異世界親父騒動記

第三章 親父たちの航悔（航海？）

親父たちの航海四日目 昼2

前回までのあらすじ
豪華客船「ダメダニック号」の前に突如現れたクラーケン。
この状況を打破する為にクラーケンの相手を村正とブドウに任せて、教授、影、軍曹の三人組は船内に向かった。

　船の船首では村正はボートのオール、ブドウは物干し竿でクラーケンの触腕攻撃を弾いていた。
「村正！」
「なんだ！ブドウ！」
「影が考えた策なんだが、大丈夫なのか？」
「わからん！だが、他に方法がない以上、今の拙者らには信じて、あのイカの攻撃から少しでも船が沈む時間を遅らせるしかない！」
「確かに！あ、またイカの攻撃がきた！」
「弾くぞ！」
「わかった！」
　クラーケン相手に時間稼ぎをする村正とブドウ。
　しかし二人は重大な事に気づいていなかった。
　自分たち以外にクラーケンの相手をしている者がいないこと。

　所変わって、船内にいる教授、影、軍曹。
　彼らの向う先には人の気配が全くなかった。
「うむ、おかしいな？まったく人と出会わない！」
「「…………」」
　教授の疑問に無言で答える影と軍曹。
「二人とも！なぜ？だんまりなのだ！」
「教授！今の我々の姿を見て、そのセリフが言える方が不思議でござる！」
「肯定であります！」
　三人とも手にはそれぞれ、ノコギリ、鉈、手斧を装備し、返り血でも浴びたのか、体の所々が赤くなっていた。
「うむ、これは不可抗力だ！最初に行った娯楽室で、おそらくだがクラーケンの触腕の衝撃で赤ワインのボトルが割れて、我々はワインまみれになってしまったんだ！」
「問題はその後でござる！そのままの恰好で通路に出た教授を船から脱出しようとしていた集団が見て、パニックを起こして、逃げ出したんでござる！」
「肯定であります！」
　影の的確な答えに対して教授の返答は。
「うむ、では材料の調達のために次の部屋に行こう！」
「スルーしたでござる！」
「肯定であります！」
　こうして、教授、影、軍曹の三人組は少しずつだが、確実に材料を集めてると共に船内の人々に誤解を与えていくのだった。