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第一章 勇者誕生
第七話 朝ごはんは仁義なき戦い?
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「なんとか間に合ったようだな」
「間に合いましたね」
東の空に朝日が顔を出す頃、俺達は宿屋に到着した。
エドモントには部屋に戻ってもらい、俺は芸術家の変装を施して、すでに起きて朝の準備をしている宿屋の亭主に多額の金銭を払って厨房を使わせてもらい、料理を開始した。
朝ごはんのメニューはデミグラスソースをかけたハンバーグとスープ・パン付き。
ハンバーグのいい匂いがする頃にエドモントとモフちゃんが寝ぼけ眼のノエルを連れて来た。
あとは朝ごはんを食べるだけであったが、一つ大きな問題が起きた。
「シンタローさん。あの……」
「エドモント!いまは食事に集中しろ!」
「でも……こんな状況で食べるのはちょっと!」
「なんだ。朝から肉は苦手か?」
「いえ、むしろ大歓迎ですが……周りが」
「料理が冷めるから、そんなこと気にせず食べろ!」
なぜエドモントとこんな会話になっているかと言うと、俺達のテーブルの周りを見つめている人たちがいるからだ。
彼らが何を考えているのか言わなくてもわかる。
「食いたい」と目が言っている上に、口からよだれをたらしている。
ちなみに彼らの思いに気づいているのは、俺とエドモントだけだ。
ノエルはまだ寝ぼけているし、モフちゃんはそんなノエルをかいがいしく世話して、サイコロ状にしたハンバーグをフォークを使ってノエルの口に運んでいる。
ノエルは口を開くだけ。本当こいつは勇者(見習い)か?
「戦闘以外本当に使えない勇者だな!」
「シンタローさん!モフちゃんさんをノエルさんに取られて嫉妬する気持ちはわかりますが、今はこの状況をどうにかする方が先決なのではないですか?」
「残念ながら、この状況を打破する手段はない。なぜなら材料がないからだ」
俺の一言に周りは一気に落ち込んだ。
「なんだ!まるでこの世の終わりみたいな落ち込み方は?」
「当たり前ですよシンタローさん。あれだけいい匂いを振りまして、食べれないとわかったら落ち込んで当然ですよ」
「じゃあ、エドモントの分を落ち込んでいる連中にやるか?」
「いただきます!」
速攻でエドモントはハンバーグを食べ始め、周りは再度落ち込んだ。
「エドモントって、相手の気持ちを上げて一気に落とすのがうまいな!?」
俺達は食事を楽しんだが、周りの客はハンバーグを一つ食べるたびに絶望の声が上げていき、厨房では宿屋の亭主が女将さんに「なんで味を盗まなかったの」と怒られていた。
周りの絶望の声を聞きながら、俺達は朝ごはんを食べた。
食事が終わり、俺達はすぐにその足で町を出た。
「シンタローさん。表情がさっきから変ですよ」
「アレが手に入るからだ」
「シンタロー。アレって?」
「アレのことを知っているのはモフちゃんだけだからエドモントとノエルがしらないのも無理はない」
「そうなの?モフちゃん」
「そうなんですか?モフちゃんさん」
モフちゃんはノエルとエドモントに渾身のドヤ顔で「フンス」と鳴いた。
「二人にもすぐに教えるよ。ただし人目の使いない場所に移動してからだ」
そういって、俺達は誰もいない原っぱにやって来た。
「それじゃあ、ポイントを払って、手に入れるぞ」
何もない原っぱで俺は芸術家の変装を解いて、ポイントと使って、それは現れた。
「シンタロー、これって?」
「シンタローさんのアレがこれなんですか?」
「そうだ!」
「フンス!」
ドヤ顔する俺に合わせてモフちゃんも同じ表情になったが、そんなことおかまいなしにノエルとエドモントはツッコミをいれた。
「「馬車!!」」
二人の的外れな答えに俺はコケた。
「シンタローが欲しかったのって、この変な馬車なの?」
「シンタローさん。馬車はともかく牽引する動物はどうするんですか?」
「二人とも、これは馬車ではない自動車と呼ばれる乗り物だ。俺の国(世界)ではごく当たり前の乗り物だ」
「でも、馬車を引っ張る馬がいないよ」
「ノエルさん!馬車を引っ張るのは馬とはかぎりませんよ」
「そっか、エドモントは賢いね」
「いや、それほどでも」
「エドモント!そこ照れるところじゃない。百聞は一見にしかずだ。とりあえずコレ乗ってくれ」
ノエルとエドモントのボケにツッコミを入れた俺は、早速手に入れた車に乗り込む。
運転席に俺、助手席にエドモント、後部にノエルとモフちゃんを乗せた。
「じゃあ、出発するぞ」
そう言って車を走らせたが、すぐに後悔することになった。
「シンタロー!馬が引っ張っていないのに速い、速い!」
「シ、シンタローさん。これはなんて乗り物ですか?空飛ぶ卵もすごかったですけど、これはこれですごいですよ!」
「キュイキュイ」
初めて車に乗ったとはいえ、ノエル、エドモント、モフちゃんはまるでクリスマスプレゼントをもらった子供のようにはしゃぎまくっていた。
「三人とも興奮するのはわかるけど、もうちょっと静かにしてくれないか!」
こうして俺は、この世界の足と住居になるサバイバルカーを手に入れた。
「それじゃあ、一気に魔王の城まで行くぞ!」
はしゃぎまくる三人によって若干の後悔を胸にしまいこんで、俺は車を加速させた。
○
シンタローたちがドライブを楽しんでいる頃、魔王の城では三人の四天王たちが重大な会議をしていた。
魔王の城は陸の孤島と言うべき場所にあった。
「なあ、この城なんだけど、不便じゃないか?」
「ああ、どおりで安いと思ったんだ!この物件」
「失敗だったな!」
三人の四天王はため息をもらしながらも、議題に入った。
「資金調達係のサンダーサイエンスが倒されたのは本当か?」
「本当だ!!」
「ふふふ、だがサンダーサイエンスは我ら四天王の中では最……………………強」
一斉に頭を抱える三人の四天王。
「どうするんだ?我々の中で一番の武闘派であるサンダーサイエンスがいなくなったんだぞ!」
「勇者がいない国だから楽勝だと思ったのに」
「ワシらのような中小魔王軍は勇者がいない国を攻める以外方法ないのに何でこうなったんだ!」
混乱する四天王たちであったが、沈静化する暇もなく使い魔から「まもなく勇者が到着します」と言う一報を聞いてますます混乱に拍車がかかるのだった。
「間に合いましたね」
東の空に朝日が顔を出す頃、俺達は宿屋に到着した。
エドモントには部屋に戻ってもらい、俺は芸術家の変装を施して、すでに起きて朝の準備をしている宿屋の亭主に多額の金銭を払って厨房を使わせてもらい、料理を開始した。
朝ごはんのメニューはデミグラスソースをかけたハンバーグとスープ・パン付き。
ハンバーグのいい匂いがする頃にエドモントとモフちゃんが寝ぼけ眼のノエルを連れて来た。
あとは朝ごはんを食べるだけであったが、一つ大きな問題が起きた。
「シンタローさん。あの……」
「エドモント!いまは食事に集中しろ!」
「でも……こんな状況で食べるのはちょっと!」
「なんだ。朝から肉は苦手か?」
「いえ、むしろ大歓迎ですが……周りが」
「料理が冷めるから、そんなこと気にせず食べろ!」
なぜエドモントとこんな会話になっているかと言うと、俺達のテーブルの周りを見つめている人たちがいるからだ。
彼らが何を考えているのか言わなくてもわかる。
「食いたい」と目が言っている上に、口からよだれをたらしている。
ちなみに彼らの思いに気づいているのは、俺とエドモントだけだ。
ノエルはまだ寝ぼけているし、モフちゃんはそんなノエルをかいがいしく世話して、サイコロ状にしたハンバーグをフォークを使ってノエルの口に運んでいる。
ノエルは口を開くだけ。本当こいつは勇者(見習い)か?
「戦闘以外本当に使えない勇者だな!」
「シンタローさん!モフちゃんさんをノエルさんに取られて嫉妬する気持ちはわかりますが、今はこの状況をどうにかする方が先決なのではないですか?」
「残念ながら、この状況を打破する手段はない。なぜなら材料がないからだ」
俺の一言に周りは一気に落ち込んだ。
「なんだ!まるでこの世の終わりみたいな落ち込み方は?」
「当たり前ですよシンタローさん。あれだけいい匂いを振りまして、食べれないとわかったら落ち込んで当然ですよ」
「じゃあ、エドモントの分を落ち込んでいる連中にやるか?」
「いただきます!」
速攻でエドモントはハンバーグを食べ始め、周りは再度落ち込んだ。
「エドモントって、相手の気持ちを上げて一気に落とすのがうまいな!?」
俺達は食事を楽しんだが、周りの客はハンバーグを一つ食べるたびに絶望の声が上げていき、厨房では宿屋の亭主が女将さんに「なんで味を盗まなかったの」と怒られていた。
周りの絶望の声を聞きながら、俺達は朝ごはんを食べた。
食事が終わり、俺達はすぐにその足で町を出た。
「シンタローさん。表情がさっきから変ですよ」
「アレが手に入るからだ」
「シンタロー。アレって?」
「アレのことを知っているのはモフちゃんだけだからエドモントとノエルがしらないのも無理はない」
「そうなの?モフちゃん」
「そうなんですか?モフちゃんさん」
モフちゃんはノエルとエドモントに渾身のドヤ顔で「フンス」と鳴いた。
「二人にもすぐに教えるよ。ただし人目の使いない場所に移動してからだ」
そういって、俺達は誰もいない原っぱにやって来た。
「それじゃあ、ポイントを払って、手に入れるぞ」
何もない原っぱで俺は芸術家の変装を解いて、ポイントと使って、それは現れた。
「シンタロー、これって?」
「シンタローさんのアレがこれなんですか?」
「そうだ!」
「フンス!」
ドヤ顔する俺に合わせてモフちゃんも同じ表情になったが、そんなことおかまいなしにノエルとエドモントはツッコミをいれた。
「「馬車!!」」
二人の的外れな答えに俺はコケた。
「シンタローが欲しかったのって、この変な馬車なの?」
「シンタローさん。馬車はともかく牽引する動物はどうするんですか?」
「二人とも、これは馬車ではない自動車と呼ばれる乗り物だ。俺の国(世界)ではごく当たり前の乗り物だ」
「でも、馬車を引っ張る馬がいないよ」
「ノエルさん!馬車を引っ張るのは馬とはかぎりませんよ」
「そっか、エドモントは賢いね」
「いや、それほどでも」
「エドモント!そこ照れるところじゃない。百聞は一見にしかずだ。とりあえずコレ乗ってくれ」
ノエルとエドモントのボケにツッコミを入れた俺は、早速手に入れた車に乗り込む。
運転席に俺、助手席にエドモント、後部にノエルとモフちゃんを乗せた。
「じゃあ、出発するぞ」
そう言って車を走らせたが、すぐに後悔することになった。
「シンタロー!馬が引っ張っていないのに速い、速い!」
「シ、シンタローさん。これはなんて乗り物ですか?空飛ぶ卵もすごかったですけど、これはこれですごいですよ!」
「キュイキュイ」
初めて車に乗ったとはいえ、ノエル、エドモント、モフちゃんはまるでクリスマスプレゼントをもらった子供のようにはしゃぎまくっていた。
「三人とも興奮するのはわかるけど、もうちょっと静かにしてくれないか!」
こうして俺は、この世界の足と住居になるサバイバルカーを手に入れた。
「それじゃあ、一気に魔王の城まで行くぞ!」
はしゃぎまくる三人によって若干の後悔を胸にしまいこんで、俺は車を加速させた。
○
シンタローたちがドライブを楽しんでいる頃、魔王の城では三人の四天王たちが重大な会議をしていた。
魔王の城は陸の孤島と言うべき場所にあった。
「なあ、この城なんだけど、不便じゃないか?」
「ああ、どおりで安いと思ったんだ!この物件」
「失敗だったな!」
三人の四天王はため息をもらしながらも、議題に入った。
「資金調達係のサンダーサイエンスが倒されたのは本当か?」
「本当だ!!」
「ふふふ、だがサンダーサイエンスは我ら四天王の中では最……………………強」
一斉に頭を抱える三人の四天王。
「どうするんだ?我々の中で一番の武闘派であるサンダーサイエンスがいなくなったんだぞ!」
「勇者がいない国だから楽勝だと思ったのに」
「ワシらのような中小魔王軍は勇者がいない国を攻める以外方法ないのに何でこうなったんだ!」
混乱する四天王たちであったが、沈静化する暇もなく使い魔から「まもなく勇者が到着します」と言う一報を聞いてますます混乱に拍車がかかるのだった。
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