異世界親父騒動記

第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、空襲を受ける

　親父たちは、元いた世界でいうところのオハイオ州の荒野で魔導車を暴走させていた。
なぜそうなったかというと、空飛ぶモンスターの大群によってもたらされる火炎瓶による雨あられから逃げるために。
「くそ、偽物インディアンの次は空飛ぶモンスターの大群か！」
「モンスターなんてマカロニの街いらいでござる」
「あんなに遠くいたんじゃ、わしの拳法も通じん！」
「肯定であります！」
「うむ、困ったことになったね」
「「「「教授！呑気にパイプを火を点けている場合じゃない（でござる）!!」」」」
「そう言っても、こちらに攻撃する術がないのなら、逃げるしか選択肢はない。それともあのモンスターの大群を撃退する術があるのかね？」
「「「「…………」」」」
　教授の言葉に無言になる親父たち。そんな会話の間にも火炎瓶は降ってくる。
「うむ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。さいわい火炎瓶がこの魔導車に当たる確率はほぼ無いに等しい。あれだけ火炎瓶を投げつけられたわりには一つの当たっていないのがその証拠だ」
　教授の言葉を聞いてほっとする親父たち。
　だが、次の瞬間魔導車に火炎瓶が一つ当たった。
「「「「教授ーーーーーー!!」」」」
　親父たちの叫び声が荒野に響く。

「フン、やっと一つ当たったか！」
親父たちを追いかけていたモンスターの大群のまとめ役であるガーゴイルリーダーは呟いた。
普段は石像に化けて、王国の情報収集していたのだが、グレムリンキングを倒した親父たちを見つけたと部下の知らせを受け、人一倍功名心が強い彼は文字通り親父狩りを決行したのだが、上空から火炎瓶を落として親父たちを始末する作戦は思ったより効果がないことに気がついた。
「リーダー。全員が所持していた火炎瓶なくなりました！」
「もうなくなったのか？五百本以上あった火炎瓶が？」
「はい、ありません」
「くそ、かといって接近すればグレムリンキングの二の舞になることは明らかだし、どうすればいいんだ」
　ガーゴイルリーダーはスタートの街で勇者たちの情報を収集していたのだが、その時棍棒を砲弾代わりにしてグレムリンキングを倒した親父たちの異常性を見ていた。
　手柄は欲しいが、リスクは避けたい。
　そんな心の葛藤がガーゴイルリーダーを迷う方の迷軍師に転職させてしまった。
「全軍！突撃！」

「まずいぞ！」
「うむ、何がまずいのかね？村正君」
「奴ら、火炎瓶が尽きたのか、突撃してくる！」
「神風特攻でありますか？」
「時代錯誤もいいところでござる！」
「モンスターに突っ込み入れている場合じゃないだろう!?」
「うむ、こっちもまずいことになったよ！しょ、諸君!!」
「どうしたんだ？教授」
「魔導車がメルトダウンを起こし始めた！」
「メルトダウン？」
「つまり爆発するんでありますか？」
「マズイでござる!?」
「うむ、無理な運転をしたからね！同然の結果だよ」
「教授！どうにかならないのか？」
「無茶を言わないでくれたまえ！」
「前門のメルトダウン！後門のモンスターの特攻！」
　親父たちは最悪の状況に陥っていた。