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第二章 勇者の花嫁 魔王の花婿

第三話 身代わり

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前回までのあらすじ
王様の依頼でお姫様を守ることになったシンタローたち。
そこで、モフちゃんの身に何かが起きた。

「モフちゃん!その格好はなんだ?」
 俺は驚愕した。
なぜなら、モフちゃんはお姫様になっていた。正確にはお姫様ドレスを着たモフちゃん。
「シンタロー!見てわからないの?変装だよ!」
「変装!」
 俺は声のする方に顔を向けた。
 そこいたのはドレスを着た野性児である見習勇者ノエルがいた。
「ノエル!なんだその格好は?」
「だから変装だよ!ボクとモフちゃんがお姫様になって魔王の目を誤魔化すんだよ!」
 ある意味で作戦自体はいい判断だが、実行するのがモフちゃんとノエルだという時点で無理あると俺は思った。
「エドモント!どう思うこの作戦!」
「作戦そのものはいい作戦だと思いますが、お姫様役がノエルさんとモフちゃんという時点で無理があると思います!」
「そうだな!」 
 俺はため息をもらした。
「そういえば?モフミちゃんはどうしたんだ?」
「モフミちゃんなら、お姫様と一緒にいるよ!」
 ノエルが指さす方向には、ぐったりしたモフミちゃんと肌がこころなしかツヤツヤになったお姫様がいた。
「モフモフされたんだな!」
「モフモフされたようですね!」
 俺達は奇妙な悟りを開いた気分になった。
「シンタローたちこそ!ボクたちが変装して魔王の目を欺いている時に一体何をしていたの?」
「部屋で使えそうな道具を揃えていたんだ!」
 俺はそう言って、道具を見せた。
「シンタローさん!これは何ですか?」
 そう言ってエドモントはビデオカメラを手に取った。
「それはビデオカメラだ!」
「ビデオカメラですか?」
「監視カメラ代わりに購入した!もしもお姫様が誘拐された時にどんな状況だったのか確認する」
「しかし、本当に今夜、魔王がお姫様を誘拐しに来るんですか?」
「誕生日は明日だ!俺が犯人なら、夜の午前零時に誘拐しようとする!」
「明日と言う可能性はないんですか?」
「可能性としてはあるが、俺が犯人なら侵入しやすく、逃亡しやすい深夜に実行する!今夜は俺とエドモントで上空を見張るからノエルはモフちゃんたちと一緒に今夜は姫様の護衛をしてくれ!」
「わかった!」
「キュ!」

 夜。
 俺とエドモントは城のバルコニーから上空を見張っていた。
「シンタローさん!」
「なんだ?エドモント!」
「魔王は本当に来るんですか?」
「魔王じゃなく、魔王の手下かも知れないが来る可能性は高い!」
「それって、昼間シンタローさんが言っていたことですか?」
「普通に考えれば空から侵入して姫様をさらった後、窓から脱出するのが手っ取り早い!」
「そうなんですか?その割には城の警備が緩い気もしますが?」
「誘拐されるのが明日だと思っているのか?それとも別の手を考えているのか?」
「ですがシンタローさん!裏をかかれてるということは無いんですか?」
「裏?」
「たとえば地下から侵入するとか!」
「確かに、侵入するならそれも考えられるが、俺達二人だけで可能性のある所を見張るのは無理がある。よって、一番可能性の高い場所であるバルコニーから上空を見張ることにしたんだ!」
「納得しました!」

 結果だけ見れば、俺の予測したとおり、誘拐犯は現れた。
 見張っていた俺達に気づかれることなく、姫の部屋に侵入した。
 しかし、姫の誘拐には失敗した。
 なぜか?
 答えは姫の代わりにモフちゃんとノエルが誘拐された。
「何故だ―――!!!」
「シンタローさん!叫びたい気持ちはわかりますが落ち着いてください!」
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