異世界親父騒動記

第一章 親父たち追放される

親父たち、世界の事実を知る

　デストロイの街に着いた親父たちは唖然とした。
　壁はほとんど破壊され、建築物は全て全壊し、死臭が漂っていた。
　親父たちはお互いに目を合わせ、村正は役所へ、ブドウは教会へ、軍曹は冒険者ギルドへ、教授は商店へ、影は倉庫街へ向かっていった。
　全員が全壊した建築物の瓦礫を退かしながら、金や食糧など使えそうな物を片っぱしから、手に入れていく。
　行動そのものは火事場泥棒である。
　元の世界の常識である人命救助をする選択は親父たちにはなく、この世界で生きていく為に手段を選ばなくなっていた。

　二時間後。
親父たちは自分たちで手に入れた戦利品のこの世界の地図を見せ合っていた。
　そして驚くべき事実を知る。
「この世界って地球と同じなのか」
「うむ、大陸の形に微妙な違いはあるが間違いない」
「役所や冒険者ギルドにあった地図が同じなら偽物の可能性は低いな」
「役所にあった地域の地図と世界地図を合わせると我々が今いる場所は北アメリカ大陸の西海岸近くになるな」　
「しかし地球とこの世界の大陸が同じ形をしているなんて偶然あるのか？」
「「「「謎だな」」」」
　謎が謎を呼ぶ展開になっていくのであった。

　夜になっても親父たちは、他の戦利品を見せ合いながら、これからの旅に足りない物はないのかを確かめ合う。
「物資はともかく、旅の為の足が無いのが痛いな」
「馬小屋に馬もロバもいなかったからな」
「うむ、壊れた馬車なら何台かあった」
「馬車を直したとしても、牽引する動物がいなければ意味が無いな」
「教授。あんたの錬金術で馬車をゴーレムにするのは可能か？」
「現状では技術も材料も無いから無理だ」
「思いきってモンスターに牽引させるのは？」
「いや、今の我々にモンスターを調教する技術は無い」
　こうして親父たちの夜は更けていくのだった。