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第一章 勇者誕生

第十七話 さらば、モフモフの村!さらばモフちゃん!また会う日まで?

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前回までのあらすじ
勇者見習いノエルの暴走によって、恐怖に陥れられたモフモフ村。
勇者モフちゃんの活躍によって危機は脱した次の日……。

 早朝。
 俺とエドモントは森の中を歩いていた。
「シンタローさん!よかったんですか?」
「何がだ?」
「モフちゃんさんに黙って出てきたことです」
「モフちゃんの幸せを考えれば、この方法が一番にいいんだ!」
「でも、モフちゃんさんは勇者ですよ!」
「モフちゃんは勇者なんかになりたくないんだ!俺達が黙っていれば、誰にもわからないし、気付く者もいない。このまま故郷の家族と共に暮らしていく方がモフちゃんの為にいいんだ!」
「シンタローさんの言うこともわかりますが、だからといって、コレはいいんですか?」
「コレって?」
「ノエルさんを私の浮遊魔法で風船みたいに運んでいることですよ!」
 俺はエドモントが持っている糸の先を見た。
 そこには毛布で簀巻きにされたノエルが宙に浮かびながら寝ていた。
「仕方がないだろう。またノエルが暴走したら、それこそモフちゃんだけではなく、あの村に住んでいる住民達が不幸になる」
「そ、それはそうですが……」
「それにこっちの方が運ぶ側としては楽だ!」
 そう言って、俺は森の中を進んでいく。
 しかし、エドモントから予想外の事を言われた。
「シンタローさん。無理はしない方がいいですよ」
「どういう意味だ?エドモント」
「やせ我慢も度を超すと見ている方がつらくなると、言っているんです!」
「何を言っているんだ?そんなわけないだろうが?」
「じゃあ、何で目を黒い物体で隠しているんですか?」
「黒い物体?ああ、これはサングラスだ!今日は陽射しが強いから、これで目を守っているんだ!」
「今日は曇っていますよ!それがやせ我慢だと言っているんです!」
 いつもはボケ役のエドモントが珍しくツッコミを入れた。
 新鮮な気分に俺はなった。
「今日は槍が降るな!」
「誤魔化さないでください!それに槍は降りません!」
 (物理的に降るという意味で言ったんではないのにな)と俺が心の中で思っている間にもエドモントは口撃を続けた。
「モフちゃんさんと別れるのがつらいのなら、つらいって言ってください。そんな小道具に頼らず、感情のまま行動してくれる方が何倍もマシですよ!」
 言いたいことと言うだけ言って、エドモントは肩で息をしながら、呼吸を整えていた。
「エドモント!その話は森を出てから話そう!」
 俺はそう言って、足を動かした。

 森を出た俺はエドモントとじっくり話すために、ストレージからサバイバルカーを出し、さらに調理器具を出した。
「エドモント!ノエルをサバイバルカーに入れておいてくれ。俺は朝ごはんを作る」
「わかりました!ですけど乗り物は昨日のあの箱車ではないんですね」
「これから国境に向かって旅をするんだ。頑丈な車の方がいいだろう」
「そうですか?」
「そうだ!じゃあ朝ごはんを作るぞ!」
 エドモントはなぜかため息と共に納得していない様子だったが、食欲の本能には逆らえないのか?俺の指示に従った。
「わかりました!四人分お願いしますね!」
 そういってエドモントはノエルをサバイバルカーに運んだ。
 四人?
 俺がエドモントの言葉に違和感を覚えた時、ズボンの裾を引っ張る者がいた。
「モフちゃん!」
 引っ張っていたのはモフちゃん。
「なんでここに?」
 モフちゃんは腕を組んで頬を膨らませていた。
 そんなポーズを取らなくても、怒っていることは雰囲気でわかるのだが、あえてその事には突っ込まないことにした。
「モフちゃん。黙って村を出たことは謝る。だけどモフちゃんは俺たちを旅を続けるの?」
 モフちゃんは首を縦に振った。
「モフちゃんは勇者になりたくないんだろ?なら、生まれ故郷である村にいる方が……」
 俺は言葉が続かなかった。
 なぜならモフちゃんは腕を指した方向にモフちゃんの両親だけではなく、モフモフ村の住民総出で見送りに来ていたのだった。
 よくみればモフパパの頭は三段重ねのタンコブタワーが建設されていた。
「モフちゃん!もしかして昨日一晩で家族の説得したのか?」
 モフちゃんは首を縦に振った。
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