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第二章 勇者の花嫁 魔王の花婿

第十話 プロポーズ

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途中から第三視点です。

前回までのあらすじ
ミスターモフモフが仲間に加わったシンタローたち。
しかし魔王バステルンの魔の手は徐々に近づいていた。

 俺達はノエルの故郷を目指して街道を歩いていた。
「シンタローさん!なんでサバイバルカーを使わないんですか?」
「この街道は人の行き来が多すぎるからだ!アレは目立つ!」
「サバイバルカーって、何?」
 ミスターモフモフの質問を無視して、俺は話を逸らした。
「それよりもあれはなんだ?」
 俺が見つめる先にはモフちゃんを腕にホールドしていたノエルが辺りを警戒していた。
「ノエル!何しているんだ?」
「シンタロー!見てわからないの?警戒だよ!」
「だから、なんで?警戒する必要性があるんだ?」
「また!あのおばさんがモフちゃんを奪いに来るからだよ!」
「は?」
 俺は呆れた。
「シンタローさん!ノエルさんはこの三日間の私たちの作業を知らないんですよ!」
「確かに!ノエル達が合流したのは今朝だったな!ノエル!安心しろ後顧の憂いは取り除いている!」
「なんで?」
「しばらく魔王バステルンは襲って来れないと言っているんだ!」

 所変わって、ここは魔王バステルンの城。
 この城に大勢の人が押し掛けていた。
 一見すると魔王バステルンと倒そうと集まった軍勢かと思えるが、全員が白を基調とした服を装備し、手には剣の代わりに花束を持っていた。
 そして、口々に「我こそは勇者だ!」とか、「白馬に乗った王子様だー!」とか叫んでいる。
 そんな集団は城の罠や魔物たちに迎撃されて戦闘不能になり、魔物たちの手によって城の外に捨てられていった。
「しかし、なんで侵入者が増えたんだ?」
「そんなの間違いなく、あの冒険者のせいだろう!」
「あの冒険者にもらしてしまったもんな!魔王様がなぜ姫誘拐しようとした理由を……」
「そのおかげで侵入者が増えたけど、誰一人として魔王様の元に辿り着いた人はいないんだよな!」
「だけど、魔王様に合うことができたとしても、あの状態じゃな……」
「確かにあの状態だからな!」
 魔物たちはため息をついた。
 原因は魔王バステルンが落ち込んでいるからだ。
 なぜ?落ち込んでいるのかというと、シンタローがモフちゃんの身代わりにすり替えた等身大モフちゃんぬいぐるみをノエルと取りあいによって、壊れた。
 愛しき人の形をしたぬいぐるみが壊れて落ち込む魔王バステルン…………ではなかった。
 ノエルに恨み節を吐き、モフちゃんの追跡をするようにと部下に命じた。
 最初は部屋でぬいぐるみの修復していたが、不器用な為、修理すればするほどに原型と全く違う形になってしまい、今は呪いの言葉を呟いている。
「正直言って今の魔王様怖いぞ!」
「あの小娘め!と呟いているもんな!」
「下手に刺激すると爆発するのは間違いないな!」
「そんな状態でプロポーズする奴がいたら確実に死ぬぞ!」
「「「確かに!!」」」
 こうして魔王の手下達は、魔王のハートを射止めてしまった幼い獣とその飼い主である冒険者が逃げ切ってくれることを祈るのだった。

 魔王バステルンの手下である魔物が祈っている頃、姫誘拐未遂の被害者であるフォーム国の王族の間で、ある問題が起きていた。
 王が手紙を握りしめて、突然「私は愛に生きる!」と言った瞬間、王妃様からパイルドライバーを食らった。
 そんな両親を姫は白い目で見つめ、両腕で抱えた等身大モフミちゃん人形を抱きしめながら、「こんな大人にはならない」と心に誓った。
 王族以外は王都は平和だった。
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