164 / 213
六章
懐かしい顔
しおりを挟む
急に真面目に話を聞いて欲しいとラリー様に言われた私は、何事かと思って身構えてしまった。だって、夜会で急に真剣な表情になられたら、そう思っても仕方がないと思う。私は座り直してラリー様の言葉を待った。
「シア、貴女は気付いていないかもしれないけれど、貴女を狙っている男は貴女が思う以上に多いんだよ」
「ま、まさか…」
何の話かと思って構えていた私だったけれど、話の内容が思った者とは違っていたのもあって、私は拍子抜けしてしまった。いやいや、私に興味を持つ男性なんて居ませんから。
「あの、ラリー様?私、エリオット様の婚約者だった頃には、地味だの華がないだのと散々言われていたんですよ?だからそんな風に思う男性なんて…」
「その頃と今のシアは違うよ」
「まさか、そんなに変わりは…」
「いいや、以前は確かに痩せて肌や髪の艶もなくて地味だったかもしれないが。今は違う。肌も髪も艶を帯びて、ふっくらした頬も愛らしいし、身体つきも随分と女性らしくなった。それに、私の妻になってからは以前とは違う色香も漂うようになった。あの頃のシアとは全く違うよ」
「え…っと、あの…」
な、何を言い出すんですか、ラリー様!言われた事の内容が恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。そりゃあ、あの頃よりは太ったし、髪や肌も綺麗にはなったけれど…でも、顔の造詣は変わっていないし、華がないのは変わらないと思う。
「正直に言うと、私は王都に来るのはあまり気が進まなかったんだ」
「え?」
「だって、こんなにも愛らしいシアを連れて来ては、変な虫が寄ってくるだろう?それでなくても領地の披露パーティーでは、シアの事を熱心に見ている男どもがいたんだ」
「ええ?そんな筈は…」
「シアは自分の魅力に無頓着すぎる。それでなくても侯爵家当主で聖女の力もあるんだ。そんな貴女に取り入ろうと近づいてくる男はいくらでもいるんだよ」
「そ、それは…」
「シアがそんなにも無防備では、私がいくらけん制してもきりがないよ」
何と言うか、誰の事を言っているのかと思ってしまう自分がいた。いや、それはむしろラリー様の方じゃない?とも。私だって王都に来たらラリー様に女性が言い寄るんじゃないかと心配していたのだから。
「とにかく、シアも十分に気を付けて。私は嫉妬深いからね。変な虫が付いたら直ぐに排除してしまうよ」
「な…」
耳元でそんな事を囁かれてしまった私は硬直してしまった。それは閨でのラリー様の囁きと同じだったからだ。そんな事を思い出させるような事はやめて欲しい…それでなくてもこの手の事は得意じゃないのだから。
ソファで休んだ私達だったけれど、さすがにずっとそこにいる訳にもいかない。今日は主役のようなものだからと、会場に戻った。相変わらずラリー様は私の腰に手をまわしているけど…こんなにくっ付きたがる人だっただろうか?大切に思って下さるのは嬉しいのだけど、恥ずかしさの方がどうしても先に立ってしまう。
「これはローレンス様。どこに隠れていらっしゃったんですか?」
「そうです、お探ししましたぞ」
そう声をかけてきたのは…副宰相のマッドレル様と近衛騎士団長のバイアット様だった。このお二人は王都にいらした時からラリー様と仲良くされていた方で、年も近く、今でも親しく交流されていると聞く。ラリー様曰く、悪友との事だった。
「セネット侯爵アレクシア様、ご無沙汰しております」
「ご結婚されて益々お美しくなられましたな」
「本当に。ローレンス様が心配なさるのも仕方ないですな
「…お二方とも、ご無沙汰しております」
褒められるのは嬉しいけれど、褒め過ぎじゃないだろうか…社交辞令だとはわかっていても面映ゆい気分だった。仲のいい三人はあっという間に会話に夢中になってしまったけれど、ラリー様が話して下さらないので笑みを浮かべて会話を聞いていた。
ふと、視線を感じてそちらの方を向くと、仲のいいリネット様を見つけた。私に声を掛けようとしているも、お二人がいらっしゃるのでタイミングを計っているのだろう。
「ラリー様、ちょっと…」
ラリー様の袖を引くとラリー様がこちらを見たので、ふとリネット様に視線を向けた。それだけでラリー様はわかって下さったらしく、腰に回していた腕を話して下さった。
「シア、あまり離れないでね」
「わかりましたわ。マッドレル様、バイアット様、友人が呼んでいるので失礼してもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ、マグワイヤ公爵令嬢か。そう言えば仲がよろしかったな」
「ええ、学園時代からのお友達です」
「そうですか、それは積もる話もありましょう」
「ありがとうございます。失礼します」
さすがに目上の人に無言で離れるわけにはいかないので、挨拶をしてからその場を辞した。
「リネット様、ごきげんよう」
「アレクシア様、おめでとうございます」
ついこの間会ったばかりだけど、リネット様はお元気そうだった。もう直ぐ婚約披露のパーティーがあり、それに私達も招待されていた。
「そうそう、アレクシア様、お懐かしい方がいらっしゃっていますわよ」
そう言ってリネット様が連れてった先にいた人物に、私は確かに懐かしさを感じた。
「フランク先輩…」
「やぁ、アレクシア様じゃありませんか。お久しぶりでごさいます」
そこにいたのはエリオット様の元側近で、私達の一学年先輩でもあったフランク=ギレット様だった。
「シア、貴女は気付いていないかもしれないけれど、貴女を狙っている男は貴女が思う以上に多いんだよ」
「ま、まさか…」
何の話かと思って構えていた私だったけれど、話の内容が思った者とは違っていたのもあって、私は拍子抜けしてしまった。いやいや、私に興味を持つ男性なんて居ませんから。
「あの、ラリー様?私、エリオット様の婚約者だった頃には、地味だの華がないだのと散々言われていたんですよ?だからそんな風に思う男性なんて…」
「その頃と今のシアは違うよ」
「まさか、そんなに変わりは…」
「いいや、以前は確かに痩せて肌や髪の艶もなくて地味だったかもしれないが。今は違う。肌も髪も艶を帯びて、ふっくらした頬も愛らしいし、身体つきも随分と女性らしくなった。それに、私の妻になってからは以前とは違う色香も漂うようになった。あの頃のシアとは全く違うよ」
「え…っと、あの…」
な、何を言い出すんですか、ラリー様!言われた事の内容が恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。そりゃあ、あの頃よりは太ったし、髪や肌も綺麗にはなったけれど…でも、顔の造詣は変わっていないし、華がないのは変わらないと思う。
「正直に言うと、私は王都に来るのはあまり気が進まなかったんだ」
「え?」
「だって、こんなにも愛らしいシアを連れて来ては、変な虫が寄ってくるだろう?それでなくても領地の披露パーティーでは、シアの事を熱心に見ている男どもがいたんだ」
「ええ?そんな筈は…」
「シアは自分の魅力に無頓着すぎる。それでなくても侯爵家当主で聖女の力もあるんだ。そんな貴女に取り入ろうと近づいてくる男はいくらでもいるんだよ」
「そ、それは…」
「シアがそんなにも無防備では、私がいくらけん制してもきりがないよ」
何と言うか、誰の事を言っているのかと思ってしまう自分がいた。いや、それはむしろラリー様の方じゃない?とも。私だって王都に来たらラリー様に女性が言い寄るんじゃないかと心配していたのだから。
「とにかく、シアも十分に気を付けて。私は嫉妬深いからね。変な虫が付いたら直ぐに排除してしまうよ」
「な…」
耳元でそんな事を囁かれてしまった私は硬直してしまった。それは閨でのラリー様の囁きと同じだったからだ。そんな事を思い出させるような事はやめて欲しい…それでなくてもこの手の事は得意じゃないのだから。
ソファで休んだ私達だったけれど、さすがにずっとそこにいる訳にもいかない。今日は主役のようなものだからと、会場に戻った。相変わらずラリー様は私の腰に手をまわしているけど…こんなにくっ付きたがる人だっただろうか?大切に思って下さるのは嬉しいのだけど、恥ずかしさの方がどうしても先に立ってしまう。
「これはローレンス様。どこに隠れていらっしゃったんですか?」
「そうです、お探ししましたぞ」
そう声をかけてきたのは…副宰相のマッドレル様と近衛騎士団長のバイアット様だった。このお二人は王都にいらした時からラリー様と仲良くされていた方で、年も近く、今でも親しく交流されていると聞く。ラリー様曰く、悪友との事だった。
「セネット侯爵アレクシア様、ご無沙汰しております」
「ご結婚されて益々お美しくなられましたな」
「本当に。ローレンス様が心配なさるのも仕方ないですな
「…お二方とも、ご無沙汰しております」
褒められるのは嬉しいけれど、褒め過ぎじゃないだろうか…社交辞令だとはわかっていても面映ゆい気分だった。仲のいい三人はあっという間に会話に夢中になってしまったけれど、ラリー様が話して下さらないので笑みを浮かべて会話を聞いていた。
ふと、視線を感じてそちらの方を向くと、仲のいいリネット様を見つけた。私に声を掛けようとしているも、お二人がいらっしゃるのでタイミングを計っているのだろう。
「ラリー様、ちょっと…」
ラリー様の袖を引くとラリー様がこちらを見たので、ふとリネット様に視線を向けた。それだけでラリー様はわかって下さったらしく、腰に回していた腕を話して下さった。
「シア、あまり離れないでね」
「わかりましたわ。マッドレル様、バイアット様、友人が呼んでいるので失礼してもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ、マグワイヤ公爵令嬢か。そう言えば仲がよろしかったな」
「ええ、学園時代からのお友達です」
「そうですか、それは積もる話もありましょう」
「ありがとうございます。失礼します」
さすがに目上の人に無言で離れるわけにはいかないので、挨拶をしてからその場を辞した。
「リネット様、ごきげんよう」
「アレクシア様、おめでとうございます」
ついこの間会ったばかりだけど、リネット様はお元気そうだった。もう直ぐ婚約披露のパーティーがあり、それに私達も招待されていた。
「そうそう、アレクシア様、お懐かしい方がいらっしゃっていますわよ」
そう言ってリネット様が連れてった先にいた人物に、私は確かに懐かしさを感じた。
「フランク先輩…」
「やぁ、アレクシア様じゃありませんか。お久しぶりでごさいます」
そこにいたのはエリオット様の元側近で、私達の一学年先輩でもあったフランク=ギレット様だった。
134
読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
お気に入りに追加
3,615
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる