異世界親父騒動記

マサカド

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第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、アンストッパブル2

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 ボーガン・アースロールが村正の魔の手から逃れて安心している頃、最後尾の列車に居た親父たちは、列車内の金や物資を片っ端からアイテムボックスに入れていた。
 西部劇に出てくる列車強盗そのものだったが、それにツッコミをいれる人はいなかった。
「しかし、教授。おかしくないか?」
「うむ、なにがだね。ブドウ」
「こんな大金があるなら見張りがいないなんて変じゃないか」
「うむ、ブドウの言うことも一理あるが、おそらく見張りはいないのではなく、出払っているのだろう」
「本来見張り役のホムンクルスはいたがあの乱戦に投入されたといことでありますか?」
「うむ、そのとおりだよ軍曹。おそらくホムンクルスはこの列車にはいない。この列車は我々以外はクレイ・スチームとその協力者ボーガン・アースロール親子だけなのだろう」
「四対七の戦いでござるな」
 そんな会話をしながら、親父たちは前方の列車に進んだ。
 もしこの時、誰か一人でも後方に注意を向けて観察していたら、親父たちが危機に陥ることはなかったかもしれない。
 はるか後方から列車に向かって走ってくる影をあることに気づいていなかった。
 そんな災いが向かって来ていることも気づかずに親父たちは次の列車でも物資をアイテムボックスに詰め込んでいくのだった。

 一方、親父たちに物資を奪われていることにボーガン・アースロールは気づいていなかったが、徐々に列車の速度が上がっていることには気づいていた。
「一体どうなっているんだ?」
 列車一両分の物資が親父たちのアイテムボックスに入ったのだから、その分重量が減るから列車は速くなるのは当然なのだが、そんなことを知らないボーガン・アースロールは直感的におかしいことに気づいた。
 すぐさまクレイ・スチームを起こそうとしたが、今起きられるとクレイ・スチームに対して自分がやったことがばれるかもしれないと思ったので、機関車を操縦している息子たちの所に向かった。
「おい、息子たち。一体何が起きているんだ?」
 ボーガン・アースロールの問いに息子たちは沈黙した。
 息子たちのだれもが、列車の速度が上がったこと認識していなかった。
 そのため自分たちの父親がなぜ機関車に来て怒鳴っているのか、わかっていなかった。
 ボーガン・アースロールは息子たちに説明する間もなく後方からクレイ・スチームの叫び声を聞くことになる。
 大急ぎで戻るボーガン・アースロールだったが、戻った時にはすで親父たちによってクレイ・スチームはロープでミイラをなっていた姿があった。
「うむ、意外と遅かったようだね!」
「見ての通りクレイ・スチームは自分たちの手にあります」
「おとなしく降伏した方が身のためでござる」
「…………」
 ボーガン・アースロールはロープミイラとなったクレイ・スチームを無言で見つめていたが、すぐにそんな暇がなくなった。
「た、大変だ!!」
 いきなり、ブドウが飛び込んできた。
「うむ、どうしたのだねブドウ?」
 その一瞬の隙をついてクレイ・スチームを確保しようとボーガン・アースロールが動いたが、軍曹と影のディフェンスに塞がれた。
「おまえら、今はそんなことして遊んでいる場合ではない!!」
「遊んでいるわけではないでござるよブドウどの」
「その通りであります」
「怒り狂った村正がこの列車を追いかけていてもか?」
「うむ、それどうゆう意味かね?」
「文字通りの意味だ。村正の奴が走ってこの列車に追いつこうとしているんだ!!」
「にわかに信じられないでござる」
「うむ、物理的に人間の足で列車に追いつこうとするなんて無理がある」
「その通りであります」
「本当だ。嘘だと思うなら最後尾の列車に行って実際に見ればわかる。そんなミイラとミイラ取りにかまっている暇はない」
 ブドウの話がイマイチ信じられなかった親父たちだったが、ブドウの言う通りに最後尾の列車に向かった。
 それにボーガン・アースロールもなぜか着いてきた。

 最後尾の列車で親父たちとボーガン・アースロールは信じられないものを見ていた。
 この列車に向かって、砂煙を上げながら爆走する村正の姿があったからだ。
「うむ、見た目だけなら怒り狂った鬼神と追いかけてきていると表現した方がいい光景だ」
「ここから見てもどんどん加速しているのは明らかでござる」
「自分もそう思います」
「だから、言った通りだろ。それより村正に対してどう対策するんだ?」
「うむ、対策とはどうゆうことかねブドウ?」
「このままじゃ、間違いなく村正が列車に乗り込んで、クレイ・スチームをぶった斬るまで止まらない。それにワシらも巻き込まれる可能性は大だ」
「限られた空間内である列車の中なら確かにその通りであります」
「村正どのを説得するのはどうでござるか?」
「すでに声を張り上げて言ってみたが、聞こえなかったのか、聞いていないのかわからないが通じなかった」
「うむ、ならあの手だな」
「教授、あの手ってなんでありますか?」
「ものすごく嫌な予感しかしないでござる」
「うむ、生贄を捧げるのさ」
「生贄って、クレイ・スチームか?」
「いや、違う。この列車を生贄に使うんだ。連結器を外せば、動力を失った列車は減速する村正も勘違いして乗り込むかもしれない。少なくとも時間稼ぎにはなる」
「なるほどな。じゃあついでに列車に設置してある手動ブレーキも使うのはどうだ」
「それはいいアイディアであります。ブドウ」
「それじゃあ、作戦を開始でござる」
 こうして仲間であるはずの村正から逃れるために親父たちは行動するのだった。
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