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第一章 勇者誕生

第二十五話 ナイトメアの悪夢2

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前回までのあらすじ
ナイトメアのヌエメアの襲撃を受けたシンタロー。
異世界のヒーローに変身したモフちゃんによって危機は脱したかに思われたが、突然モフちゃんが人の言葉を話すことに衝撃に走るのだった。

「シンタローさん!シンタローさん!」
 目覚めた俺の目の前にはガイコツがいた。
「エドモントか!どうしたんだ?」
 目覚めた俺は起きあがり、辺りを見回した。
 風景は眠る前と同じで、懐には眠っているモフちゃんがいた。
「どうしたんだ?じゃありませんよ!突然、叫び声をあげるからシンタローさんの体を揺すって起こしたんですよ!」
「そうなのか?それはすまなかったな!悪夢を見せられていたもんでな!」
「悪夢ですか?」
「そうだ!モフちゃんが人の言葉を話す夢を見たんだ!」
「モフちゃんが喋ったんですか?それはある意味で興味深いですね!」
「エドモントにとっては面白いかもしれないが、俺にとっては悪夢だ!モフちゃんは「キュ」って鳴くからいいんだ!人の言葉を喋るなんて可愛さが半減してしまう!」
「そうなんですか?」
「そうなんだ……って、何か肉の焼ける匂いがしないか?」
「あ!そう言われてみれば、かすかに匂いがします!」
 俺はモフたちゃんを寝袋に入れると、エドモントと共に匂いのする方向に向かった。

 向かった先の匂いの正体は黒い物体。
「これが匂いの正体か?」
「香ばしい匂いがしますね!誰かバーベキューでもしたんでしょうか?」
「エドモント……まさか、コレを食うつもりなのか?」
「え!?駄目なんですか!」
「わけもわからない物を食う方が異常だろうがーーー!」
「アンデッドですから!」
「色々な意味で間違っているぞ!アンデッドの意味!」
 俺達の漫才のようなやり取りをしている所に黒い物体は起き上った。
 黒い物体の正体は文字通り黒い馬。
「……お……のれ!無……手の勇…………」(ガク)
 黒い馬は力尽きたのか、倒れたまま、動かなくなった。
「この黒い馬!何か呟いていたな?」
「ええ、『無手の勇…』と言っていました!」
「それって、モフちゃんのことか?」
「今のところ、確証はありませんが、可能性は高いと思います!」
 俺とエドモントの疑問に答える者は誰もいなかった。
 
 野営地に戻って来た俺とエドモントは、まだ寝ているモフちゃんとノエルを起こさないように話し合いを始めた。
「エドモント!どうも黒い物体が言った言葉が気になるんだが?」
「奇遇ですね!シンタローさん。私もすごく気になるんですよ!」
 エドモントの目は眼球もないのに光っていた。
 さすが知的好奇心の塊。
「尋問するしかないな!」
「尋問ですか?しかし、さっきの黒い馬はもう話を聞くことはできません!私はアンデッドですが、霊と会話することはできませんよ!」
「そこで寝ているパンダもどきを尋問するんだ!」
「え!大丈夫ですか?ノエルさんが怒ったりしませんか?」
「絶対に怒る。だが、今の俺達にはあのパンダもどきしか情報を手に入れる術はない!」
「しかし、どうやって話を聞くんですか?火あぶりですか?むち打ちですか?それとも闇うちですか?」
「最後のは違うだろうエドモント!それに今のエドモントが言ったのは尋問ではなく拷問だ!」
「では!どうやって情報を聞き出すんですか?」
「その方法は考えてある!それよりも今すべきことをしなければならない!」
「今すべきこととはなんですか?」
「もうすぐ朝日が昇る!朝ごはんの準備だ!」
「確かに重要ですね!」
 そう言って、俺は朝ごはんの準備を始めた。
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