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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-25 久しぶりの再会と建物の改修?!
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私とお兄ちゃんが眠っている間に、【大聖霊】達は造った森や林を(ある程度)元の姿に戻しにいった。
集まっていた精霊や聖霊達は、私達の住む街にある【聖域】へ誘導して環境を普通に戻した。
ドラしゃんと話し合って、彼らなりの解釈で、自分達が甘やかすのは私とお兄ちゃんのみに決めたみたい。
他の人間達には、ちゃんと試練として自分達の力で頑張るようにさせることにしたらしい。
私とお兄ちゃんが起きるとムキじぃーちゃんからわかりやすく説明があった。
ムキじぃーちゃんやドラしゃんの反応からして、何かあるとは思っていたが...そういう事になるとは思っていなかった。
あっても、森や林はそのままで食糧品が手に入りにくくなるぐらいかと思っていたからだ。
まさか、森や林の範囲を狭めているとは思いもしなかった。
珍しく私とお兄ちゃんがちゃんと反省していたので、ドラしゃんもムキじぃーちゃんも必要以上に説教はしてこなかった。
私達がとって来た食料品は、この街に魔法を使用して鮮度そのままで保存して置いておく事にしてくれたみたい。
せめそれぐらいわと言う、ドラしゃんの好意だった。
本当に珍しく、私とお兄ちゃんはしょんぼりして大人しくしていた。
それには、周りの大人達も【大聖霊】達も気まずそうだった。
今回のことで、これほど私達が落ち込むとは思わなかったからだ。
いつもはすぐにはしゃぐのに、まったくそんな気配がしない...。
どうしたものかとドラしゃん達が考えていると...。
「...!....!」
「...!...、....!」
???
どこからか、聞き覚えのある声がしてきた。
最初は何を言っているのか分からなかった。
しかし、段々と声は近づいてきて、はっきり誰の声かわかり出した。
「リン?!アキラ?!」
「リン!アキラ!無事かぁー!」
なんと、見たこともない馬に乗って走ってくるお父さんとお母さん、それにセバしゃんの姿があった。
落ち込んでいた私とお兄ちゃんもびっくりした。
それは、ドラしゃん達もだった。
なぜお父さん達が??
しかも馬??あの馬どこから?
街にいたっけ??
など、考えている事は皆一緒だったみたい。
何せ、表情が一緒だったからだ。
お父さんとお母さんは同じ馬に乗っていた。
セバしゃんは、お父さん達の後ろを別の馬で走って来ていた。
お父さん達は、街の門のところまで着くと馬から降り、歩いて街の中に入ってきた。
セバしゃんも同じ様に後ろから付いてきた。
「お父さん?お母さん?」
「えっ?!どうしたの?街は?!」
『旦那様?!奥様?!いったい??
それに、セバス!お前まで?!
ハッ!あのバカは??』
私達はそう言いながら、お父さん達の元へ駆け寄って行く。
他の人達も騒ぎを聞き付けて集まってきた。
「リン?アキラ?ドラしゃん。そして、皆さんお元気でしたか?
と言っても、それ程日にちは経ってないんですけどね。」
「フウちゃん達から、新しい街がもう完成したって聞いたから驚いてね。
予定より大分早いから...。
もしかして、また無茶をした人達が居るのでは?と思ってね。」
お父さんとお母さんは、にこやかに話すが目は笑ってなかった。
私とお兄ちゃんは、乾いた笑いしか出来なかった。
それは、ムキじぃーちゃん達もだった。
そんな私達に、追い討ちをかける?かの様に、セバしゃんも一言?話しかけて来た。
「【聖獣】殿から報告を受けて、居ても立っても居られなくなったお2人が、皆様の所に行くと聞かず、困り果てたロドムカ殿からの報告を受けまして、身動きが取れない王の代わりに私が付き添ってここまで来ました。
ここまでの道中の状態をみて、更に取り乱されるお2人を宥めながらここまでくるのは、ほんとーーーーーーーーーーに、大変でした。
あっ?馬ですか?こちらの馬は王より同盟祝いと言う事で、何頭か皆様の街にお祝いの品として贈呈させたものです。まさか、こんなに早く活用されるとは思いもしませんでしたけどね。
ちなみに、馬小屋等に関しては放牧場に増設して貰ってます。
しかし、ここまで派手にされるとは....まだ、一つ目の街ですよね?
残りの3箇所もこんな感じで、サクサクやらかすおつもりですか?
まぁ~、皆さん方に負担がないのであれば構いませんが、"くれぐれも"無茶だけはやめて下さいね。」
と、一息で顔色も変えずに話すセバしゃん。
さすがに隣で聞いていたお父さん達も恥ずかしくなったのか、いつのまにか顔が真っ赤になっていた。
私とお兄ちゃんも、さっきまで凹んでいたのが嘘の様に、気持ちが少し浮上していた。
セバしゃんが一通り話し終えると、ドラしゃんがここぞとばかりに言い返した。
『ほぉ~。言いたい事はそれだけか?
ちなみに言うが、ここまでの道中とこの街の殆どは、我らでなくお嬢様が契約された【大聖霊】様方が、有り余っているからと言って、張り切って下さったのだが?
もちろん我らはとめたぞ?お嬢様への負担になられたら困るから。
しかし、彼らはずーーーーっと暇で、力が有り余っているから、お嬢様の負担になる事はないと言い切られましたので、お任せしました。するとどうでしょう?
彼らの言う通りに、お嬢様への負担は一切ないどころが、予定より素晴らしい道中と街を作り上げてくれましたよ。
まぁ~、我らは何もしてない訳ではないですよ??
我らも、知恵と力を合わせて街の残り半分と、他国との交流が取りやすい様にと船着場等を作りましたよ?
もちろん、【大聖霊】様方が頑張ってくださりましたから、時間にも体力にもじゅうーーーーーーーーぶんゆとりがありましたからね。
それなのに、その様な物言いをされるのは、ちと失礼ではありませんか?』
こちらも一息で言い切った。
ドラしゃんとセバしゃんの間には、見えない火花が飛び散っていた。
さすがに、この空気は危ないと感じ取ったお父さん達が奮闘した。
「あ、あのぅ~。実は、心配もありましたが、私達がリンとアキラに会えなくて...そのぅ~、寂しくなって...居ても立っても居られなくなったんです!
だって、ここは私達が住んでた世界とは違うのですから...。」
「今までずっと一緒だったからだ...。こんなに離れた事なくて...。だって、リンもアキラもまだまだ子供よ?
大人ならともかく、まだ子供なのよ。
そりゃ~ドラしゃんやムキじぃーちゃん達の事を信用してない訳でないのよ。
私達は、親だから...。どうしても、自分達の目で確認しないと不安なの。」
お父さんとお母さんの言葉に、火花を散らしていた2人は、気不味そうな顔付きに変わった。
私とお兄ちゃんは、涙目になってお父さん達の元へ駆け寄る。
そうだった。
ずっといつも一緒が当たり前だった。
初めての旅で興奮して忘れていたが、ここは安全な日本ではない。
魔獣や平気で人を殺す様な野盗などもいる世界だ。
下手をしたら、こうやってお父さん達と会う事が出来ない事もあるかもしれないのだった。
それを改めて両親から聞いて、思わず涙が出たのだ。
色々やらかして、凹んでいたのもあったからか涙が中々止まらなかった。
とりあえず、私達も泣き止まないし落ち着いて話をした方が良いと、ドムじぃーちゃんが割って入り、皆んなで仮住まいの住宅へと向かっていった。
住宅へと向かう間も、セバしゃんは街の観察を欠かさなかった。
そして、気になる事は全て横に居るドラしゃんに確認していた。
ドラしゃんも、ツンケンしながらもセバしゃんの質問には全て丁寧に答えていたようだった。
住宅へ着くと、ドムじぃーちゃんがお父さん達が乗って来た馬を預かり、街の宿屋の方に設置してある、馬場へと連れていってくれる事に。
他の人達は、私達の事が気になりながらも、ドムじぃーちゃんに促されて、街の最終確認作業へと散っていった。
住宅に残ったのは、私とお兄ちゃん、お父さんとお母さん、ムキじぃーちゃんとセバしゃんにドラしゃんだった。
ドラしゃんが、人数分のお茶を用意してくれて、それぞれ席につく。
その頃には、私もお兄ちゃんも泣き止みつつあった。
「落ち着いたか?リン。アキラ。」
本当に久しぶりに聞くお父さんの声に、やっと落ち着いて来た涙がまた出そうになった。
「数日離れただけなのに、いつのまにか、2人とも赤ちゃんに逆戻りしたのかしら?」
お母さんもクスッと笑いながらも優しい声で、背中をさすってくれた。
私は、お父さんの顔を涙目で見つめた。
お兄ちゃんは、涙目でお母さんを見つめた。
私達が見つめると、2人は優しく微笑んでくれたので、私達もつられて微笑み返した。
「お父さんとお母さんの声を聞いて姿を見て、あっ、今まで2人は側に居なかったんだって思い出したら涙が出ちゃった。」
お兄ちゃんがそう呟く。
「リンもね。お父さんたちのすがたみたら、なぜか、なみだがでちゃったの。」
私もそう言うと、お父さんとお母さんは苦笑いしていた。
その光景を、ドラしゃん達は静かに見守る。
「リンね、みんなのおてつだいしたよ。」
「僕もね、できることが少しずつ増えたんだよ。」
私とお兄ちゃんは、この街に来るまでの出来事やこの街で体験した出来事を全て話した。
そう。す・べ・て、だ。
「それで、街が完成したから【大聖霊】達と一緒に街の外に森や林を造ったんだ。」
「みずうみも。でもね、それはやりすぎだって、ドラしゃんにメッっていわれたの。」
そう言って、ハッとした私とお兄ちゃん。
時すでに遅しだった。
どうやらフウちゃん達は、森や林の事までは報告してなかった様で、自分達で自分達の首を絞める事を言ってしまったのだった。
みるみるうちに、お母さんのお顔が般若の様なお顔に変わっていく...。
次の瞬間。
『奥様。アキラ様とお嬢様には、私から説教をしております。反省もされてます!』
「そうだぜ!今回は珍しく、こいつらは反省していた!これは、マジだ!
自分達なりに、反省して、お前さん達が来るまでの間もこの世の終わりの様に落ち込んでいて、どうしたもんかと悩んでた所だったんだ!」
ドラしゃんとムキじぃーちゃんが助け船を出してくれたのだった。
2人の言葉を聞いて、本当?と目で確認するお母さん。
私とお兄ちゃんは、首が千切れんばかりに縦に振る。
そしてだ。
『それに関しては、我らが悪い。これ以上主人たちを叱らないでおくれますか?』
『そうだぜ?僕たちが調子に乗りすぎただけなんだ。』
『主人たちは、何も悪くない。俺たちが、主人たちの喜ぶ顔が見たくてした事だ。』
『道中も、この街もそうだ。いつも、主人たちにお世話になってるからよ、少しでも恩返ししたくてした事だ。』
『そうだ。主人たちは、じゅうぶん反省してたよ。』
『...私たち...辛かった...』
『主人たちが落ち込むと、私たちも力が出せない。ここら辺がチクチクするし、いい気がしないわ。』
『主人たちは、大人しかったわ。アレで、やり過ぎだと言われたら今後何もできないわ。』
『主人たちは、ほんとに健気よ。
昼間は元気に振る舞ってますが、親御殿たちと離れて寂しいもの。夜なんか無意識に泣きながら寝てるし。』
腕輪の中で、こちらの様子を伺っていた【大聖霊】達が我慢できなくなり現れたのだった。
【大聖霊】達の言葉もあり、お母さんの顔から般若が消えた。
ドラしゃん達もほっとしていた。
「ちゃんと反省が出来る様になったのね?良かったわ。
ドラしゃんも、ちゃんと説教が出来る様になって安心したわ。」
お母さんのその言葉と、優しい笑顔で、その場に居た皆は心の底からホッとした。
隣で居たお父さんですら、般若顔に変わった瞬間身体を硬らせていたからね...。
なんとか、雰囲気が落ち着いて来た時だ。
ずっと黙っていたセバしゃんが口を開いた。
「話はわかりました。今回は、お2人はほとんど力を使っていないのですね?
町も見させて頂きましたが、さすがって感じですね。
斬新ですし、新しい街として素晴らしいものです。防衛もしっかりしてますし。
こちらの街については、私から王と同盟国の王達に話しておきます。
他の街についても、とにかく無理のない範囲でお願いします。
皆さんを心配しているのは親御さんだけではないのですからね?」
そう言って、苦笑いを浮かべていた。
私とお兄ちゃんは、セバしゃんの言葉に"ハイ"と元気に返事をした。
その日は、お父さん達は泊まって行く事なった。
伝達に行ったフウちゃん達は、ロドじぃーちゃん達に捕まって、色々伝言とかを預かっているので、2、3日戻ってくるのに時間がかかると、後になってお父さんが教えてくれたのだった。
思わぬ来訪者が来て、私達は予定より少しばかり新しいこの街で過ごす事になった。
思わぬ来訪者とは...、お父さん、お母さん、セバしゃんだ。
新しい街が完成したとフウちゃん達に伝言をお願いしたら、伝言したフウちゃん達が戻ってるより先に、この3人が街に来訪したのだ。
数日ぶりのお父さん達との対面に、私もお兄ちゃんもベッタリだった。
思っていた以上に、私達はお父さん達から離れて寂しかった様だ。
街に来た初日は、とりあえず今までの出来事の報告をした。
一瞬お母さんの雷が落ちるかと思ったが、ドラしゃん達が助けてくれたので回避できた。
その日は、特に何もせずゆっくり過ごした。
翌朝から、お父さん達に新しい街を案内した。
民宿やお店予定の建物。
この街のギルドや、食糧保管庫、薪保管庫。あとは、船着場や灯台も見て回った。
これらの他に、必要な建物や設備がいるかどうかも見てもらった。
北側の街なので、雪対策に特化した作りにしてある事は、一発でお父さんは見抜いたようす。
壁の暑さや、床の作り、家々に設置してある煙突や暖炉を見たのもあるが、家の屋根の作りで見抜いた様だった。
ある程度雪が積もっても耐えれる厚みと、雪が地面に滑りやすい様に角度をつけてあるのを見抜いたからだ。
ただ、お父さんが少し気になる点を見つけた。
家を一軒一軒見て回っている時だった。
民宿では、そんな素振りを見せなかったのに、普通の民家やお店に入ると渋い顔になったのだ。
1、2軒程度なら見逃せたが、それが何軒ともなると、さすがのドムじぃーちゃんも気になり、お父さんに話しかけた。
「ユウダイ?何か気になる事があるなら言ってくれ。まだ、予定日は沢山あるんだ。建て直しも可能だから、お前さんの目から見て気になるところがあるなら、正直に話してくれ!」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんはようやく口を開いた。
「では、言わせてもらいますが...春や夏みたいに暖かい気候の時期は、この建物でも問題無いと思います。
しかし、冬みたいに寒くなり、暖をとる時期になったらこの建物で少し危険です。」
お父さんのその言葉に、ドムじぃーちゃんをはじめ、一緒にこの街を作った皆や【大聖霊】達も驚いた。
皆の反応を見ても、お父さんは言葉を続けた。
「実は、私は建築業界で働き出して初めての仕事が、ここみたいな雪の積もりやすい地域の建物建設でした。
その時、私も皆さんと同じミスをして、先輩にそのミスを指摘されました。
まぁ~その時は、建築途中でしたからなんとかすぐに作業をやり直して、完成する前に間に合いましたから大きなミスにはなりませんでしたけど。
ここにある建物を見て、自分がした初めてのミスと同じでしたので、気になっていたんです。
しかし、この世界は魔法が使える世界です。私達のいた世界は、魔法が使えないので、この建物でも問題ないのかと思ったので、黙っていたんです。」
お父さんの言葉に、ますます訳がわからないと言う顔をするメンバー。
これらの建物になんのミスが?
完璧のはず...。
そんな感じだった。
お父さんは、言ったものの苦笑いをしていた。
そんなお父さんにドムじぃーちゃんが、皆を代表して話をした。
「ユウダイ。ちなみに聞くがよ。
そのミスってなんだ?」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんは苦笑いを抑えて答えた。
「実はですね...暖炉がある家のみなんですが、天井が低いんです。」
お父さんの言葉に、皆はキョトンとした顔になる。
「はい?」
ドムじぃーちゃんは、間抜けな声を出していた。
お父さんはそんな皆に、伝わる様に説明していった。
「民宿にも暖炉はありましたが、人が多く集まるフロアのみです。
フロアは、天井が元々高く作られているので問題はないです。
各部屋には暖炉がなく、暖炉の代わりに熱を発する"魔石"を天井に埋め込んでいるのを見つけました。
魔石は、人の存在を完治して発する熱を調節する仕組みにしてある様に見えたので、問題ないです。
問題なのは、一般の家庭や店です。
暖炉を設置してあるのは大丈夫です。
問題は天井の高さです。
天井が低すぎると、空気が濁りやすく溜まりやすいです。あと、煙もです。
煙突から全ての煙や空気が出て行くわけではないです。
その為、雪が積もりやすい場所に家を建てる時は、天井から床まで十分な距離を開けます。
そして、天井付近にも空気の入れ替え口の様な仕組みを取り入れるんです。雪が降ると、窓を開けるのは命取りです。
その為、雪の降っていない時間帯か出入りする時に玄関をある時しか空気の入れ替えができないのです。
そんな中、ずっと暖炉を使い続けるとどうなります?薪をくべると、酸素は消費され、二酸化炭素と一酸化炭素が発生します。それがこんな狭い空間に充満すると、命の危険が伴います。」
お父さんのその言葉に、ドムじぃーちゃん達もそうだが、【大聖霊】達も顔を青ざめていた。
まさかそんな落とし穴があるとは思わなかった様だ。
「この世界は魔法が使えますから、いざとなったら魔法でどうにかするのか、家のどこかに空気の調節をする魔石でも設置してあるのかと見てましたが、そんな気配がなかったので少し不安になったんです。大きなお世話でしたら、申し訳ないです。」
そう言ってお父さんは、気まずそうな顔をする。
しかし、どれだけ待ってもお父さんの言葉を非難するする声は上がらなかった。
それどころか...。
「なんと...!?」
「そんな事気づきもしなかったですぜ!ありがてぇー!!」
「お頭?!直せますか?!」
『凄いね?!そんな事気付きもしなかったよ。』
『さすが、主人の親御殿ですわ。』
「おい!ユウダイどうやって、直したらいい??!」
などの、称賛の嵐だった。
寒くない様に過ごせる様にとしか、考えてなかったから、空気の流れや暖炉を使った時の事までは考えてなかったのだった。
ドムじぃーちゃんですら、気づかなかったのだ。
盲点を指摘されて、怒るどころか感謝の気持ちを述べられ、あまつさえ、どうやったらいいのかと指示を仰ぐ声すらかけられたのだった。
「人が住む前に気づけてよかったぜ。
今は、気候も落ち着いていて、暖炉を使ってなかったから、知らずにこのままにしてたら大変な事になってたぜ。
ユウダイ。お前さんは凄いぜ。
俺もまだまだだな。やっぱり経験不足だな。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんは驚きながらも照れていた。
職人気質が強いのに、威張ったところがないし、それどころかこうやって指摘しても怒らず、逆に自分にも出来るかと指導を仰いでくるぐらい謙虚なのだ。
お父さんはそんなドムじぃーちゃんが好きだった。
お父さんは、皆の言葉を聞いて地面に修正箇所を描いていった。
現在建っている家を、最小限の改修で対応できるかとか、素材は何を使うのかなど真剣な話し合いをはじめた。
こうなると...仕事モードになると、お父さんは動かないので、その場にお父さん達を置いて、私達は別の場所に行く事にした。
私とお兄ちゃん、お母さんと【聖獣】達は皆の為に食事の支度をする事にした。
ドラしゃんとセバしゃんに頼んで食事の支度の協力しもらい、ムキじぃーちゃんは、お父さん達の協力をする事にした。
そうと決まれば、お母さんも行動が早かった。
お母さんは、セバしゃんとドラしゃんに必要な食材を調達して来るようお願いした。
セバしゃんとドラしゃんが戻ってくるまで、私とお兄ちゃん、お母さんは久しぶりに親子3人で料理の下準備をした。
お母さんが持って来た、使える食材を先に下拵えする事に。
今日のメニューは、グラタン、ハンバーグ、サラダにコンソメスープ、ホットサンドになった。
ランチにしてはボリュームがあるが、皆の好きなメニューばかりなので、まぁ~どうにかなるかなぁ?
ちなみに朝ご飯は、おにぎりと味噌汁と焼き魚だった。
それに比べて、グラタン、ハンバーグ、サラダ、コンソメスープ、ホットサンドは、パンチが...。
でも量が必要なので、このメニューが良かったのだった。
お母さんの鞄の中には、お母さん手作りの食パンが20斤。
ハムのブロックが15個、卵が50個、じゃがいも30個、玉ねぎ30個、ニンジン30本、トマト30個、きゅうり30本、豆30ふさ、コンソメスープの素が10箱が入っていた。
あと、木のみが50個、胡桃が50個、みかんが30個、リンゴが30個、イチゴが50個もだ。
見た目小さい鞄なのに...以外にたくさんはいるんだね?
と思ったら、お母さんがコソッと教えてくれた。
ドラしゃんがくれた魔法鞄は、お父さんのもお母さんのも、容量が無制限で、鮮度はそのままキープ可能。
しかも、無造作に入れても鞄の中で種類ごとに整理整頓が自動でしてくれるのだった。
何が入っているかは、ステータス画面のように鞄用で見る事ができるのだと。
話を聞くだけで、凄く欲しい!!
と、思ってしまった。
「こらは、だめよ?貴方達も大きくなったらプレゼントしてくれるはずだから、それまでは我慢ね。」
お母さんの鞄は羨ましいが、そう言えばお兄ちゃんも持っていたはず?!
私はそれに気付いてお兄ちゃんを見ると、それに気付いたお兄ちゃんが私にある事を教えてくれた。
「僕のは、容量制限があるんだ。
だから、この前卵いれたらあれだけで鞄の中身が一杯になったから困ったよ。」
お兄ちゃんの鞄は、見た目通りの容量の狭さだった。
でも羨ましい...。
そう私が思っていると、フェンリルの兄妹が私にコソッと教えてくれた。
『主人の服のポケットっていう奴が、魔法鞄の様な仕組みになってますよ?』
『気付いてなかったんですか?』
意外な事実を聞いて、私は後でコソッと調べてみようと思った。
とりあえず、お母さんの鞄の中の物で作れるのは、コンソメスープとホットソンドなので、先にそれから作るとお母さんに言われ、私とお兄ちゃんもお手伝いをする事にしたのだった。
リン:
お母さんと久しぶりの料理!
ユイカ:
あら?リン楽しそうね^ ^
じぁー頑張ってもらいますよ?
リン:
はーい(*´◒`*)
アキラ:
僕も頑張るよ!
ユイカ:
じぁー2人ともよろしくね(*´◒`*)
集まっていた精霊や聖霊達は、私達の住む街にある【聖域】へ誘導して環境を普通に戻した。
ドラしゃんと話し合って、彼らなりの解釈で、自分達が甘やかすのは私とお兄ちゃんのみに決めたみたい。
他の人間達には、ちゃんと試練として自分達の力で頑張るようにさせることにしたらしい。
私とお兄ちゃんが起きるとムキじぃーちゃんからわかりやすく説明があった。
ムキじぃーちゃんやドラしゃんの反応からして、何かあるとは思っていたが...そういう事になるとは思っていなかった。
あっても、森や林はそのままで食糧品が手に入りにくくなるぐらいかと思っていたからだ。
まさか、森や林の範囲を狭めているとは思いもしなかった。
珍しく私とお兄ちゃんがちゃんと反省していたので、ドラしゃんもムキじぃーちゃんも必要以上に説教はしてこなかった。
私達がとって来た食料品は、この街に魔法を使用して鮮度そのままで保存して置いておく事にしてくれたみたい。
せめそれぐらいわと言う、ドラしゃんの好意だった。
本当に珍しく、私とお兄ちゃんはしょんぼりして大人しくしていた。
それには、周りの大人達も【大聖霊】達も気まずそうだった。
今回のことで、これほど私達が落ち込むとは思わなかったからだ。
いつもはすぐにはしゃぐのに、まったくそんな気配がしない...。
どうしたものかとドラしゃん達が考えていると...。
「...!....!」
「...!...、....!」
???
どこからか、聞き覚えのある声がしてきた。
最初は何を言っているのか分からなかった。
しかし、段々と声は近づいてきて、はっきり誰の声かわかり出した。
「リン?!アキラ?!」
「リン!アキラ!無事かぁー!」
なんと、見たこともない馬に乗って走ってくるお父さんとお母さん、それにセバしゃんの姿があった。
落ち込んでいた私とお兄ちゃんもびっくりした。
それは、ドラしゃん達もだった。
なぜお父さん達が??
しかも馬??あの馬どこから?
街にいたっけ??
など、考えている事は皆一緒だったみたい。
何せ、表情が一緒だったからだ。
お父さんとお母さんは同じ馬に乗っていた。
セバしゃんは、お父さん達の後ろを別の馬で走って来ていた。
お父さん達は、街の門のところまで着くと馬から降り、歩いて街の中に入ってきた。
セバしゃんも同じ様に後ろから付いてきた。
「お父さん?お母さん?」
「えっ?!どうしたの?街は?!」
『旦那様?!奥様?!いったい??
それに、セバス!お前まで?!
ハッ!あのバカは??』
私達はそう言いながら、お父さん達の元へ駆け寄って行く。
他の人達も騒ぎを聞き付けて集まってきた。
「リン?アキラ?ドラしゃん。そして、皆さんお元気でしたか?
と言っても、それ程日にちは経ってないんですけどね。」
「フウちゃん達から、新しい街がもう完成したって聞いたから驚いてね。
予定より大分早いから...。
もしかして、また無茶をした人達が居るのでは?と思ってね。」
お父さんとお母さんは、にこやかに話すが目は笑ってなかった。
私とお兄ちゃんは、乾いた笑いしか出来なかった。
それは、ムキじぃーちゃん達もだった。
そんな私達に、追い討ちをかける?かの様に、セバしゃんも一言?話しかけて来た。
「【聖獣】殿から報告を受けて、居ても立っても居られなくなったお2人が、皆様の所に行くと聞かず、困り果てたロドムカ殿からの報告を受けまして、身動きが取れない王の代わりに私が付き添ってここまで来ました。
ここまでの道中の状態をみて、更に取り乱されるお2人を宥めながらここまでくるのは、ほんとーーーーーーーーーーに、大変でした。
あっ?馬ですか?こちらの馬は王より同盟祝いと言う事で、何頭か皆様の街にお祝いの品として贈呈させたものです。まさか、こんなに早く活用されるとは思いもしませんでしたけどね。
ちなみに、馬小屋等に関しては放牧場に増設して貰ってます。
しかし、ここまで派手にされるとは....まだ、一つ目の街ですよね?
残りの3箇所もこんな感じで、サクサクやらかすおつもりですか?
まぁ~、皆さん方に負担がないのであれば構いませんが、"くれぐれも"無茶だけはやめて下さいね。」
と、一息で顔色も変えずに話すセバしゃん。
さすがに隣で聞いていたお父さん達も恥ずかしくなったのか、いつのまにか顔が真っ赤になっていた。
私とお兄ちゃんも、さっきまで凹んでいたのが嘘の様に、気持ちが少し浮上していた。
セバしゃんが一通り話し終えると、ドラしゃんがここぞとばかりに言い返した。
『ほぉ~。言いたい事はそれだけか?
ちなみに言うが、ここまでの道中とこの街の殆どは、我らでなくお嬢様が契約された【大聖霊】様方が、有り余っているからと言って、張り切って下さったのだが?
もちろん我らはとめたぞ?お嬢様への負担になられたら困るから。
しかし、彼らはずーーーーっと暇で、力が有り余っているから、お嬢様の負担になる事はないと言い切られましたので、お任せしました。するとどうでしょう?
彼らの言う通りに、お嬢様への負担は一切ないどころが、予定より素晴らしい道中と街を作り上げてくれましたよ。
まぁ~、我らは何もしてない訳ではないですよ??
我らも、知恵と力を合わせて街の残り半分と、他国との交流が取りやすい様にと船着場等を作りましたよ?
もちろん、【大聖霊】様方が頑張ってくださりましたから、時間にも体力にもじゅうーーーーーーーーぶんゆとりがありましたからね。
それなのに、その様な物言いをされるのは、ちと失礼ではありませんか?』
こちらも一息で言い切った。
ドラしゃんとセバしゃんの間には、見えない火花が飛び散っていた。
さすがに、この空気は危ないと感じ取ったお父さん達が奮闘した。
「あ、あのぅ~。実は、心配もありましたが、私達がリンとアキラに会えなくて...そのぅ~、寂しくなって...居ても立っても居られなくなったんです!
だって、ここは私達が住んでた世界とは違うのですから...。」
「今までずっと一緒だったからだ...。こんなに離れた事なくて...。だって、リンもアキラもまだまだ子供よ?
大人ならともかく、まだ子供なのよ。
そりゃ~ドラしゃんやムキじぃーちゃん達の事を信用してない訳でないのよ。
私達は、親だから...。どうしても、自分達の目で確認しないと不安なの。」
お父さんとお母さんの言葉に、火花を散らしていた2人は、気不味そうな顔付きに変わった。
私とお兄ちゃんは、涙目になってお父さん達の元へ駆け寄る。
そうだった。
ずっといつも一緒が当たり前だった。
初めての旅で興奮して忘れていたが、ここは安全な日本ではない。
魔獣や平気で人を殺す様な野盗などもいる世界だ。
下手をしたら、こうやってお父さん達と会う事が出来ない事もあるかもしれないのだった。
それを改めて両親から聞いて、思わず涙が出たのだ。
色々やらかして、凹んでいたのもあったからか涙が中々止まらなかった。
とりあえず、私達も泣き止まないし落ち着いて話をした方が良いと、ドムじぃーちゃんが割って入り、皆んなで仮住まいの住宅へと向かっていった。
住宅へと向かう間も、セバしゃんは街の観察を欠かさなかった。
そして、気になる事は全て横に居るドラしゃんに確認していた。
ドラしゃんも、ツンケンしながらもセバしゃんの質問には全て丁寧に答えていたようだった。
住宅へ着くと、ドムじぃーちゃんがお父さん達が乗って来た馬を預かり、街の宿屋の方に設置してある、馬場へと連れていってくれる事に。
他の人達は、私達の事が気になりながらも、ドムじぃーちゃんに促されて、街の最終確認作業へと散っていった。
住宅に残ったのは、私とお兄ちゃん、お父さんとお母さん、ムキじぃーちゃんとセバしゃんにドラしゃんだった。
ドラしゃんが、人数分のお茶を用意してくれて、それぞれ席につく。
その頃には、私もお兄ちゃんも泣き止みつつあった。
「落ち着いたか?リン。アキラ。」
本当に久しぶりに聞くお父さんの声に、やっと落ち着いて来た涙がまた出そうになった。
「数日離れただけなのに、いつのまにか、2人とも赤ちゃんに逆戻りしたのかしら?」
お母さんもクスッと笑いながらも優しい声で、背中をさすってくれた。
私は、お父さんの顔を涙目で見つめた。
お兄ちゃんは、涙目でお母さんを見つめた。
私達が見つめると、2人は優しく微笑んでくれたので、私達もつられて微笑み返した。
「お父さんとお母さんの声を聞いて姿を見て、あっ、今まで2人は側に居なかったんだって思い出したら涙が出ちゃった。」
お兄ちゃんがそう呟く。
「リンもね。お父さんたちのすがたみたら、なぜか、なみだがでちゃったの。」
私もそう言うと、お父さんとお母さんは苦笑いしていた。
その光景を、ドラしゃん達は静かに見守る。
「リンね、みんなのおてつだいしたよ。」
「僕もね、できることが少しずつ増えたんだよ。」
私とお兄ちゃんは、この街に来るまでの出来事やこの街で体験した出来事を全て話した。
そう。す・べ・て、だ。
「それで、街が完成したから【大聖霊】達と一緒に街の外に森や林を造ったんだ。」
「みずうみも。でもね、それはやりすぎだって、ドラしゃんにメッっていわれたの。」
そう言って、ハッとした私とお兄ちゃん。
時すでに遅しだった。
どうやらフウちゃん達は、森や林の事までは報告してなかった様で、自分達で自分達の首を絞める事を言ってしまったのだった。
みるみるうちに、お母さんのお顔が般若の様なお顔に変わっていく...。
次の瞬間。
『奥様。アキラ様とお嬢様には、私から説教をしております。反省もされてます!』
「そうだぜ!今回は珍しく、こいつらは反省していた!これは、マジだ!
自分達なりに、反省して、お前さん達が来るまでの間もこの世の終わりの様に落ち込んでいて、どうしたもんかと悩んでた所だったんだ!」
ドラしゃんとムキじぃーちゃんが助け船を出してくれたのだった。
2人の言葉を聞いて、本当?と目で確認するお母さん。
私とお兄ちゃんは、首が千切れんばかりに縦に振る。
そしてだ。
『それに関しては、我らが悪い。これ以上主人たちを叱らないでおくれますか?』
『そうだぜ?僕たちが調子に乗りすぎただけなんだ。』
『主人たちは、何も悪くない。俺たちが、主人たちの喜ぶ顔が見たくてした事だ。』
『道中も、この街もそうだ。いつも、主人たちにお世話になってるからよ、少しでも恩返ししたくてした事だ。』
『そうだ。主人たちは、じゅうぶん反省してたよ。』
『...私たち...辛かった...』
『主人たちが落ち込むと、私たちも力が出せない。ここら辺がチクチクするし、いい気がしないわ。』
『主人たちは、大人しかったわ。アレで、やり過ぎだと言われたら今後何もできないわ。』
『主人たちは、ほんとに健気よ。
昼間は元気に振る舞ってますが、親御殿たちと離れて寂しいもの。夜なんか無意識に泣きながら寝てるし。』
腕輪の中で、こちらの様子を伺っていた【大聖霊】達が我慢できなくなり現れたのだった。
【大聖霊】達の言葉もあり、お母さんの顔から般若が消えた。
ドラしゃん達もほっとしていた。
「ちゃんと反省が出来る様になったのね?良かったわ。
ドラしゃんも、ちゃんと説教が出来る様になって安心したわ。」
お母さんのその言葉と、優しい笑顔で、その場に居た皆は心の底からホッとした。
隣で居たお父さんですら、般若顔に変わった瞬間身体を硬らせていたからね...。
なんとか、雰囲気が落ち着いて来た時だ。
ずっと黙っていたセバしゃんが口を開いた。
「話はわかりました。今回は、お2人はほとんど力を使っていないのですね?
町も見させて頂きましたが、さすがって感じですね。
斬新ですし、新しい街として素晴らしいものです。防衛もしっかりしてますし。
こちらの街については、私から王と同盟国の王達に話しておきます。
他の街についても、とにかく無理のない範囲でお願いします。
皆さんを心配しているのは親御さんだけではないのですからね?」
そう言って、苦笑いを浮かべていた。
私とお兄ちゃんは、セバしゃんの言葉に"ハイ"と元気に返事をした。
その日は、お父さん達は泊まって行く事なった。
伝達に行ったフウちゃん達は、ロドじぃーちゃん達に捕まって、色々伝言とかを預かっているので、2、3日戻ってくるのに時間がかかると、後になってお父さんが教えてくれたのだった。
思わぬ来訪者が来て、私達は予定より少しばかり新しいこの街で過ごす事になった。
思わぬ来訪者とは...、お父さん、お母さん、セバしゃんだ。
新しい街が完成したとフウちゃん達に伝言をお願いしたら、伝言したフウちゃん達が戻ってるより先に、この3人が街に来訪したのだ。
数日ぶりのお父さん達との対面に、私もお兄ちゃんもベッタリだった。
思っていた以上に、私達はお父さん達から離れて寂しかった様だ。
街に来た初日は、とりあえず今までの出来事の報告をした。
一瞬お母さんの雷が落ちるかと思ったが、ドラしゃん達が助けてくれたので回避できた。
その日は、特に何もせずゆっくり過ごした。
翌朝から、お父さん達に新しい街を案内した。
民宿やお店予定の建物。
この街のギルドや、食糧保管庫、薪保管庫。あとは、船着場や灯台も見て回った。
これらの他に、必要な建物や設備がいるかどうかも見てもらった。
北側の街なので、雪対策に特化した作りにしてある事は、一発でお父さんは見抜いたようす。
壁の暑さや、床の作り、家々に設置してある煙突や暖炉を見たのもあるが、家の屋根の作りで見抜いた様だった。
ある程度雪が積もっても耐えれる厚みと、雪が地面に滑りやすい様に角度をつけてあるのを見抜いたからだ。
ただ、お父さんが少し気になる点を見つけた。
家を一軒一軒見て回っている時だった。
民宿では、そんな素振りを見せなかったのに、普通の民家やお店に入ると渋い顔になったのだ。
1、2軒程度なら見逃せたが、それが何軒ともなると、さすがのドムじぃーちゃんも気になり、お父さんに話しかけた。
「ユウダイ?何か気になる事があるなら言ってくれ。まだ、予定日は沢山あるんだ。建て直しも可能だから、お前さんの目から見て気になるところがあるなら、正直に話してくれ!」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんはようやく口を開いた。
「では、言わせてもらいますが...春や夏みたいに暖かい気候の時期は、この建物でも問題無いと思います。
しかし、冬みたいに寒くなり、暖をとる時期になったらこの建物で少し危険です。」
お父さんのその言葉に、ドムじぃーちゃんをはじめ、一緒にこの街を作った皆や【大聖霊】達も驚いた。
皆の反応を見ても、お父さんは言葉を続けた。
「実は、私は建築業界で働き出して初めての仕事が、ここみたいな雪の積もりやすい地域の建物建設でした。
その時、私も皆さんと同じミスをして、先輩にそのミスを指摘されました。
まぁ~その時は、建築途中でしたからなんとかすぐに作業をやり直して、完成する前に間に合いましたから大きなミスにはなりませんでしたけど。
ここにある建物を見て、自分がした初めてのミスと同じでしたので、気になっていたんです。
しかし、この世界は魔法が使える世界です。私達のいた世界は、魔法が使えないので、この建物でも問題ないのかと思ったので、黙っていたんです。」
お父さんの言葉に、ますます訳がわからないと言う顔をするメンバー。
これらの建物になんのミスが?
完璧のはず...。
そんな感じだった。
お父さんは、言ったものの苦笑いをしていた。
そんなお父さんにドムじぃーちゃんが、皆を代表して話をした。
「ユウダイ。ちなみに聞くがよ。
そのミスってなんだ?」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんは苦笑いを抑えて答えた。
「実はですね...暖炉がある家のみなんですが、天井が低いんです。」
お父さんの言葉に、皆はキョトンとした顔になる。
「はい?」
ドムじぃーちゃんは、間抜けな声を出していた。
お父さんはそんな皆に、伝わる様に説明していった。
「民宿にも暖炉はありましたが、人が多く集まるフロアのみです。
フロアは、天井が元々高く作られているので問題はないです。
各部屋には暖炉がなく、暖炉の代わりに熱を発する"魔石"を天井に埋め込んでいるのを見つけました。
魔石は、人の存在を完治して発する熱を調節する仕組みにしてある様に見えたので、問題ないです。
問題なのは、一般の家庭や店です。
暖炉を設置してあるのは大丈夫です。
問題は天井の高さです。
天井が低すぎると、空気が濁りやすく溜まりやすいです。あと、煙もです。
煙突から全ての煙や空気が出て行くわけではないです。
その為、雪が積もりやすい場所に家を建てる時は、天井から床まで十分な距離を開けます。
そして、天井付近にも空気の入れ替え口の様な仕組みを取り入れるんです。雪が降ると、窓を開けるのは命取りです。
その為、雪の降っていない時間帯か出入りする時に玄関をある時しか空気の入れ替えができないのです。
そんな中、ずっと暖炉を使い続けるとどうなります?薪をくべると、酸素は消費され、二酸化炭素と一酸化炭素が発生します。それがこんな狭い空間に充満すると、命の危険が伴います。」
お父さんのその言葉に、ドムじぃーちゃん達もそうだが、【大聖霊】達も顔を青ざめていた。
まさかそんな落とし穴があるとは思わなかった様だ。
「この世界は魔法が使えますから、いざとなったら魔法でどうにかするのか、家のどこかに空気の調節をする魔石でも設置してあるのかと見てましたが、そんな気配がなかったので少し不安になったんです。大きなお世話でしたら、申し訳ないです。」
そう言ってお父さんは、気まずそうな顔をする。
しかし、どれだけ待ってもお父さんの言葉を非難するする声は上がらなかった。
それどころか...。
「なんと...!?」
「そんな事気づきもしなかったですぜ!ありがてぇー!!」
「お頭?!直せますか?!」
『凄いね?!そんな事気付きもしなかったよ。』
『さすが、主人の親御殿ですわ。』
「おい!ユウダイどうやって、直したらいい??!」
などの、称賛の嵐だった。
寒くない様に過ごせる様にとしか、考えてなかったから、空気の流れや暖炉を使った時の事までは考えてなかったのだった。
ドムじぃーちゃんですら、気づかなかったのだ。
盲点を指摘されて、怒るどころか感謝の気持ちを述べられ、あまつさえ、どうやったらいいのかと指示を仰ぐ声すらかけられたのだった。
「人が住む前に気づけてよかったぜ。
今は、気候も落ち着いていて、暖炉を使ってなかったから、知らずにこのままにしてたら大変な事になってたぜ。
ユウダイ。お前さんは凄いぜ。
俺もまだまだだな。やっぱり経験不足だな。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、お父さんは驚きながらも照れていた。
職人気質が強いのに、威張ったところがないし、それどころかこうやって指摘しても怒らず、逆に自分にも出来るかと指導を仰いでくるぐらい謙虚なのだ。
お父さんはそんなドムじぃーちゃんが好きだった。
お父さんは、皆の言葉を聞いて地面に修正箇所を描いていった。
現在建っている家を、最小限の改修で対応できるかとか、素材は何を使うのかなど真剣な話し合いをはじめた。
こうなると...仕事モードになると、お父さんは動かないので、その場にお父さん達を置いて、私達は別の場所に行く事にした。
私とお兄ちゃん、お母さんと【聖獣】達は皆の為に食事の支度をする事にした。
ドラしゃんとセバしゃんに頼んで食事の支度の協力しもらい、ムキじぃーちゃんは、お父さん達の協力をする事にした。
そうと決まれば、お母さんも行動が早かった。
お母さんは、セバしゃんとドラしゃんに必要な食材を調達して来るようお願いした。
セバしゃんとドラしゃんが戻ってくるまで、私とお兄ちゃん、お母さんは久しぶりに親子3人で料理の下準備をした。
お母さんが持って来た、使える食材を先に下拵えする事に。
今日のメニューは、グラタン、ハンバーグ、サラダにコンソメスープ、ホットサンドになった。
ランチにしてはボリュームがあるが、皆の好きなメニューばかりなので、まぁ~どうにかなるかなぁ?
ちなみに朝ご飯は、おにぎりと味噌汁と焼き魚だった。
それに比べて、グラタン、ハンバーグ、サラダ、コンソメスープ、ホットサンドは、パンチが...。
でも量が必要なので、このメニューが良かったのだった。
お母さんの鞄の中には、お母さん手作りの食パンが20斤。
ハムのブロックが15個、卵が50個、じゃがいも30個、玉ねぎ30個、ニンジン30本、トマト30個、きゅうり30本、豆30ふさ、コンソメスープの素が10箱が入っていた。
あと、木のみが50個、胡桃が50個、みかんが30個、リンゴが30個、イチゴが50個もだ。
見た目小さい鞄なのに...以外にたくさんはいるんだね?
と思ったら、お母さんがコソッと教えてくれた。
ドラしゃんがくれた魔法鞄は、お父さんのもお母さんのも、容量が無制限で、鮮度はそのままキープ可能。
しかも、無造作に入れても鞄の中で種類ごとに整理整頓が自動でしてくれるのだった。
何が入っているかは、ステータス画面のように鞄用で見る事ができるのだと。
話を聞くだけで、凄く欲しい!!
と、思ってしまった。
「こらは、だめよ?貴方達も大きくなったらプレゼントしてくれるはずだから、それまでは我慢ね。」
お母さんの鞄は羨ましいが、そう言えばお兄ちゃんも持っていたはず?!
私はそれに気付いてお兄ちゃんを見ると、それに気付いたお兄ちゃんが私にある事を教えてくれた。
「僕のは、容量制限があるんだ。
だから、この前卵いれたらあれだけで鞄の中身が一杯になったから困ったよ。」
お兄ちゃんの鞄は、見た目通りの容量の狭さだった。
でも羨ましい...。
そう私が思っていると、フェンリルの兄妹が私にコソッと教えてくれた。
『主人の服のポケットっていう奴が、魔法鞄の様な仕組みになってますよ?』
『気付いてなかったんですか?』
意外な事実を聞いて、私は後でコソッと調べてみようと思った。
とりあえず、お母さんの鞄の中の物で作れるのは、コンソメスープとホットソンドなので、先にそれから作るとお母さんに言われ、私とお兄ちゃんもお手伝いをする事にしたのだった。
リン:
お母さんと久しぶりの料理!
ユイカ:
あら?リン楽しそうね^ ^
じぁー頑張ってもらいますよ?
リン:
はーい(*´◒`*)
アキラ:
僕も頑張るよ!
ユイカ:
じぁー2人ともよろしくね(*´◒`*)
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