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第二章 親父たち大陸横断する
親父たち、牛泥棒を襲う?
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影が伝令をこなすよりも速く馬にまたがった牛泥棒たちは、動いた。
それに気づいていた軍曹と教授は、クロスボウで攻撃態勢をとったが、それ以外の気づいた者たちは混乱していた。
軍曹は的確に的あてのごとく、牛泥棒に矢を当てていたが、教授は手が震えているために、的外れなところばかり狙っていた。
「教授。深呼吸して落ち着いて」
軍曹は教授に対して的確なアドバイスをするのだが、
「うむ、大丈夫だよ軍曹。私は最初から落ち着いている」
口では落ち着いていると言っているが、手はアルコール中毒者の禁断症状の如く震えていた。
完全に見栄を張っているのは、誰の目からもあきらかであったが、その教授の放った矢が一頭の牛のお尻に当たった。
お尻に矢が当たった牛は当然パニックを起こし、その牛のパニックは他の牛にも伝染し、集団パニック障害になって暴走した。
暴走する牛たちの向う先には牛泥棒たち。
いきなりの事で思わず馬を止めてしまった牛泥棒たちは、牛たちの波に巻き込まれてしまった。
そしてその光景を遠くから村正、ブドウ、影は見ていた。
「悲劇だな」(牛泥棒が)
「木曽義仲の倶利伽羅(くりから)峠の戦いだ」(現実逃避)
「ソウデゴザルナ」(自分の努力が無駄になった人の目をしながら)
三人がそれぞれの感想を言っている間にも牛たちの暴走は続いていた。
牛泥棒は皮肉にも牛によって全滅した。
その日の夜。
親父たちは、疲労しきっていた。
「つ、疲れた」
「牛泥棒よりも暴走した牛を捕まえて落ち着かせることに骨が折れるとは」
「肯定であります」
「牛泥棒も哀れでござる」
「うむ、誰があんなひどいことをしたのかね?」
教授以外の四人が「犯人はおまえだ」と目で訴えた。
しかし、教授には通じなかったのか、あいかわらずマイペースにパイプをくわえて、火をつけていた。
「しかし、少し日程は狂ったが大陸横断鉄道のある出荷駅には着く。そこから汽車を使って一気に東海岸にいける」
「教授。その汽車を使えば本当に東海岸にいくことができるのか?」
「うむ、心配いらない。たしかに大陸横断鉄道はまだ未完成だが、鉄道はすでに動いているし、少なくとも我々は東に向かってかなりの距離を進むことができる」
「しかし、わからない。なぜ大陸横断鉄道があるのにスタートの街には駅がなかったんだ。開発予定地があってもおかしくないのに?」
ブドウの疑問に影が答えた。
「予算がないからでござる」
「影。なんでそんなこと知っているんだ」
「スタートの街にいた時に役人たちの話を盗み聞きしたでござるよ。それにゲートがあったから必要ないと思ったので皆に話していなかったでござる」
「うむ、影の言う通りだ。それにグレムリンキングにゲートが破壊されるまではスタートの街はゲートによってなりたっていたから、鉄道は後回しにしても大丈夫と思ったんだろう」
「納得」
そういって村正は保存食を口にした。
「なんだ。これやけに美味いな」
「カウボーイの方に分けてもらったペミカンであります」
「軍曹知っているのか?」
「乾燥させた肉を粉末状にして、同じく乾燥木の実と一緒にラードで凝固させたものであります」
「うむ、アメリカ先住民の知恵がこの世界にもあるようだね」
こうして親父たちの夜はふけていくのであった。
親父たちが、大陸横断鉄道のあるの町に着くのは、それから一カ月後であった。
それに気づいていた軍曹と教授は、クロスボウで攻撃態勢をとったが、それ以外の気づいた者たちは混乱していた。
軍曹は的確に的あてのごとく、牛泥棒に矢を当てていたが、教授は手が震えているために、的外れなところばかり狙っていた。
「教授。深呼吸して落ち着いて」
軍曹は教授に対して的確なアドバイスをするのだが、
「うむ、大丈夫だよ軍曹。私は最初から落ち着いている」
口では落ち着いていると言っているが、手はアルコール中毒者の禁断症状の如く震えていた。
完全に見栄を張っているのは、誰の目からもあきらかであったが、その教授の放った矢が一頭の牛のお尻に当たった。
お尻に矢が当たった牛は当然パニックを起こし、その牛のパニックは他の牛にも伝染し、集団パニック障害になって暴走した。
暴走する牛たちの向う先には牛泥棒たち。
いきなりの事で思わず馬を止めてしまった牛泥棒たちは、牛たちの波に巻き込まれてしまった。
そしてその光景を遠くから村正、ブドウ、影は見ていた。
「悲劇だな」(牛泥棒が)
「木曽義仲の倶利伽羅(くりから)峠の戦いだ」(現実逃避)
「ソウデゴザルナ」(自分の努力が無駄になった人の目をしながら)
三人がそれぞれの感想を言っている間にも牛たちの暴走は続いていた。
牛泥棒は皮肉にも牛によって全滅した。
その日の夜。
親父たちは、疲労しきっていた。
「つ、疲れた」
「牛泥棒よりも暴走した牛を捕まえて落ち着かせることに骨が折れるとは」
「肯定であります」
「牛泥棒も哀れでござる」
「うむ、誰があんなひどいことをしたのかね?」
教授以外の四人が「犯人はおまえだ」と目で訴えた。
しかし、教授には通じなかったのか、あいかわらずマイペースにパイプをくわえて、火をつけていた。
「しかし、少し日程は狂ったが大陸横断鉄道のある出荷駅には着く。そこから汽車を使って一気に東海岸にいける」
「教授。その汽車を使えば本当に東海岸にいくことができるのか?」
「うむ、心配いらない。たしかに大陸横断鉄道はまだ未完成だが、鉄道はすでに動いているし、少なくとも我々は東に向かってかなりの距離を進むことができる」
「しかし、わからない。なぜ大陸横断鉄道があるのにスタートの街には駅がなかったんだ。開発予定地があってもおかしくないのに?」
ブドウの疑問に影が答えた。
「予算がないからでござる」
「影。なんでそんなこと知っているんだ」
「スタートの街にいた時に役人たちの話を盗み聞きしたでござるよ。それにゲートがあったから必要ないと思ったので皆に話していなかったでござる」
「うむ、影の言う通りだ。それにグレムリンキングにゲートが破壊されるまではスタートの街はゲートによってなりたっていたから、鉄道は後回しにしても大丈夫と思ったんだろう」
「納得」
そういって村正は保存食を口にした。
「なんだ。これやけに美味いな」
「カウボーイの方に分けてもらったペミカンであります」
「軍曹知っているのか?」
「乾燥させた肉を粉末状にして、同じく乾燥木の実と一緒にラードで凝固させたものであります」
「うむ、アメリカ先住民の知恵がこの世界にもあるようだね」
こうして親父たちの夜はふけていくのであった。
親父たちが、大陸横断鉄道のあるの町に着くのは、それから一カ月後であった。
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