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第六章 親父たち、追う者と追われる者
親父たち、国境を突破する
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前回までのあらすじ
親父たちを追う暴走集団と国境警備隊の乱戦によって国境は閉じられていた。
深夜。
ほっかむり(手ぬぐい等を頭にかぶり頬や顎のあたりで結ぶこと)した親父たちが抜き足忍び足で国境に設置された壁に近付いていた。
「教授!」
「うむ、なにかね?」
「なんで?わしらはほっかむりしているんだ?」
「この状況で日本人の典型的な泥棒の姿をした奴なんていないぞ!」
「これで唐草模様の風呂敷があったら完璧でござる!」
「肯定であります!」
親父たちの意見に教授は涼しい顔で答えた。
「うむ、大丈夫だよ!泥棒をするわけではないから!」
「「「「…………」」」」
訂正、答えになっていなかった。
「うむ、諸君たちの言いたいこともわかる!だが、我々が先に進むにはどうしても必要なことなのだよ!」
「進むと言っても……」
「昼間の騒ぎで国境は封鎖された」
「騒ぎが収まるまでは開かないでござる!」
「肯定であります!」
「うむ、そんな状況だからコレが役に立つんだよ!」
そう言って、教授が取り出したのは黒い箱。
「なんだ?それは」
「うむ、これが次に進むためのキーアイテムだよ!」
「そんな黒箱で国境封鎖が解けるのか?」
「うむ、百聞は一見にしかず。全員で手分けして、この箱を壁のあちこちに設置してくれたまえ!」
「わかったでござる!」
「了解であります!」
「「…………」」
教授の提案に一抹の不安を覚える村正とブドウだったが、他に代案がなかったために、箱を設置する為の作業に入った。
三十分後。
親父たちは、国境の壁から少し離れた丘にいた。
「教授!言われたとおりに箱は設置したが、次は何をするんだ?」
「映画とかなら、あの箱は爆弾で点火スイッチを押すだけなんだがな」
「あの箱は爆発物ではないようでござるよ!」
「肯定であります!」
そんな親父たちの疑問をよそに教授はあるモノを出した。
「うむ、次はコレだよ!」
「きょ、きょうじゅ…それって……」
「カンオケじゃないか!」
「カラオケでござる!」
「肯定であります!」
「うむ、砂漠のダンジョンで手に入れた。このカラオケの機械で歌うことが次の作業だよ!」
「教授……ふざけているのか」(怒)
「うむ、短気は損気だよ!ちゃんと理由があるんだよ!」
「理由とは……返答次第では……わかっているよな!」(怒)
「落ち着くでござる!村正殿!」
「まさか……村正をキレさせてアレを繰り出させる作戦だったのか!」
「危険であります!」
「うむ、違うよ!とにかく歌を歌ってくれないと始まらない!」
「普通に歌えばいいのか?」
「うむ、ヘビメタのような激しい歌が理想的なのだが、この中にそんな歌を歌える者は……」
「拙者……演歌しか歌えない!」
「洋学には縁がない人生であります!」
「今流行りの曲もしらないでござる!」
そんな親父たちの中でブドウが手を挙げた。
「自作した歌でいいなら、歌えるぞ!」
「うむ、では任せるよ!」
「ブドウ……作曲できたのか?」
「意外だったでござる!」
「肯定であります!」
ブドウはマイクを片手に持ち、もう一方の手でギターを弾きポーズをとっていた。
「エアギターでござる!」
「どんな歌なんだ!」
「うむ、楽しみだね!」
「肯定であります!」
「聞いてください!親父のコドク!」
そう言って、ブドウは歌い始めた。
歌詞の内容は会社にも家庭にも居場所がない親父の叫び声だった。
「満員電車で痴漢に間違われるって……」
「うむ、そういうことは実際あるからね!」
「女性の同僚に挨拶しただけでセクハラ扱いは悲惨でござる!」
「肯定であります!」
「だが……それよりも……」
「ひどい叫び声でござる!」
「うむ、どこかのガキ大将もびっくりだよ!」
「肯定であります!」
親父たちがブドウの歌のひどさに耐えている頃、国境の壁は崩れ始めていた。
朝日が昇る頃。
親父たちは国境を突破した。
「教授!一つわからない事があるんだが……」
「うむ、何かね?」
「なんで国境の壁は壊れたんだ?アレは教授の仕業だろ!」
「うむ、アレは共振によるものだよ!」
「共振?」
「うむ、1850年フランスのアンジェで歩兵隊が行進したところ、橋が崩壊したんだよ!原因は軍隊の歩調と橋が共振してしまったのが原因と言われている!」
「もしかして、あの箱は……」
「うむ、共振が起きるスピーカーだよ!」
「カラオケさせたのは……」
「うむ、共鳴振動で壁を破壊するには振動が必要だったからだよ!」
「でも、代償もでかかったでござる!」
「肯定であります!」
親父たちの後ろを歩くブドウの目は濁りのない澄んだ眼をしていた。
「まさか…あの歌……十番まであるとは……」
「うむ、言葉の毒を吐きすぎたようだね!」
「はっきり言って、不気味でござる!」
「肯定であります!」
親父たちは多少の犠牲を払って、元の世界で言う所のインドに入国した。
親父たちを追う暴走集団と国境警備隊の乱戦によって国境は閉じられていた。
深夜。
ほっかむり(手ぬぐい等を頭にかぶり頬や顎のあたりで結ぶこと)した親父たちが抜き足忍び足で国境に設置された壁に近付いていた。
「教授!」
「うむ、なにかね?」
「なんで?わしらはほっかむりしているんだ?」
「この状況で日本人の典型的な泥棒の姿をした奴なんていないぞ!」
「これで唐草模様の風呂敷があったら完璧でござる!」
「肯定であります!」
親父たちの意見に教授は涼しい顔で答えた。
「うむ、大丈夫だよ!泥棒をするわけではないから!」
「「「「…………」」」」
訂正、答えになっていなかった。
「うむ、諸君たちの言いたいこともわかる!だが、我々が先に進むにはどうしても必要なことなのだよ!」
「進むと言っても……」
「昼間の騒ぎで国境は封鎖された」
「騒ぎが収まるまでは開かないでござる!」
「肯定であります!」
「うむ、そんな状況だからコレが役に立つんだよ!」
そう言って、教授が取り出したのは黒い箱。
「なんだ?それは」
「うむ、これが次に進むためのキーアイテムだよ!」
「そんな黒箱で国境封鎖が解けるのか?」
「うむ、百聞は一見にしかず。全員で手分けして、この箱を壁のあちこちに設置してくれたまえ!」
「わかったでござる!」
「了解であります!」
「「…………」」
教授の提案に一抹の不安を覚える村正とブドウだったが、他に代案がなかったために、箱を設置する為の作業に入った。
三十分後。
親父たちは、国境の壁から少し離れた丘にいた。
「教授!言われたとおりに箱は設置したが、次は何をするんだ?」
「映画とかなら、あの箱は爆弾で点火スイッチを押すだけなんだがな」
「あの箱は爆発物ではないようでござるよ!」
「肯定であります!」
そんな親父たちの疑問をよそに教授はあるモノを出した。
「うむ、次はコレだよ!」
「きょ、きょうじゅ…それって……」
「カンオケじゃないか!」
「カラオケでござる!」
「肯定であります!」
「うむ、砂漠のダンジョンで手に入れた。このカラオケの機械で歌うことが次の作業だよ!」
「教授……ふざけているのか」(怒)
「うむ、短気は損気だよ!ちゃんと理由があるんだよ!」
「理由とは……返答次第では……わかっているよな!」(怒)
「落ち着くでござる!村正殿!」
「まさか……村正をキレさせてアレを繰り出させる作戦だったのか!」
「危険であります!」
「うむ、違うよ!とにかく歌を歌ってくれないと始まらない!」
「普通に歌えばいいのか?」
「うむ、ヘビメタのような激しい歌が理想的なのだが、この中にそんな歌を歌える者は……」
「拙者……演歌しか歌えない!」
「洋学には縁がない人生であります!」
「今流行りの曲もしらないでござる!」
そんな親父たちの中でブドウが手を挙げた。
「自作した歌でいいなら、歌えるぞ!」
「うむ、では任せるよ!」
「ブドウ……作曲できたのか?」
「意外だったでござる!」
「肯定であります!」
ブドウはマイクを片手に持ち、もう一方の手でギターを弾きポーズをとっていた。
「エアギターでござる!」
「どんな歌なんだ!」
「うむ、楽しみだね!」
「肯定であります!」
「聞いてください!親父のコドク!」
そう言って、ブドウは歌い始めた。
歌詞の内容は会社にも家庭にも居場所がない親父の叫び声だった。
「満員電車で痴漢に間違われるって……」
「うむ、そういうことは実際あるからね!」
「女性の同僚に挨拶しただけでセクハラ扱いは悲惨でござる!」
「肯定であります!」
「だが……それよりも……」
「ひどい叫び声でござる!」
「うむ、どこかのガキ大将もびっくりだよ!」
「肯定であります!」
親父たちがブドウの歌のひどさに耐えている頃、国境の壁は崩れ始めていた。
朝日が昇る頃。
親父たちは国境を突破した。
「教授!一つわからない事があるんだが……」
「うむ、何かね?」
「なんで国境の壁は壊れたんだ?アレは教授の仕業だろ!」
「うむ、アレは共振によるものだよ!」
「共振?」
「うむ、1850年フランスのアンジェで歩兵隊が行進したところ、橋が崩壊したんだよ!原因は軍隊の歩調と橋が共振してしまったのが原因と言われている!」
「もしかして、あの箱は……」
「うむ、共振が起きるスピーカーだよ!」
「カラオケさせたのは……」
「うむ、共鳴振動で壁を破壊するには振動が必要だったからだよ!」
「でも、代償もでかかったでござる!」
「肯定であります!」
親父たちの後ろを歩くブドウの目は濁りのない澄んだ眼をしていた。
「まさか…あの歌……十番まであるとは……」
「うむ、言葉の毒を吐きすぎたようだね!」
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