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二章
両親との再会
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エリオット様達から解放された私は、ラリー様に連れられてラリー様の知り合いの貴族たちと挨拶を交わしていた。ラリー様は陛下のため、自ら国内で一番きな臭いと言われていた辺境伯領に下られた。問題を起こして追いやられたわけではないから、今でも王都の貴族たちとの交流は続いているのだという。
副宰相様や騎士団長様は王都にいた頃から仕事以外でも懇意にしていたそうで、今でも定期的に情報を交換し合っているのだと仰った。なるほど、会話する様子は公人としてというよりも友人に近い気がする。皆様、一様にラリー様が王都を離れた事を惜しまれていた。
「やっとローレンス様も身を固められるか」
「姫君が生まれたら、是非息子の嫁に頂きたいものですな」
「本当に。あのクラリッサ様の孫に当たられるアレクシア嬢とのお子ともなれば、国中の貴族が婚姻を願い出そうですな」
何だか凄く期待されている様だけど…どう反応していいのか困ってしまい、私は笑顔を張り付けるしかなかった。既に婚約しているし、結婚式まではもう二か月もないのだけれど、具体的な事を言われてもピンとこないのだ。困った…
「アレクシア!ここにいたのか」
副宰相様や騎士団長様たちとお話をしていると、急に大声で名を呼ばれて私の身体がビクッと固まった。ああ、この声の主も今日はこの場にいたわね…
「…お父様…」
ドカドカと音を立てそうな勢いでこちらに向かってくる父に、侯爵家の当主としていかがなものかと頭が痛くなる。全く、髪と目の色以外はセネット家に相応しくないと陰では言われているのだけど、ラリー様もいらっしゃるのにあの態度はないだろう。
「アレクシア!来ているなら何故挨拶に来ない!」
息を乱してまくし立てる父に、ラリー様だけでなく副宰相様や騎士団長様まで目を丸くされた。お二人は爵位も我が家より上で、会話に許可なく割り込んだだけでも大変な不敬だ。だが、父は気が付かないらしい。
お母様も、やけに派手なドレスでどういう事だろう…我が家にはそんな余裕はなかった筈だけど。メイベルがエリオット様の婚約者になったから、下賜金でも出たのだろうか…
「これはセネット侯爵」
「な…誰だね、私に話しかけるなど失礼な!それに今は娘と話しているのだ。用があるなら後にしたまえ」
顔を赤くしてラリー様に居丈高にそう告げる父に、私は卒倒しそうになった。ラリー様は辺境伯で侯爵家の我が家とか家格は近いけど、王弟で私達臣下とは根本的に立場が違うのに…あまりの失礼な態度に、気を失いそうになった。
「お父様、おやめください」
「何だ、アレクシア。父に意見する気か?」
「意見も何も、こちらのお方はヘーゼルダイン辺境伯様。国王陛下の弟君でいらっしゃいます」
「はっ!嘘をつけ!辺境伯は顔に大きな傷を持つ醜い男だと言うではないか」
父の言葉に、周りが息を飲んだ後、騒めいた。それもそうだろう。未だに陛下が重宝されているラリー様をそのように仰るなんてあり得ない。まさか噂を鵜呑みにするなんて…
「アレクシア。王家から支給されたお前の支度金を早く寄こせ!メイベルのために金が必要なのだ」
「…そ、そうよ、お姉様!」
何と、さっきラリー様に近づくなと言われたメイベルまで参戦してきた。でも、エリオット様の姿がない。どこに行ったのだろう…
「私はエリオット様の婚約者としてふさわしい装いをする必要があるの。だから支度金を…」
「メイベルはまだ正式な婚約者ではないでしょう?」
「…え?」
「陛下から正式な発表の前に婚約者と名乗るのは不敬罪にあたるのよ」
「そ…それは…っ」
「そもそも、王子妃教育は終わっているの?」
「…っ!」
どうやら全く進んでいないらしい。まぁ、今の態度を見ただけでも確信出来てしまうのだから仕方ない。それに貴族の婚約は陛下の許可が必要で、勝手に婚約者を名乗ってはいけないのは常識中の常識だ。ましてや王族では不敬罪になり兼ねないというのに…
それに、王家からの支度金をメイベルに使うから渡せって…完全に王家を馬鹿にしている。そんな事を考えるだけでも不敬極まりないのに、この様な他の貴族が数多いる場で堂々と言うなんて…
チラ…とラリー様の方を見ると、さすがのラリー様も呆気に取られていた。こんなに家族が恥ずかしいと思った事はない。ああ、申し訳なさ過ぎて消えてしまいたかった…
副宰相様や騎士団長様は王都にいた頃から仕事以外でも懇意にしていたそうで、今でも定期的に情報を交換し合っているのだと仰った。なるほど、会話する様子は公人としてというよりも友人に近い気がする。皆様、一様にラリー様が王都を離れた事を惜しまれていた。
「やっとローレンス様も身を固められるか」
「姫君が生まれたら、是非息子の嫁に頂きたいものですな」
「本当に。あのクラリッサ様の孫に当たられるアレクシア嬢とのお子ともなれば、国中の貴族が婚姻を願い出そうですな」
何だか凄く期待されている様だけど…どう反応していいのか困ってしまい、私は笑顔を張り付けるしかなかった。既に婚約しているし、結婚式まではもう二か月もないのだけれど、具体的な事を言われてもピンとこないのだ。困った…
「アレクシア!ここにいたのか」
副宰相様や騎士団長様たちとお話をしていると、急に大声で名を呼ばれて私の身体がビクッと固まった。ああ、この声の主も今日はこの場にいたわね…
「…お父様…」
ドカドカと音を立てそうな勢いでこちらに向かってくる父に、侯爵家の当主としていかがなものかと頭が痛くなる。全く、髪と目の色以外はセネット家に相応しくないと陰では言われているのだけど、ラリー様もいらっしゃるのにあの態度はないだろう。
「アレクシア!来ているなら何故挨拶に来ない!」
息を乱してまくし立てる父に、ラリー様だけでなく副宰相様や騎士団長様まで目を丸くされた。お二人は爵位も我が家より上で、会話に許可なく割り込んだだけでも大変な不敬だ。だが、父は気が付かないらしい。
お母様も、やけに派手なドレスでどういう事だろう…我が家にはそんな余裕はなかった筈だけど。メイベルがエリオット様の婚約者になったから、下賜金でも出たのだろうか…
「これはセネット侯爵」
「な…誰だね、私に話しかけるなど失礼な!それに今は娘と話しているのだ。用があるなら後にしたまえ」
顔を赤くしてラリー様に居丈高にそう告げる父に、私は卒倒しそうになった。ラリー様は辺境伯で侯爵家の我が家とか家格は近いけど、王弟で私達臣下とは根本的に立場が違うのに…あまりの失礼な態度に、気を失いそうになった。
「お父様、おやめください」
「何だ、アレクシア。父に意見する気か?」
「意見も何も、こちらのお方はヘーゼルダイン辺境伯様。国王陛下の弟君でいらっしゃいます」
「はっ!嘘をつけ!辺境伯は顔に大きな傷を持つ醜い男だと言うではないか」
父の言葉に、周りが息を飲んだ後、騒めいた。それもそうだろう。未だに陛下が重宝されているラリー様をそのように仰るなんてあり得ない。まさか噂を鵜呑みにするなんて…
「アレクシア。王家から支給されたお前の支度金を早く寄こせ!メイベルのために金が必要なのだ」
「…そ、そうよ、お姉様!」
何と、さっきラリー様に近づくなと言われたメイベルまで参戦してきた。でも、エリオット様の姿がない。どこに行ったのだろう…
「私はエリオット様の婚約者としてふさわしい装いをする必要があるの。だから支度金を…」
「メイベルはまだ正式な婚約者ではないでしょう?」
「…え?」
「陛下から正式な発表の前に婚約者と名乗るのは不敬罪にあたるのよ」
「そ…それは…っ」
「そもそも、王子妃教育は終わっているの?」
「…っ!」
どうやら全く進んでいないらしい。まぁ、今の態度を見ただけでも確信出来てしまうのだから仕方ない。それに貴族の婚約は陛下の許可が必要で、勝手に婚約者を名乗ってはいけないのは常識中の常識だ。ましてや王族では不敬罪になり兼ねないというのに…
それに、王家からの支度金をメイベルに使うから渡せって…完全に王家を馬鹿にしている。そんな事を考えるだけでも不敬極まりないのに、この様な他の貴族が数多いる場で堂々と言うなんて…
チラ…とラリー様の方を見ると、さすがのラリー様も呆気に取られていた。こんなに家族が恥ずかしいと思った事はない。ああ、申し訳なさ過ぎて消えてしまいたかった…
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読んで下さいってありがとうございます。
ゆっくりになりますが、更新再会しました。
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