異世界親父騒動記

マサカド

文字の大きさ
上 下
38 / 282
第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、カウボーイになる?

しおりを挟む
 自分たちが発生させた雪崩により、追跡者の手を完全に逃れた親父たち、しかし馬車は完全に大破した。
それから三日後。
「なあ、村正」
「なんだ。ブドウ」
「わしら、何でカウボーイやっているんだ?」
「忘れたのか?馬車が壊れて、しかたなく徒歩で着いた町で偶然いた牛追い業者(キャトルドライブ)の集団に便乗して、出荷駅である大陸横断鉄道のある町まで一緒に同行することになったんじゃないか!」
「それは覚えている。わしが言いたいのは、なんでカウボーイをしなきゃならないんだ?」
「正確にはカウボーイの護衛だ。それにこれはこれでメリットがある」
「メリット?」
「この集団と同行することによって道に迷う心配はない」
「跡をつければ問題ないだろう」
「また道に迷う可能性が高いだろう。教授も言っていたが、我々はこの世界の事は何も知らないし、道を知っている者と同行すれば迷うことはないはずだ」
「確かにそれはそうだが、よそ者もわしらを受け入れてくれるのか?」
「大丈夫だ。カウボーイにそんなものは関係無い。腕っ節の強い奴を選んでいる職歴は必要ないと、教授が言っていた」
「だから、よけい心配なんだ。あの人が行動を起こすとなんらかのトラブルに巻き込まれる気がするんだが?」
「…………」
教授が行動するとトラブルに巻き込まれるのは気のせいではないことにうすうす気づいている村正はブドウの意見に何も言えなかった。

 村正とブドウがそんな会話をしている時に教授と軍曹の二人は食事用の馬車を交代で操っていた。
「意外であります。教授が馬車の扱いに長けていたなんて」
「うむ、海外にいた時に知人から教わった技術が役に立ったよ。そういえば影はどこにいったんだ?」
「影は周辺の偵察にでているであります」
 そんな教授と軍曹の会話の最中に影が戻ってきた。
「まずいことになったでござる」
「影。どうしたでありますか?」
「狼がいたでござる」
 狼。これは親父たちが決めた隠語で、牛泥棒が来たという意味であった。
「うむ、狼の数は?」
「三十ほどでござる」
「うむ、影よ。戻って来たばかりですまないが、村正たちや他の人達にもこの事を伝えてきてくれ」
「了解でござる」
 そう言って影は姿を消した。
「うむ、こういっては不謹慎かもしれないが、やっと西部劇らしくなってきた感じがするな」
「肯定であります。しかし普通なら駅付近で強奪するのが定石のはずでありますが?」
 そういいながら、軍曹はクロスボウを用意するのだった。
「うむ、どこにでも定石通りにやらない者はでてくるし、もしくはそれぞれの縄張りがあるのかもしれない」
 教授は口では冷静に言っていたが、手は震えていた。
 あらたなるトラブルが舞い降りる前触れであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...