上 下
35 / 51
番外編

シンタローのサンタクロース

しおりを挟む
 とある宿屋の一室。
 俺は膝の上でモフちゃんをブラッシングしていた。
 やがてブラッシングの心地よさにモフちゃんは寝てしまい、俺は寝床にモフちゃんを静かに置いて、着替え始めた。
 その様子に疑問を持つエドモントとノエル。
「シンタローさん。何をしているんですか?」
「シンタロー。それは新しい寝間着?」
「サンタクロースの衣装さ」
「サンタクロース?なんですかそれは?」
 俺はエドモントとノエルにサンタクロースやクリスマスについて説明をした。

「なかなか奇特な方もいらっしゃるんですね。シンタローさんの世界には」
「空想上の人物だがな」
「それでなぜサンタクロースの格好をしているんですか?」
「元いた世界では今日がそのクリスマスだからな。モフちゃんにクリスマスプレゼントをあげようと思ってSHOPから取り寄せたんだ。」
 そう言ってサンタの格好した俺はプレゼントが入った靴下を見せた。
「後は寝ているモフちゃんの横にこの靴下を置いておけばいいだけさ」
 そう言って寝ているモフちゃんの傍に靴下を置いた。
「これで任務完了って……二人とも何だその手は?」
 俺が振り返ると両手を出したノエルとエドモントがいた。
「「プレゼントちょうだい!」」
「二人とも俺の話聞いていなかったのか、サンタクロースは良い子にしていた子供にだけプレゼントをあげるんだ。二人とも子供じゃないだろう」
ノエルとエドモントは信じられないと顔で訴えていた。
 確かノエルって、この世界では大人として扱われている年齢で、エドモントにいたってはアンデッドの上に年齢が三桁のはずだが、それでも二人はあきらめきれないのか無言で両手を出して、涙目で訴えている。
「ふ、二人とも……」
二人のあまりにも大人げない行動にあきれ果てたが、俺にはそんな余裕はなかった。
 モフちゃんが突然起き上った。
「モ、モフちゃん!!」
「あ、モフちゃんが起きた」
「モフちゃんさん。やっぱり起きていたんですね!」
「エドモント。知っていたのか、モフちゃんがタヌキ寝入りしていた事を……」
「ええ、そうですよ。シンタローさんの気遣いを無にしたくなくて寝たふりしていたんですよ」
「モフちゃん。苦労かけるな」
 モフちゃんは鳴き声を上げた。俺にはそれが「気にしないで」と言っているように聞こえた。
 モフちゃんは靴下から俺が用意したプレゼントであるリンゴを出してナイフで器用に四等分して俺たちに配った。その行動は「みんなで食べる方がおいしいよ」と言っているようだった。
「シンタロー。この赤い実は何?」
「シンタローさん。これは異世界の果物ですか?」
「そうだよエドモント。リンゴといって、モフちゃんと初めて会った時にあげた思い出の果物だ」
「で、モフちゃんさんはこの貴重なりんごをくれんるんですか!」
「モフちゃん。ありがとう」
 俺達はリンゴを味わったが、その日のリンゴはいつもよりおいしく感じたのは俺だけではなかったようだ。


ノエル「そもそもシンタローがボクたちの分のプレゼントを用意しなかったのが悪いんじゃないの?」
エドモント「確かにその通りですね」
シンタロー「二人とも、ぶっちぎりで大人げないな」
モフちゃん「キュル(やれやれ)」
全員「メリークリスマス!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クビになったアイツ、幼女になったらしい

東山統星
ファンタジー
簡単説明→追放されたから飯に困って果物食ったら幼女になった。しかもかなり強くなったっぽい。 ひとりの不運なナイスガイがいた。彼はラークという名前で、つい最近賞金首狩り組織をクビになったのである。そしてなんの因果か、あしたの飯に困ったラークは美味しそうなりんごを口にして、なんと金髪緑目の幼女になってしまった。 しかしラークにとって、これは新たなるチャンスでもあった。幼女になったことで魔術の腕が爆発的に飛躍し、陰謀とチャンスが眠る都市国家にて、成り上がりを果たす機会を与えられたのだ。 これは、『魔術と技術の国』ロスト・エンジェルスにて、ラークとその仲間たち、そしてラークの恋人たちが生き残りと成り上がりを懸けて挑み続ける物語である。 *表紙はAI作成です。 *他サイトにも載ってるよ

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...