異世界親父騒動記

マサカド

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第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、害獣と間違えられる。

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 親父たちは、前回造った足漕ぎシャークボートを必死になって漕いでいた。
 追われているからだ。
 親父たちを追っているのは、鮫!
「しつこい!まだ追ってくる」
「ストーカー並にしぶとい奴だ」
「うむ、もうすぐニューヨーク州に着くのに」
「なぜ!追って来ているのでござるか?」
「肯定であります」
 なぜこんな状況になっているのか。
それは今から三十分前に一匹の鮫と出会ったことから始まった。
 親父たちはその鮫をスルーしたのだが、なぜかサメは親父たちに近付いてきた。
 その鮫を振り切ろうと親父たちは必死にペダルを漕ぐことになったのである。
「あ!!」
「どうしんだ教授?」
「うむ、ある仮説を閃いた!」
「「「「仮説(でござるか)?」」」」
「うむ、この仮説ならすべての説明でつく」
「一体どんな仮説でござるか?」
「うむ、例えば鮭はなぜ川を上る理由は?」
「そりゃ、卵を産むため」
「うむ、正解だよブドウ君。つまりこの世界の鮫も……」
「ま、まさか子孫を残すためでありますか!」
「うむ、あの鮫は、どうやらこのボードに発情したようだね!」
「哀れな男だな」
「ブドウ殿。女かもしれないでござるよ」
「どっちでもいいから、ペダルを漕いで逃げきるんだ!」
 逃げる親父たち、追う鮫。
 さらにその後ろから巨大鮫と間違われた親父たちのシャークボートを仕留めようとする者たちが追いかけてきた。
「あの巨大鮫をしとめて名誉を!」
「金を!」
「酒を!」
「女を!」
「味を!」
「素材を!」
「飯ーーー!」
 それぞれが捕鯨用の銛、ばかでかい刃物などを手に、声をあげていた。
「ここら辺を縄張りにしている漁師まで追いかけてきたぞ!」
「手に持っている獲物も鮫一匹をしとめるには大げさすぎないか?」
「うむ、ブドウの言うとおりだよ。彼らの反応はいささか過剰のようだね」
「しかし、銛や刃物はまだわかるでござるが、一人だけナイフとフォークで追いかけてくるの者がいるでござるよ」
「肯定であります」
 親父たちがそんな感想を言っている間に陸が見えてきた。
「うむ、あれが巴里の灯だ!」
「教授、どっかの映画みたいなセリフを言っているが、今は昼間だ!」
「目的地に着いたのはいいが、後方の鮫と漁師たちはどうするんだ?」
「それなら心配いらないでござる!あの手があるでござる!」
「肯定であります」
 影と軍曹が自信満々でそう言いだすので、村正は心配になった。
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
「心配いらないでござるよ村正殿!」
「うむ、村正君。今は信じよう」
「肯定であります」
「そんなのはどうでもいいからペダルを漕げ!」
「わ、わかった……」(汗)
 ペダルの漕ぎすぎでテンションハイになっているブドウを除いて、皆の説得に渋々了承した村正だったが、一抹の不安を覚えるのであった。
 そしてそれは予想通りに的中する。
「では、いくでござるよ!」
 そう言って影は河に向かって、野球ボールくらいの球を次々に投げた。
 すぐさま球から煙が上がり、辺りが見えなくなった。
「影!これって?」
「煙幕弾でござる!」
「うむ、鮫と漁師たちが混乱している隙に一気に上陸するんだ」
「肯定であります!」
「力の限りペダルを漕げ!」
 親父たちは全力でペダルを漕いだ。
 しかし、親父たちは一つ大きなミスを犯した。
 それは煙で前が見えない。
 親父たちはボートがまっすぐ進んでいると思っていたが、実際にはボートは時計回りに大きく回っていたに過ぎない。
 結果、追ってきた漁師の木造船に側面衝突を起こした。
「教授!何かにぶつかったが大丈夫か?」
「うむ、この船は薄い金属の板で周りをコーティングしているから何かにぶつかっても弾くだけだから心配無用」
 漁師たちの船を大破したことに気づかず、ペダルを漕ぎ続ける親父たちの続きのターゲットは勘違い鮫。
 シャークボートの鋭いエッジによって鮫の柔らかい脇腹を切り裂かれた。
 大量の返り血がシャークボートに降りかかったが、ペダルを漕ぎ過ぎてテンションハイになっている親父たちは気づかず、そのまま陸にまで乗り上げ、シャークボートは大破し、 親父たちは外へ投げ出された。
 こうして親父たちはこの世界のニューヨーク州に辿り着いた。
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