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第一章 勇者誕生
第十三話 隠蔽工作
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前回までのあらすじ
勇者になりたくないモフちゃん。
モフちゃんが勇者であることを隠そうとしたシンタロー。
しかし、エドモントの発言によってそれは根底から覆されることなった。
俺は混乱していた。
モフちゃんも混乱していた。
エドモントも空気を読んで混乱していた。
「エドモント!お前アンデッドだから混乱はしないだろうが!」
皮肉にもエドモントが混乱したことにツッコミを入れる形で、俺は冷静さを取り戻した。
「エドモント!さっきの話は本当なのか?」
「本当です!私がアンデッドになる前からあったシステムですから、勇者ボードが壊れていない限り、まだある筈です」
「その勇者ボードが壊れて、機能していない可能性は……」
「限りなく、ないと思われます。勇者ボードは私がアンデッドになる前からある程度大きな町に名前だけは書かれている簡易版が存在しました。シンタローさんが冤罪で捕まったあの町にも存在していましたから、まだ現役中だと思われます」
「最後の望みが潰えた!」
「それにシンタローさん!」
「なんだ?エドモント!」
「ノエルさんにはどう説明するんですか?今は魔法で眠っていますが、いずれ目を覚まして、何があったか?聞いてくるのは明白ですよ!」
「それなら、考えがある!全て夢だったことにすればいいだけさ!」
「夢ですか?しかしあの崩壊した城の残骸がある以上は夢だったと誤魔化すことは無理がありますよ!」
「心配ない!ちゃんと策はある。勇者になりたくないモフちゃんの為にも俺達は勇者見習ノエルのパーティーでなくてはならないんだ!」
早速俺はモフちゃんの為に行動を開始した。
夕方。
俺は晩飯の支度をしていた。
「アレ?シンタロー。魔王はどこ?」
毛布にくるまっていたノエルがやっと起きてきた。
「ノエル?何寝ぼけたことを言っているんだ?」
「だって、ボクたち魔王を倒す為に魔王の城に乗り込んで……アレ?」
「全く夢でも見ていたんだろう。ここには魔王も魔王の城もなかった。情報はデマだったんだ」
「そんなことないよ!あの小高い山に魔王の城が……アレ?」
ノエルが指さした方向の山には城はなかった。
「シンタローさん!なんですか?その料理はすごくスパイシーな匂いで食欲を刺激しているんですが?」
「カレーだ!ごはんもちょうど出来上がったから食べよう。ノエルもいつまでも山の方を向いているんだ!晩飯いらないのか?」
「いる!!」
こうして俺達はカレーライスを食べた。
「シンタロー!これ!おいしいね!おかわり!」
「シンタローさん!私もおかわりお願いします!」
「また、このパターンか!」
「キュ!!」
こうして俺は二羽のヒナの為にレトルトご飯を温めることになる。
その光景をモフちゃんは呆れた表情で見ていた。
深夜。
俺は焚火の前で寝ずの番をした。
モフちゃんとノエルは夢の中で、エドモントはというと…………。
「シ、シンタローさん。くるしいです!」
「だから、食いすぎだと言ったんだ!」
エドモントは通常の倍はでかくなっていた。
「しかし、食いすぎで腹が膨れることはあるが、エドモントの場合は食いすぎで骨そのものが膨れるって、どういう構造になっているんだ!」
「アンデッドですから!」
「絶対に嘘だから、全てのアンデッドに謝れ!」
おれはあきれ果てながら、焚火に適当に切った枯れ木を入れる。
「しかし、シンタローさんのストレージという能力はすごいですね。あの城を一瞬で消すなんて!」
そう俺は隠蔽工作のために魔王の城をストレージに入れたのだった。
ストレージに入れた魔王の城はすぐに売却。
城としては売れなかったが、建築資材の石材として売却できた。
「ちなみに今晩のカレーは魔王の城を売却したポイントで作ったものだ!」
「ある意味で世界で一番高い料理だったんですね!」
「違う意味では確かにそうだな」
「しかし、これからどうするんですか?モフちゃんの事!」
「本人が勇者になるのを嫌がっているんだ。無理強いさせるわけにもいかないだろう」
「しかし、勇者と魔王は磁石のようにひかれあう運命なんですよ。仮にうまくごまかしたとしても、勘のいい権力者たちは気づくかもしれませんし……」
「だから、そいつらの目を欺く為にある物を作っているんだ!」
そう言って、俺はエドモントに冠とマントを見せた。
「なんですかそれは?」
「俺が作った勇者の冠とマントだ。冠は木製、布は防水加工などを施している」
「そんなもので誤魔化せるんですか?」
「策はやり方次第さ」
朝。
俺は早速、昨夜作った冠とマントをモフちゃんに装備させた。
「似合っているぞ!モフちゃん!」
「キュル!!」
モフちゃんもうれしいのか、色々なポーズをきめている。
「わ!ボクと一緒の冠とマントだ!」
「昨夜、誰かさんが夢の中にいる間に退屈しのぎに作ってみた!」
「そうなんだ!ボクと一緒だね!モフちゃん!」
そう言ってノエルはモフちゃんをモフモフしていた。
「遠回しのイヤミもスルーか!どうだエドモント!」
「シンタローさん!コレがシンタローさんが言っていた策なんですか?」
「そうだ!」
「しかし、これではモフちゃんさんが勇者ですよと宣伝しているようなものでないですか!」
「本物にとって偽物になるのは朝飯前さ!」
「どういう意味ですか?それ!」
「わざとモフちゃんに勇者のような格好をさせるのさ!ノエルと同じ冠とマントをしていれば、パーティーのマスコットにしか見えない。相手もまさかマスコットの方が勇者とは思わないし、何よりエドモントが教えてくれた勇者規定に違反もしない」
「そうですか?しかしうまくいきますかね?」
「俺の元いた世界の喜劇王チャップリンは自分のそっくりさんの大会に偽名で出場して、みごと三位入賞した前例があるから、よほど疑り深い奴じゃない限り大丈夫さ」
「自分のそっくりさんで三位とは妙にすごいですね!」
「それじゃあ、朝飯食ったら、今日中に国境を越える!」
「朝ごはんはなんですか?」
「昨日の残りのカレーだ!」
こうして俺達は国境に向かってサバイバルカーを走らせるのだった。
勇者になりたくないモフちゃん。
モフちゃんが勇者であることを隠そうとしたシンタロー。
しかし、エドモントの発言によってそれは根底から覆されることなった。
俺は混乱していた。
モフちゃんも混乱していた。
エドモントも空気を読んで混乱していた。
「エドモント!お前アンデッドだから混乱はしないだろうが!」
皮肉にもエドモントが混乱したことにツッコミを入れる形で、俺は冷静さを取り戻した。
「エドモント!さっきの話は本当なのか?」
「本当です!私がアンデッドになる前からあったシステムですから、勇者ボードが壊れていない限り、まだある筈です」
「その勇者ボードが壊れて、機能していない可能性は……」
「限りなく、ないと思われます。勇者ボードは私がアンデッドになる前からある程度大きな町に名前だけは書かれている簡易版が存在しました。シンタローさんが冤罪で捕まったあの町にも存在していましたから、まだ現役中だと思われます」
「最後の望みが潰えた!」
「それにシンタローさん!」
「なんだ?エドモント!」
「ノエルさんにはどう説明するんですか?今は魔法で眠っていますが、いずれ目を覚まして、何があったか?聞いてくるのは明白ですよ!」
「それなら、考えがある!全て夢だったことにすればいいだけさ!」
「夢ですか?しかしあの崩壊した城の残骸がある以上は夢だったと誤魔化すことは無理がありますよ!」
「心配ない!ちゃんと策はある。勇者になりたくないモフちゃんの為にも俺達は勇者見習ノエルのパーティーでなくてはならないんだ!」
早速俺はモフちゃんの為に行動を開始した。
夕方。
俺は晩飯の支度をしていた。
「アレ?シンタロー。魔王はどこ?」
毛布にくるまっていたノエルがやっと起きてきた。
「ノエル?何寝ぼけたことを言っているんだ?」
「だって、ボクたち魔王を倒す為に魔王の城に乗り込んで……アレ?」
「全く夢でも見ていたんだろう。ここには魔王も魔王の城もなかった。情報はデマだったんだ」
「そんなことないよ!あの小高い山に魔王の城が……アレ?」
ノエルが指さした方向の山には城はなかった。
「シンタローさん!なんですか?その料理はすごくスパイシーな匂いで食欲を刺激しているんですが?」
「カレーだ!ごはんもちょうど出来上がったから食べよう。ノエルもいつまでも山の方を向いているんだ!晩飯いらないのか?」
「いる!!」
こうして俺達はカレーライスを食べた。
「シンタロー!これ!おいしいね!おかわり!」
「シンタローさん!私もおかわりお願いします!」
「また、このパターンか!」
「キュ!!」
こうして俺は二羽のヒナの為にレトルトご飯を温めることになる。
その光景をモフちゃんは呆れた表情で見ていた。
深夜。
俺は焚火の前で寝ずの番をした。
モフちゃんとノエルは夢の中で、エドモントはというと…………。
「シ、シンタローさん。くるしいです!」
「だから、食いすぎだと言ったんだ!」
エドモントは通常の倍はでかくなっていた。
「しかし、食いすぎで腹が膨れることはあるが、エドモントの場合は食いすぎで骨そのものが膨れるって、どういう構造になっているんだ!」
「アンデッドですから!」
「絶対に嘘だから、全てのアンデッドに謝れ!」
おれはあきれ果てながら、焚火に適当に切った枯れ木を入れる。
「しかし、シンタローさんのストレージという能力はすごいですね。あの城を一瞬で消すなんて!」
そう俺は隠蔽工作のために魔王の城をストレージに入れたのだった。
ストレージに入れた魔王の城はすぐに売却。
城としては売れなかったが、建築資材の石材として売却できた。
「ちなみに今晩のカレーは魔王の城を売却したポイントで作ったものだ!」
「ある意味で世界で一番高い料理だったんですね!」
「違う意味では確かにそうだな」
「しかし、これからどうするんですか?モフちゃんの事!」
「本人が勇者になるのを嫌がっているんだ。無理強いさせるわけにもいかないだろう」
「しかし、勇者と魔王は磁石のようにひかれあう運命なんですよ。仮にうまくごまかしたとしても、勘のいい権力者たちは気づくかもしれませんし……」
「だから、そいつらの目を欺く為にある物を作っているんだ!」
そう言って、俺はエドモントに冠とマントを見せた。
「なんですかそれは?」
「俺が作った勇者の冠とマントだ。冠は木製、布は防水加工などを施している」
「そんなもので誤魔化せるんですか?」
「策はやり方次第さ」
朝。
俺は早速、昨夜作った冠とマントをモフちゃんに装備させた。
「似合っているぞ!モフちゃん!」
「キュル!!」
モフちゃんもうれしいのか、色々なポーズをきめている。
「わ!ボクと一緒の冠とマントだ!」
「昨夜、誰かさんが夢の中にいる間に退屈しのぎに作ってみた!」
「そうなんだ!ボクと一緒だね!モフちゃん!」
そう言ってノエルはモフちゃんをモフモフしていた。
「遠回しのイヤミもスルーか!どうだエドモント!」
「シンタローさん!コレがシンタローさんが言っていた策なんですか?」
「そうだ!」
「しかし、これではモフちゃんさんが勇者ですよと宣伝しているようなものでないですか!」
「本物にとって偽物になるのは朝飯前さ!」
「どういう意味ですか?それ!」
「わざとモフちゃんに勇者のような格好をさせるのさ!ノエルと同じ冠とマントをしていれば、パーティーのマスコットにしか見えない。相手もまさかマスコットの方が勇者とは思わないし、何よりエドモントが教えてくれた勇者規定に違反もしない」
「そうですか?しかしうまくいきますかね?」
「俺の元いた世界の喜劇王チャップリンは自分のそっくりさんの大会に偽名で出場して、みごと三位入賞した前例があるから、よほど疑り深い奴じゃない限り大丈夫さ」
「自分のそっくりさんで三位とは妙にすごいですね!」
「それじゃあ、朝飯食ったら、今日中に国境を越える!」
「朝ごはんはなんですか?」
「昨日の残りのカレーだ!」
こうして俺達は国境に向かってサバイバルカーを走らせるのだった。
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