異世界親父騒動記

マサカド

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第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、カウボーイになる?

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 自分たちが発生させた雪崩により、追跡者の手を完全に逃れた親父たち、しかし馬車は完全に大破した。
それから三日後。
「なあ、村正」
「なんだ。ブドウ」
「わしら、何でカウボーイやっているんだ?」
「忘れたのか?馬車が壊れて、しかたなく徒歩で着いた町で偶然いた牛追い業者(キャトルドライブ)の集団に便乗して、出荷駅である大陸横断鉄道のある町まで一緒に同行することになったんじゃないか!」
「それは覚えている。わしが言いたいのは、なんでカウボーイをしなきゃならないんだ?」
「正確にはカウボーイの護衛だ。それにこれはこれでメリットがある」
「メリット?」
「この集団と同行することによって道に迷う心配はない」
「跡をつければ問題ないだろう」
「また道に迷う可能性が高いだろう。教授も言っていたが、我々はこの世界の事は何も知らないし、道を知っている者と同行すれば迷うことはないはずだ」
「確かにそれはそうだが、よそ者もわしらを受け入れてくれるのか?」
「大丈夫だ。カウボーイにそんなものは関係無い。腕っ節の強い奴を選んでいる職歴は必要ないと、教授が言っていた」
「だから、よけい心配なんだ。あの人が行動を起こすとなんらかのトラブルに巻き込まれる気がするんだが?」
「…………」
教授が行動するとトラブルに巻き込まれるのは気のせいではないことにうすうす気づいている村正はブドウの意見に何も言えなかった。

 村正とブドウがそんな会話をしている時に教授と軍曹の二人は食事用の馬車を交代で操っていた。
「意外であります。教授が馬車の扱いに長けていたなんて」
「うむ、海外にいた時に知人から教わった技術が役に立ったよ。そういえば影はどこにいったんだ?」
「影は周辺の偵察にでているであります」
 そんな教授と軍曹の会話の最中に影が戻ってきた。
「まずいことになったでござる」
「影。どうしたでありますか?」
「狼がいたでござる」
 狼。これは親父たちが決めた隠語で、牛泥棒が来たという意味であった。
「うむ、狼の数は?」
「三十ほどでござる」
「うむ、影よ。戻って来たばかりですまないが、村正たちや他の人達にもこの事を伝えてきてくれ」
「了解でござる」
 そう言って影は姿を消した。
「うむ、こういっては不謹慎かもしれないが、やっと西部劇らしくなってきた感じがするな」
「肯定であります。しかし普通なら駅付近で強奪するのが定石のはずでありますが?」
 そういいながら、軍曹はクロスボウを用意するのだった。
「うむ、どこにでも定石通りにやらない者はでてくるし、もしくはそれぞれの縄張りがあるのかもしれない」
 教授は口では冷静に言っていたが、手は震えていた。
 あらたなるトラブルが舞い降りる前触れであった。
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