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第四章

4-70 今日から実験調査開始 ②

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 私は楽しそうに揺れる枝の振動を感じとりながら巨木と会話を続ける。
目はまだ閉じたままでね。

【ほほっう。相変わらず可愛げのある返事をする子だねぇ~。いやはやまだまだ耄碌はしておらんぞ。相変わらずグズグスと小さなことで悩んでおるなぁ~とおもってのうぉ~。せっかくめんこい顔立ちしておるのに、眉間に皺ばかり寄せておると嫁の貰い手無くすぞ?】

冗談なのか本気でいっているのか分からない感じでゆったりと語りかける巨木。

私は彼のこの雰囲気にいつも根負けしてしまう。
そう...今日も根負けして閉じていた目を開いて、預けていた背中を浮かせて姿勢を変えて、巨木に向き合う形で座り直して返事を返す。

『もうー!!私にとったら真剣な悩みなのよ!失礼しちゃうわ!』

私が両頬をリスのように膨らませて抗議をすると背中を預けていた木の幹に膨らみが現れたかと思ったらなんと人の顔のようなものが現れた。

その表情は年季の入った翁の顔そのもの。
声の主がわざわざ私と"会話"するためにこうして幹を変化させて"人の顔"をとり、会話をしてくれるのだ。

【私からすれば小さき悩みぞ?汚染された土地はお前たちのせいではなかろう?自分こそがこの地の主だと言わんばかりにのさばってきた人間達の傲慢さが招いたことだろうに。なぜそこまでお前たちが頭を悩ませるか不思議でしかないわい。】

巨木は怒るでもなく、本当に不思議そうに尋ねるような口調で語りかけてくる。

彼はなぜが全てを知っている。別に私が教えたわけでもないのに...本当に不思議だ。

私は彼の言葉に表情変えずに応える。

『それを言われたら何にも言い返せない...。でも、彼らの中には私達と仲のいい人もいるの。全ての人が悪いわけじゃないわ。だから...。』

"見捨てることができない。"その言葉を私は飲み込んだ。
彼にとってその行為は無駄な抵抗の一つに過ぎなかった。しかし、彼は私のその行動を馬鹿にするわけでもなく優しく受け入れてくれた。

【だから言っているんだよぉ~。お前は見た目だけが成長しただけだと。中身は子供の頃から変わっておらんわぁ~。まぁ~そこがお前さんのいい所だから私も好いているのだけどね。
 いいかい?お前さんの持つ力はこの世界の未来を大きく変える可能性を秘めている。ただ、それに気付いてないだけ。気付かなくてもいい。"お前さんが変わらずに今のままでいてさえすれば、"力"の方からお前さんに助け舟をだすからね。"それを忘れるんじゃないよ??大丈夫。この翁が言うんだ?心強いであろう?】

そう言って巨木は自分の身体の一部である枝を動かして、私の頭を優しく撫でる。

祖父が孫をあやすように。
私はそれがとても嬉しく、本当に心強く思えて素直に甘えた。

『ありがとう。翁。私明日から頑張るわ!』

【ああ、その笑顔だ。兄さんを焦がしすぎないようになぁ~。】

『えっ?!それは...難しいかなぁ??』

そう言って私が声を上げて笑うと翁も嬉しそうに笑うのだった。
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