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第三章

3-54 ラース兄さんも

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 私とブルーム兄さんが神様達に勝っていた頃、ラース兄さんもいつもと違った違った戦いをしていた。

いつもの様に繰り広げられる模擬戦。
知恵と知恵とがぶつかり合う本場さながらの戦略戦が。

ラース兄さんも場合は地形、環境、模擬戦に使われる兵士の数を変えたりして五戦一本勝負を毎回行なっている。

未だ一戦も勝てず、運が良くて引き分け止まり。

しかしこの日は違っていた。

それは一試合目から。
模擬戦を行う前に互いに陣形を整えることから始める。

陣形は戦いの場に置いて勝利の左右を決める大事なもの。
陣形を誤ればその戦いは敗戦となると言っても過言ではないぐらい大事なものなのだ。

だからいつも模擬戦を行う前に陣形を整える時間が五分間与えられるのだが...この日のラース兄さんは全く陣形を整えようとしなかった。

いや、見た目的には陣形を整えてない様に見せかけて頭の中ですでに勝つための陣形と策略ができていたのだった。

いつもなら必死になって"あーでもない"、"こーでもない"といって陣形を時間ギリギリまで粘って決めているのにこの日に限ってそれが全くなかったのだ。

それを見て顔を顰めるタルロス。

《なんだ?なんで目を瞑って...瞑想でもしてるのか?それとも...とうとう気でも狂ったか?それにしては...いつも以上に穏やかな空気を纏ってやがるな。...これは...もしかしたら...もしかするのか?》

独り言を呟きながら全く動かないラース兄さんを見つめていた。

制限時間の五分が経った。
五分が経過してもラース兄さんの陣形は全く変わってなかった。

《おいお前、それでいいのか?》

陣形を整え終わったタルロスが声をかけるとようやく目を開いてタルロスを見つめて...

『ああ、問題ないよ。』

ラース兄さんがいつも以上に冷静に答えるとタルロスはなぜか寒気というか何とも言えないものを感じ取った。

《なんなんだ?!クソ!ヨシ!やるぞ!》

タルロスの言葉を合図に模擬戦が始まった。

始まったのだが...

《な、なんだと?!!》

始まって一分も経たないうちにラース兄さんはタルロスの軍勢を押し退けて大将を討ち取ったのだ。

『まず一勝目。次だ。』

冷静に話すラース兄さん。
タルロスはなんとも言えない空気を感じつつも試合を続ける。

二試合目、三試合目、四試合目とどれもラース兄さんの圧勝。

しかも陣形はどれも同じで初期の陣形のままなのだ。

《一体何が起きてんだ?!》

『さあー、最後だ。手を抜かないから。』

ラース兄さんの言葉を聞いて冷静さをなくすタルロス。
この時点で五試合目の結果は決まっていた。

もちろん...ラース兄さんの圧勝だ。

《クソ...なんなんだ?全く読めないなんて...考えて...いや...まったくかんがえてないのか?あーーー!!!もう!!俺の負けだ!!!》

タルロスのその言葉を聞いてラース兄さんは私達が見たこともない極上の笑みを浮かべたのだ。
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