異世界親父騒動記

マサカド

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第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、汽車の旅?と世界情勢

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 親父たちは、北東に向かって改造したゴーレム汽車で優雅な汽車の旅を楽しんで……いなかった。
 理由は線路もなく走れるベルト軌道式ゴーレム汽車を新しい玩具をもらった子供のごとく蛇行運転したり、意味のなく汽笛を鳴らしまくったりした結果。
 それによって、光に群がる蛾のごとく、盗賊や冒険者崩れがよってきて、ゴーレム汽車を奪おうとしたからである。
 それに抵抗した親父たちは疲労困憊であった。
「教授。ゴーレム汽車に放棄しないか?」
「うむ、村正。気持ちはわかるが、放棄した後どうやって、移動するんだ?」
「それは徒歩で……」
「それだと、また道に迷う可能性があります」
「うむ、軍曹の言う通りだ。徒歩だと一度迷うと修正するのが難しい。だがこのゴーレム汽車なら迷っても修正するロスは最小限で済む」
「しかし、全員が襲撃者によって疲労困憊しているんだ。最悪ゴーレム汽車の放棄も考えないと全員が倒れてからでは遅い」
「確かに村正の言う通りだ。すでに襲撃者の何人かはこの汽車によって轢き殺している。その影響で汽車自体にボロボロになっている可能性がある」
 村正の意見にブドウも賛成した。
「うむ、影。君の意見はどうかね?」
「教授どの。今思ったのでござるが、この汽車そのものをアイテムボックスに入れることはできないのでござるか?」
「「「「…………」」」」
 影の意見に、沈黙する親父たち。
「い、言われてみれば……」
「試していないからわからないが……」
「落ち着いて考えれば……」
「うむ、その手があったか!!」
 こうして、直ちにゴーレム汽車を停止させ、アイテムボックスに入るか、実験が行われた。

 実験の結果、ゴーレム汽車をアイテムボックスに入れることができたが、アイテムボックスにゴーレム汽車が入った瞬間。
 親父たちは大の字で倒れた。
「最初からこうすればよかったんだ!」
「わしら、何のために悩んでいたんだ!」
「うむ、疲労で頭の回転が鈍くなっていたんだよ!」
「肯定であります」
「やれやれでござる」
 そのまま親父たちは昼間の荒野で昼寝?を始めるのだった。

 親父たちが、昼寝をしている頃、魔王は部下から新たなる報告を聞いていた。
「マカロニの町のタウン・ゴーレムが倒されただと!」
「はい、間違いございません」
「バカな。奴の擬態は完璧だ。しかも状態異常の「酔」の効果で、人間は自分に酔った状態になっているのではなかったのか?」
「あの変な状態異常ですか?長い間効きつづけると人間なら異常な怪力が身につくアレを」
「その通りだ。その効果で人間たちに例の金を掘らせて、こちらの益にする作戦だ」
「金は金でも、まがい物の金ですよ。アレは?」
「確かに金の価値はない。だが、別の使い道がある。そのためにタウンゴーレムを使って鉱山開発させようとしたのだ」
「鉱山開発させようとして、人間たちの間で争いが起こりましたけど?」
「それも計算のうちだ。そうやって人間たちに無駄な争いをさせるのも目的の一つだ」
「現在、人間たちの間で争いはおきていません」
「なんだと?」
「マカロニの町に人間そのものがいません」
「共倒れしたのか?」
「いえ、ある冒険者がタウン・ゴーレムが倒されたことにより、「酔」の状態異常がなくなり、しかもその冒険者によって金ではないと証明されたので、住民は出て行ったんです」
「誰だ。そんな余計な事をしたのはーーー!!」
 魔王は己が不幸を呪ったが、不幸なのは魔王だけではなかった。
 親父たちを召喚した王国も不幸に見舞われていた。
 ゲートに続いて次善の策である大陸横断鉄道が破壊される事件が起きた。
 大陸横断鉄道のスタート地点であるブランドの町が駅を中心に破壊され、鉄道に必要な列車そのものだけではなく、生産整備のための工場や燃料部品の為の保管庫も全てなくなり、損害ははかりしれないものになっていた。
 人々は事件後に機関車で逃亡していた集団を鉄道の生みの親であるクレイ・スチームだと認識し、彼の復讐だと噂するようになっていたが、ヒイロ司祭だけは、密偵からの情報によって、機関車で逃亡した五人組の風貌を聞いて、驚愕していた。
「本当に機関車で逃亡したのは黒髪の男たちなのか?」
「間違いありません。現場にいて、確かにこの目で見ました」
「奴らは生きていたのか?」
 王国では黒髪は珍しいために、ヒイロ司祭は驚いた。
「あの親父たち生きていたのか!」
 呪いの袋によってデストロイの街と共に死んだと思っていた親父たちが生きていたことだけでも驚愕なのに、王国に損害をもたらしているテロリストになるとはヒイロ司祭も思っていなかったのだろう。
「まずい。非常にまずいぞ。奴らの目的は復讐だ!ならばこの王都があぶない。急いで守りを固めなければ!」
 こうしてヒイロ司祭は王都の守りを固めるために独断専行の行動を開始するのだったが、一つだけミスを犯していた。
 なぜなら王都がある場所は親父たちがいた世界で言うところのワシントンにあるから、ニューヨークを目指して旅を続けている親父たちには関係なかったからだ。
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