199 / 213
六章
セネットの騎士
しおりを挟む
「セネットの、騎士?」
陛下の口から出てきた言葉は、さすがに誰もわからなかったようだった。貴族たちの間でもざわめきが起こり、セービン大司教とジョージアナ様は目を見開いて陛下を見上げていた。セービン大司教は口の中で何度も反芻しているようにも見えた。一方でリドリー侯爵は苦々しい表情を更に深めた。
「陛下、セネットの騎士とは?」
最初にその質問を上げたのは宰相だった。皆が戸惑い首をかしげる中、さすがというべきだろうか。
「セネットの騎士はセネットの聖女を守る者。セネットの聖女と心を通わせ、セネットの聖女が持つ紫蛍石が認めた者だけが得られる地位だ」
初めて耳にする者ばかりだからだろう、陛下がゆっくりと、子供に言い聞かせるように答えた。
「セネットの聖女と心を……」
「紫蛍石が選ぶって……」
「左様。石に認められた者は常に聖女の加護を得、また聖女の危機を察するという。建国の聖女の伴侶となった初代セネット侯爵もまた、騎士に選ばれた者だった」
建国の言い伝えなど今では荒唐無稽なお伽噺のように言われているけれど、それは紛れもない事実だった。私も最初は話が盛られたお伽噺だと思っていたけれど、ラリー様に紫蛍石がくっ付いてしまい、また今回の襲撃で力が失われていったから、それが現実に起こりうるのだと実感したばかりだ。
「そ、そんな……しょ、証拠はございますか、証拠は!」
大声で叫んだのはセービン大司教だった。先ほどから知らない事実が次々と出てくることに、大司教としてのプライドが傷ついたのだろうか、顔を真っ赤にしていた。多分彼は、聖女をまとめる立場として全てを知っていると思っていたのだろう。だからこそこんな暴挙に出られたのだ。
「証拠か。そうだな、ローレンス」
「どうしましょうか? 実際に見て頂くのが早いとは思いますが……」
「うむ。だがこうなってははっきりさせないと納得しないだろう」
「そうですね」
ラリー様が苦笑しながらそう言うと、陛下が前へとお呼びになったので、ラリー様は壇上に登った。
「私がセネットの騎士になった証拠を示そう。ただ、肌を見せるから見たくない者は視線を逸らして頂きたい」
ラリー様の紫蛍石は鎖骨の下、鳩尾との間にあるので、本来なら人目に晒すのははしたないとされる。今日は未婚の令嬢も多いからラリー様は彼女らに配慮したのだ。注意を促した後、ラリー様はゆっくりと胸元を開いた。そこにあるのは小さな紫蛍石と、それを取り囲むように赤く浮き上がったセネット家の家紋だった。
「な……!」
「あ、あれは……?」
「あの模様は……セネット家の、家紋?」
常識では考えられないそれに、会場からは驚きの声が多々上がった。
「私の胸元にあるのは、セネット家の当主の証である紫蛍石の片割れだ。以前はチェーンを付けてペンダントとして身に着けていたが、婚姻後に私の身体と同化し、彼女が聖女の力を流し込んだことで家紋が浮かび上がった」
そこまで話してしまっていいのかと疑問に思ってラリー様を見ると、わかっているという様に頷かれてしまった。でも、公表するなら陛下の事前の許可が必要だから、公表することは事前に決められていたのだろう。
「当主の証?」
「紫蛍石とは?」
そんな風に思っている間に、皆の注目が私に集まっていた。
「シア、前へ?」
「え、ええ」
ラリー様が手を伸ばして私を呼んだので、促されるまま前に出た。
「シア、紫蛍石を皆に見せて」
「大丈夫なのですか?」
「あの石は持ち主を選んだだろう? だから大丈夫だよ」
ラリー様が小声でそう言った。そう言えば以前、メアリー様たちがこの石を奪おうとしたけれど、石が熱くて触れないと言っていたことを思い出した。だったら大丈夫だろうか。私はドレスを身に着けるために長いチェーンで下げていた紫蛍石を取り出すと、ラリー様が手にして高く掲げた。
「この紫蛍石はセネット家の当主の証。初代聖女と同等の力がある者が力を流すとこのように家紋が赤く浮かび上がる様になっている。そして、騎士を得るのも初代聖女と同等の力がある者だけだ」
ラリー様の説明に、皆が食い入るように紫蛍石を見つめた。
「あれが伝説の……」
「そうだ。確か子どもの頃に読んだ伝記でも、赤く光ったと……」
聖女の持つ紫蛍石が赤く光るのは建国物語にも記載されていたので、国民の殆どが知っている話だった。一方で紫蛍石は当主か、それに該当する者がいなければ王家が管理しているから実物を見たことがある者は殆どいないと思う。
「補足だが、もう一つ」
そう言って進み出たのは陛下だった。私はラリー様と共に左に移動して陛下に場を譲った。
「セネットの聖女と神殿の聖女の力は常に反する」
「え?」
「なん……!」
「それは建国以来変わることなく、だ。これは初代聖女の思し召しでもある」
陛下が厳かにそう告げると、再び会場内が沈黙に包まれた。
「そ、そんな! どうやったらそんなことが……!」
「な、何故そんなことを!?」
そんな中で声を上げたのは、セービン大司教とリドリー侯爵だった。
「神殿が驕らぬよう、セネットの聖女が軽んじられぬようにするためだ」
「う、嘘よっ! そんなこと!」
叫んだのはジョージアナ様だった。
「あ、あり得ないわ、私があの女に劣るなんて! わ、私は大聖女なのよ! ヘーゼルダイン様の傷を治したのも私だわ!」
顔を真っ赤にして私を睨みつけてくる様はとても大聖女の品格に相応しいとは思えなかった。今まで私を下に見ていただけに、これだけの貴族の前で自分が下だと、そもそも比べる存在ではないと言われるのは我慢がならなかったのだろう。よくよく考えてみれば、強引な手を使ってでも大聖女の地位を欲したのだ。相当な野心家だ。
「そうか、だったら他にも治療を必要とする者がおる。まずはその者を癒して貰おうか」
陛下はそう言うと、再び侍従に目配せをした。直ぐにドアが開いて、再び包帯を巻いた騎士たちが入ってきた。今度は十人ほどいて、杖をついている者もいる。
「な、何を……?」
「大聖女になる条件は聖女の力の強さのみ。要はいかに多くの治療が出来るかが重要視される。セネットの聖女の上だというのであれば、彼らの治療など造作もなかろう」
「そ、そんな……!」
陛下にそう言われてジョージアナ様は狼狽えた。先ほどの三人の治療もままならなかったのだから当然だろう。
「さぁ、どうした? この者を癒すのだ」
興奮しているジョージアナ様に対して、陛下は冷静に淡々とそう告げた。
「わ、わかりましたわ! 」
後に引けないと思ったのだろう。ジョージアナ様が悔しそうな表情を浮かべながらもそう言うと、その勢いのままに一歩を踏み出したけれど……
(ええっ!?」
次の瞬間、私たちはあり得ない光景に目を瞠った。
陛下の口から出てきた言葉は、さすがに誰もわからなかったようだった。貴族たちの間でもざわめきが起こり、セービン大司教とジョージアナ様は目を見開いて陛下を見上げていた。セービン大司教は口の中で何度も反芻しているようにも見えた。一方でリドリー侯爵は苦々しい表情を更に深めた。
「陛下、セネットの騎士とは?」
最初にその質問を上げたのは宰相だった。皆が戸惑い首をかしげる中、さすがというべきだろうか。
「セネットの騎士はセネットの聖女を守る者。セネットの聖女と心を通わせ、セネットの聖女が持つ紫蛍石が認めた者だけが得られる地位だ」
初めて耳にする者ばかりだからだろう、陛下がゆっくりと、子供に言い聞かせるように答えた。
「セネットの聖女と心を……」
「紫蛍石が選ぶって……」
「左様。石に認められた者は常に聖女の加護を得、また聖女の危機を察するという。建国の聖女の伴侶となった初代セネット侯爵もまた、騎士に選ばれた者だった」
建国の言い伝えなど今では荒唐無稽なお伽噺のように言われているけれど、それは紛れもない事実だった。私も最初は話が盛られたお伽噺だと思っていたけれど、ラリー様に紫蛍石がくっ付いてしまい、また今回の襲撃で力が失われていったから、それが現実に起こりうるのだと実感したばかりだ。
「そ、そんな……しょ、証拠はございますか、証拠は!」
大声で叫んだのはセービン大司教だった。先ほどから知らない事実が次々と出てくることに、大司教としてのプライドが傷ついたのだろうか、顔を真っ赤にしていた。多分彼は、聖女をまとめる立場として全てを知っていると思っていたのだろう。だからこそこんな暴挙に出られたのだ。
「証拠か。そうだな、ローレンス」
「どうしましょうか? 実際に見て頂くのが早いとは思いますが……」
「うむ。だがこうなってははっきりさせないと納得しないだろう」
「そうですね」
ラリー様が苦笑しながらそう言うと、陛下が前へとお呼びになったので、ラリー様は壇上に登った。
「私がセネットの騎士になった証拠を示そう。ただ、肌を見せるから見たくない者は視線を逸らして頂きたい」
ラリー様の紫蛍石は鎖骨の下、鳩尾との間にあるので、本来なら人目に晒すのははしたないとされる。今日は未婚の令嬢も多いからラリー様は彼女らに配慮したのだ。注意を促した後、ラリー様はゆっくりと胸元を開いた。そこにあるのは小さな紫蛍石と、それを取り囲むように赤く浮き上がったセネット家の家紋だった。
「な……!」
「あ、あれは……?」
「あの模様は……セネット家の、家紋?」
常識では考えられないそれに、会場からは驚きの声が多々上がった。
「私の胸元にあるのは、セネット家の当主の証である紫蛍石の片割れだ。以前はチェーンを付けてペンダントとして身に着けていたが、婚姻後に私の身体と同化し、彼女が聖女の力を流し込んだことで家紋が浮かび上がった」
そこまで話してしまっていいのかと疑問に思ってラリー様を見ると、わかっているという様に頷かれてしまった。でも、公表するなら陛下の事前の許可が必要だから、公表することは事前に決められていたのだろう。
「当主の証?」
「紫蛍石とは?」
そんな風に思っている間に、皆の注目が私に集まっていた。
「シア、前へ?」
「え、ええ」
ラリー様が手を伸ばして私を呼んだので、促されるまま前に出た。
「シア、紫蛍石を皆に見せて」
「大丈夫なのですか?」
「あの石は持ち主を選んだだろう? だから大丈夫だよ」
ラリー様が小声でそう言った。そう言えば以前、メアリー様たちがこの石を奪おうとしたけれど、石が熱くて触れないと言っていたことを思い出した。だったら大丈夫だろうか。私はドレスを身に着けるために長いチェーンで下げていた紫蛍石を取り出すと、ラリー様が手にして高く掲げた。
「この紫蛍石はセネット家の当主の証。初代聖女と同等の力がある者が力を流すとこのように家紋が赤く浮かび上がる様になっている。そして、騎士を得るのも初代聖女と同等の力がある者だけだ」
ラリー様の説明に、皆が食い入るように紫蛍石を見つめた。
「あれが伝説の……」
「そうだ。確か子どもの頃に読んだ伝記でも、赤く光ったと……」
聖女の持つ紫蛍石が赤く光るのは建国物語にも記載されていたので、国民の殆どが知っている話だった。一方で紫蛍石は当主か、それに該当する者がいなければ王家が管理しているから実物を見たことがある者は殆どいないと思う。
「補足だが、もう一つ」
そう言って進み出たのは陛下だった。私はラリー様と共に左に移動して陛下に場を譲った。
「セネットの聖女と神殿の聖女の力は常に反する」
「え?」
「なん……!」
「それは建国以来変わることなく、だ。これは初代聖女の思し召しでもある」
陛下が厳かにそう告げると、再び会場内が沈黙に包まれた。
「そ、そんな! どうやったらそんなことが……!」
「な、何故そんなことを!?」
そんな中で声を上げたのは、セービン大司教とリドリー侯爵だった。
「神殿が驕らぬよう、セネットの聖女が軽んじられぬようにするためだ」
「う、嘘よっ! そんなこと!」
叫んだのはジョージアナ様だった。
「あ、あり得ないわ、私があの女に劣るなんて! わ、私は大聖女なのよ! ヘーゼルダイン様の傷を治したのも私だわ!」
顔を真っ赤にして私を睨みつけてくる様はとても大聖女の品格に相応しいとは思えなかった。今まで私を下に見ていただけに、これだけの貴族の前で自分が下だと、そもそも比べる存在ではないと言われるのは我慢がならなかったのだろう。よくよく考えてみれば、強引な手を使ってでも大聖女の地位を欲したのだ。相当な野心家だ。
「そうか、だったら他にも治療を必要とする者がおる。まずはその者を癒して貰おうか」
陛下はそう言うと、再び侍従に目配せをした。直ぐにドアが開いて、再び包帯を巻いた騎士たちが入ってきた。今度は十人ほどいて、杖をついている者もいる。
「な、何を……?」
「大聖女になる条件は聖女の力の強さのみ。要はいかに多くの治療が出来るかが重要視される。セネットの聖女の上だというのであれば、彼らの治療など造作もなかろう」
「そ、そんな……!」
陛下にそう言われてジョージアナ様は狼狽えた。先ほどの三人の治療もままならなかったのだから当然だろう。
「さぁ、どうした? この者を癒すのだ」
興奮しているジョージアナ様に対して、陛下は冷静に淡々とそう告げた。
「わ、わかりましたわ! 」
後に引けないと思ったのだろう。ジョージアナ様が悔しそうな表情を浮かべながらもそう言うと、その勢いのままに一歩を踏み出したけれど……
(ええっ!?」
次の瞬間、私たちはあり得ない光景に目を瞠った。
158
読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
お気に入りに追加
3,615
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる