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第二章 勇者の花嫁 魔王の花婿

第七話 勇者と魔王の(女の)戦い2

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前回までのあらすじ
モフちゃんを巡って、ノエルと魔王バステルンの一騎打ち。
ノエルの伝家の宝刀である子供がいる(嘘)発言により魔王バステルンを倒した。

 俺の目の前には子供がいる(嘘)発言で勝ち誇った笑みを浮かべるノエル。
「魔王様!しっかりしてください!傷は浅いですよ!」
 その発言に崩れ落ちた魔王バステルンとその魔王を慰める魔物たち。
 勝ち組と負け組の両方を見せられた俺達。
「あ、あんな嘘を信じるなんて……」
「恋は盲目になると言います!あんな発言をされたら、落ち込みますよ!」
 俺達はこれで魔王バステルンがあきらめて、不毛な争いは終わるだろうと思った。
「だ!」
 だ?
「誰か!離婚届をもってまいれ!」
 あきれめていなかった!
「この世界にも離婚届があるんだな!」
「何を言っているんですか!シンタローさん!結婚するなら離婚する可能性も出てくるのは必然ですよ!でも魔王バステルンさんは離婚届を何に使おうとしているんでしょうか?」
「大体の想像はつく!」
 俺は魔王と魔物たちを見つめた。
「ま……魔王様……離婚届を何に使うんですか?」
「もちろん、わらわの愛しい人を取り戻すためじゃ!」
「魔王様!お気を確かに!」
「そんな紙切れ一つで愛は実りません!」
「落ち着いてください!」
 魔物たちは混乱しながらも、魔王バステルンを説得しようとしていた。
「は!わらわとした事が、少々混乱していたようだ!」
「「「魔王様!」」」
「うむ、書類偽造師を呼んでまいれ!あと婚姻届も持ってまいれ!」
「「「駄目だ!こりゃ」」」
 全然冷静じゃない。
「シンタローさん!」
「なんだ!エドモント」
「あの魔王は何がしたいんですか?」
「モフちゃんを手に入れるためだ!」
「モフちゃんさんを手に入れるために何で離婚届や婚姻届が必要なんですか?」
「つまり書類偽造師に離婚届を作らせて、モフちゃんとノエルを離婚させて、婚姻届でモフちゃんと再婚させようと目論んでいるんだろう!」
「それって魔王としてやっていいことなんでしょうか?それ以前にモフちゃんさんとノエルさんは結婚なんかしていませんよ!」
「俺は異世界人だから、この世界の常識はわからない!」
 俺が見つめる先で魔王バステルンを必死になって説得する魔物たち。
「魔王様!馬鹿な真似はやめてください!」
「こんなことが他の魔王たちに知られたら末代までの恥ですよ!」
「そうですよ!異種族との恋なんて悲劇のもとです!」
 魔物たちはまともなこと言っているが、魔王バステルンの耳には届いていなかった。
 そんな魔王バステルンを止めるためにノエルが立ちはだかった。
「ぼくとモフちゃんとの絆を断ち切るな!おばさん!」
「小娘の方こそ!わらわと愛しき人の間に割り込むな!」
 またもや、にらみ合う勇者見習いノエルと魔王バステルン。
「この部屋に入って来た時と同じ状況になったような気がするんだが?」
「シンタローさん!気のせいではありませんよ!むしろ状況はさっきより悪くなった気がします!」
 ノエルの背後に美化されたモフちゃんの形をしたオーラが浮かび上がり、バステルンの背後には白馬にまたがった王子様の格好をしたモフちゃんの形をしたオーラが浮かび上がっていた。
「なぜ?モフちゃんなんだ?この状況なら竜とか虎のはずなのに?」
「シンタローさんにも、そういうイメージで見えるですね!」
「エ、エドモントもそうなのか?」
「はい!」
「自分にも同じものが見えます!」
「右に同じ!」
「左に同じ!」
「上に同じ!」
「下に同じ!」
 バステルンを説得しようしていた魔物たちも同じイメージを見ていたようだ。
「シンタローさん!この状況をどうすればいいでしょうか?」
「一つだけ策がある!」
「あるんですか?」
「ああ、この策を用いれば、この不毛な争いは終わる!」
「終わるんですか?」
「この城を脱出できるかどうかで、この策は決まる!」
「シンタローさん!それって…………」
「逃げるんだよ!」
 俺は部屋を飛び出し、廊下を全力疾走した。
「シンタローさん!待ってください!」
 エドモントはすぐに追いかけてきた。
「シンタローさん!モフちゃんさんを見捨てるんですか?」
「何を言っているんだ?エドモント!モフちゃんならここにいるぞ!」
「キュ!」
 俺の懐からモフちゃんが顔を出した。
「え!いつの間に?」
「先、モフミちゃんを魔王バステルンに見せた時にモフちゃんと等身大のモフちゃんぬいぐるみをすり替えたんだ!」
「いかさま師もびっくりですね!」
「モフちゃんを連れて、このままこの城を脱出すれば、あの二人が争う理由はなくなる!」
「わかりました!急いで脱出しましょう!」
 俺たち出口に向かって、走った。
 このまま何事もなく脱出できる。
 だが、それは妨害者がいなければの話だった。
「モフモフダイブ!」
 一匹の獣が俺達の前に立ちふさがった。
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