異世界でクライムアクション―噛み合わない争い―

第一章 勇者誕生

第十話 魔王との決戦

前回までのあらすじ
無意味に魔王テラノドンを怒らせたシンタロー、エドモント、モフちゃん。
このヘンテコパーティーで魔王を倒せるのだろうか？

　魔王城　玉座の間
　魔王テラノドンは息を切らしながら、こちらを見つめていた。
「シンタローさん。魔王が戦ってもいないのに息切れしていますが、どうしてあんなに怒っているんですか？」
「…………」
　俺はエドモントの鈍さに何も言えずに苦笑いを浮かべた。
「貴様ら！そんなに呑気に話をしている場合か？勇者はわしの魔法によって眠っているのだぞ！」
　そう言われて、俺達はノエルの方を見た。
「Zzzzz」
　魔王テラノドンの言うとおり、ノエルは寝ていた。
「残念だったな！勇者が寝てしまっては、攻撃する術はあるまい。それに逃げることもできない。勇者は魔王から逃げることは出来ないのだぞ！ははは！」
　俺達は素早く行動した。
　ストレージから敷布団と毛布を出して、エドモントとモフちゃんに渡し、俺はノエルをお姫様だっこして、部屋の隅に移動。
　その間に、エドモントが敷布団を敷き、俺はその上にノエルを寝かせ、モフちゃんが毛布をノエルに掛け、ノエルの肩を前足でポンポンと叩いた。
「これで一安心！」
「そうですね！」
「キュル！」
　俺達の行動を見た魔王テラノドンは怒りを通り越してあきれていた。
「何だ！お前らは赤ん坊を寝かしつけた母親か？」
　魔王テラノドンはツッコミ役に転職していた。
「エドモント、モフちゃん。ここからが正念場だ。ノエルが起きるまで時間を稼ぐぞ！」
「シンタローさん！時間を稼ぐと言って策はあるんですか？」
「ある！」
　そう言って俺は、ストレージから勇者の剣を取り出した。
「シンタローさん！それは何ですか?剣のようですが剣先に石がついていますよ！」
「コラ!!わしを無視するな！わしは魔王なんだぞ！お前ら真面目に魔王戦をやるつもりがあるのか？」
　エドモントの質問に答えるよりも速く魔王が叫び声と共に玉座から立ち上がった。
「貴様らの……貴様らのせいで、わしの部下であるサンダーサイエンスは、サンダーサイエンスは……」
　魔王テラノドンは怒りに身を震わせていた。
「サンダーサイエンスはオカマバーに転職したんだぞ！」
「「「誰（キュ）？」」」
　ズドン！
　俺達の返答に魔王テラノドンはコケたが、すぐに立ち上がった。
「資金調達の為に騎馬盗賊に化けたサンダーサイエンスを戦闘不能にしたの貴様らだろうが！忘れたとは言わせん！」
「あ（キュ）！」
　その言葉を聞いて俺とモフちゃんは思い出したが、「シンタローさん！あの魔王は何を言っているんだすか？」とエドモントは忘れていた。
「エドモントとノエルが蜂蜜を落とした原因を作った馬ことを言っているんだよ」
「ああ、あの時のノエルさんが怒り任せに頭を剣で叩いた馬！あの馬の上司なら蜂蜜を弁償してください！」
「エドモント……まだ蜂蜜をあきらめていなかったのか？」
　俺のツッコミを無視して蜂蜜を弁償しろと要求するエドモントに魔王テラノドンは目が点になっていた。