18 / 51
第一章 勇者誕生
第十四話 来ないでモフモフの村
しおりを挟む
前回までのあらすじ
勇者に覚醒したモフちゃんと共に、次の国へ向かう為に国境に向かったシンタローたちだったが……。
うっそうと茂る森の中を俺達は歩いていた。
「あのシンタローさん?」
「なんだ?エドモント」
「なんで我々はこんな森の中を歩いているんですか?」
「モフちゃんが先頭を歩いているからだ!」
「そうだよ。エドモントは物忘れが激しいね!」
「ノエルさん!私が言いたいのは、なんでモフちゃんさんの暴走を止めないのか、シンタローさんに聞いているんです」
「そこで漫才しているなら、置いて行くぞ!」
そう言って俺は、モフちゃんを見つめた。
モフちゃんは相変わらず、俺の作った冠とマントを装備している。
そして、その表情はどこか嬉しそうだった。
数時間前に俺達は国境に向かってサバイバルカーを走らせていたのだが、突然モフちゃんが興奮状態に陥り、車を停止したら、外に出てこの森に入っていた。
俺達はそんなモフちゃんを追いかける形で森に入って今の状態にある。
「シンタローさん!森の奥が光っていますよ!」
「やっと森を抜けるようだな!」
「あ、モフちゃんの足が速くなった!」
俺達はモフちゃんに合わせて森を抜けた。
森を抜けた先には村があった。
ただし、そこは人の村ではなく、レッサーベアの村だった。
「もしかしてここが、モフちゃんの故郷?」
「シンタローさん!これはすごいですよ!」
「エドモント!そんなに興奮して、何がすごいんだ?」
「長年のレッサーベアに関する生態系の謎が解き明かされたんですよ。これを学会で発表すれば歴史に名が残ります」
「そんなにすごいことなのか?」
「ええ、レッサーベアが独自の文化を持っているかもしれないと、長い年月議論されてきましたが、一気に解決したんですよ。やはりレッサーベアは高い知能を持った生き物でした」
「それ、モフちゃんを見ていたら、わかることじゃないのか?」
モフちゃんは俺たちの言葉を理解しているし、ノエルの世話や道具も使いこなしているのを俺達は見ている。
「いいえ、モフちゃんさんだけ特別(勇者)なのかもしれなかったので、ここにいるレッサーベア達によって立証されました!」
俺はエドモントの興奮を理解することはするよりも、モフちゃんがどこに行ったのか?辺りを見回した。
すぐに見つかった。
俺の作った勇者装備をしたまま、モフちゃんよりも一回り大きな二匹のレッサーベアに抱きしめられている。
「もしかしてモフちゃんの両親か?」
「感動の再開ですね!」
その光景を見ていた周りのレッサーベアも「よかったね」という鳴き声を上げていた。
しかし、一つの疑問が浮かんだ。
「エドモント!」
「なんですか?シンタローさん」
「ノエルはどうしたんだ?」
「そういえば、やけに静かですね?」
モフモフを愛してやまないノエルが静かなのはおかしいと思った俺達は振り向くと、ノエルはそこにいた。
しかし目が血走っていた。
「ノエル!落ち着け!!」
俺の大声と共にレッサーベアたちは一斉に俺たちの方向を見た。
レッサーベア達は本能的に危険を察知し、俺の後ろに全員が隠れた。
そう全員が隠れた。
「何で?エドモントまで俺の後ろに隠れるんだ!しかも一番後ろに!」
「だって、ノエルさんが怖いんですよ!」
「お前が襲われる心配ないだろうが、少しはレッサーベア達を見習え!」
レッサーベアたちは大人が前に出て、子供を後ろに隠し、子供達は自分たちより年下の子たちを守るように並んでいた。
「モ……フ……モ……フ……!」
ノエルはゾンビのような足取りで、両手はワキワキと動かしている。
完全に危ない人だ。
「ノエル!やめろ!」
俺はレッサーベアに向かってくるノエルを体を張って止めるがノエルはそのまま前進を止めない。
「ノエル!落ち着け、それでも勇者(見習い)か!」
「モ……フ……」
俺の説得の言葉をノエルは全く聞いていない。
「シンタローさん!今のノエルさんはレッサーベア達をモフモフすることしか頭にありません!」
「つまり、ノエルの暴走を止めるにはレッサーベア達を犠牲にするしかないのか?」
レッサーベアの大人たちは怯えながら、スクラムを組み、子供を守るように固まっていたが、一匹だけ、俺たちの方向へ飛び出した。
「「モフちゃん(さん)!」」
モフちゃんは俺の体をよじ登り、ノエルの顔面にモフモフした尻尾を当てた。
「モフモフ!!」
効果は抜群。
ノエルに効いているだが、決定打ではない。
モフちゃんを抱き締めたまま、ノエルは前進する。
おびえるレッサーベア達、何もしていないエドモント、ブロックが役立たない俺。
だが、次の瞬間、奇跡が起きた。
モフちゃんが大きくなった。
「「え?」」
俺とエドモントが呆気にとられているのをよそに、大きくなったモフちゃんは体全体を使ってノエルを包むように抱き締めた。
「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフ天国!」「天国!」「国!」
天国と連呼するノエル。
やがて天国と連呼していたノエルの声が聞こえなくなり、モフちゃんは元のサイズに戻った。
俺と安全だと判断したのか?エドモントがモフちゃんも
「モフちゃん。大丈夫か!」
「モフちゃんさん。ソレはどうしたんですか?」
見ればモフちゃんの胸からお腹にかけて、血がついていた。
「モフちゃん!まさかノエルのせいで怪我を……ノエル!お前何考えている……」
俺がノエルに対して怒りをぶつけようとするが、すぐさま否定するモフちゃん。
ノエルの方を見れば、ノエルは恍惚した表情で鼻血を流していた。
「……モフちゃん。もしかしてソレはノエルの返り血ならぬ返り鼻血がついただけなのか?」
首を縦に振り、すぐさま肯定するモフちゃん。
俺とエドモントは緊張の糸が切れて、ズッコケた。
「はた迷惑な勇者(見習い)だ!」
「確かにこんなのが勇者(見習い)じゃ、世も末ですね!」
俺達はこの後、鼻血を垂れ流すノエルの手当てや、鼻血がついたモフちゃんの洗浄に追われることになるのだった。
勇者に覚醒したモフちゃんと共に、次の国へ向かう為に国境に向かったシンタローたちだったが……。
うっそうと茂る森の中を俺達は歩いていた。
「あのシンタローさん?」
「なんだ?エドモント」
「なんで我々はこんな森の中を歩いているんですか?」
「モフちゃんが先頭を歩いているからだ!」
「そうだよ。エドモントは物忘れが激しいね!」
「ノエルさん!私が言いたいのは、なんでモフちゃんさんの暴走を止めないのか、シンタローさんに聞いているんです」
「そこで漫才しているなら、置いて行くぞ!」
そう言って俺は、モフちゃんを見つめた。
モフちゃんは相変わらず、俺の作った冠とマントを装備している。
そして、その表情はどこか嬉しそうだった。
数時間前に俺達は国境に向かってサバイバルカーを走らせていたのだが、突然モフちゃんが興奮状態に陥り、車を停止したら、外に出てこの森に入っていた。
俺達はそんなモフちゃんを追いかける形で森に入って今の状態にある。
「シンタローさん!森の奥が光っていますよ!」
「やっと森を抜けるようだな!」
「あ、モフちゃんの足が速くなった!」
俺達はモフちゃんに合わせて森を抜けた。
森を抜けた先には村があった。
ただし、そこは人の村ではなく、レッサーベアの村だった。
「もしかしてここが、モフちゃんの故郷?」
「シンタローさん!これはすごいですよ!」
「エドモント!そんなに興奮して、何がすごいんだ?」
「長年のレッサーベアに関する生態系の謎が解き明かされたんですよ。これを学会で発表すれば歴史に名が残ります」
「そんなにすごいことなのか?」
「ええ、レッサーベアが独自の文化を持っているかもしれないと、長い年月議論されてきましたが、一気に解決したんですよ。やはりレッサーベアは高い知能を持った生き物でした」
「それ、モフちゃんを見ていたら、わかることじゃないのか?」
モフちゃんは俺たちの言葉を理解しているし、ノエルの世話や道具も使いこなしているのを俺達は見ている。
「いいえ、モフちゃんさんだけ特別(勇者)なのかもしれなかったので、ここにいるレッサーベア達によって立証されました!」
俺はエドモントの興奮を理解することはするよりも、モフちゃんがどこに行ったのか?辺りを見回した。
すぐに見つかった。
俺の作った勇者装備をしたまま、モフちゃんよりも一回り大きな二匹のレッサーベアに抱きしめられている。
「もしかしてモフちゃんの両親か?」
「感動の再開ですね!」
その光景を見ていた周りのレッサーベアも「よかったね」という鳴き声を上げていた。
しかし、一つの疑問が浮かんだ。
「エドモント!」
「なんですか?シンタローさん」
「ノエルはどうしたんだ?」
「そういえば、やけに静かですね?」
モフモフを愛してやまないノエルが静かなのはおかしいと思った俺達は振り向くと、ノエルはそこにいた。
しかし目が血走っていた。
「ノエル!落ち着け!!」
俺の大声と共にレッサーベアたちは一斉に俺たちの方向を見た。
レッサーベア達は本能的に危険を察知し、俺の後ろに全員が隠れた。
そう全員が隠れた。
「何で?エドモントまで俺の後ろに隠れるんだ!しかも一番後ろに!」
「だって、ノエルさんが怖いんですよ!」
「お前が襲われる心配ないだろうが、少しはレッサーベア達を見習え!」
レッサーベアたちは大人が前に出て、子供を後ろに隠し、子供達は自分たちより年下の子たちを守るように並んでいた。
「モ……フ……モ……フ……!」
ノエルはゾンビのような足取りで、両手はワキワキと動かしている。
完全に危ない人だ。
「ノエル!やめろ!」
俺はレッサーベアに向かってくるノエルを体を張って止めるがノエルはそのまま前進を止めない。
「ノエル!落ち着け、それでも勇者(見習い)か!」
「モ……フ……」
俺の説得の言葉をノエルは全く聞いていない。
「シンタローさん!今のノエルさんはレッサーベア達をモフモフすることしか頭にありません!」
「つまり、ノエルの暴走を止めるにはレッサーベア達を犠牲にするしかないのか?」
レッサーベアの大人たちは怯えながら、スクラムを組み、子供を守るように固まっていたが、一匹だけ、俺たちの方向へ飛び出した。
「「モフちゃん(さん)!」」
モフちゃんは俺の体をよじ登り、ノエルの顔面にモフモフした尻尾を当てた。
「モフモフ!!」
効果は抜群。
ノエルに効いているだが、決定打ではない。
モフちゃんを抱き締めたまま、ノエルは前進する。
おびえるレッサーベア達、何もしていないエドモント、ブロックが役立たない俺。
だが、次の瞬間、奇跡が起きた。
モフちゃんが大きくなった。
「「え?」」
俺とエドモントが呆気にとられているのをよそに、大きくなったモフちゃんは体全体を使ってノエルを包むように抱き締めた。
「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフモフ天国!」「モフ天国!」「天国!」「国!」
天国と連呼するノエル。
やがて天国と連呼していたノエルの声が聞こえなくなり、モフちゃんは元のサイズに戻った。
俺と安全だと判断したのか?エドモントがモフちゃんも
「モフちゃん。大丈夫か!」
「モフちゃんさん。ソレはどうしたんですか?」
見ればモフちゃんの胸からお腹にかけて、血がついていた。
「モフちゃん!まさかノエルのせいで怪我を……ノエル!お前何考えている……」
俺がノエルに対して怒りをぶつけようとするが、すぐさま否定するモフちゃん。
ノエルの方を見れば、ノエルは恍惚した表情で鼻血を流していた。
「……モフちゃん。もしかしてソレはノエルの返り血ならぬ返り鼻血がついただけなのか?」
首を縦に振り、すぐさま肯定するモフちゃん。
俺とエドモントは緊張の糸が切れて、ズッコケた。
「はた迷惑な勇者(見習い)だ!」
「確かにこんなのが勇者(見習い)じゃ、世も末ですね!」
俺達はこの後、鼻血を垂れ流すノエルの手当てや、鼻血がついたモフちゃんの洗浄に追われることになるのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クビになったアイツ、幼女になったらしい
東山統星
ファンタジー
簡単説明→追放されたから飯に困って果物食ったら幼女になった。しかもかなり強くなったっぽい。
ひとりの不運なナイスガイがいた。彼はラークという名前で、つい最近賞金首狩り組織をクビになったのである。そしてなんの因果か、あしたの飯に困ったラークは美味しそうなりんごを口にして、なんと金髪緑目の幼女になってしまった。
しかしラークにとって、これは新たなるチャンスでもあった。幼女になったことで魔術の腕が爆発的に飛躍し、陰謀とチャンスが眠る都市国家にて、成り上がりを果たす機会を与えられたのだ。
これは、『魔術と技術の国』ロスト・エンジェルスにて、ラークとその仲間たち、そしてラークの恋人たちが生き残りと成り上がりを懸けて挑み続ける物語である。
*表紙はAI作成です。
*他サイトにも載ってるよ
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる