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第一章 勇者誕生

第四話 S&E屋根を走る。

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 深夜。俺とエドモントは、屋根伝いに走っていた。
 目的地はエドモントの古い知合いであるユウチャックの屋敷だ。
 ちなみにモフちゃんはノエルを寝かしつけるために抱き枕になってもらった。
「シンタローさん。待ってください」
「遅いぞ。エドモント」
「そんなこと言ってもお腹が重くて!」
「だから、食いすぎだと言ったんだ!むしろ胃もないアンデッドなのにお腹が重くなるなんてありえるのか?」
「いや、面目ない」(照)
「そこ、照れるところじゃない!!」
「それよりもシンタローさん!その格好なんとかなりませんか?」
「これのどこが変だと言うんだ!」
「全てにおいて変ですよ!なんで、猫になっているんですか?」
 エドモントの言うとおり、俺は黒い猫の着ぐるみを着ていた。
「しょうがないだろう!俺は一応脱獄犯だからな顔がばれると困る。それにこの姿なら、いざとなれば猫のフリをすれば怪しまれないだろう」
「そ、そうなんですか?私には新種のモンスターが町に現れたように見えるのですが!」
「……」
 エドモントのツッコミを俺は無言でスルーして、ユウチャックの屋敷に向かった。

「ここがユウチャックの屋敷か?」(小声)
「ええ、そうですよ!」(小声)
 俺達はユウチャックの屋敷に着いたが忍びこむことを躊躇していた。なぜなら……。
「なんで一番上の屋根の窓が開いているんだ?」(小声)
「なぜでしょうね?まるでここから入ってくれって言わんばかりに開いていますね!」(小声)
「ここまで露骨だと罠のような気がするんだが……」(小声)
「ですが、私の魔法もシンタローさんのステルスもここじゃ役に立ちませんよ」(小声)
「わかっている。探知系魔道具がそこいらにあるからな」(小声)
 俺のステルスは相手が認識できないだけで、魔道具などにはその効力がないのはエドモントの実験で立証済みだ。
 もっとも技能のレベルが上がれば話は違うのかもしれないが、今はないものねだりだ。
「仕方がない。ここから入るぞ!罠ならぶち破るまでだ!」(小声)
「わかりました」(小声)
 俺達は開いている窓から屋敷に侵入した。
 当然罠は…………なかった!
「簡単に入れたな!」(小声)
「そうですね!やはり閉め忘れですかね?」(小声)
「あれだけ屋敷の周りを防犯グッズで固めた家の住人がそんなヒューマンミスを起こすとは思えないが?とりあえず屋敷内の探知系魔道具の有無とユウチャックがどこにいるが調べてくれエドモント」(小声)
「わかりました。探知(サーチ)!」(小声)
 エドモントの魔法によって屋敷内に探知魔道具がないことを確認した俺達はユウチャックのいる場所へ向かった。
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