エンマの這い上がり

マサカド

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第三話 エンマ、沈黙を受ける

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前回までのあらすじ。
冒険者になり、初依頼を受け、オーガを撃退したのだが…………。

 オーガを倒して、三日が経っていた。
 エンマは町の中で針のむしろ状態になっていた。
 なぜこんなことになったかと言うと、オーガの死体を町に持ち込んだのが原因だった。
 恐怖に歪んだ顔のオーガを見た住民達は失神や錯乱などの状態異常を起こし、町の子供たちはその夜、全員がおねしょをした。
 その為、エンマは住民から白い目で見られる。
「冒険者ギルドにいくか?」
 そう言って、冒険者ギルドに言ったが、そこでも白い目で見られ、冒険者たちは遠巻きにエンマを見ていた。
 本来なら、オーがを倒したことによりランクが上がり、冒険者たちが自分のパーティーに勧誘するのだが、恐怖に歪んだをオーガを町に運び、人々を恐怖に陥れた事により功績はプラスマイナスゼロでランクが上がらなかった上に冒険者たちも恐怖の対象としか見ていなかった。
「おい、あのおっさんがそうなのか?」
「ああ、数日前にふらっと現れて、冒険者登録初日にオーガを一人で倒した男だ」
「しかもただ倒したんではなく、オーガの顔を恐怖にゆがめる程に残虐な手段を使ったそうだ」
「本当か?」
「ああ、オーガの死体は文字通りに真っ白になっていたからな。間違いない!」
「化け物か!」
 冒険者たちは小声でヒソヒソしていたが、エンマの耳は聞こえていた。
なぜならエンマの耳は地獄耳だったからだ。
(この町を出るしかないな)
 そう思って、受付に向かった。
 受付嬢はエンマを見るなり、青い顔となって、「イ……イラシャイマセ……」と壊れかけのロボットのような口調で、挨拶した。
 エンマはそのことに突っ込む気力なく、丁寧な口調で要件を言った。
「護衛の依頼はないですか」
「ゴエイノオシゴトヲナサレルンデスカ?」
「そうです。他の町に行きたいので、ありませんか?」
「コノマチニモドッテクルンデスカ?」
「片道の依頼で構いません」
「そうですか!すぐに調べます」
「後、地図はありませんか?」
「本来であれば有料なのですが、無料でご用立てします」
(わしって、そんなに嫌われているの?)
エンマは周りの空気が一気に変わったことに深いため息を漏らした。

針の筵(はりのむしろ)
一時も心の休まらない、つらい場所や境遇のたとえ。
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