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第二章 親父たち大陸横断する
親父たち、用心棒に……ならなかった
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スタートの街を出て、一週間。
親父たちは、アメリカ開拓時代風の町マカロニの酒場で頭をかかえていた。
「困った事なったな」
「本当だな」
「肯定」
「…………」
「困った事になったでござる」
なぜ困っているか?
答えは簡単。
この世界のニューヨークを目指して、北東に進んでいたと思ったら、南東に進んでいたのだった。
そんな親父たちが悩んでいる中で、教授だけがペンを持ち、黙々と地図と数字が書かれたメモをにらめっこしながら、羊皮紙に計算式を書き、考え込んでいた。
「諸君。悩んでいても仕方がない。これから間違いをどうやって修正していくか考えようではないか」
「しかし、教授おかしくないか?」
「その通りだ。我々は街と街を繋ぐ街道を歩いていたのに、なんで目的と違う方向に来てしまったんだ?」
「肯定だ。確かに北東に向かって進んでいたのに、なぜ南東になってしまったんだ」
「スタートの街で旅の情報収集した時にも間違いなくあの街道を進めば、ニューヨークに着くはずでござるよ?」
「うむ、確かにおかしい。しかしここは異世界だ。我々の知らない何かがあるのかもしれないし、地図そのものがあまり精度がよくないのかもしれない。地図とここに来るまでの六分儀で測った数字を見比べて調整している所だ」
「い、いつのまに?」
「知らなかった」
「あ、だから六分儀で位置を調べている時に教授が口頭で教えてくれって、言っていたのか」
「うむ、備えあればうれいなしだよ。諸君」
「抜け目がないでござるな」
そんな会話の中、教授は計算を終えたのか、ペンを置いた。
「うむ、わかったぞ。我々は元の世界のカリフォルニア州ロサンゼルスからアリゾナ州に来てしまったようだ」
「アリゾナ州って、あの世界遺産のグランド・キャニオンがある。あのアリゾナ」
「おい、本当にここがアリゾナ州ならまずいぞ」
「なぜ、まずいのでござるか?ブドウ殿」
「北東に進むならモニュメント・バレーと呼ばれる砂漠を通る事になる。馬の足でも踏破するのに二十日はかかる場所だ」
「ブドウ。何でそんなこと知っているんだ」
「昔、その辺りで武者修行した事があるんだ。あの時は徒歩での移動だった為に水を探すのに苦労した。はっきり言って地獄だ」
「教授、ブドウの話が本当なら、対策考えておいた方がいいみたいだな」
「安心したまえ、いくつか手は考えている」
そんな親父たちの会話を他所に酒場の親父はこう思った。
(早く帰ってほしい)と。
別に親父たちを嫌っているからではない。彼らの身を案じっての思いだった。
ここマカロニの街は、いま近くの山で金が発見され、ゴールドラッシュとなっていたのだ。
その金山をめぐって町の二大勢力が縄張り争いをしていた。
その為にならず者だろうと、冒険者だろうと自分たちの戦力に入れたがるのだが、親父たちはこの世界では年寄りの為、無視された。
その時、どっちかの勢力が親父たちを取り込んでいれば、未来は変わっていたかもしれない。
そう、この時点ならばこの町は第二のトゥームストーンになることはなかった。
※トゥームストーン
1880年前後に銀鉱山で栄えた町。しかし火事によって滅んでしまった。
親父たちは、アメリカ開拓時代風の町マカロニの酒場で頭をかかえていた。
「困った事なったな」
「本当だな」
「肯定」
「…………」
「困った事になったでござる」
なぜ困っているか?
答えは簡単。
この世界のニューヨークを目指して、北東に進んでいたと思ったら、南東に進んでいたのだった。
そんな親父たちが悩んでいる中で、教授だけがペンを持ち、黙々と地図と数字が書かれたメモをにらめっこしながら、羊皮紙に計算式を書き、考え込んでいた。
「諸君。悩んでいても仕方がない。これから間違いをどうやって修正していくか考えようではないか」
「しかし、教授おかしくないか?」
「その通りだ。我々は街と街を繋ぐ街道を歩いていたのに、なんで目的と違う方向に来てしまったんだ?」
「肯定だ。確かに北東に向かって進んでいたのに、なぜ南東になってしまったんだ」
「スタートの街で旅の情報収集した時にも間違いなくあの街道を進めば、ニューヨークに着くはずでござるよ?」
「うむ、確かにおかしい。しかしここは異世界だ。我々の知らない何かがあるのかもしれないし、地図そのものがあまり精度がよくないのかもしれない。地図とここに来るまでの六分儀で測った数字を見比べて調整している所だ」
「い、いつのまに?」
「知らなかった」
「あ、だから六分儀で位置を調べている時に教授が口頭で教えてくれって、言っていたのか」
「うむ、備えあればうれいなしだよ。諸君」
「抜け目がないでござるな」
そんな会話の中、教授は計算を終えたのか、ペンを置いた。
「うむ、わかったぞ。我々は元の世界のカリフォルニア州ロサンゼルスからアリゾナ州に来てしまったようだ」
「アリゾナ州って、あの世界遺産のグランド・キャニオンがある。あのアリゾナ」
「おい、本当にここがアリゾナ州ならまずいぞ」
「なぜ、まずいのでござるか?ブドウ殿」
「北東に進むならモニュメント・バレーと呼ばれる砂漠を通る事になる。馬の足でも踏破するのに二十日はかかる場所だ」
「ブドウ。何でそんなこと知っているんだ」
「昔、その辺りで武者修行した事があるんだ。あの時は徒歩での移動だった為に水を探すのに苦労した。はっきり言って地獄だ」
「教授、ブドウの話が本当なら、対策考えておいた方がいいみたいだな」
「安心したまえ、いくつか手は考えている」
そんな親父たちの会話を他所に酒場の親父はこう思った。
(早く帰ってほしい)と。
別に親父たちを嫌っているからではない。彼らの身を案じっての思いだった。
ここマカロニの街は、いま近くの山で金が発見され、ゴールドラッシュとなっていたのだ。
その金山をめぐって町の二大勢力が縄張り争いをしていた。
その為にならず者だろうと、冒険者だろうと自分たちの戦力に入れたがるのだが、親父たちはこの世界では年寄りの為、無視された。
その時、どっちかの勢力が親父たちを取り込んでいれば、未来は変わっていたかもしれない。
そう、この時点ならばこの町は第二のトゥームストーンになることはなかった。
※トゥームストーン
1880年前後に銀鉱山で栄えた町。しかし火事によって滅んでしまった。
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