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第三章 発展〜街から小さな国へ〜
3-32 他国の王様達の来訪
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【聖獣】のフェンリルのホワイトとゴールド、スカイバードのソラを新しく家族に迎えた私達。
ドラしゃんは、王様に事のあらましを全て報告した。
勿論だが、報告を受けた王宮では何度目かの大慌ての対応を追われることになったのは...ね。
私達の街に、【大聖霊】だけでなく【聖獣】まで揃ってきている。
そんな所をこのまま街の扱いでいいか?という状況に外野から声がちらほらとあがってきていた。
残っている国にの王族にも、王様は伝令を出すことに決めた。
そして、【緊急王族会議】を開く事となった。
これについてはドラしゃんやロドじぃーちゃん達の耳にも直ぐに話が入って来た。
そして彼らを経由して私達家族の耳にも話が入って来たのは言うまでもない。
この世界には、王様の居る国の他にあと3つの大国が残っている。
その3つの大国の王様が揃って会議をすることになったのだ。
3つの大国とはどんな国?と思う人がいるだろう。
だって、ドラしゃんからその話を聞いた時私達家族は普通にその疑問をドラしゃんにぶつけたからね。
ドラしゃんはそんな私達家族に分かりやすく説明してくれた。
活火山と灼熱の大地に囲われた「炎の王国」と称され、観光業を中心として国を栄えさせている《ファールト王国》。
豊富な鉱山を持ち、職人を多数抱えて鉱石や宝石類の加工製品などでも収益を得て国を栄えさせている《ロフィード王国》。
国土の7割を川や湖、海などの水資源で覆われて、水産加工物や魚貝類で国を栄えさせている《ルファロル王国》。
この3つの大国の王様と私達の住む街のある《ウォルト王国》の王様とが、私達の街について話し合いを行うことになったのだ。
ドラしゃんは話し合いには参加しないが、事の顛末は全て知らせるように王様に返事をしていた。
王様からドラしゃん達に話が届いてから数日後...王様のいる城はいつも以上に重々しい空気に包まれていた。
それもそのはず。その日は他の大国の国王達が来ているからだ。
話し合いの場は、ウォルト王国の宮殿の会議室にて行われる。
ということは...他国の王様と側近1名のみ、会議室に入室して話し合いが行われるのだ。
各国の王様は、側近とそれぞれの国の近衛隊を連れて次々と集まってくる。
会議室の前にはそれぞれの近衛隊が集まって、会議室の護衛を行なうのだ。
そんな会議室の中では、それぞれの国の王様と側近が一つのテーブルを囲み座る。
上座にはもちろん、王様とセバしゃんがいた。
会議の司会進行はいつものごとく、セバしゃんだ。
「お忙しい中、足を運び頂きありがとうございます。
お集まり頂いた理由は、先日各王国に伝達でお知らせした通りです。
我々の国の事ですが、我々の国だけで収まる問題で無くなってきました。
その為、各国の王様方の御意見も伺いたくお呼びだてしました。」
セバしゃんの丁寧な会議開幕の言葉に、各国の王様達は口々に声を上げた。
「丁寧な挨拶ありがとうよ。前回、こちらも非のある対応をしてしまったから気にするな。所で、伝達の内容は本当か?」
ファールト王国国王のファイン国王が、先頭切って発言する。
それに続く感じで
「こちらも、そちらの国に関しては非礼な対応を先日したばかりだ。文句はいやせん。しかし、あの伝達にはかなり驚いたぞ。」
ロフィード王国国王のガジム国王も続けて声を上げ
「私共も他の方々と同様です。先日非礼な対応をしたばかり。先にこちらが詫びねばならぬ。気にしないでおくれ。
しかし、あの伝達にはとても驚きましたね。」
ルファロル王国国王のサイスン国王も声を上げた。
それぞれの国の国王の言葉に、セバしゃんが速やかに対応する。
「いえいえ。勿体なき御言葉です。既に、あの件に関しては、謝罪は頂いております。
その後の対応策を検討報告をする前に、この様な事になり申し訳ありません。伝達内容は、嘘偽りがございません。」
セバしゃんの言葉に、黙っていた王様も口を開く。
「これ以上国同士の争いの火種とならん様にと、包み隠さずの報告だ。
もし、下手をすれば我が国だけでなく他の国も滅びの道を辿りかねないからな...。それだけ、前回の件を含め今回、そして今後起こりうる事も含めてもそちらに話しておこうと思ったんだ。
この意味は、みなまで言わんでもわかるだろうよ。」
王様の言葉に、それぞれの国の国王様達は生唾を呑んだ。
会議室にはかなり重い空気が漂う。
各国の国王様達は、前回の件でそれぞれ神様よりかなりキツい灸を据えられていた。
その為、下手な事をすればどんな目にあうかは十二分にわかっている。
だから自然と重い空気が流れるのだ。
それでも話し合いは続けないといけない為、セバしゃんは重い空気の中言葉を絞り出した。
「今現在、あの街には【大聖霊】様が9人、【聖獣】様が3体いらっしゃいます。全て、契約主はリン様です。
保護者である御両親もご存知です。
もちろんですが、あの方も...フレア殿もです。
街に居る、ロドムカ、スティールミ、ドム、ラミィー、モッケロン、ムキファー、そして、元近衛隊のラディーミル、カシムも承知の事実。十分に警戒と観察は続けています。」
セバしゃんの言葉に、それぞれの国の国王様と側近達は唸るしかなかった。
「現状、街は特に見た目的には変化はございません。
しかし、傍目には変化が少しずつ起こっています。」
このセバしゃんの言葉に、皆は驚きを隠せなかった。
「その変化とは?我が国や他の国にも余波は起こるのか?」
ファイン国王は、セバしゃんそう質問を投げる。
セバしゃんはチラッと横目で国王を見ると国王様はその視線に頷く。
それを確認するとセバしゃんは、ファイン国王の問いに答える。
「傍目からの変化としまして、まず凶暴化する魔物や魔獣があの街に周囲には存在しません。
どちらかと言うと、従来の魔物や魔獣の姿になっている様です。
あと、絶滅していた植物や動物が復活しているそうです。
これは、ラミィーとムキファー、ロドムカとラディミールが直接確認していますので、間違いないかと。」
セバしゃんの言葉に、その場に居る人達は目や口をこれでもかと見開く。
彼らの立場を考えると想像出来ない姿だった。
そんななか、セバしゃんは言葉を続けた。
「そして、これはあの街の周囲だけに留まらずに、他にも広がって居る様子です。もしかしたら、他の国にもそれなりの影響が今後現れるかも知れません。
現段階で言えるのはこれだけです。」
セバしゃんの言葉に、サイスン国王が声を上げた。
「では、セバス殿。質問よろしいですか?貴殿の考えでかまいませんのでお応えお願いします。
今後、もし他の【大聖霊】様や【聖獣】様方がお集まりになった場合、どうなさるおつもりですか?」
サイスン国王の言葉は、他の国の方々も同じ疑問だったようで、セバしゃんに視線が集中する。
セバしゃんは回答に悩んだが、王様が"かまわん"と小声でセバしゃんに伝えた為、セバしゃんは正直に答えた。
「これからお話する事は、あくまでも私の考えです。ですので、この国の考えでない事を承知の上で聞いて頂けたらありがたいですが、よろしいでしょうか?」
セバしゃんの言葉に、その場に居る人達は同時に頷く。
セバしゃんは一呼吸おいて、口を開いて"あくまでも"自分の意見を述べた。
「正直な話、特に気に求めておりません。もしと言いますが、確実に【大聖霊】様と【聖獣】様はあの街に、あの子の元へ集まるでしょう。これは、私の命をかけて言える事です。」
セバしゃんの言葉に、他の国の方々だけでなく、王様も驚いていた。
そんな様子を気にせずに、セバしゃんは言葉を続けた。
「このままいくと、我が国でも勝てぬ程の力があの街に...いいえ、"あの子"に集中するでしょう。
されど、稀有な事にあの子もあの街の住人もそんな事になっているなどと思っていないのですよ。
それどころか、惜しみなくその力を分け隔てなく使おうとするでしょうね。
"戦争"としての暴力ではなく、"平和"の護りの力として。
それだけ、契約主であるリン様もその周りの人達も心根が綺麗な方々ばかりなのです。
ですからでしょうね、あの方も【大聖霊】様や【聖獣】様達が集まり、力を貸そうとなさるのでしょう。 」
セバしゃんの言葉と同じ様に、その言葉を語るセバしゃんの表情には暖かみと笑みがあった。
その為、セバしゃんの言葉に嘘偽りがない事は、確認しなくても十分通じた。
「ですので、悪意を持って対峙すれば言うまでもなく、チリと化すでしょうね。そんな事がわかってて、手を出すのは本当の馬鹿か世間知らず、もしくは怖いもの知らずぐらいでしょう。」
最後とトドメと言わんばかりのセバしゃんの言葉に、各国の国王様と側近達は言葉を詰まらせる。
側近達は、顔を紅くして抗議をしようとしたが、各々の王様に止められた。
「ここまで正直に話されるとは思わなんだわ。お前さん所の側近は相変わらず読めん奴よのう。」
ガジム国王が笑いながら王様に声をかけた。
王様はニヤリと笑い返事をする。
「そんな事、知れたことよ。俺も、コイツもあの街とあの子にちょっかいをかけられたのは、ちと気に食わんかったからなぁ~。まぁ~気にするな。」
王様の言葉に、側近達は怒り更に募らせたが王様達が睨みを効かせているため何も言えない状態。
「そなたの言い分はよく分かった。ありがとう。しかし、誠に不思議ようのう。
今迄にも、異世界から人は何人も来たと言うのに、これ程あの方や【大聖霊】様や【聖獣】様が気にかける存在が現れるとは夢にも思わなんだ。」
サイスン国王の言葉に他の国王も頷いた。
「まさにそれだ。先日の件で、久し振りにあの方にお会いしたが、あそこまで御怒りを露わにされるたのは、あの戦依頼の出来事ぞ。俺も肝が冷えたぞ。」
ファイン国王はそう言って豪快に笑い出す。
「確かに。ワシもあの方に久し振りにおうて、あそこまで御怒りを受けるとは思わなんだわい。
しかし、それ程あの街に住む者が良いのかのう?
ワシらは一度もおうとらんから気になっとるんだが、お前さんらはどうなんだ?」
ガジム国王も笑いながら他の王様達に質問した。
「確かに、ガジム殿やファイン殿の言われる通りです。あの方に久し振りにお会いして、あそこまで御怒りを受けるとは...心底驚いています。
それと同時に、あの街とそこに住まう者達が気になります。」
サイスン国王も笑いながらそう話。
それぞれの国の国王様が笑いになる為、側近達は唖然としてしまい、先程までの怒りを引っ込めざる追えなくなっている。
それには、セバしゃんも王様も苦笑いしていた。
そして、徐にこんな事を言い出したのだった。
「お前達、しばらくここに滞在は延長できるか?」
王様の言葉に、セバしゃんは嫌な予感がした。
もちろんだが、遠く離れた私達の街にいるドラしゃんもだ。
王様の言葉に、それぞれの国の国王達は目をパチクリさせて、それぞれの側近に確認した。
側近達は、王様に確認されて懐にしまっていた手帳らしきものをそれぞれ取り出しては、日程を確認しだす。
そして、どの国もこの話し合いがどの程度で終わるか分からなかったため、余分に予定を空けていた為特に問題はないと側近たちから返事を得る。
それぞれ予定に問題がない事を告げると王様は、ニヤリと笑った。
そして、とんでもない事を提案する。
「ならよ、実際に自分達の目で確認してみるか?」
王様の言葉に、セバしゃんは天を仰いだ。
王様達と側近は揃って首を傾げた。
「今からよ確認取るからよ、自分達で例の街と住人を確認したらどうだ?
そしてらよ、手間も省けるし、今後の対策案も浮かぶだろうよ。どうだ?」
王様の言葉に、各国の国王達と側近達は驚きと共に喜んでその提案に賛同した。
それぞれの答えを聞いて、横で天を仰いでいるセバしゃんに、王様は残酷な事を伝えた。
「と言うわけで、アイツに連絡よろしくな!セバス!」
この時、セバしゃんは心底、目の前の男を殺したいと思った。
セバしゃんは、自国の王様の笑顔とそれぞれ王国の王様達の期待の眼差しを受けて、痛む胃を摩りながらドラしゃんへ確認の伝達を出す。
セバしゃんは泣く泣く私達の居る街へ、ドラしゃん宛の伝達を飛ばしたのだった。
しかも、速達便を放った。
王様達がとんでもない話し合いをしているとは思わず、私達は新しく仲間に入った【聖獣】も引き連れて家の中庭でのんびりしていた。
ドラしゃんとムキじぃーちゃんで、ホワイト達の寝床の準備をしている傍らで、私とお兄ちゃん。
そして、ホワイトとゴールド、ソラで楽しく遊んでいた。
「しっかしよ、フレア。こうも簡単によ【聖獣】が集まって良いのか?」
ムキじぃーちゃんは、作業をしながらドラしゃんに確認をする。
ドラしゃんはムキじぃーちゃんの質問に溜息混じりに応える。
『忘れているのか?この家の2階にはあの空間と繋がる扉が眠っているんだぞ?
そこには、この世界の半数の【聖獣】の卵が眠っている。意味わかるか?』
そうなのです。
既に、卵の状態で我が家の2階の不思議な空間に【聖獣】達が眠っていた。
それは、私達がこの世界に来て直ぐに知った事だ。
もちろん、私やお兄ちゃんは既に忘れていた事なんだけどね。
ドラしゃんの言葉に、ムキじぃーちゃんはあーと言葉をあげた。
どうやらムキじぃーちゃんも忘れていたようだ。
『しかし、卵の状態と言えどいつ孵るのか、何匹孵るかなんかは、謎ですけどね。お嬢様しだいという事なんでしょうね。』
そう言って、ドラしゃんは作業の手を止めて私を見つめる。
ドラしゃんがあまりにも不安そうに私を見つめる為、ムキじぃーちゃんはわざとあっけらかんと声をかけた。
「お前さんにしては、えらく心配症だな。ママは不安でしゅか?」
その言葉に、ドラしゃんは間髪入れずにムキじぃーちゃんの鳩尾に1発撃ち込んだ。
ドラしゃんの攻撃にムキじぃーちゃんが地面に倒れ込んだ時だった。
空から速達便が勢いよく飛んできた。
それをソラが撃ち落として、ドラしゃんが拾う。
なんとも連携がとれた動作が一瞬にして行われた。
ドラしゃんは拾った速達便の内容を確認して、私達が見ている事を忘れて怒りオーラ全開となる。
私とお兄ちゃん。ホワイトとゴールド、ソラはお互いに身を寄せ合って、中庭の隅で震える。
『あのクズ野郎!!絶対にコ○してやる!!』
地の底から這い上がる様な、聞いた事もないドラしゃんの声に思わず私とお兄ちゃんは涙を流してしまった。
私の流した涙は腕輪に落ち、腕輪から【大聖霊】達が慌てた様子で出てくる。
『主人!どうしたの?そんなに泣いて』
『あっ!こら!ドラゴン!なんていうオーラ出してんだ!』
『おい!主人がビビってるだろ?!引っ込めろよ!』
【大聖霊】達の気配と声に、我を戻したドラしゃんは慌ててオーラを引っ込めて私達の元へ駆け寄って慰める。
『申し訳ありません。お嬢様、アキラ様。お2人に対して怒ったのではないですよ。ご心配ならさすがに。
すないが、お前達でしばらくお嬢様達を見ていてくれ。
私はそこに寝ている奴を連れて、少し話し合いをしてくる。任せたぞ』
そうドラしゃんは、【大聖霊】達に伝えると、地面に自分が沈めたムキじぃーちゃんを担いでギルドの方へ急いで消えて行ったのだった。
あまりの展開に、私とお兄ちゃんの涙は止まり、【大聖霊】達も唖然とした様子で遠のいていくドラしゃん達の後ろ姿を見つめていた。
その頃王国の会議室では、セバしゃんが放った伝言の返事が待てずに浮き足立っている大人達を抑えるのに、必死になっている人の姿があった。
「もうーまてねぇーぞ!俺は行くぞ!」
そう言って椅子から立ち上がった、ファイン国王をセバしゃんと王様が止めに入る。
「待って下さい!返事を待たずに行動をすれば、御怒りを受けますよ!」
「そうだぞ!ファイン!いい歳の大人なんだからよ、少しは待てよ?」
セバしゃんと王様の言葉に、少しイライラしながらも、もう一度椅子に腰を落とす。
"早く返事を下さい。これ以上は無理です"
セバしゃんは届かないであろう想いを込めて心の中で呟き、なぜか横に居る王様はくしゃみが止まらなかった。
そんなセバしゃんの言葉が通じたのか、通じなかったのか、ギルドの会議室ではドラしゃんが召集をかけたメンバーが揃っていた。
そこへ、ズタボロになったムキじぃーちゃんを担いだドラしゃんが入って来て、床にムキじぃーちゃんを放り投げると、話をはじめた。
『緊急事態だ。今、この国の城の会議室にて、4国の王族が雁首揃えて会議をしているのだが、何処かのクソ野郎のせいで、この街に各国の王と側近が来るそうだ。その返事を欲しいとセバスから伝言が来た。』
ドラしゃんの言葉に、その場に居た全員が立ち上がりドラしゃんの方を向いた。
この会議室には、ドラしゃん、ムキじぃーちゃん、ルミばぁーちゃん、ロドじぃーちゃん、ドムじぃーちゃん、ラミィお兄ちゃん、モッケしゃん、ラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃん、お父さん、お母さんが居た。
大概何かあると、集められるお決まりのメンバーだ。
皆の視線を一気に受け、ドラしゃんは真剣な表情を崩さず言葉を続けた。
『しかも、どうやらお嬢様にも会いたいようだ。』
その言葉に、お父さんとお母さんは顔色を変える。
それに気付いて、ドラしゃんはすかさずフォローをいれる。
『大丈夫です。別に連れて行くような事はしないでしょう。
もししたら、生きてこの街を出しませんのでご安心を。』
笑顔でその台詞を言うドラしゃんに、安心半分、怖さ半分となったお父さん達。
そして、ドラしゃんの言葉に他のメンバーも頷く。
「しかし、面倒だね。なんでよりにもよって王族共が...。」
ルミばぁーちゃんは、右手の親指の爪を歯で噛みながらつぶやく。
「もしかして、リンの力を利用しようとか?」
ラミィお兄ちゃんの言葉に、お父さんとお母さんはギョッとした。
『はっきりとは分からん。しかし、どうせクズ野郎が訳の分からんことをほざいたのには、間違い無いだろう。』
ドラしゃんは、苦虫を噛んだような表情をして言葉を吐く。
「お前よ、一国の王に対してクズ野郎って...。」
ラディじぃーちゃんは、呆れた表情をしてドラしゃんの言葉に呟く。
「クズ野郎かアホ野郎だろうが。どうせ話し合いが面倒になって、こっちに押し付けたんだろうよ。」
ラディじぃーちゃんの言葉にロドじぃーちゃんが返事を返す。
「あのードラしゃん?どうするんですか?」
お母さんは不安気にドラしゃんに声をかけた。
『とりあえず、無視は出来るだろうがすれば面倒くさい事になるのは分かりきっているので、招待するしかないでしょう。
その為、至急王族共が泊まれるような建物の増設を頼みます。
場所は、我々の住居近くにしておきましょう。
下手したら今後も同じ様な事が起こらないとも限らないので。
そして、対応は我々で行います。
皆さんそのつもりでお願いします。』
ドラしゃんの言葉に全員頷いた。
現在抱えている仕事は中断して、ロドじぃーちゃんとドムじぃーちゃん、ムキじぃーちゃんは建物の建設に。
他は何が起きてもいい様にそれぞれ準備をしに解散した。
お父さんとお母さんはドラしゃんと一緒に、私達の待つ家へ向かった。
その道中にドラしゃんは、セバしゃん宛に返事を忘れずに飛ばす。
その頃王宮の会議室では...。
返事がなかなか来ないのに、痺れを切らしたファイン国王が、返事を待たずに会議室から出ようとしていた。
セバしゃんも王様も、もうお手上げだって思った時だった。
ファイン国王が会議室のドアを開けた瞬間、隙間からドラしゃんの伝言が勢いよく入って来た。
そのため慌ててファイン国王は扉を閉めた。
ドラしゃんの伝言は王様とセバしゃんの前で止まる。
「なんだ?いつものと違うぞ?」
王様が少し警戒をした時だ。
ドラしゃんの伝言が割れて、目の前にドラしゃんの映像が出て来たのと同時に伝言が会議室内に響き渡る。
『セバス、伝言は確認した。来るのは構わないが、手ぶらで来るなよ。
私達にではない。お嬢様と坊っちゃま宛にそれぞれお土産を持参するのは礼儀だからな。
まぁ~そこに居るのはそれなりに名の知れた王族達だから言わなくてもわかるだろうが、念のためだ。
ちなみに、前回の件でお嬢様達のお前達に対する評価は低い。
つまり...その"側にいる者たち"の評価もかなり低いということだ。
それを承知の上で来るんだな。
あと、無礼な対応をしたらそれ相応の罰が降ることは覚悟しておけ。以上だ!』
そう言って映像は消えた。
ドラしゃんの物言いに、各国の側近達は御怒りを示す。
反対に王達は渋い顔をしていた。
セバしゃんと王様は、やれやれと言った表情を浮かべる。
口々に文句を言う側近に王達は諌めた。
「あの程度で済んで良かった方だ。文句を言うのはお門違いだ。鎮まれ。」
「そうだ。あの映画の主は、一見執事に見えるが、かの戦で国々を滅したドラゴンぞ。お前達口を慎め。」
「しかし困りましたね。何を手土産に持参すれば宜しいのでしょうか?
手土産一つで、今後の我らの立場も大きく変わるでしょうに...。」
王達の言葉に、側近達は顔色を変え息を呑んだ。
まさかあんな無礼な物言いをする者が、かの伝説のドラゴンとは思いもしなかったからだろう。
そんな側近達をよそに、王達は頭を抱え始める。
そんな様子にセバしゃんは、ふと思った。
別に手土産なんかは期待していないのだろう。
あくまでもこれは、時間稼ぎ?
して、その意図は?
セバしゃんが悩んでいると、ファイン国王が質問してきた。
「お前達は、例の子供達に会ってるんだよなぁー?年頃はいくつだ?好みはなんだ?」
ファイン国王の質問に、他の2人の王も興味を示す。
王様は、考え事をしているセバしゃんの代わりに答えた。
「兄妹揃って可愛いぞ。兄が今年6歳に、妹の方が4歳になったぞ。
歳のわりにはしっかりした子だ。
なにより癒されるぞ。
見たらお前達も絶対に虜になるぞ。」
王様はニヤケ面で話していた。
その姿に、他の王様達は少し引く。
しかし、王様の言葉がかなり気になった。
いったいどんな子供なのかますます興味が湧いたのはいうまでもない。
セバしゃん:
困りましたね
王様:
これで、堂々と俺達もあの街に行けるなぁー^ ^
セバしゃん:
ʅ(◞‿◟)ʃ
行ったら、速攻でボコられますよ
王様:
Σ(゚д゚lll)それはやだな
セバしゃん:
身から出たサビですよ
私は助けませんからね
王様:
。゚(゚´Д`゚)゚。
セバしゃん:
次回は特にトラブルが起きませんように
ドラしゃんは、王様に事のあらましを全て報告した。
勿論だが、報告を受けた王宮では何度目かの大慌ての対応を追われることになったのは...ね。
私達の街に、【大聖霊】だけでなく【聖獣】まで揃ってきている。
そんな所をこのまま街の扱いでいいか?という状況に外野から声がちらほらとあがってきていた。
残っている国にの王族にも、王様は伝令を出すことに決めた。
そして、【緊急王族会議】を開く事となった。
これについてはドラしゃんやロドじぃーちゃん達の耳にも直ぐに話が入って来た。
そして彼らを経由して私達家族の耳にも話が入って来たのは言うまでもない。
この世界には、王様の居る国の他にあと3つの大国が残っている。
その3つの大国の王様が揃って会議をすることになったのだ。
3つの大国とはどんな国?と思う人がいるだろう。
だって、ドラしゃんからその話を聞いた時私達家族は普通にその疑問をドラしゃんにぶつけたからね。
ドラしゃんはそんな私達家族に分かりやすく説明してくれた。
活火山と灼熱の大地に囲われた「炎の王国」と称され、観光業を中心として国を栄えさせている《ファールト王国》。
豊富な鉱山を持ち、職人を多数抱えて鉱石や宝石類の加工製品などでも収益を得て国を栄えさせている《ロフィード王国》。
国土の7割を川や湖、海などの水資源で覆われて、水産加工物や魚貝類で国を栄えさせている《ルファロル王国》。
この3つの大国の王様と私達の住む街のある《ウォルト王国》の王様とが、私達の街について話し合いを行うことになったのだ。
ドラしゃんは話し合いには参加しないが、事の顛末は全て知らせるように王様に返事をしていた。
王様からドラしゃん達に話が届いてから数日後...王様のいる城はいつも以上に重々しい空気に包まれていた。
それもそのはず。その日は他の大国の国王達が来ているからだ。
話し合いの場は、ウォルト王国の宮殿の会議室にて行われる。
ということは...他国の王様と側近1名のみ、会議室に入室して話し合いが行われるのだ。
各国の王様は、側近とそれぞれの国の近衛隊を連れて次々と集まってくる。
会議室の前にはそれぞれの近衛隊が集まって、会議室の護衛を行なうのだ。
そんな会議室の中では、それぞれの国の王様と側近が一つのテーブルを囲み座る。
上座にはもちろん、王様とセバしゃんがいた。
会議の司会進行はいつものごとく、セバしゃんだ。
「お忙しい中、足を運び頂きありがとうございます。
お集まり頂いた理由は、先日各王国に伝達でお知らせした通りです。
我々の国の事ですが、我々の国だけで収まる問題で無くなってきました。
その為、各国の王様方の御意見も伺いたくお呼びだてしました。」
セバしゃんの丁寧な会議開幕の言葉に、各国の王様達は口々に声を上げた。
「丁寧な挨拶ありがとうよ。前回、こちらも非のある対応をしてしまったから気にするな。所で、伝達の内容は本当か?」
ファールト王国国王のファイン国王が、先頭切って発言する。
それに続く感じで
「こちらも、そちらの国に関しては非礼な対応を先日したばかりだ。文句はいやせん。しかし、あの伝達にはかなり驚いたぞ。」
ロフィード王国国王のガジム国王も続けて声を上げ
「私共も他の方々と同様です。先日非礼な対応をしたばかり。先にこちらが詫びねばならぬ。気にしないでおくれ。
しかし、あの伝達にはとても驚きましたね。」
ルファロル王国国王のサイスン国王も声を上げた。
それぞれの国の国王の言葉に、セバしゃんが速やかに対応する。
「いえいえ。勿体なき御言葉です。既に、あの件に関しては、謝罪は頂いております。
その後の対応策を検討報告をする前に、この様な事になり申し訳ありません。伝達内容は、嘘偽りがございません。」
セバしゃんの言葉に、黙っていた王様も口を開く。
「これ以上国同士の争いの火種とならん様にと、包み隠さずの報告だ。
もし、下手をすれば我が国だけでなく他の国も滅びの道を辿りかねないからな...。それだけ、前回の件を含め今回、そして今後起こりうる事も含めてもそちらに話しておこうと思ったんだ。
この意味は、みなまで言わんでもわかるだろうよ。」
王様の言葉に、それぞれの国の国王様達は生唾を呑んだ。
会議室にはかなり重い空気が漂う。
各国の国王様達は、前回の件でそれぞれ神様よりかなりキツい灸を据えられていた。
その為、下手な事をすればどんな目にあうかは十二分にわかっている。
だから自然と重い空気が流れるのだ。
それでも話し合いは続けないといけない為、セバしゃんは重い空気の中言葉を絞り出した。
「今現在、あの街には【大聖霊】様が9人、【聖獣】様が3体いらっしゃいます。全て、契約主はリン様です。
保護者である御両親もご存知です。
もちろんですが、あの方も...フレア殿もです。
街に居る、ロドムカ、スティールミ、ドム、ラミィー、モッケロン、ムキファー、そして、元近衛隊のラディーミル、カシムも承知の事実。十分に警戒と観察は続けています。」
セバしゃんの言葉に、それぞれの国の国王様と側近達は唸るしかなかった。
「現状、街は特に見た目的には変化はございません。
しかし、傍目には変化が少しずつ起こっています。」
このセバしゃんの言葉に、皆は驚きを隠せなかった。
「その変化とは?我が国や他の国にも余波は起こるのか?」
ファイン国王は、セバしゃんそう質問を投げる。
セバしゃんはチラッと横目で国王を見ると国王様はその視線に頷く。
それを確認するとセバしゃんは、ファイン国王の問いに答える。
「傍目からの変化としまして、まず凶暴化する魔物や魔獣があの街に周囲には存在しません。
どちらかと言うと、従来の魔物や魔獣の姿になっている様です。
あと、絶滅していた植物や動物が復活しているそうです。
これは、ラミィーとムキファー、ロドムカとラディミールが直接確認していますので、間違いないかと。」
セバしゃんの言葉に、その場に居る人達は目や口をこれでもかと見開く。
彼らの立場を考えると想像出来ない姿だった。
そんななか、セバしゃんは言葉を続けた。
「そして、これはあの街の周囲だけに留まらずに、他にも広がって居る様子です。もしかしたら、他の国にもそれなりの影響が今後現れるかも知れません。
現段階で言えるのはこれだけです。」
セバしゃんの言葉に、サイスン国王が声を上げた。
「では、セバス殿。質問よろしいですか?貴殿の考えでかまいませんのでお応えお願いします。
今後、もし他の【大聖霊】様や【聖獣】様方がお集まりになった場合、どうなさるおつもりですか?」
サイスン国王の言葉は、他の国の方々も同じ疑問だったようで、セバしゃんに視線が集中する。
セバしゃんは回答に悩んだが、王様が"かまわん"と小声でセバしゃんに伝えた為、セバしゃんは正直に答えた。
「これからお話する事は、あくまでも私の考えです。ですので、この国の考えでない事を承知の上で聞いて頂けたらありがたいですが、よろしいでしょうか?」
セバしゃんの言葉に、その場に居る人達は同時に頷く。
セバしゃんは一呼吸おいて、口を開いて"あくまでも"自分の意見を述べた。
「正直な話、特に気に求めておりません。もしと言いますが、確実に【大聖霊】様と【聖獣】様はあの街に、あの子の元へ集まるでしょう。これは、私の命をかけて言える事です。」
セバしゃんの言葉に、他の国の方々だけでなく、王様も驚いていた。
そんな様子を気にせずに、セバしゃんは言葉を続けた。
「このままいくと、我が国でも勝てぬ程の力があの街に...いいえ、"あの子"に集中するでしょう。
されど、稀有な事にあの子もあの街の住人もそんな事になっているなどと思っていないのですよ。
それどころか、惜しみなくその力を分け隔てなく使おうとするでしょうね。
"戦争"としての暴力ではなく、"平和"の護りの力として。
それだけ、契約主であるリン様もその周りの人達も心根が綺麗な方々ばかりなのです。
ですからでしょうね、あの方も【大聖霊】様や【聖獣】様達が集まり、力を貸そうとなさるのでしょう。 」
セバしゃんの言葉と同じ様に、その言葉を語るセバしゃんの表情には暖かみと笑みがあった。
その為、セバしゃんの言葉に嘘偽りがない事は、確認しなくても十分通じた。
「ですので、悪意を持って対峙すれば言うまでもなく、チリと化すでしょうね。そんな事がわかってて、手を出すのは本当の馬鹿か世間知らず、もしくは怖いもの知らずぐらいでしょう。」
最後とトドメと言わんばかりのセバしゃんの言葉に、各国の国王様と側近達は言葉を詰まらせる。
側近達は、顔を紅くして抗議をしようとしたが、各々の王様に止められた。
「ここまで正直に話されるとは思わなんだわ。お前さん所の側近は相変わらず読めん奴よのう。」
ガジム国王が笑いながら王様に声をかけた。
王様はニヤリと笑い返事をする。
「そんな事、知れたことよ。俺も、コイツもあの街とあの子にちょっかいをかけられたのは、ちと気に食わんかったからなぁ~。まぁ~気にするな。」
王様の言葉に、側近達は怒り更に募らせたが王様達が睨みを効かせているため何も言えない状態。
「そなたの言い分はよく分かった。ありがとう。しかし、誠に不思議ようのう。
今迄にも、異世界から人は何人も来たと言うのに、これ程あの方や【大聖霊】様や【聖獣】様が気にかける存在が現れるとは夢にも思わなんだ。」
サイスン国王の言葉に他の国王も頷いた。
「まさにそれだ。先日の件で、久し振りにあの方にお会いしたが、あそこまで御怒りを露わにされるたのは、あの戦依頼の出来事ぞ。俺も肝が冷えたぞ。」
ファイン国王はそう言って豪快に笑い出す。
「確かに。ワシもあの方に久し振りにおうて、あそこまで御怒りを受けるとは思わなんだわい。
しかし、それ程あの街に住む者が良いのかのう?
ワシらは一度もおうとらんから気になっとるんだが、お前さんらはどうなんだ?」
ガジム国王も笑いながら他の王様達に質問した。
「確かに、ガジム殿やファイン殿の言われる通りです。あの方に久し振りにお会いして、あそこまで御怒りを受けるとは...心底驚いています。
それと同時に、あの街とそこに住まう者達が気になります。」
サイスン国王も笑いながらそう話。
それぞれの国の国王様が笑いになる為、側近達は唖然としてしまい、先程までの怒りを引っ込めざる追えなくなっている。
それには、セバしゃんも王様も苦笑いしていた。
そして、徐にこんな事を言い出したのだった。
「お前達、しばらくここに滞在は延長できるか?」
王様の言葉に、セバしゃんは嫌な予感がした。
もちろんだが、遠く離れた私達の街にいるドラしゃんもだ。
王様の言葉に、それぞれの国の国王達は目をパチクリさせて、それぞれの側近に確認した。
側近達は、王様に確認されて懐にしまっていた手帳らしきものをそれぞれ取り出しては、日程を確認しだす。
そして、どの国もこの話し合いがどの程度で終わるか分からなかったため、余分に予定を空けていた為特に問題はないと側近たちから返事を得る。
それぞれ予定に問題がない事を告げると王様は、ニヤリと笑った。
そして、とんでもない事を提案する。
「ならよ、実際に自分達の目で確認してみるか?」
王様の言葉に、セバしゃんは天を仰いだ。
王様達と側近は揃って首を傾げた。
「今からよ確認取るからよ、自分達で例の街と住人を確認したらどうだ?
そしてらよ、手間も省けるし、今後の対策案も浮かぶだろうよ。どうだ?」
王様の言葉に、各国の国王達と側近達は驚きと共に喜んでその提案に賛同した。
それぞれの答えを聞いて、横で天を仰いでいるセバしゃんに、王様は残酷な事を伝えた。
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この時、セバしゃんは心底、目の前の男を殺したいと思った。
セバしゃんは、自国の王様の笑顔とそれぞれ王国の王様達の期待の眼差しを受けて、痛む胃を摩りながらドラしゃんへ確認の伝達を出す。
セバしゃんは泣く泣く私達の居る街へ、ドラしゃん宛の伝達を飛ばしたのだった。
しかも、速達便を放った。
王様達がとんでもない話し合いをしているとは思わず、私達は新しく仲間に入った【聖獣】も引き連れて家の中庭でのんびりしていた。
ドラしゃんとムキじぃーちゃんで、ホワイト達の寝床の準備をしている傍らで、私とお兄ちゃん。
そして、ホワイトとゴールド、ソラで楽しく遊んでいた。
「しっかしよ、フレア。こうも簡単によ【聖獣】が集まって良いのか?」
ムキじぃーちゃんは、作業をしながらドラしゃんに確認をする。
ドラしゃんはムキじぃーちゃんの質問に溜息混じりに応える。
『忘れているのか?この家の2階にはあの空間と繋がる扉が眠っているんだぞ?
そこには、この世界の半数の【聖獣】の卵が眠っている。意味わかるか?』
そうなのです。
既に、卵の状態で我が家の2階の不思議な空間に【聖獣】達が眠っていた。
それは、私達がこの世界に来て直ぐに知った事だ。
もちろん、私やお兄ちゃんは既に忘れていた事なんだけどね。
ドラしゃんの言葉に、ムキじぃーちゃんはあーと言葉をあげた。
どうやらムキじぃーちゃんも忘れていたようだ。
『しかし、卵の状態と言えどいつ孵るのか、何匹孵るかなんかは、謎ですけどね。お嬢様しだいという事なんでしょうね。』
そう言って、ドラしゃんは作業の手を止めて私を見つめる。
ドラしゃんがあまりにも不安そうに私を見つめる為、ムキじぃーちゃんはわざとあっけらかんと声をかけた。
「お前さんにしては、えらく心配症だな。ママは不安でしゅか?」
その言葉に、ドラしゃんは間髪入れずにムキじぃーちゃんの鳩尾に1発撃ち込んだ。
ドラしゃんの攻撃にムキじぃーちゃんが地面に倒れ込んだ時だった。
空から速達便が勢いよく飛んできた。
それをソラが撃ち落として、ドラしゃんが拾う。
なんとも連携がとれた動作が一瞬にして行われた。
ドラしゃんは拾った速達便の内容を確認して、私達が見ている事を忘れて怒りオーラ全開となる。
私とお兄ちゃん。ホワイトとゴールド、ソラはお互いに身を寄せ合って、中庭の隅で震える。
『あのクズ野郎!!絶対にコ○してやる!!』
地の底から這い上がる様な、聞いた事もないドラしゃんの声に思わず私とお兄ちゃんは涙を流してしまった。
私の流した涙は腕輪に落ち、腕輪から【大聖霊】達が慌てた様子で出てくる。
『主人!どうしたの?そんなに泣いて』
『あっ!こら!ドラゴン!なんていうオーラ出してんだ!』
『おい!主人がビビってるだろ?!引っ込めろよ!』
【大聖霊】達の気配と声に、我を戻したドラしゃんは慌ててオーラを引っ込めて私達の元へ駆け寄って慰める。
『申し訳ありません。お嬢様、アキラ様。お2人に対して怒ったのではないですよ。ご心配ならさすがに。
すないが、お前達でしばらくお嬢様達を見ていてくれ。
私はそこに寝ている奴を連れて、少し話し合いをしてくる。任せたぞ』
そうドラしゃんは、【大聖霊】達に伝えると、地面に自分が沈めたムキじぃーちゃんを担いでギルドの方へ急いで消えて行ったのだった。
あまりの展開に、私とお兄ちゃんの涙は止まり、【大聖霊】達も唖然とした様子で遠のいていくドラしゃん達の後ろ姿を見つめていた。
その頃王国の会議室では、セバしゃんが放った伝言の返事が待てずに浮き足立っている大人達を抑えるのに、必死になっている人の姿があった。
「もうーまてねぇーぞ!俺は行くぞ!」
そう言って椅子から立ち上がった、ファイン国王をセバしゃんと王様が止めに入る。
「待って下さい!返事を待たずに行動をすれば、御怒りを受けますよ!」
「そうだぞ!ファイン!いい歳の大人なんだからよ、少しは待てよ?」
セバしゃんと王様の言葉に、少しイライラしながらも、もう一度椅子に腰を落とす。
"早く返事を下さい。これ以上は無理です"
セバしゃんは届かないであろう想いを込めて心の中で呟き、なぜか横に居る王様はくしゃみが止まらなかった。
そんなセバしゃんの言葉が通じたのか、通じなかったのか、ギルドの会議室ではドラしゃんが召集をかけたメンバーが揃っていた。
そこへ、ズタボロになったムキじぃーちゃんを担いだドラしゃんが入って来て、床にムキじぃーちゃんを放り投げると、話をはじめた。
『緊急事態だ。今、この国の城の会議室にて、4国の王族が雁首揃えて会議をしているのだが、何処かのクソ野郎のせいで、この街に各国の王と側近が来るそうだ。その返事を欲しいとセバスから伝言が来た。』
ドラしゃんの言葉に、その場に居た全員が立ち上がりドラしゃんの方を向いた。
この会議室には、ドラしゃん、ムキじぃーちゃん、ルミばぁーちゃん、ロドじぃーちゃん、ドムじぃーちゃん、ラミィお兄ちゃん、モッケしゃん、ラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃん、お父さん、お母さんが居た。
大概何かあると、集められるお決まりのメンバーだ。
皆の視線を一気に受け、ドラしゃんは真剣な表情を崩さず言葉を続けた。
『しかも、どうやらお嬢様にも会いたいようだ。』
その言葉に、お父さんとお母さんは顔色を変える。
それに気付いて、ドラしゃんはすかさずフォローをいれる。
『大丈夫です。別に連れて行くような事はしないでしょう。
もししたら、生きてこの街を出しませんのでご安心を。』
笑顔でその台詞を言うドラしゃんに、安心半分、怖さ半分となったお父さん達。
そして、ドラしゃんの言葉に他のメンバーも頷く。
「しかし、面倒だね。なんでよりにもよって王族共が...。」
ルミばぁーちゃんは、右手の親指の爪を歯で噛みながらつぶやく。
「もしかして、リンの力を利用しようとか?」
ラミィお兄ちゃんの言葉に、お父さんとお母さんはギョッとした。
『はっきりとは分からん。しかし、どうせクズ野郎が訳の分からんことをほざいたのには、間違い無いだろう。』
ドラしゃんは、苦虫を噛んだような表情をして言葉を吐く。
「お前よ、一国の王に対してクズ野郎って...。」
ラディじぃーちゃんは、呆れた表情をしてドラしゃんの言葉に呟く。
「クズ野郎かアホ野郎だろうが。どうせ話し合いが面倒になって、こっちに押し付けたんだろうよ。」
ラディじぃーちゃんの言葉にロドじぃーちゃんが返事を返す。
「あのードラしゃん?どうするんですか?」
お母さんは不安気にドラしゃんに声をかけた。
『とりあえず、無視は出来るだろうがすれば面倒くさい事になるのは分かりきっているので、招待するしかないでしょう。
その為、至急王族共が泊まれるような建物の増設を頼みます。
場所は、我々の住居近くにしておきましょう。
下手したら今後も同じ様な事が起こらないとも限らないので。
そして、対応は我々で行います。
皆さんそのつもりでお願いします。』
ドラしゃんの言葉に全員頷いた。
現在抱えている仕事は中断して、ロドじぃーちゃんとドムじぃーちゃん、ムキじぃーちゃんは建物の建設に。
他は何が起きてもいい様にそれぞれ準備をしに解散した。
お父さんとお母さんはドラしゃんと一緒に、私達の待つ家へ向かった。
その道中にドラしゃんは、セバしゃん宛に返事を忘れずに飛ばす。
その頃王宮の会議室では...。
返事がなかなか来ないのに、痺れを切らしたファイン国王が、返事を待たずに会議室から出ようとしていた。
セバしゃんも王様も、もうお手上げだって思った時だった。
ファイン国王が会議室のドアを開けた瞬間、隙間からドラしゃんの伝言が勢いよく入って来た。
そのため慌ててファイン国王は扉を閉めた。
ドラしゃんの伝言は王様とセバしゃんの前で止まる。
「なんだ?いつものと違うぞ?」
王様が少し警戒をした時だ。
ドラしゃんの伝言が割れて、目の前にドラしゃんの映像が出て来たのと同時に伝言が会議室内に響き渡る。
『セバス、伝言は確認した。来るのは構わないが、手ぶらで来るなよ。
私達にではない。お嬢様と坊っちゃま宛にそれぞれお土産を持参するのは礼儀だからな。
まぁ~そこに居るのはそれなりに名の知れた王族達だから言わなくてもわかるだろうが、念のためだ。
ちなみに、前回の件でお嬢様達のお前達に対する評価は低い。
つまり...その"側にいる者たち"の評価もかなり低いということだ。
それを承知の上で来るんだな。
あと、無礼な対応をしたらそれ相応の罰が降ることは覚悟しておけ。以上だ!』
そう言って映像は消えた。
ドラしゃんの物言いに、各国の側近達は御怒りを示す。
反対に王達は渋い顔をしていた。
セバしゃんと王様は、やれやれと言った表情を浮かべる。
口々に文句を言う側近に王達は諌めた。
「あの程度で済んで良かった方だ。文句を言うのはお門違いだ。鎮まれ。」
「そうだ。あの映画の主は、一見執事に見えるが、かの戦で国々を滅したドラゴンぞ。お前達口を慎め。」
「しかし困りましたね。何を手土産に持参すれば宜しいのでしょうか?
手土産一つで、今後の我らの立場も大きく変わるでしょうに...。」
王達の言葉に、側近達は顔色を変え息を呑んだ。
まさかあんな無礼な物言いをする者が、かの伝説のドラゴンとは思いもしなかったからだろう。
そんな側近達をよそに、王達は頭を抱え始める。
そんな様子にセバしゃんは、ふと思った。
別に手土産なんかは期待していないのだろう。
あくまでもこれは、時間稼ぎ?
して、その意図は?
セバしゃんが悩んでいると、ファイン国王が質問してきた。
「お前達は、例の子供達に会ってるんだよなぁー?年頃はいくつだ?好みはなんだ?」
ファイン国王の質問に、他の2人の王も興味を示す。
王様は、考え事をしているセバしゃんの代わりに答えた。
「兄妹揃って可愛いぞ。兄が今年6歳に、妹の方が4歳になったぞ。
歳のわりにはしっかりした子だ。
なにより癒されるぞ。
見たらお前達も絶対に虜になるぞ。」
王様はニヤケ面で話していた。
その姿に、他の王様達は少し引く。
しかし、王様の言葉がかなり気になった。
いったいどんな子供なのかますます興味が湧いたのはいうまでもない。
セバしゃん:
困りましたね
王様:
これで、堂々と俺達もあの街に行けるなぁー^ ^
セバしゃん:
ʅ(◞‿◟)ʃ
行ったら、速攻でボコられますよ
王様:
Σ(゚д゚lll)それはやだな
セバしゃん:
身から出たサビですよ
私は助けませんからね
王様:
。゚(゚´Д`゚)゚。
セバしゃん:
次回は特にトラブルが起きませんように
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