異世界親父騒動記

マサカド

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第二章 親父たち大陸横断する

親父たち、タウン・ゴーレムと戦う

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 深夜のマカロニの町に親父たちの姿はあった。
「うむ、では諸君。作戦通りに行動を開始しよう」
「「「「……」」」」(コク)
 そう言って、親父たちは別れて、建物に擬装されたタウン・ゴーレムの分離体の外壁に次々と接着剤を塗った黒い箱を設置していた。

 一時間後。
 親父たちは町長の家の前で集合していた。
「しかし、教授の予測が当たっているとは!」
「びっくりでござる!」
「肯定であります」
「ふふ、どうかね諸君。私の予測通りではないか」
「鑑定したから間違いないが、本当にそうなのか?」
 町長の家を鑑定した結果、教授の推測は間違いないと判明させれた。

 鑑定
 町長の家
 タウン・ゴーレム 中心体(擬装中)

「うむ、とりあえず中に入ってみよう」
「おいおい、教授。罠の可能性も十分考えられるぞ」
「うむ、その可能性もあるが、町長はただの人間なのかもしれない。ほっとくわけにもいかないだろう」
「肯定であります」
「確かにその方がいいかもしれないでござる」
「一部の建物はモンスターではなかったからな」
「先陣をまかせろ」
 そう言って、村正が家のドアを開けるのだった。

 部屋に入ると町長は部屋の中心にいた。
 まるで町長自身がタウン・ゴーレムの核であるが如く。
「おや、こんな遅くに客人とは珍しい」
 言葉こそ丁寧だが、その態度は人を見下していた。
「うむ、夜分遅くにすまない。我々は冒険者パーティー「ドリフター」。ワケ合って町長に聞きたい事がある」
「このマカロニの町がタウン・ゴーレムの支配下に置かれている件でしょう」
「話が早くて助かる」
 そう言って村正をはじめとするドリフターは武器を構えた。
「そんな事をしても無駄ですよ。それにあなたがたの切り札である爆弾はマーヴィンファミリーとクリーフファミリーを使って回収しました。今頃町はずれで処分されているころでしょう」
 親父たちはその事を聞いても絶望の顔をしなかった。
「王手がかかっているのはお前の方だろう。今この場でタウン・ゴーレムの核を倒せば、こっちの勝利だ」
 村正はまるで相手を挑発するように言った。
「なるほど、確かに理にかなっています。だが、それこそ無駄でしかありません」
「なぜ?」
「こういうことさ」
 そう言って、突然町長が消えた。
「うむ、立体映像だったようだな」
「教授。この場合は幻術という方が正しい」
 教授のしょうもないボケにツッコミをいれるブドウ。
 他のメンバーがあきれる暇も無く、部屋全体が揺れはじめた。
「地震ではないな」
「うむ、この場合は違うな」
「このタイミングで天災なんてありえない」
「この建物から脱出するでござる」
「肯定であります」
 親父たちは床に物を散らかしながら、慌てて外に出た。
 外に出た親父たちは驚いたマカロニの町の建物が大移動を始めていたのだった。
「まるで西部劇に出てくるカウボーイの牛だな」
「確かにその通りであります」
「町の住人は大丈夫なのか?」
「よくに見ると寝間着のまま呆然としている人達がいるから大丈夫でござるよ。」
「うむ、影。あれが見えるのか?」
「忍者でござるから」
 そんな親父たちの会話をよそにタウン・ゴーレムは分離体と合体して本来の姿である木の巨人になる。
「やっと正体を現したか?」
「思ったより巨大であります」
「うむ、見たところ高さは三十階ビルに匹敵するようだ」
「こんな巨大なモンスター見ていると息子がやっていたゲームを思い出すな」
「打ち合わせ通りに作戦を始めるでござる」
 影がそう言って、親父たちは散開した。
 それぞれ飛び道具を手にしていて、矢に火がついていた。
 親父たちはポジションに着くと、タウン・ゴーレムの足に火矢を放った。
 普通に考えれば、そんな攻撃でタウン・ゴーレムは倒せない。
そう、普通ならば。
 タウン・ゴーレムの左足首部分に火矢が当たった瞬間、左足首部分が爆発した。

 タウン・ゴーレムの足が爆発したのに、親父たちは誰も驚かなかった。
 むしろ、それを狼煙の合図と言わんばかりに行動を開始した。
「うむ、どうやら成功のようだな」
 そう言って、教授は錬金術を使ってタウン・ゴーレムの足止めを行ない。
「これほどの威力とは予想以上だ」
 村正は、弓矢を捨てて、タウン・ゴーレムの爆発した左足の右後方に回り込んだ。
「教授の読みが当たったでござる」
 影は、そう言いながら、タウン・ゴーレムの破壊された部分に陶器の玉を投げ入れる。
「タウン・ゴーレムも回収した黒い箱ではなく、接着剤の方が爆弾とは気づかなかったようだな」
 ブドウはタウン・ゴーレムの爆発した左足の左後方に回り込んだ。
「自分は自分の役目を果たすであります」
 軍曹はそう言って、タウン・ゴーレムの注意を逸らす為に火矢を放ち続けた。
 そう親父たちは、建築物に化けたタウン・ゴーレムの分離体が盗み聞きしていることに気づいていた。
 そこである程度信憑性のある会話を交えながら、本当の作戦は羊紙皮に書いた日本語による筆談で行っていたのだった。
 結果タウン・ゴーレムに出し抜いたが、それは決定打にはならなかった。

 タウン・ゴーレムは困惑していた。
自分に何が起きたのか、理解できなかった。
 それでも、目的は変わらずに親父たちを抹殺する為に爆発した部分を復元し、再び親父たちに襲いかかろうとしたが、今度は中心体部分であった胸部が内側から爆発した。
「教授の言う通り粉塵爆発を起こした」
「さっき慌てたフリをして小麦粉などが入った袋を撒き散らしたからな」
 タウン・ゴーレムの足元にいた村正とブドウはそう言いながら、左足のアキレス腱部分を斧や鉈を使って攻撃した。
「教授。第二作戦成功であります」
「うむ、発火装置も上手く発動したようだな。例の物は仕込んだか?影」
「バッチリでござる」
「我々は援護射撃であります」
 タウン・ゴーレムの胸部は外装が剥がれただけだったが、タウン・ゴーレムの心臓とも言えるゴーレム・コアが剥き出しになっていた。
 軍曹、教授、影はそこを狙って矢を浴びせるのだった。
 タウン・ゴーレムは剥き出しになったコアを守るべき腕でガードし、外装の復元を急いだが、今度は先程爆発した左足首部分から炎が噴き出した。
 タウン・ゴーレムもこれに対処する為に火を消す為の消火装置を作動させたが、火は消えなかった。
「うむ、無駄な努力をあれは油脂焼夷弾(ナパーム)だ。あの程度の水では消える事がない」
「きょ、教授。何者でござるか、即席であんな物を作れるとは本当に大学の教授でござるか?」
「自分もそう思います」
 影と軍曹のどん引きをよそに教授は愉悦に入っていた。
「しかしタウン・ゴーレムの機動力を奪う為にタウン・ゴーレムの足元にいた村正殿とブドウ殿は大丈夫でござるかな?」
「うむ、心配いらないよ影。二人にはタウン・ゴーレムを傷つけたら、すぐその場を離れるように言ってある」
 一方の村正とブドウは、酸欠状態になりながらも、何とか危険地帯を脱出していたのだった。
「あの教授は人を酸欠にするのが趣味なのか?」
「同感だ」
 村正とブドウが酸素を欲している間にも、タウン・ゴーレムの左足首部分は燃え広がり、タウン・ゴーレムは火が消せないと理解したのか、左足と本体を分離したが、それによって自重を支えられなくなり、呆気なく倒壊し、剥き出しになっていたゴーレム・コアは衝撃のショックで完全に機能停止したのであった。
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