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第二章 勇者の花嫁 魔王の花婿

第六話 勇者と魔王の(女の)戦い

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前回までのあらすじ
さらわれたモフちゃんたちを救うために、魔王バステルンの城に到着したシンタロー達。
そこは修羅場だった。

「モフちゃんに近付くな!おばさん!」
「黙れ!この者はわらわの運命の相手!小娘こそ引っこんでおれ!」
 俺達が見たのはモフちゃんを巡って争うノエルと魔王バステルンだった。
 俺はその光景に思考が一瞬停止していた。
「何が起きているんだ?」
「ノエルさんと魔王バステルンがモフちゃんさんを巡って争っているようです!」
「それは見ればわかる!わからないのは、なぜ争っているんだ!」
「勇者と魔王ですから争うのは当然ですよ!」
 おれはエドモントの意見を無視して、すぐさま誘導した魔物に問いかけた。
 魔物曰く、

モフちゃんとノエルはゴーレムのプログラムエラーで、ここに来てしまった。
                                             ↓
すぐに解放しようとしたのだが、夜中だった為、日が昇ってから解放することなった。
                                              ↓
 朝になり、モフちゃんが台所に来て、朝ご飯を作りたいと申し出てきた。
                                               ↓
 モフちゃんは手際よくパンケーキを作り、それをノエルとその場にいた魔王バステルンに一口サイズに切った上に蜂蜜をかけて渡した。
                                             ↓
 パンケーキを食べ終えた魔王バステルンは「この者こそ、わらわの運命の相手だ!」と言って、モフちゃんに襲いかかろうとしたがノエルに阻まれた。
                                             ↓
 その二人の掴みあいの中、俺達が到着した(現在ここ)。

 俺は額に手を当てた。
「何で?パンケーキやっただけで運命の相手だと認識されるんだ!」
「シンタローさんは異世界の人だから知らないでしょうが、蜂蜜などの甘味は贈答品として使われるほど高級品なんですよ!」
「嘘つけ!それが本当なら毎回エドモントたちは、なんで蜂蜜やジャムを湯水のごとく使っているんだ!」
「そこに甘味があるからです!」
 エドモントは本音を言った。言い切った。
 モフミちゃんも首を縦に振った。
 ついでにバステルンの手下から嫉妬の視線を受けた。
「それよりもシンタローさん!」
「なんだ?」
「なんでモフちゃんさんが蜂蜜持っているんですか?」
「俺が何かあった時の為に非常食代わりに渡した!」
「私、もらっていません!」
「あたしも、もらっていない!」
「モフちゃん以外には渡していない!」
「「なぜ?」」
「お前らじゃ、蜂蜜渡したら速攻で胃袋に入れるからだ!」
「まさか!そんな意地汚くないですよ私は!」
「そうよ!そうよ!」
 エドモントとモフミちゃんは口ではそう言っているが、目を合わせようとしない。
 口笛吹くマネまでして誤魔化している。
 俺はそんな二人に呆れながら、誘導した魔物にファンレターの山を渡して、情報交換を行った。
 そこでわかったことは、今回のお姫様誘拐事件はお年頃(?)の魔王バステルンの結婚相手をみつけるのが目的だった。
 なぜそんなことになったのかというと。
 最初はお見合いセンターに行ったのだが、まともな奴がいなかった為に、考えた末この国のお姫様をさらうことを思いついたそうだ。
 さらわれたお姫様を救おうとする者の中に一人くらいは魔王バステルンのお眼鏡にかなう者がいるだろうと考えた。
 その結果、モフちゃんと出会うことになった。
「なんて!はた迷惑な!」
 結果として魔王バステルンはモフちゃんを運命の相手として認識し、暴走。
 魔王バステルンの手下たちも最初は魔王とノエルの暴走を止めようとしたのだが、バステルンとノエルによってある者は天井に刺さり、またある者は壁にめり込み、説明した魔物も二人の攻撃でへそを中心に八つの傷ができていた。
「胸に七つの傷を持つ男もビックリだな!俺達をここに誘導したのも、二人を止めるためか?」
 魔物は無言で首を縦に振った。
「あ!シンタロー!いい所に来た!モフミちゃんを連れて来て!」
 魔物への返答より早くノエルが俺に気づいた。
 俺は仕方なくノエルの言うとおりモフミちゃんを抱えて、修羅場に向かった。
「みろ!おばさん!この子はモフミちゃん!ぼくとモフちゃんの愛の結晶だ!」
 息を吐くがごとく嘘を言うノエル。
 俺は後ろを振り返ると、魔王バステルンの手下の表情は「この娘さん!何言っているんだ!」という顔だった。
 エドモントに関しては文字通りあごが外れていた。
 「こんな嘘を信じる奴なんているわけがない!」と俺は前方を見ると、魔王バステルンは崩れ落ちていた。
信じる奴がいた!

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