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一章 異世界へようこそ 新たな人生の幕開け

1-0 生まれる前の準備

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 神様達と別れてから僕は暫く暗い空間で過ごしていた。
でも不思議と怖いという気持ちにはならず、安心しきっていた。

温かい気持ちのまま眠って過ごす。それはほんのひとときの安らぎみたいなものだった。

どれくらいその暗い空間で過ごしていたかは分からないが、次に僕が目を開けた時には水の中にいた。

しかも一人ではなくもう一人相棒が僕と同じ姿勢で水の中にいたのだ。

そこで僕はようやく認識した。ここが、"母親"のお腹の中だという事を。

ようやく人として形を保てるようになった僕はしっかり"記憶"がある事を理解し、今自分がどこにいるのかもちゃんと理解できていた。

(ヘェ~、お腹の中で僕はこんな姿なんだな。と言っても今僕が見ているのは僕じゃないんだけど...誰なんだろう?
 しかし、本当に彼らは神様だったんだ。ちゃんと記憶があるよ。僕は生まれ変わるだね。でも...大丈夫なのかな??年相応に振る舞える自信が...ない。
まぁ~困ったことがあれば祈れば誰かが助けてくれるって言ってたからその言葉を信じて今は大人しくしておこうか。)

僕は温かい水の中でそんな事を考えながらまた眠りについた。

次に目が覚めた時もまだ水の中にいた。水の中にいるのに全く苦しくない。
お腹あたりに紐?みたいなのがあってそこからご馳走が運ばれてくるからお腹も空かない。

でも、少しずつ自分が大きくなっているのは感じる。
僕だけでなく、一緒に水の中にいる相棒も大きくなっているのが分かる。

少しずつ大きくなるに連れて音も聞こえてくるようになった。
まだはっきりとは何を言っているのかまでは分からないが、優しい声が聞こえてくるのは分かる。

それが短いものからリズムに乗ったものまで様々だ。

(きっとこの声が僕たちの"お母さん"の声なのかなぁ?優しそうな声。どんな人なんだろう?たまに聞こえる別の女の人の声は誰なんだろう?少し歳が入った感じに聞こえるからおばあちゃん??なのかなぁ??)

僕はそんな事を思いながら水の中で過ごしていたらふと近くから声が聞こえてきた。

《ちょっと、あんた誰?なんで私と一緒にここにいるの?》

声の主が分からず僕が考え込んでいるとふと視線を感じたのでそちらを向くと相棒と目が合った。

僕はしばらく相棒を見つめて目をぱちぱちしていると...

《ちょっと!私の言葉が分からないの?!あんた誰よ!》

目の前の相棒から声が聞こえていることが分かり僕は慌てて返事を返す。

(僕?僕は...君の相棒だよ。ずっと、君と一緒にここにいるんだよ??知らなかった?)

僕がそういうと相棒が不思議そうな視線を僕に送る。

《えっ?!ずっといたの??気付かなかったわ...ごめんなさい。じゃーあなたは私の"妹"になる子ね?よろしくね。》

最初こそツンケンとした声色だったのだが、僕がずっと一緒にいたと分かれば凄く優しい声色になり、微笑みかけてきた。

でも...ちょっと気になることが..."妹"という不思議なフレーズが...。

(あ...あのう...僕...男の子なんですけど...。)

遠慮気味に僕が呟くと目の前の相棒は目をパチクリさせて僕の下半身を見る。
そして...満面の笑みを浮かべて

《何入ってるの?私と同じ身体をしてるから女の子よ!心配しないで!あなたも私も美人さんになるわ!》

どこからそんな自信が...?!!その前に小ぶりだがちゃんとお股にあるのに!!なんで?!!と思って言い返そうと思ったが、目の前の相棒が眠りについたので言い返すのを諦めた。

それからどれだけ水の中で過ごしたかな??
水の中での生活にもかなり慣れてきた。

お互いに起きていたら色んな話もしたし、外から聞こえてくる音や声を聞きながら楽しく過ごした。

外からの音と声で色んなことが分かった。
僕たちにはお母さんとお父さんの他に、おじいちゃんとおばあちゃん、お兄ちゃんがいて、その他にもお世話をしてくれる人達が沢山いる事が分かった。

どうやって知ったかといったら声の種類で判別したのだ。
常に聞こえてくる若い女の人が"お母さん"。
若い男の子の声が"お兄ちゃん"。
お母さんに声かけてから僕たちに向かって声をかけてくる男の人が"お父さん"。
年配でお母さんに対して少しだけ強く声をかけるのが"おばあちゃん"。
そのおばあちゃんに声をかける年配の男の人の声が"おじいちゃん"。
といった感じで僕達は判断した。

相棒は自分を"姉"とゆずらないので、僕は相棒を姉と認めた。

そこでふとある事を思い出した。

それは...この水の中に来る前に神様達と話をした内容だ。

僕には兄と姉がいると。
兄は水の外から聞こえてくる声の主がそうだとして..."姉"は...この人なのだろう。

そして、この"姉"が問題の悪女となる人物である事を思い出したのだ。

(でも...悪女になるような感じには見えない。素直だし...可愛のに...。)

目の前で可愛く笑う相棒の姿を見ながら神様の言葉を思い出していると、相棒がそっと僕の手を掴んできた。





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