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一章 異世界へようこそ 新たな人生の幕開け
1-5 無事にうまれるために
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母上の身体に出産の兆しが見られ、胎内にいる僕達も外に出る準備に入る。
最近は母上の身体の下の方で過ごしているが、今日に限っては更に下の方に体を動かしていく。
《私、お姉ちゃんだから私が先に出るからね!心配しないで!私が安全か確かめたら合図するから後に続くのよ!》
相棒はそう必死に僕に訴える。しかも...震える体でだ。
それもそのはず。未知の世界に出ようと言うのだから不安がないわけではない。
無事に外に出られるかも分からないのだから。
それでも相棒は自分が"姉"だからという理由だけで奮闘しているのだ。
(彼女が僕の姉でよかった。絶対彼女を悪女なんかにさせないから。"フラグ"は全て僕がへし折ってやる!)
密かにそんな事を思いながら外に出る相棒にエールを送る。
(頑張って下さい!)
僕がそう伝えると相棒は笑顔を浮かべ目を閉じて、身体を小さく丸め出しさらに下へと体を動かし出す。
その頃外では母上のお腹に痛みが走って、うめき声をあげていた。
そう...母上の身体には"陣痛"が起こっていたのだ。
これは僕達を胎内から出すためのサインでもある。
最初こそはまだ耐えれる痛みだったようだが、段々と痛みの間隔も短くなり、痛さも強くなっている様で、母上は今まであげたこともない様な声を出して苦しみ出す。
部屋の外ではその声を不安そうに聴きながら待つしかない父上、兄上、義祖父母達が待機している。
母上は初めての出産ではないが、兄上を産んでからかなり時が経っているのでほぼ初産に近い状態だと専属医師は判断したようで、今回の出産は長引く予測をたてる。
冷静に母上の体調と痛みの間隔を見極めていき、側に控える侍女達に指示をだす。
そんな中部屋の外が騒がしくなったと思ったら勢いよく部屋の扉が開かれた。
外に待機していた父上達の静止を振り切り恰幅のいい年配の女性達が五名入ってきたのだ。
彼女達の登場に一瞬驚きの表情を浮かべる専属医師だが...彼女達の身なりを見て瞬時に"メレーセ様"だと理解して、部屋から彼女達を追い出そうとする父上達を止める専属医師。
「旦那様、大丈夫です。彼女達こそ"メレーセ様"です。もう安心です。部屋の外で待機していてください。
メレーセ様方、急な知らせの中ありがとうございます。状態をお伝えしますのでよろしくお願いします。」
専属医師はそう話すと父上達は渋々部屋の外へ。
メレーセ様方は専属医師の説明を聞きながらテキパキと動き出す。
「先生、ありがとうございます。私はこれまで数多くの出産に立ち会っておりますので大丈夫です。
一緒にいる子達も私の弟子達ですので安心して下さい。私も奥様の状態を見させて頂いても?」
年配の女性が専属医師に丁寧に話をしてベッドの上で苦しむ母上の元へと向かう。
「"初めまして"、奥様。私、この地域の"メレーセ"を取り仕切っておりますラファと申します。奥様の状態を見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
ラファと名乗ったメレーセを見て母上は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに微笑して頷く。
「あなた...私が長男を出産した際、筆頭メレーセ様のすぐ側でいた方ね。息子の身体を洗っておくるみに包んで私に渡してくれた方でしょう?覚えているわ。」
母上がそう話すとラファは嬉しそうな表情を浮かべる。
「何年も経つのに覚えて頂けていたのですね。ありがとうございます。
今回は私が仕切らせて頂きます。今回もよろしくお願いします。」
そう言ってラファは母上の足元の布をめくり、出産状況を確認する。
母上の子宮口は五センチ以上開いており破水もしていた。
だが、まだ子宮口付近の筋肉は緊張しており硬い。
まだ出産するのに時間がかかると判断したラファは、めくった布を元に戻して母上に今の状況を伝える。
「奥様、お子様が産まれる入り口は開いてきておりますが...まだ硬いです。しばらく時間がかかるかと思います。
以前お子様を産んでおりますが、時間がかなり経っておりますのでかなり大変な出産になるかと...。」
そう伝えると母上は苦笑いを浮かべる。
専属医師も自分の見立てが間違ってない事にホッとする。
が、彼女はいっさい気を緩めなかった。
「奥様、話を聞いた所...お腹のお子様はおふたりいるとか?ですと、時間がかかりすぎると後に産まれるお子様にかなりの負担を強いる恐れがあります。」
ラファの言葉にその場の空気が凍りつく。
ひとり産むだけでも出産はかなり難易度が高いもの。
それがふたりとなると...それは最初から分かりきってはいたが...。
ベテランのメレーセ様が見立てることだから間違いはない。
ならあまり時間をかけすぎるのは...。
凍り付いた部屋の中母上は陣痛の痛みに耐えながら目の前メレーセであるラファの言葉を待つ。
ラファは自分の頭の中を整理しながら母上に話しかける。
「奥様。私の経験上...本日中にお子様を産まないと...ふたり目は諦めないといけなくなります。
ですが、私は必ずお二人ともこの世に出てきてもらいたいので、今から奥様にある施術を施しますが...よろしいでしょうか?」
ラファの言葉にお母さんは身体を起こしてラファを見つめる。
「それは...どんなこと?」
母上の言葉にラファはにっこりと微笑みとんでもないことを言い出した。
「今から奥様の下半身を集中的に揉みほぐします。もちろんあの場所もです。
血行を良くして筋肉の緊張をほぐして入り口を緩めさせて頂きます。」
ラファの言葉に専属医師をはじめ侍女達も驚く。
言われた母上は驚きのあまりに陣痛の痛みを一瞬忘れていたのだった。
最近は母上の身体の下の方で過ごしているが、今日に限っては更に下の方に体を動かしていく。
《私、お姉ちゃんだから私が先に出るからね!心配しないで!私が安全か確かめたら合図するから後に続くのよ!》
相棒はそう必死に僕に訴える。しかも...震える体でだ。
それもそのはず。未知の世界に出ようと言うのだから不安がないわけではない。
無事に外に出られるかも分からないのだから。
それでも相棒は自分が"姉"だからという理由だけで奮闘しているのだ。
(彼女が僕の姉でよかった。絶対彼女を悪女なんかにさせないから。"フラグ"は全て僕がへし折ってやる!)
密かにそんな事を思いながら外に出る相棒にエールを送る。
(頑張って下さい!)
僕がそう伝えると相棒は笑顔を浮かべ目を閉じて、身体を小さく丸め出しさらに下へと体を動かし出す。
その頃外では母上のお腹に痛みが走って、うめき声をあげていた。
そう...母上の身体には"陣痛"が起こっていたのだ。
これは僕達を胎内から出すためのサインでもある。
最初こそはまだ耐えれる痛みだったようだが、段々と痛みの間隔も短くなり、痛さも強くなっている様で、母上は今まであげたこともない様な声を出して苦しみ出す。
部屋の外ではその声を不安そうに聴きながら待つしかない父上、兄上、義祖父母達が待機している。
母上は初めての出産ではないが、兄上を産んでからかなり時が経っているのでほぼ初産に近い状態だと専属医師は判断したようで、今回の出産は長引く予測をたてる。
冷静に母上の体調と痛みの間隔を見極めていき、側に控える侍女達に指示をだす。
そんな中部屋の外が騒がしくなったと思ったら勢いよく部屋の扉が開かれた。
外に待機していた父上達の静止を振り切り恰幅のいい年配の女性達が五名入ってきたのだ。
彼女達の登場に一瞬驚きの表情を浮かべる専属医師だが...彼女達の身なりを見て瞬時に"メレーセ様"だと理解して、部屋から彼女達を追い出そうとする父上達を止める専属医師。
「旦那様、大丈夫です。彼女達こそ"メレーセ様"です。もう安心です。部屋の外で待機していてください。
メレーセ様方、急な知らせの中ありがとうございます。状態をお伝えしますのでよろしくお願いします。」
専属医師はそう話すと父上達は渋々部屋の外へ。
メレーセ様方は専属医師の説明を聞きながらテキパキと動き出す。
「先生、ありがとうございます。私はこれまで数多くの出産に立ち会っておりますので大丈夫です。
一緒にいる子達も私の弟子達ですので安心して下さい。私も奥様の状態を見させて頂いても?」
年配の女性が専属医師に丁寧に話をしてベッドの上で苦しむ母上の元へと向かう。
「"初めまして"、奥様。私、この地域の"メレーセ"を取り仕切っておりますラファと申します。奥様の状態を見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
ラファと名乗ったメレーセを見て母上は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに微笑して頷く。
「あなた...私が長男を出産した際、筆頭メレーセ様のすぐ側でいた方ね。息子の身体を洗っておくるみに包んで私に渡してくれた方でしょう?覚えているわ。」
母上がそう話すとラファは嬉しそうな表情を浮かべる。
「何年も経つのに覚えて頂けていたのですね。ありがとうございます。
今回は私が仕切らせて頂きます。今回もよろしくお願いします。」
そう言ってラファは母上の足元の布をめくり、出産状況を確認する。
母上の子宮口は五センチ以上開いており破水もしていた。
だが、まだ子宮口付近の筋肉は緊張しており硬い。
まだ出産するのに時間がかかると判断したラファは、めくった布を元に戻して母上に今の状況を伝える。
「奥様、お子様が産まれる入り口は開いてきておりますが...まだ硬いです。しばらく時間がかかるかと思います。
以前お子様を産んでおりますが、時間がかなり経っておりますのでかなり大変な出産になるかと...。」
そう伝えると母上は苦笑いを浮かべる。
専属医師も自分の見立てが間違ってない事にホッとする。
が、彼女はいっさい気を緩めなかった。
「奥様、話を聞いた所...お腹のお子様はおふたりいるとか?ですと、時間がかかりすぎると後に産まれるお子様にかなりの負担を強いる恐れがあります。」
ラファの言葉にその場の空気が凍りつく。
ひとり産むだけでも出産はかなり難易度が高いもの。
それがふたりとなると...それは最初から分かりきってはいたが...。
ベテランのメレーセ様が見立てることだから間違いはない。
ならあまり時間をかけすぎるのは...。
凍り付いた部屋の中母上は陣痛の痛みに耐えながら目の前メレーセであるラファの言葉を待つ。
ラファは自分の頭の中を整理しながら母上に話しかける。
「奥様。私の経験上...本日中にお子様を産まないと...ふたり目は諦めないといけなくなります。
ですが、私は必ずお二人ともこの世に出てきてもらいたいので、今から奥様にある施術を施しますが...よろしいでしょうか?」
ラファの言葉にお母さんは身体を起こしてラファを見つめる。
「それは...どんなこと?」
母上の言葉にラファはにっこりと微笑みとんでもないことを言い出した。
「今から奥様の下半身を集中的に揉みほぐします。もちろんあの場所もです。
血行を良くして筋肉の緊張をほぐして入り口を緩めさせて頂きます。」
ラファの言葉に専属医師をはじめ侍女達も驚く。
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