異世界親父騒動記

第一章 親父たち追放される

親父たち、スタートの街で暮らす

　親父たちが、スタートの街に着いてから一ヶ月が過ぎた。
　その間、親父たちは冒険者ギルドで自分達のパーティーを申請をした。
　パーティー名を「ドリフター（漂流者）」と登録し、数々のクエストをこなしていった。
　ある時は傷つき（迷い猫を捕獲した時に爪で引っ掻かれ）、またある時は息を潜めて獲物（浮気調査の夫）を追跡し、またある時は下水道でモンスター（ネズミ）の大群を罠（殺鼠団子）を使って殲滅した。
　若い冒険者たちからは臆病者だと馬鹿にされていたが、冒険者ギルドからは雑用を捌いてくれたと感謝されていた。
　それと並行して、酒場などで情報収集を行い、勇者になった学生たちの情報を集めるのだった。

　拠点にしている宿屋で、ブドウを除く親父たち困惑していた。
「うむ、今日も収穫なしだったね」
「全くその通りであります。学生たちの情報が全くない」
「噂さえないとは、影の方はどうだ？」
「変装して酒場以外の色々な場所で、聞き込みしたけど学生たちの情報はなしでござる」
　スタートの街に来て、一ヶ月経っているのに、勇者になった学生たちの情報はまるで無い。それが逆に不気味でならない親父たちであった。
「うむ、村正がデストロイの役所で手入れた情報について、考えられる事は二つある。一つは全く別の勇者だった場合、もう一つは今は学生たちが何かしらの理由で、その存在を伏せられている場合になるな」
「情報が偽物だった場合は無いでござるか？」
「うむ、その考えもなくはないが、役所の書類にそんな偽情報があるだろうか？」
「偽情報の可能性も無くはないが、その可能性は低いと自分は思います」
「確かに酒場などで聞いた情報の中には、勇者召喚は伝説として民衆レベルで知られているし、最初に神殿で会った殺人未遂司祭の言うとおりに魔王と対峙しているは確かだからな」

　こうして親父達が悩んでいる時に事態は動いた。
　突然、親父たちの部屋になだれ込んでくる人物がいた。
「「「「ブドウ」」」」
「学生たちの情報があったぞ。やっぱり酒場は情報の宝庫だ」
　部屋になだれ込んでくるなり、赤い顔したブドウは床に寝そべった状態で言った。
「「「「べろんべろんに酔うまで飲む必要があるのか（でござる）」」」」
　ブドウが持ってきた情報よりも、酔っている事にツッコミをいれる親父たち、酔っ払いの言葉に説得力がなかったのだった。

　一時間後。
　大量の水を飲ませて、ブドウは正気に戻った。
　しかし代償もでかかった。
ブドウを正気に戻す為に宿屋の井戸を使ったのだが、あまりにも大量の水を使ったの為に宿屋のおかみさんから大目玉をくらったのだった。
「「「「ブドウよ。酒に飲まれるとは情けない」」」」
「面目ない」
 　ブドウは身体を物理的に小さくして、土下座をした。
　これ以上は怒る必要もないだろうと思ったのか、教授はブドウが持ってきた情報を聞いた。
「うむ、それで学生たちの情報とは何かね？」
「スタートの街でもうすぐ行われる祭で勇者たちがパレードを行い、その足でゲートを使って、魔王の本拠地に行くそうだ」
「本当か？」
　村正は「酔っ払いの事は信用できない」と疑り深い目で見た。
「と、飲み仲間が教えてくれた」
「「「「ウワバミは間に合っている（でござる）」」」」
　またしても、ブドウと書いて酔っ払いに対してツッコミをいれる親父たちであった。

※ウワバミ
　酒豪もしくは、大酒呑みな人のことを指す俗語