と睨めっこしている方が楽だぞ?」

「私もこのような話を聞くとは...。人生何が起こるかわからないと昔に両親より聞きましたが...本当ですね。」

王様達それぞれそう言いながらも、私の話を自分なりに処理をしているようだった。

それは王様達だけではなかった。

今や私達の住む国の代表的な存在であるロドじぃーちゃん達も同じ様だった。

「リンやアキラ達と会ってから、今まで予想外のことを体験してきけど...ここまで来ると何がなんやら...。」

「ロドムカ。それはお前だけでないぞ。俺もだ。」

「仕方がないさ。相手はリンだよ?今までまともな事をしてくれた事あるかい?」

「ないですね。」

「ないですねぇ~。」

「ないな。」

「ない。」

ルミばぁーちゃんの言葉に、ラミィお兄ちゃん、モッケしゃん、ラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃんまでもが同調する。

「なら、私らがこの子に合わせるしかないじゃないか。今までなんとかなってきたんだから、これからもなんとかなるさ。」

「そりゃそうだが...お前はそれで"大丈夫"なのか?」

「私だって驚いてるさね。でもね、相手はリンだよ?どうにもならないさ。
 悪事を働いたわけでもなく、国を崩壊させた訳でもないだから良いじゃないかい。
それより、わたしゃー気になるのはその"リンの匂い"ってやつさ。
私らにはその"匂い"は全く感じない。しかし、あんたら魔獣...いや"元"魔獣のあんた達には感じるんだろう?」

ルミばぁーちゃんはそう言って、テーブルの上にちょこんと座って毛繕いをしている二匹の子猫に話しかけた。

二匹はルミばぁーちゃんの言葉を無視しているかのように毛繕いを続けている。

私は慌てて二匹に声をかけてルミばぁーちゃんの質問に答えるように伝えた。

二匹はやれやれといった態度でルミばぁーちゃんの方を向いて質問に答えた。

《我々だけでなく【聖獣】や【大聖霊】や精霊、聖霊とかも感じるのではない?》

《匂い方はそれぞれ異なるだろうけどね。鼻の敏感な奴ほど感じるだろうね》

二匹の言葉に皆は驚きを隠さなかった。

「しかし、獣人である我々はリンからは特にそれらしい匂いは感じないぞ?」

「まぁ~しいといえば、いつも美味しそうな食事の香りはするけどなぁ~。」

カシムじぃーちゃんとラミィじぃーちゃんがそう話す。

「ちょっ!それじゃー私が食いしん坊見たいじゃない!」

私は思わずそう叫んでしまった。
私の言葉にラディじぃーちゃんは笑っていた。

揶揄われているのがわかって悔しかった。

するとドラしゃんがしれっとラディじぃーちゃんの頭に拳を落として言葉を発した。

『お嬢様から涼やかで常に暖かい匂いと言いますか、オーラは感じますね。
でも、それはあくまでもその人の魔力の本質的ものではないのでは?』

ドラしゃんの言葉に二匹は返事した。

《詳しいことは私らにもわからないさ。
この世界が再び息を吹き返した時、風に乗って香ってきたのさ。》

《そうそう。息を吹き返した世界の息吹にのって"特別な香り"がね。
俺たちはその香りの正体が知りたくってやって来たのさ。》

《そしたら、とても可愛らしい子供から匂いが発している事を知って驚いたね。》

《今まで色んな人間を見てきたが、大概俺たちに武器をかざして殺意ムンムンか怯えしか感じさせない生き物からなんとも不思議な感じをさせるから凄かったよ。》

《そうそう。思わず威嚇するのも忘れるぐらいだったわ。純粋すぎて驚いたわ。》

そう言って二匹は尻尾を私の指に絡めてきた。

もふもふの尻尾が指に触れて思わずヘニョってなる私。

私の姿を見て呆れ果てる皆。

「しかし、リンが話した事が本当なら世界中の匂いを感じた魔物がリンを目指して集まってくるのか?」

王様の言葉に私を除いた皆はハッとする。

そう。
二匹は以前私に

《主の匂いは世界中に充満している。匂いを感じて好意的なものもいれば。》

《貴女の血肉を自分に取り込もうと狙ってくる魔物もいますわ。》

《ああ。くる道中不届な連中は裁いてきたぞ。》

《私もおやつにしてきたわ。》

と言っていたのだから。

それを言葉通りに理解すると王様の言葉通りの事がおきると言う事だ。

「だからか?最近魔獣の活動が変なのは!!」

ロドじぃーちゃんの大きな声にさすがの私もハッとした。

《そうさ。私達がここに来る間に遭遇したのは狩って来たけどね。》

《でもそれはほんのひと握り。どの程度の魔獣どもが匂いを感じているのは知らんけどな。》

ロドじぃーちゃんの言葉に二匹は改めて話をした。

するとだ。

「リン!お前しばらく冒険者休め!」

「はっ!?」

「そうだな。」

「でも、そうなればこの街に魔獣が集まるのでは??」

「ここの連中がそんなやわな奴ばかりではないぞ?大丈夫だろう?」

「えっ?!ちょっ!」

「リンが一箇所にいる方がこちらとしても対応がとりやすいな。」

私を置いてきぼりにして周りの人達は勝手に話を進めていく。

するとだ。

《ちなみに主人の匂いは、側にいる人達にも残り香として付着しているぞ?》

《そうね。だから貴方達が動けば動くほど主人の匂いを拡散している事になるわね。》

《下手したら主人と間違われて襲われるかもな。》

《でも、ここにいる者は美味しそうなのはいないから大丈夫じゃない?》

《それもそうだな。》

二匹はそんな事を呑気げに話すのだった。

「はっ?それは本当か?!」

二匹の言葉に今まで黙って聞いていたムキじぃーちゃんが食いついてきた。

《ああ。主人の匂いは特殊だよ?接触が濃ければ濃いほど匂いは強く残るわ。》

《まぁ~この街に住んでいる奴らは特に主人の匂いが染み付いてるな。》

さすがにこの言葉に私は目をひんむいた。

「ちょっ!それは大変じゃない!この街には小さな赤ちゃんや子供だっているし、お年寄りだって...。それに皆が皆んな、ムキじぃーちゃん達みたいに頑丈じゃないのよ?!
どうしよう!?!!」

思わず私は床にへたり込んでしまった。

自分の存在のせいで...誰かが代わりに傷つくような事が起きるのは...絶対いやだから。

それは、ここにいる皆が同じ気持ちのようだった。

「だからこそ今から対策を考えるだ。いいかリン。決して自分のせいとか考えるなよ!
匂いに関しては俺たちですら予想ができなかった事だ。」

「そうよ。わかってたら最初から対策をとってたわよ。」

「大丈夫だ。リン。なんとかなるから。」

床に座り込んだ私に両親とムキじぃーちゃんが寄り添って声をかけてくれた。

「そうだ。リン。心配ない。」

「なんとかするから。」

皆もそう言って私を励ましてくれる。

皆の言葉に涙を流している私を見て二匹がとんでもない事を言い出したのだった。

《解決策あるわよ?》

《ああ。それも凄く簡単な》

あまりの言葉に皆の視線が二匹に集中したのだった。




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